超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第七話 激突・守護女神

「…そこの岩陰に誰かいるわ」

 

目的のモンスターを倒し、いざ帰ろうとしていた時。

コンパとアイエフが飛べる私達に帰路は空輸して貰おうと交渉…と言うか買収を仕掛けてきた時。

そんな他愛無い会話はアイエフの言葉とその場に隠れていたもう一人の人物によって打ち砕かれ、まだ安心の出来る段階では無いのだという事実を突き付けられた。

 

「よく気付いたわね、褒めてあげるわ」

 

そう言って岩陰から姿を現す女性。少なくとも通行者や迷子には見えない。その様な人達とは雰囲気が全く違う。

 

「久しぶりね、ネプテューヌ…最も、貴女な覚えていないかもしれないけどね!」

「あいちゃん、この人…!」

「…えぇ、その独特のコスチュームにその瞳…何となく変身したねぷ子やイリゼに似ていると思わない?私の勘が外れてなければ、きっと貴女達の事を何か知っている筈よ」

 

そう、彼女は変身した私やネプテューヌと似ていた。髪の毛や瞳の色こそ違えど明らかに似たものを感じる。そして変身状態の私達の姿は決して一般的ではない。

だからこそ可能性を感じる。私達と何か関係のある人物ではないのか、という可能性を…。

 

「えぇ、そっちのイリゼとか言う方はともかくネプテューヌの事ならよーく知ってるわよ」

「……!?本当なの!?なら教えて!私は一体何者なの!?」

「……っ…!」

 

銀髪の少女の言葉にネプテューヌは血相を変えて反応し、私は対象的に消沈する。『イリゼとか言う方はともかく』…即ち、私の事は知らないという事だ。なら、私の事を知っているのは一体誰…?

 

「あはははっ!ネプテューヌにお願いされるっていうのも悪くないわね!いいわ、教えてあげる!」

 

ネプテューヌの頼みに対し銀髪の少女は高圧的な態度で笑いながら返す。何というか…ハイテンションな人だ。

 

「本当!?」

「良かったですね、ねぷねぷ」

「…その代わり、一つ条件があるわ」

「条件?一体それは何?」

「勿論…私に勝負で勝てたらよ!」

「……ッ!?」

 

言い放つと同時に少女の手元に片刃の大剣が現れ、次の瞬間には斬りかかってくる。

半ば反射的に自身の獲物である大太刀を掲げるネプテューヌ、間合いに入るや否や大剣を振るう少女。大太刀と大剣のぶつかり合いで火花が散る。

 

「な…何のつもり!?わたしは貴女と戦うつもりはないわ!」

「自分について知りたいんでしょ?なら戦う理由があるじゃない!」

 

力を込め大剣を振り抜く少女。ネプテューヌは対抗せずに跳んで後退、着地と同時に構え直す。

 

「ふふっ…どうしたのよネプテューヌ、攻める気がないならまた私から----」

「はぁぁっ!」

「……っ!」

 

少女の挑発混じりの言葉を止めたのは、他でもない私の一太刀だった。寸前のところで大剣の腹を使い防御する少女。その顔は一瞬驚愕に染まるが、すぐに元の表情に戻る。

 

「一対一のつもりだったなら退くけど…どうする?」

「…へぇ…やっぱりアンタも只者じゃない訳ね。いいわ、これ位ハンデのうちよ!」

 

お互いに離れ仕切り直しの形となる私と少女。私の事を知らないというのは勿論ショックだった事に変わりはない…でも、変身中だったおかげかこの状況に際し気持ちを切り替え、目の前の戦いに集中する事が出来た。

 

「ネプテューヌ、イストワールさんとやらが記憶を治してくれるらしいとはいえこれが千載一遇のチャンスである事には変わりないでしょ、違う?」

「…そうね、ここからはわたしも全力でいかせて貰うわ」

 

