超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative 作:シモツキ
ラステイションの大地へと降り立つ五人の女神と三人の少女。五人の女神は一仕事終えた後の様なすっきりとした様子、それに対して三人の少女は……
「ぎもぢわるいですぅ…たかいところ怖いですぅ…目がぐるぐるするですぅ…」
「うぐっ…まさかあんな戦闘マニューバをするとは……」
「はぅぅ…ベール様……」
一人は目を回し、一人は表情を曇らせ、一人は惚気ていた。この三人を見れば分かる通り、私達…というか三人を運んだネプテューヌ、ノワール、ベールは大分ぶっ飛んだ飛び方をしていた。…韻を踏んだつもりはないよ?
「もう、二人共何やってんの…」
「せっかくの機会だし楽しんでもらおうと思ったんだけど…」
「だからってバレルロールに宙返り、そして極めつけにインメルマンダンスって酷過ぎだよ…」
「え、じゃあ帰りは変身と解除を組み合わせた『ねぷねぷスペシャル』をしようと思ったんだけど…駄目?」
「も、もう空は嫌ですぅ…歩いて帰るですぅ…」
話を聞く限りネプテューヌとノワールは善意…というか遊び心でアクロバット飛行をした様だけど…コンパとMAGES.にとっては絶叫体験にしかならなかった。…そりゃ女神が空戦レベルの動きしたら連れられてる人はたまったもんじゃないよね…。
そして、もう一組はと言えば……
「ふふっ、ハネムーン飛行は満足出来まして?」
「もう感無量ですベール様ぁ……」
「…なんでこの二人はここまでイチャつけるのかしら」
「恋は盲目、とはよく言ったものだよね…」
二人がイチャつく事自体は二人の自由とはいえ、ほっとくとここでずーっと仲睦まじくしていそうなので半眼で茶々を入れる私とブラン。…正直、とても取っ付きにくい。
「移動一つとってもろくに進まないな、このパーティーは…私も人の事を言える立場ではないが」
「そこをすんなり受け入れられる様になったらパーティーメンバーとして一人前だよ?」
「そんな一人前は御免被るわね…ここで話してるんじゃわざわざ飛んだ意味が無くなるし教会行きましょ」
「あ、待ってその前に一旦シアンのとこ行っちゃ駄目?」
『シアン?』
そう言えば…と言った感じの表情を見せる私達四人と聞き慣れない名詞に首を傾げるベール、ブラン、MAGES.。パッセの社長でありラステイションでの協力者となってくれたシアンの様子が気になるというネプテューヌの言葉は至極真っ当に思えた。
「私達がお世話になった町工場の社長だよ、持ちつ持たれつの関係だったけどね」
「そうね…別に良いんじゃないかしら?パッセの現状も気になるし」
「じゃあまずはシアンさんの所に行くです」
「ねぷねぷ航空利用する?」
「それはしないですぅ……」
全体的に締まりのない形でラステイションの街中へと足を運ぶ私達。お出掛けの度に余計な事を話したり本来の目的から脱線したりする私達のスタンスはやはりどこへ行っても変わらなかった。
「あいちゃん、エスコートお願いしますわ」
「本屋さんの案内ならわたしがするですよ」
「さて、ではドゥクプェを探すとしよう…」
「ノワール、ちょっと図書館行きたいんだけど案内してくれない?」
「え…あの……」
あいちゃんを連れてゲームショップへ行くベール、こんぱに案内されて本屋へ行くブラン、ドゥクプェを探しに行くMAGES.、ノワールに頼んで図書館へ行くイリゼ。そして、残される……わたし。
…おかしいよね?わたし主人公何だよ?むむ…せっかくだからちょっと観光してからパッセ行かない?…って提案には同意したけどこんなの聞いてないよ!…って言ってもしょうがないし…
「ちょ、ちょっと待って二人共!主人公たるわたしを一人ぼっちにしてどこ行く気!?」
「どこって…図書館だよ?」
「私もそう聞いているわ」
「いやそうじゃなくて…わたしも着いてっちゃ駄目?」
『駄目』
同時に即答するノワールとイリゼ。…え、酷くない?主人公とかネタとかそういうの抜きに即座に拒否とか流石のわたしも傷付くよ…?
