超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第六十二話 今すべき事、その後すべき事

「おはよーございます、昨日百合百合組のイベントの為に隣の部屋にいる羽目となったネプテューヌです」

 

声を潜め、足音を消し、ひっそりと侵入する。これぞ、早朝バズーカの秘技!

と、言う訳でわたしは今ベールの部屋の前に居るよー。あ、察しの良い人はもう分かってると思うけど勿論さっきの台詞は小声だよ、この時点でバレちゃったら何の面白味もないからね。

 

「さて、鍵は…開いてるね」

 

音を立てない様ゆっくりと扉を開け、手にしたバズーカをぶつけない様に気を付けながら部屋の中へ入るわたし。…え、どこでバズーカなんて調達したのかって?そんな突っ込みはナンセンスだよ、そういう事ばっかり気にしてる人はわたしの手でねぷねぷにしちゃうゾ♪

 

「ふっふっふ…普段クールなあいちゃんと大人なベールの寝顔を見れるチャンス、これは見逃せないね」

 

まぁぶっちゃけた話をするとわたしは二人(というかパーティーメンバー全員の、だけど)の寝顔を見る機会がそれなりにあるしわたし自身はそこまで寝顔が気になる訳じゃないけど…早朝バズーカとなると話は別だもんね。しかも今回潜入するのはあいちゃんとベールが二人きりの部屋。これは正直見ものだよ、うん。

 

「時間OK、バズーカOK、わたしのテンションOK、となれば後は起こすだけ…!」

 

部屋の暗さに目が慣れてきた事をバズーカを見る事で確認したわたしは部屋の奥…つまり、ベットの方に進む。

薄ぼんやりと見えるベット上には毛布を被った複数人の人影。ふっ…ほんと二人は仲良し…というかラブラブだねぇ。そんな二人への早朝バズーカなんてこんな面白いものはないね!…あ、サディステックな意味じゃなくてドッキリ的な意味だよ?

そして、ベットの真横についたわたしは深呼吸の後バズーカを構え、声を上げる。

 

「すぅ、はぁ……お熱い二人にモーニングコールだよ!はいどっかー…ん……?」

 

大声と共に引き金を引こうとしたわたしは、途中で違和感を感じて指を止める。え、えーっと…ちょ、ちょっと待ってね。一回情報を整理して違和感の正体を突き止めるから。

薄暗い部屋の中、ベットの上に見える人影は三つ。いち、にー、さん…ひーふーみー、ワンツースリー…うん、やっぱり三つ。でも、わたしの記憶が正しいならここにいる筈の人はあいちゃんとベールの二人。

…はい、たった今誰かが潜り込んでいた事が判明しました。

 

「こ、こんな大胆な事する人いたっけ…?」

 

早朝バズーカをやってる場合じゃなくなったわたしはバズーカを下ろし、誰が潜り込んでいるのか思案を始める。えっと、まずこんぱと鉄拳ちゃんはわたしが部屋出る時まだ寝てたから無いし、ノワールとかMAGES.とかはそもそもリーンボックスにいないからあり得ないよね。で、普通にやり兼ねない奴と言えば兄弟が思い付くけど…それだったら人影は四つになる筈だからそれもないし…となるとまさかイボさん?…い、いやいや流石にそれはないよね、亀仙人じゃあるまいし…。

 

「そうなると残ったのは一人…いや、まぁある意味妥当な感じはするけどさ…」

 

第三の人影の正体を思い浮かべたわたし。とは言え確認してみないとすっきりしないし、万が一ヤバい人がいたなら対処しなくちゃならないから優しく、且つ素早く三人を覆っている毛布を引っぺがす。

 

「すぅ……」

「くぅ……」

「んぅ……」

 

毛布という隔たりが無くなった事で聞こえてくる三つの寝息。その主はあいちゃんとベール…そして、チカだった。

 

「え…えぇぇ……」

 

それと同時に漏れた、この困り果てた様な声の主はわたし。…いや、別にチカが居た事は別にいいよ?普通に予想通りだったし。だから、問題はそこじゃなくて……あいちゃんとチカが左右からベールに抱き着きながら寝てた事なんだよねぇ……。

 

「…両手に花じゃん…しかも花が花持ってるし…これなんてエロゲ……」

 