顔を見合わせた後、再び少女に瞳を向ける私とネプテューヌ。少女を含めた三人の間に数秒の沈黙が訪れる。

 

「…誰も動かないですね…」

「動かないんじゃなくて動けないのよ、下手に動くのは隙に繋がるからね…」

 

私達を見守るコンパとアイエフ。彼女達も自分との力の差を感じているのか容易に動こうとしない。

そして、客観的には数秒の、私達にとってはその何倍にも感じる時間が経ち…なんの前触れも無くネプテューヌが動いた。

その逆に意表を突いた攻撃に少女は一瞬反応が遅れる…が、ネプテューヌの大太刀が届くより早く少女は思考力を取り戻し、紙一重で飛んで回避する。

 

「ち…モンスター程楽にはいかないわね…」

「当然よ、たかがモンスター如きと一緒にしないでくれるかしらッ!」

 

少女はただ回避した訳ではなかった。飛翔する事で間合いを自身が有利となる状態に調整し、ネプテューヌが次の行動に移る前に鋭い一撃を放つ。

一対一の勝負であればその攻撃は通用していただろう。…そう、一対一であれば。

 

「私を忘れないで貰える?…ネプテューヌ!」

「ち……ッ!」

「喰らいなさいッ!」

 

二人の間に滑る様に割り込んだ私は剣同士を打ち合わせる事でネプテューヌへの攻撃を妨害。更に少女がそれに歯嚙みした隙を突いてネプテューヌが蹴りを入れる。

蹴りを片手で受ける少女。ダメージとしては軽微、動きに影響の出る様なものでは決して無かったが、一撃与えたという事実は私達の士気が上がるのには十分だった。

 

「…前とは逆の立場ね…これで負けたのならまあ仕方ない、むしろ善戦出来た事を誇って良いでしょうね…」

「あら、勝ち目が無いとでも悟ったのかしら?」

「まさか、この状況で勝ってこそ私ってものよ!」

 

大剣の切っ先を私に向け、一気に距離を詰める少女。私は咄嗟に防御体勢に移るが、少女は私の動きを確認した瞬間大剣を横に振り抜きネプテューヌへ攻撃対象を移す。その流れる様な対象の意向を見た私は瞬時に最初から対象はネプテューヌだったのだと察した。

完全に攻撃体勢となっていたネプテューヌは対応しきれず、結果甘くなった防御に叩き込まれた一撃はネプテューヌを吹き飛ばす。

 

「ネプテューヌ!?」

「貴女によそ見してる余裕があるのかしら?」

 

吹き飛ばされたネプテューヌに一瞬意識を引かれてしまう。常人ではあれば文字通りの一瞬だが、少女にとっては私へ攻撃をする為の十分な時間だった。

繰り出される少女の回し蹴り。私はそれを両手を交差させる事で防御するも衝撃で痛みが走る。それでも何とか長剣を強く握り振るう事で少女の追撃を阻止、私もネプテューヌを気にして後退する。

 

「大丈夫?ネプテューヌ…」

「問題無いわ…でも、一筋縄じゃいかないわね…さっきのモンスターみたいに不意打ちが通用するとは思えないし…」

「勝ち目はある筈だよ、圧倒的な差ってレベルじゃ無い筈だしこっちは二人なんだから」

 

ネプテューヌは地面に落ちる直前で翼を使って急減速を行ったのか怪我は無く、継戦も可能な様子だった。

 

「まさかまだ終わりじゃないわよね?自分の事が知りたいんでしょ?」

「……っ…当然よ、この程度でやられる訳ないじゃない…」

 

相変わらずの高慢な態度に触発される様に立ち上がるネプテューヌ。それに対し無言で少女に瞳を向ける私。

返答をしなかった理由は二つ。一つは私に対しての言葉では無かったから、そしてもう一つは……

 

「…ネプテューヌ、一つ試したい事があるの…乗ってくれる?」

「…聞かせて頂戴」

 