「うぅ…もしかしてわたしって嫌われてる…?」
「そういう訳じゃないわよ、ただ…」
「絶対ネプテューヌは図書館じゃ静かに出来ないよね…」
「それは確かに…でもこのままじゃわたしほんとにぼっち何だよ、何かスイーツでも奢るから連れてってよー」
『…スイーツ?』
今まで拒否してた二人がスイーツと聞いて興味を示す。うんうん、個人差はあるけどやっぱスイーツって聞いて興味を示さない女の子はいないよね、わたしもプリン大好きだし。
「プリンでもケーキでも好きに奢るからさ、良いでしょ?」
「…本当に良いの?」
「この主人公ネプテューヌに二言は無い!ドヤァ」
「うーん…まあスイーツ奢ってくれるなら話は別だよね」
「そうね、着いてくる事を許してあげるわ」
「わーいっ!やったー!」
人目を気にせず喜ぶわたし。やー実に作戦成功、ノワールとイリゼの心を掴むのは案外簡単だったね!
…うん、何となくむしろわたしが良い様に扱われてる気がしないでもないけど違うよね、きっと。
「ふぅ…あんなにたくさんのスイーツ食べたのは久しぶりよ」
「私はもしかしたら初めてかも、やっぱ甘い物って良いよね」
「うぅ、わたしのお小遣いが…酷いよ二人共……」
ケーキを目一杯食べられて上機嫌の私とノワール。それに対してネプテューヌはお小遣いが吹き飛んだ事で絶賛落ち込み中。対照的な二人と一人の構図が完成していた。
「好きに奢るって言ったのは貴女でしょ?」
「でもほら、普通こういう場合って遠慮とかするものなんじゃ…」
「友達の間に遠慮なんて必要無いよ、きっと」
「金銭面での遠慮は必要だよ…これじゃもうゲームどころかプリンも満足に買えないじゃん……」
軽くなったお財布を見つめるネプテューヌ。その哀愁を感じる様子にこれは悪かったかなぁ…と思ったわけでとノワールはフォローを試みる。
「えっと…ほら、今度プリン買ってあげるから元気出して」
「そ、その通りよ、私も買ってあげるから」
「え、ほんと!?」
『立ち直り早っ!?』
「…なんて言うと思った?」
『ですよねー……』
流石にそこまで単純じゃなかったネプテューヌ。…と、思いきや…
「…でもプリンかぁ…よし、高級プリン二つで手を打とう!」
「あ、うん…良いんだ…」
「やっぱり単純なのね…」
「何か言った?」
『いえ何も』
単純なのかそうじゃないのか相変わらずよく分からないネプテューヌだった…。
と、そこで思ったより時間が経っていた事に気付く私達。あんまり遅くなるとシアンに迷惑になっちゃうから皆と合流してパッセへと向かう。
「そう言えばパッセはちゃんと元通りになったのかしら…」
「そこは安心して頂戴、きちんと工場として成り立つレベルに直ったわ」
「工場、か…興味をそそられるな」
「あれ、MAGES.ってそういうタイプなの?てっきり科学より魔法、的な人だと思ってたけど…」
「早計だなイリゼよ。我が魔術は魔法と科学の融合…謂わば技術系統の垣根を超えた新時代の技なのだ」
「そ、それはまた凄いね…」
大所帯故の賑やかな進行(?)をしながらパッセへと向かう私達。ノワールの言っている事を立証するかの様に私達が歩く工場街はキラーマシンにやられる以前の姿を取り戻していた。
そして……
『おぉーー!』
元のパッセの姿を知っていた私達は勿論、ベール達パッセを知らない面子も色めき立つ。
それもその筈、私達が目にしたパッセはよくある町工場的な雰囲気から最新鋭設備を揃えた企業の工場の様な荘厳さを醸し出していたからである。
「確かに元通り…と言うよりも前より立派になってるです…」