しかもよく見たらベールもベールで二人を抱き寄せていた。おまけに三人共凄い幸せそうな寝顔だった。

数分後、廊下にはバズーカを引きずりつつ部屋から出てくるわたしの姿が。…だって、あれもう色々と触れちゃ不味い気がするもん…ネタにならないとか仕返しされるとかそういう次元じゃなくて、なんだかよく分からないけどそっとしておかなきゃ不味そうな何かを感じるもん……。

そうしてわたしは、何とも言えない複雑な気持ちを抱えながら隣の部屋の自身の寝床へと戻るのであった…。

 

 

 

 

「ふぅむ…昨日の戦闘以降で偽者のわたくしらしき情報は上がってませんわね…」

 

おはよう、というには遅い様な、こんにちは、というには早い様な…そんな微妙な時間にわたし達は、ベールの部屋に集まっていた。ベールの呟きからも分かる通り、偽者のベールの事についてが目的だったりする。

 

「じゃあ、偽者のベールさんはわたし達が倒した一人だけだったって事です?」

「その線が濃厚になってきましたわね…チカ、そちらに何か情報は来ていまして?」

「いえ、こっちにも全く情報は来ていませんわ」

 

私的な方法で情報収集をしていたベールとは逆に公的な方法で情報収集をしていたチカ(というか教会)にも情報は入っていない、となると尚更偽者のベールは一人だった、という可能性が高くなる。わたし達としてもそっちの方が楽だよね。

 

「ネプテューヌさん、ネプテューヌさん達はプラネテューヌでもう別の偽者と戦ったんだよね?」

「うん、偽者のわたしを二十人前後倒したかなぁ」

「け、結構たくさん倒したね…その偽者は更に別の人に変身したりした?」

「え?…うーん、わたしの見てた限りはしてなかったけど…どうして?」

「女神様の姿となれるならそれ以外の姿にもなれるかもしれない。そしてそれが可能なら偽者のベール様が身を隠す手段として変身を使っているというのもあり得る、って事じゃない?」

「そうそうそういう事だよ〜」

 

確かに偽者のベールが別の誰かに変身しているかもしれない、って事は分かる。だってそもそも『偽者』だもんね。けど、それって…

 

「リーンボックスにいる人全員が偽者かもしれない、って事でしょ?…は、果てしなくない……?」

「流石に全員調べるのは無理に近いですわね…調べてる最中にまた姿変えられたらいたちごっこですし」

「じゃ、じゃあどうするんです?」

「…例え姿を隠蔽しているとしても、何か悪事を働けばそれ相応に情報が入りますわ。後手に回ってしまうのは癪ですけど、今は腰を据えて待つのが最善ですわね。第一偽者の能力にしても人数にしてもあくまで『かもしれない』ですし」

 

えーっと…なんか長く言ってたけど、つまりは情報待ち、って事だよね?んもう、ベールもわざわざ難しく言わずに簡単に言ってくれればいいのに…。

 

「単純でアホそうなのに女神をやっていけるのなんてネプテューヌ位ですわよ?」

「ねぷっ!?心読まれた!?っていうか何それdisってない!?」

「ちゃらんぽらんなのは否定出来ないでしょ…と、いう事はもう暫くベール様はリーンボックスから動けないんですか?」

「そうですわね、今後のマジェコンヌ対策も練らなくてはいけませんし最低でも数日は動けませんわ」

 

ベールの返答を聞いたあいちゃんはほんの僅かだけど残念そうな顔をしていた。いやー、あれは付き合いが長いわたしじゃなきゃ気付かないレベルだね、うん。

 

「大丈夫だよあいちゃん、どうしてもベールと一緒にいたいならパパッと他も片付ければいい話だし」

「べ、別に一緒にいたいとは言ってないでしょうが!…それに、状況が状況なんだからノワールもブラン様もしっかり手助けするわよ」

「そう?じゃ、わたし達は他も手助けしたいし一緒に情報待つ事は出来ないけど、良いかなベール?」

「えぇ、待つのは別に大変な事じゃありませんし貴女達はそちらを優先させて下さいまし」

「それじゃわたしはリーンボックスに残るよぉ。もし偽者のベールさんが現れた時ベールさんが全部相手するってなったら負担が大きいし」

「それは助かりますわ、鉄拳ちゃん」

 