 

 

 

空中で三振りの刀剣が交差し、その度に火花と金属音をあげる。私、ネプテューヌ、銀髪の少女による戦闘は佳境に入りつつあった。

 

『はぁぁぁぁっ!』

「その程度で…ッ!」

 

私とネプテューヌによる連続攻撃を時に防御し、時に躱す事で防ぎつつ、私達の連携が途切れた所で反撃に移る少女。彼女の獲物は一撃の重みに特化した叩き斬る武器である大剣だが、それを彼女は片手剣の様に華麗に扱い、時には引き斬る様な動きさえ見せていた。

幾度目かの攻防の末、私とネプテューヌの間の距離が開いた瞬間、少女が動いた。

 

「即興の連携にしてはやるじゃない、でも…相手が悪かったわねっ!」

「しまっ…!?」

 

連携と連携の間の無防備な隙、そこを突いた少女の攻撃にネプテューヌは辛うじて大太刀による防御を図ったが上段からの重い一撃を防ぎきる事など到底出来ず、風を受けた紙飛行機の様に軽々吹き飛ばされてしまう。

 

「あははははっ!やっぱり私の方が強かったわね!…さあ、次は貴女よ?」

「ねぷ子!」

「ねぷねぷ!」

「…………」

 

落下したネプテューヌに駆け寄るコンパとアイエフ。私も出来るならば行きたかったけど…状況が、目の前で嬉しそうに笑う少女が許してくれない。だからこそ、私は直ぐさま攻撃に移った。

横薙ぎ…と見せかけた中段からの無理矢理な逆袈裟。それを少女は大剣の腹で受け流すと同時に峰での打撃を放つ。眼前に迫る大剣の峰を身体を捻る事で回避する私。長剣と大剣を挟んで私と少女の視線が交錯する。

 

「無名としては貴女も強い方よ、褒めてあげるわ」

「それはどうも…ッ!」

 

一拍置いた後、互いに振るった剣がぶつかり合い、せめぎ合う形になる。

ここまでは想定内だった。自分の推測が間違っていなかった事に安堵しつつ、私は内側から湧き上がるある感情に気付く。私の感覚が正しければそれは…高揚感、だった。

 

「貴女は十分な強者よ、それはネプテューヌも同じ…だから満足して負けなさいッ!」

「そうは…させないッ!」

 

互いに距離を取り、次の瞬間には突進。そして両者が同時に全力の袈裟懸けを叩き込む。

響く金属音。痺れる両手。少女は勝ち誇った笑みを浮かべ…長剣が吹き飛んだ私に刃を向ける。

 

「ほら、やっぱり私の勝ちじゃない。最後に何か言いたいなら聞いてあげても良いわよ?」

「じゃあ…貴女に忠告させてもらっていい?」

「…忠告?」

「うん、忠告……」

 

怪訝な顔をする少女。そんな少女に対し私は…勝利宣言とも言える、その忠告を口にした。

 

 

「…後ろ、気を付けた方が良いんじゃない?」

「……ーーッ!?」

 

私の言葉の意味を瞬時に察し振り向く少女。だが、もう遅い。

 

「はぁぁぁぁぁぁッ!」

「…っ…きゃあぁぁぁぁぁぁッ!」

 

強烈な一撃を受け、真っ逆さまに落下する少女。完全に油断していた少女へ一撃を与えた彼女は自身の獲物を下げ、私に銀髪の少女とは別種の笑みを見せる。

 

「陽動ご苦労様、イリゼ」

「そっちこそご苦労様、ネプテューヌ」

 

 

 

 

「くっ…!助けがあるとは言え、この私が負けるなんて……やっぱり私の力が…うぅん…それだけは認めたくない…!」

 

少女の近くへ降り立つ私とネプテューヌ。少女は悔しそうに地面を見つめていた。

 