「シアンの精神が形になったかの様な雰囲気あるよね」
「ま、取り敢えず入りましょ」
ノワールを筆頭にパッセへと入る私達。外見同様内装も機械に詳しくない私達でも分かる程良い設備を揃えていて、最早別の工場かな?…と思う位だった。
「シアン、最近顔出せなくて悪かったわね」
「ん?あぁノワールか…問題無いさ、そっちもそっちで忙しいだろうし…って、おぉ!」
「やっほー!シアン久しぶりー」
「お久しぶりです、シアンさん」
「元気してた?」
「急な訪問だけど大丈夫?」
「勿論さ!そっちこそ元気そうで良かったよ」
私達の姿を見るや否や駆け寄ってくるシアン。そっちこそ、と言う言葉からも分かる通りシアンはとても元気そうだった。…まあ、やっぱり開発に熱を入れ過ぎるのは変わらないのか目元にくまが出来てたけど、ね。
「貴女がシアンなのね、宜しく」
「初めましてですわ」
「我が名はMAGES.!次元を超えし狂気の魔術師だ!」
「…おまけに個性的な面子も増えて随分な大所帯になってるな」
ラステイションを後にした以降のパーティーメンバーを見て苦笑いするシアン。ふとすると忘れがちになるけど…女神だとか別次元の住人だとかそういう事を抜きにしても私達のパーティーは物凄く個性的なんだよね…。
「それにしてもほんとに凄くなったねここ」
「だろう?…まあ、これもノワールの…いや、ブラックハート様のおかげだけどな」
「へぇ…あれ?ノワールはシアンに正体明かしたの?」
「えぇ、流石に隠すのもキツくなってきたしね」
シアン曰くノワールが正体を明かした時にはシアンは腰を抜かすレベルで驚いたらしかった。そして正体を知った上でノワールを呼び捨てにしているのはコンパやアイエフ達と同様ノワールからそう呼ぶ様言われたかららしく、その時シアンは信仰する女神様の言葉を聞くべきか信者として適切な接し方をするべきか相当悩んだと言っていた。
「あ、もしかしてノワールは重機の代わりとかしたの?」
「そんな事する訳ないでしょ…そもそも何もしてないわ」
「そう照れんなって、お前が公務をこなしつつも護衛役をかってくれたおかげで資材の調達が楽に出来たんだ。この辺の連中皆が感謝してるんだぜ?」
「たったそれだけの事よ、それに国民を助けるのは女神として当然だもの」
「と、いくら褒めてもこの調子なんだ…」
またも苦笑するシアン。対するノワールは飄々と…そして、よく見るとちょっと照れた様な表情をしていた。
…ほんと、こういう所はノワールらしいよね。
「私の話はもう良いわよ…それより開発は順調なの?」
「よく聞いてくれたな。博覧会用の武器なんだが確かに開発は進んでいる…が、今の素材じゃどうもフレームの強度が足りないんだ」
「また?何回目よ…それに前取ってきた素材だって入手には苦労したのよ?」
「それは十分分かってるって。けど、こればっかりは妥協出来ないんだ」
そういうシアンの顔は完全に職人のそれになっていた。素材入手にやや否定的なノワールもその事は分かっているのかはっきりと断る様な事はせず、ただ困った様な表情を浮かべている。
…と、そんな時に口を挟んだのはやはりネプテューヌだった。
「あれ、もしかしてシアンは絶賛お困りなうって感じ?」
「あぁ。前にお前達にモニターを頼んだアルマッスを覚えてるか?今はあれを更に発展させてるんだが、エネルギー技術の方にフレーム強度が追いついていなくてどうしても今以上の高度の素材が必要なんだ」
「なら、わたし達が取ってくるです」
「頼めるのか!?」
