超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative 作:シモツキ
見晴らしの良い山道を走る五人の少女(え?幼女っぽい子と少女てか女性が居る?…黙秘権を行使します)。
勿論私達は体力作りを狙っている訳でもアニメのEDの撮影をしている訳でもない。ベールとチカさんが張っていた罠に掛かった謎の人物を捕まえる為である。
「ベール、罠ってこのダンジョンの中なの?」
「えぇ、出来るならば一刻も早く向かいたい所ですが…息の上がった状態で犯人とやり合うのは避けたいですわね…」
ベールの言う通り、ここまで急いで来た私達は息切れこそしていないものの、息が上がりつつあるのは明白だった。私達は状況確認したい事もあり即座にベールの意見に同意し、ペースを落とす。
「…それで、どうして犯人が分かったんですか?」
「それは簡単な事ですわ。イヴォワールにネプテューヌの抹殺を図った相手を訊いたところ、ルウィーの宣教師コンベルサシオンだと言っていましたの」
「コンベルサシオン…?」
「その名前に聞き覚えはありまして?」
「いえ、初めて聞く名前ですね…皆は?」
ベールの言葉に返答をしながら私達の方を向くアイエフに対し、私とコンパは首を横に振る。まぁ、そもそも私は記憶喪失だから知ってても知らなくても分かんないんだけどね。
「まぁそうよね…ねぷ子は?」
「ベルトコンベアーなら知ってるよ!」
「うん、それはもうどう考えても違うからね…」
「…あくまでわたくしの推測なのですが…恐らく、コンベルサシオンとわたくしを襲った犯人は同一人物の筈ですわ」
「どうして同じ人だって思ったんですか?」
「それはわたくしが超女神級の名探偵だから…ではなく、狙われたのがネプテューヌだけだったからですわ」
そう言って自身の推理を語り始めるベール。現在分かっている状況、イヴォワールさんから聞いた情報、そしてそこから推測される結論。ベールは趣味に走らない限りは頼れるお姉さんみたいな雰囲気を持っているおかげか、彼女の言葉にはとても説得力があった。
「コンベルサシオンは皆さんが来た時にまるで合わせたかの様に現れましたわね。そして彼女は魔王信仰について語っていながら実際に狙ったのはネプテューヌただ一人。だとすれば魔王信仰への警告は隠れ蓑の可能性が高く、ネプテューヌが狙われる理由として思い付くのは…」
『女神だから、(だね・ですね)』
ここまでくれば元々頭の回るアイエフは勿論刑事でも探偵でもない私でも分かる(ネプテューヌとコンパは私達の言葉を聞いてから『あー!』…みたいな反応してたけど…わ、分かってたよねきっと…)。
「えぇ。同じ女神であるわたくしも襲われた以上その線が濃厚だと思いますわ、女神を狙う人間や組織がたくさんいるとは思えませんし」
「えっと…じゃあ、そのコンベル何とかさんがねぷねぷとベールさんを狙った犯人何です?」
「いや、あくまでコンベルサシオンは実行犯であって主犯はルウィーの女神、ホワイトハート様かその側近辺りだと思うわ」
「おおっ!?何かよく分からないけど名推理キター!」
ベールとアイエフの説明にテンションを上げるネプテューヌ。その様子はとても被害者のそれとは見えなかったけど…戦いを前にしてテンション…というか士気が高まるのはむしろ好都合だった。
「…あれ?どうしてねぷねぷは命を狙われてベールさんは狙われなかったですか?」
「それは恐らくわたくしが
「…じゃあ、私が狙われなかったのは逆に全く情報が無かったから…とかかな?」