プラネテューヌの時と同じ様に残るメンバーと他の大陸へ行くメンバーとで別れるわたし達。…って言っても他の大陸へ行くメンバーはここに来るまでと同様わたしとこんぱ、あいちゃんの三人だけどね。

 

「ベール様、何かあったらすぐに連絡して下さいね。駆けつけますから」

「ふふっ、心配には及びませんわあいちゃん。これでも女神ですもの」

「そうよ、それにもし仮に何かあってもアタクシがいるから貴女の出番はないわ」

「くっ…そういうならきちんとベール様の補佐しなさいよね」

「そんなの言われなくても分かってるわよ」

「あ、あのー…わたしも残るんだけど……」

 

何だか昨日よりあいちゃんとチカの関係は険悪になっていた。そしてそれを見てげんなりとしているベール。…朝方侵入した時は良好な関係っぽく見えたけどこれは意外と大変そうだなぁ…ちょっと同情するよベール…。

 

「あ、あはは…じゃあ、もう行くですかねぷねぷ?」

「うーん…ま、そだね。次はラステイションとルウィーのどっちの方がいいかな?」

「そうね…あ、でも確かねぷ子ラステイションは後の方が良いって言ってなかった?その方がノワールが良い反応してくれそうって理由で」

「す、凄い動機だねそれは…」

 

あいちゃんに言われてわたしは数日前の自分の台詞を思い出す。そういやそうだったね、我ながら確かに凄い理由だとは思うけど…ノワールの場合焦らしたら凄く良い反応してくれそうじゃん?…って、わたしそんなSなキャラだっけ?わたしは某神次元の女神と同じくプラネテューヌの女神だけど全然違うキャラだよね?

 

「私もそう思うわ…けど特にラステイションを優先した方がいい理由もないし、次はルウィーで良いんじゃないかしら?」

「ならルウィーで決定ですね。…あ、カイロの用意しなきゃです…」

「あー、前は用意せず行ってこんぱ凄い寒そうだったもんね」

「その時ネプテューヌは雪にはしゃいで寒さ忘れてましたわね」

 

パーティーで初めてルウィーに行った時の事を思い出して懐かしむわたし達。…けど、よく考えたらそれからまだ数ヶ月も経ってないんだよね。なのに結構前に感じるのはそれより前もそれより後も濃い日々が続いているからかな?

そして、ベールの好意で教会にあったカイロをいくつか貰ったわたし達はルウィーへと向かう準備…要は持ってきていた荷物を纏める作業に入る。

 

「こうやって荷物纏めてるとさ、何だか夜逃げの気分になるよねぇ」

「いやならないでしょ」

「ならないですね」

「だよねぇ…」

 

……え、この山なし谷なしオチなしのしょうもない会話は何だって?…考えてみなよ、いくらボケの申し子であるわたし、安定の天然を誇るこんぱ、突っ込みに定評のあるあいちゃんの三人組だったとしても四六時中面白トークしてる訳ないじゃん。流石にそれは身が持たないよ。

と、言う訳でわたし達もこういう何の意味も無さそうな会話をしてるんだよー、というワンシーンでした。原作ゲームを始めとして大概の媒体では描写されないわたし達の一面を見られる本作はお得だね!

 

「ねぷねぷ、準備出来たですか?」

「…あ、ごめんちょっと地の文で閲覧してる皆に話しかけてたからまだ終わってないや」

「メタなボケする前にきちんと本編の方に力入れなさいよ…」

 

あいちゃんに呆れられちゃったわたしは、今度はきっちりと荷物を纏めて教会を出られる状態になる。

 

「よし、それじゃ行こっか二人共」

「一番準備が遅かったねぷ子がそれ言うんじゃないわよ…」

「マイペースですねぇねぷねぷは」

「前の次元でもネプテューヌさんはマイペースだったなぁ

…」

 

外に出た所であいちゃんに突っ込まれ、更にこんぱと鉄拳ちゃんにマイペース認定されるわたし。…てか、今ちょっと思ったけどこんぱと鉄拳ちゃんってどっちもほんわかした感じだし気が合いそうだよね。趣味とか特技とかは真逆っぽい気がするけどさ。

 

「皆さん、心配はしてませんけど気を付けて行くんですのよ?」

「分かってるよベール、ベールこそしっかりね」

「それじゃ、行ってきますベール様」

 

早ければ数日、遅くても数週間でまた合流出来ると踏んでいる事もあって前よりは簡素な挨拶で済ますわたし達。ま、友達の家から帰る時にわざわざ大仰な挨拶しないのと同じだよね。

そうしてリーンボックスを後にするわたし達。次はルウィー、ここまで調子良く行ってるんだからこのペースを保って進まなきゃね!