コンパの言葉を聞いて途端に目を輝かせるシアン。武器開発に進展が期待出来る事に目を輝かせる女の子、という大変稀有な状況に今度は私達が苦笑する番だった。
「他にする事もないから大丈夫よ。それに、私達としてはまだシアンとの協力関係は続いてるつもりよ」
「お前等……」
「それにモニターという形で開発に協力した身としては、完成まで見てみたい気持ちもあるからね。協力させてよ」
「ありがとな、お前等…なら頼む!今のわたしが出来る最高傑作を形にする為に協力してくれ!」
『勿論!』
シアンの頼みに全員で返す私達。そして、シアンから目的の素材の情報を聞いた私達は手早く準備を済ませた後、その素材があるというダンジョンへと向かった。
目的の洞窟へ入ると即座に襲いかかってくるモンスター。普通の人であれば良くて一苦労、悪いと撤退を余儀なくされるモンスターの強襲だったけど……
『はぁぁぁぁぁぁッ!』
幾度とない戦いを経験し、それを乗り越えてきた私達にとっては脅威でも何でもなく、せいぜい準備運動になった程度だった。モンスターが消滅する時の光を横目に見ながら私達は洞窟を進む。
「しかしびっくりだよね、素材…っていうか鉱物はモンスターから取ってくるなんて…もしや目的のモンスターってウラガンキンか何かなの?」
「それならばそれはそれで面白そうですけど違うみたいですわ」
「だよね、じゃあそのモンスターはどこら辺にいるの?」
「それはお約束通りこの洞窟の一番奥らしいわ」
このお約束、と言うのかゲームやアニメで言うお約束なのかゲイムギョウ界でのお約束なのかは分からない(或いは両方…?)けど、奥なら探しやすくて助かるね。
「お約束…そう言えばわたくしがこの前遊んだゲームはダンジョンの奥ではなく脇道にボスがいたせいで一時間位探し回る羽目になりましたの。そんな苦労現実でまでしたくはありませんわ」
「さ、流石ベール様。こんな時でもゲームが例えなんですね…」
「まさにゲーム脳ね…」
「おーい、モンスター出てこーい!」
雑談をしたり軽く呆れたりモンスターを呼んでみたり…緊張感も真面目さも無い私達だったけどモンスターが出てきたらきっちりと撃破し、道が分かれた時は一つずつ確認して…まあつまりは順調に探索を進めていた。
…でも世の中は…特に私達パーティーは何も予定外の事が無い予定調和な冒険が出来る訳もなく、現に今もとある出来事が近付いていたんだけど…それはまた、別のお話。
「…っていう幕引きって結構あるけどさ、大概それって語られないよね。まさかここでの出来事まるっと飛ばしちゃって次回はパッセから始まるとか?」
「いやいやいやいや…小粋な幕引きしたかっただけだから…」
今回のパロディ解説
・インメルマンダンス
マクロスΔの主人公、ハヤテ・インメルマンが行ったマニューバの通称。オーバーテクノロジー兵器で行う動きを普通の人に体験させるのはあまりにも酷な気がしますね。
・ねぷねぷスペシャル
機動戦士ガンダムOOのメインキャラの一人、グラハム・エーカーの行った変形マニューバの通称のパロディ。こちらも大変危険なので普通の人に体験させるのは駄目ですよね。
・「シアンの精神が形になったかの様だね」
機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORYのメインキャラ、アナベル・ガドーの台詞のパロディ。工場も工業製品…と捉えれば元ネタに近い…気がします。
・ウラガンキン
モンスターハンターシリーズに登場するモンスター。背中で鉱石が取れるモンスターなのですが…一体どんな身体の構造をしてたら背中に鉱石が生えるのでしょうね。