「可能性は高いわね。何せベール様やノワールだって知らなかったんだもの」
一通り説明を聞いた私達。そして罠を用意していたという場所はもうすぐそこまで近付いていたのだった。
「申し訳ありませんが、この先はおばさん立ち入り禁止です」
「誰がおばさんだ誰が!」
「この場には貴女以外はいませんが?」
「貴様…消し炭にするぞ!?」
小山を抜けた更地に着いた私達の耳には言い争いらしき声が聞こえてきた。片方はチカさんの声、そしてもう一方の声の主は……
「そこまでよ、コンベルサシオン!」
「よくもわたしを殺そうとしたなー!絶対許さないんだからね!」
「ちっ…こいつは女神達が来るまでの時間稼ぎだったか…」
舌打ちをしながら私達の方を向くコンベルサシオンさん。その様子は教会ですれ違った時とは違い、敵意がありありと見えていた。
「チカ、ご苦労様でしたわ」
「いえ、お姉様の為ならこの位お安い御用ですわ」
「ふふっ、では後はわたくし達に任せて安全なところへ」
「はい、頑張って下さいお姉様」
「…さて、コンベルサシオンさんとやら…貴女にはネプテューヌを狙った罪の断罪とわたくしの力を返して貰います」
チカさんがその場を離れると同時に臨戦態勢に入る私達。普通の人間相手に五人がかりだったらあまりにも理不尽だけど…相手はネプテューヌとベールを嵌めた存在。油断する訳にはいかないよね。
「ほぉ、ただのオタク女神だと思っていたがそこまで調べたか」
「ゲーマーを舐めるな、という事ですわ。貴女の手口は先日発売の『闇夜にささやく〜探偵佐川総一郎』の犯人の手口と同じだっただけですけどね」
「へぇ、それは凄い…えぇ!?どんだけピンポイントな偶然なのそれ!?」
「まさしくゲーマー探偵ベール、って感じだね!」
「新ジャンルの名探偵さんの誕生です」
「く…どこのメーカーだか知らんが余計な物を作ってくれる!」
忌々しそうにゲームメーカーに毒づくコンベルサシオンさん。そして同時に彼女の身体から淡い光が放たれ始め…彼女の姿は全く違う者、魔窟で私達があった女性のそれとなる。
「あー!プラネテューヌであったおばさんだ!」
それが貴女の本当の姿…皆さん、彼女を知っているんですの?」
「はい、プラネテューヌでわたし達から鍵の欠片を奪おうとしてきた悪い人です。名前は…えっと……」
彼女の名前を忘れてしまったらしく言葉に詰まるコンパ。もう、仕方ないなぁ…教えてあげなきゃね。
「コンパ、マージェリンさんじゃないっけ?」
「え?マスタングじゃなかった?」
「あれ?マジェスティックプリンスじゃないの?」
「ど、どれが合ってるです…?」
「どれも間違いだッ!貴様等の頭はニワトリレベルか!」
え、えーと…あ、そうだマジェコンヌ!…さんに怒られてしまった私達。流石に今のは全面的に私達が悪いので心の中で謝りつつ改めてマジェコンヌさんを見据える。
「ふん…今回はあの時のようにはいかんぞ」
「そっちがその気ならこっちだって!いくよイリゼ!」
「うん!」
臨戦態勢に入ったマジェコンヌさんを見て同時に女神化する私とネプテューヌ。そして私達の女神化を合図に戦闘が始まる。
「はぁッ!」
『……っ!』
地を蹴り一気に距離を詰めると同時に槍を振るうマジェコンヌさん。私達は四散する事で回避し、女神化によって格段に身体能力が上がっている私とネプテューヌが即座に反撃を図る。それに対しマジェコンヌさんは回避行動に移る。
「皆!私とネプテューヌで陽動するから攻撃を!」
「それをさせるとでも?」
「悪いけどさせて貰うわ!」