 

 

 

 

皆、接岸場の設定覚えてる?四大陸はそれぞれが近付いたり離れたりしてるから最も近付いた時しか陸路で行けなくて、その時大陸と大陸を繋ぐ役目を果たすのが接岸場なんだけど…序盤以降殆ど大陸移動時に接岸場の描写無かったし、名前もろくに出てこなかったから忘れてる人も多いんじゃないかな?

で、何で急にその話をしたかって言うと、それは勿論……

 

「大陸接近の時間を確認せずに行ったせいで、立ち往生しちゃってるからなんだよねぇ…」

 

せっかくテンション上がる感じに教会出たのにそれが全部無駄だよもう…。ってか、次も頑張らなきゃとか全力でやらなきゃねとか言うと毎回こういう出鼻を挫く展開になってない?

 

「後二十分位みたいですよねぷねぷ」

「二十分かぁ…長い様な短い様な微妙な時間だよね」

「二十分じゃ時間潰す為にどっか行く訳にもいかないし、素直に待ってましょ」

 

そういうあいちゃんは携帯ゲームをしていた。むむ…わたしが無一文で地面に刺さってた関係上まだ携帯持ててないのにズルいやズルいや!…と、思ってた所貸してくれたので素直にゲームをしていたわたしだった。

 

「…単純ね、ねぷ子…」

「いーの、それよりちょっと気になった事あるんだけど訊いてもいい?」

「気になった事、です?」

「うん、どう考えても今のゲイムギョウ界の技術なら飛行機とか作れるよね?なのに何で飛行機…っていうか大陸移動用の空路が無いの?」

 

空路ならわざわざこうやって大陸が近付くのを待つ必要は無いし、それ以外にも色々と便利だよね?技術力が足りない様には思えないし、何でなんだろ…。

 

「えっとですねねぷねぷ、それは空にもモンスターさんがいるからです」

「モンスター?…あ、そういえばねぷねぷ航空やった時何度かモンスターが近付いて来たね」

「そうです。だからモンスターが増えて以来空港は殆ど休業状態なんですよ」

 

飛行機は無いんじゃなくて動かせない、という事をこんぱは教えてくれた。まぁそりゃモンスターに襲われて墜落、とか洒落にならないしなら陸路で行くよね。

 

「もう一つ理由があるわよねぷ子」

「え、もう一つ?」

「えぇ、普通に生活してる分には気付かない…というか出来る限り一般社会には影響が出ない様にしてるみたいだけど、現状ではまだ守護女神戦争(ハード戦争)が継続中で、大陸間での移動には多少制限がかかってるのよ」

「…わたし達がもういがみ合ってないのに?」

守護女神戦争(ハード戦争)初期はほんとに戦争の形になってて、そこで出来たものがまだ撤回されてないって訳よ」

「そうなんだ…早くマジェコンヌをやっつけて、そっちにも片をつけなきゃ何だね」

 

いーすんが言うには戦争の原因はわたし達今の女神には無いらしいし、今のわたしに戦争中の記憶はないけど、それでも女神として責任は感じるし、普通に暮らしてる人の為にも早くそれは何とかしたい。それがわたしの紛れもない本心だった。そして、その会話が終わる頃にはリーンボックスとルウィーの大陸は繋がりかけていて、もうすぐ渡れる、という状態になっていた。




今回のパロディ解説

・亀仙人
DRAGON BALLシリーズに登場する、主人公達の師匠の一人である亀仙人の事。男の欲を忘れていないご老人と言えば彼が思い付きましたが、皆さんはどうですか?

・それなんてエロゲ
ネットスラングの一つのパロディであり、とてもよく似た人物の名前が元となったネタ。状況的にギャルゲやキャラゲでもあり得る展開ですが…そこは問題じゃないですね。

・某神次元の女神
神次元のプラネテューヌの女神、アイリスハートことプルルートの事。前のネクストフォームネタ同様あくまでネタであり、ネプテューヌが既に知ってる訳じゃないですよ。

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