私が仕掛け、反撃を図るマジェコンヌをネプテューヌが妨害。ネプテューヌと左右に分かれて挟撃。いつぞやのネプテューヌとノワール程ではないもののしっかりとした形の取れた連携によりマジェコンヌを封殺していく私達。マジェコンヌさんも数の上での劣勢さを感じさせない様な動きをするも…それは私達を上回りはしない。
「面倒な動きを…ならば二人まとめて…ッ!」
「貰いましたわッ!」
「ちぃッ!」
業を煮やし大振りの一撃を放とうとした瞬間、私とネプテューヌは空中に離脱しそれと同時にベールが肉薄、鋭い刺突を放つ。それを辛うじて柄で逸らすマジェコンヌ。
攻撃こそ失敗に終わったものの、目を見開いたマジェコンヌを見た私達はさらなる攻撃を仕掛ける。ベールが、コンパが、アイエフが私達の作る隙を正確に狙う事により、次第にマジェコンヌを追い詰めていった。
「喰らいなさいッ!」
「ぐっ……!…まさか、この私が追い込まれるとはな…」
「命までは取りませんわ。さぁ、大人しくわたくしの力を返して下さいまし」
「ほぅ、流石腐っても女神か…だが、私の本当の力を目の当たりにしていつまでも強がりを言えると思うな!」
跳躍し一度距離を取るマジェコンヌさん。状況から考えれば強がりを言っているのは彼女の方だと判断するのが普通だけど…マジェコンヌさんは強がりを言っている様な雰囲気では無かった。
「典型的な悪役の台詞ね…脅しなら通用しないわ!」
「脅しと思うなら思えばいいさ!だがな、この姿を見ても同じ事が言えると思うな!」
啖呵を切ると同時に宙へ浮くマジェコンヌさん。そして彼女は再び…否、先程とは似ても似つかぬ光を、私やネプテューヌにとっては馴染みのある光を放ち出す。そして、その光が収まった時、光の中心にいたのは……
「そ、その…姿は……!?」
「そうだ!貴様から奪った女神の力を使わせてもらったのだ!さぁ自らの力に滅ぼされるがいい!」
…私やネプテューヌ、ノワールの女神化した姿を彷彿とさせる、特異な瞳とユニットを纏ったマジェコンヌの姿だった。
強烈な槍の一撃が私達へと襲いかかる。それをネプテューヌと協力して止めるも、私達が反撃を放つ前に横薙ぎの様な蹴りが続き、私達は吹き飛ばされる。
…形勢は、完全に逆転していた。
「嘘でしょ…前にノワールと戦った時より私達は強くなってる筈なのに…」
「ラステイションの女神か…残念だったな、今の私は女神の力と私自身の力、その二つが融合した比類無き力なのだ!」
「きゃあぁぁぁぁッ!」
吹き飛ばされた私達の前へ一瞬で接近したマジェコンヌさんはネプテューヌへ上段からの一撃を叩き込む。辛うじてネプテューヌは大太刀で受けるも衝撃までは受け止めきれず再び吹き飛ばされる。
「この……ッ!」
「おっと、そう簡単にいくと思うなよ?」
「なら私達が…」
「させるものかッ!」
『ーーっ!?』
私の放った逆袈裟を刃で受け、更に側面から仕掛けようとしていたベール達へ電撃を放って返り討ちとするマジェコンヌさん。…私の中にあの時の…一撃で吹き飛ばされ、岩壁へ打ち付けられた時の恐怖が少しずつ浮かび上がってくる。
「さて、貴様には聞きたい事がある。何なんだ貴様は」
「そんなの…むしろ私が知りたい事ですよ…!」
「…しらばっくれている様子では無いな、なら良い。私の邪魔となるならば同じだ!」
「がぁ……っ!?」
逆袈裟を押し込もうとしていた私はマジェコンヌさんが前触れなく力を抜いた事で勢い余って前のめりになる。そこへ繰り出される柄での一撃。それを私が避けられる筈もなく肩口へ重い一撃が入る。幸い骨は折れなかったけど…力の差は歴然であった。
「イリゼ…!貴女、よくも…ぐぅっ!?」
「よくも、なんだネプテューヌ?ほぉら、いつもの減らず口を叩いてみろ!」
「……っ…」
「あぁ、無理だったか。それはすまない事をしたな…しかしこの姿にもそろそろ飽きてきたところだ。いよいよ貴様の力を貰うとしよう…どんな気分なのだろうな、自分の力に殺されるというのは」
首を絞め、ネプテューヌを持ち上げ嗤うマジェコンヌさん。彼女の手には魔窟でネプテューヌの力を奪おうとした時と同じ光が現れる。
…肩を庇いながら立ち上がる私。ネプテューヌの力を奪わせる訳にはいかない。だから、立ち上がる。
「待ち…なさい……!」
「何故貴様の言葉を聞く必要がある?…貴様は見ているが良い、ネプテューヌが力を奪われ…私にひれ伏す姿をな!」
私と二人の間は数メートル。マジェコンヌさんの手とネプテューヌの間は数十センチ。全力が出せる時ならいざ知らず、今の私にマジェコンヌさんよりも早く距離を詰める方法は無い。
…無理だった。ネプテューヌへと近付く手、それを見つめる事しか出来ない私。そして、私が失意を感じると同時にネプテューヌの力はマジェコンヌさんへと……
「そうは…させない……ッ!」
宙を踊る深緑の髪。マジェコンヌさんを押す腕。突然の攻撃を受けコピーを失敗、ネプテューヌを離してしまうマジェコンヌさん。
ネプテューヌを助け、マジェコンヌさんの野望を阻止した彼女は……ベールに言われた通りに逃げた筈のチカさんだった。
「貴様…まだいたのか…ッ!?」
「ふんっ、お姉様のピンチに駆けつけずしてお姉様の付き人なんて出来ないわ!」
「…あれは…光の玉……?」
マジェコンヌさんの女神化が解け、同時に彼女の身体から光の玉が抜け出すように出てくる。それに気付いたマジェコンヌさんは…気迫すら感じる程の憤怒の表情を浮かべていた。
「くっ…!貴様のせいでコピーはおろかせっかく手に入れた女神の力が……!」
「アイエフさん!それをお姉様へ!早く!」
「……っ!分かったわ!」
「この…クソがぁっ!」
「ぐふっ…アイエフさん…後は、頼むわ……」
「チカ……ッ!?」
状況をいち早く理解したアイエフが突出、自分の身も顧みずに光の玉を手に入れると同時にベールの元へ走る。その背ではマジェコンヌさんの攻撃を受け倒れるチカさん。今、戦況を覆す一手を進めているのは女神でも何でもない、普通の少女二人だった。
そして、それを見せられて何もしない私では、無い。
「させるものか…ッ!」
「私を忘れるな…マジェコンヌッ!」
「ちぃぃっ!」
アイエフを追おうとするマジェコンヌの前へ滑り込み、長剣を振るう私。その攻撃は有効打とはならなかったものの…時間を稼ぐには十分だった。
「ベール様、急いでこれを!」
「…えぇ…この感じ、懐かしいですわ……」
光の玉を受け取るベール。光の玉は流れる様にベールの身体へと入り…ベールが、女神化の光に包まれる。
「…チカとあいちゃんが身を挺して取り戻してくれたこの力、このチャンス…必ず無駄にはしませんわ!」
光の中より現れるベール。
本当の力を取り戻した女神、グリーンハート。
そして、戦いは第二ラウンドを迎える。
今回のパロディ解説
・超女神級の名探偵
ダンガンロンパシリーズの生徒の異名『超高校級の○○』のパロディ。ベールのキャラ的に合うのは名探偵ではなく…やはり超女神級のゲーマーですね。
・マジェスティックプリンス
銀河機攻隊 マジェスティックプリンスの事。原作でもマジェコンヌは名前を色々と間違われていますが、我ながらこれは無理のある間違いの様な気もします。