「さあ、約束よ。わたしの事を話してくれるわね」

「……ッ!たった一度私に膝をつかせた程度で勝った気にならないでよね!」

「確かにこっちの方が多勢に無勢だった事は認めるよ、でも勝ちは勝ちでしょ?」

「こんなの…こんなの認めないわっ!」

「……!?待って!」

 

地を蹴り飛翔する少女。そんな力はもう無いと思っていた私達は反応が遅れ、取り逃がしてしまう。

 

「二人共!追って!」

 

アイエフの指示が飛ぶ…が、私達はほぼ同時に変身が解けてしまう。これは恐らく…

 

「ごめんあいちゃん、さっきの戦いでエネルギー切れしたみたい。もう疲れてヘトヘトで無理…」

「そんな…イリゼもなの?」

「ご明察…正直これはかなり骨が折れたよ…」

「だったら走って追いかけるわよ!せっかく見つけたねぷ子の手がかりなんだから何が何でも捕まえるわよ!」

「えぇ!?まだ続くの!?」

「当たり前でしょ!このチャンス逃す気!?」

「捕まえたって話してくれそうにないじゃん、戦って無理ならもうデートしてデレさせる位しか無いよ…」

「もうそれで良いから追うわよ!」

『良いの!?』

 

アイエフの檄に背中を押され…というより背中を叩かれて追いかけ始める私達。飛んでる相手を陸路でどう捕まえるの…?

 

 

 

 

「捕まえたー!」

「のわああああぁぁ!?」

 

あいちゃんに急かされソニックばりのダッシュの結果、わたしネプテューヌは遂に捕まえたよ!えーっと、こんな時は…

 

「とったどー!!」

「な、何!?ちょ、ちょっと!いきなり何なの!?」

「洗い浚いぜーんぶ話してくれるまでぜーったい離さないよー…ってあれ?違う人だ」

 

捕まえたのは銀髪で変身した私やイリゼっぽい格好の子じゃなくて黒髪ツインテールの子だった。…あれぇ?

 

「えーっと、人を探してるんだけどこっちの方に飛んで来なかった?黒くてツヤツヤして空を飛ぶから目立つと思うんだけどさ」

「うぅ、何か嫌な例えね…それなら凄いスピードであっちの方向に飛んで行ったわよ?もう落ち着くのは無理なんじゃないかしら?」

「そっかぁ、せっかくの手がかりだったんだけどなー…逃したってなるとあいちゃんに怒られるんだろうなぁ…」

 

なんてわたしがぼやいているとツインテの子がわたしをじーっと見てた。…あ、そっか。この子には意味分かんない内容だもんね。

 

「なんかわたしの話ばっかりでごめんね。ところで貴女はどうしてこんな所に一人で…ってよく見たら傷だらけでボロボロだよ!?」

「…へっ?」

「うわぁ…ひっどい傷…きっとモンスターにやられたんだね。けど安心して!この辺りにいた悪いモンスターはこのわたしが倒したから!」

「…貴女達にやられたんだけどね」

 

これはどう考えてもモンスターのせいだよね。シアンとシアンの仲間の人達の為にモンスター退治をしたら別の女の子まで助けちゃうなんて流石ねぷ子さん!

 

「色々擦り剥いてたりするけど、骨とか折れてない?」

「擦り傷位だし、このくらい何て事ないわ」

「怪我や病気の素人判断は危険なんだよ?そうだ!お友達にその辺のプロフェッショナルがいるから観て貰おうよ!うん、絶対その方が良いって!」

「え?ちょっ…いや、その…本当にこの位大した事無いから…」

「だいじょーぶ!ホワイトな事に定評のあるパーティーだから、お金なんて取らないよ?」

「いやそういう事じゃなくて!」

 

やけに強情だなぁ…でもほっとく訳にもいかないよね。傷にばい菌とか入ったら大変だもん。

 

「こんぱー!こんぱどこー!こんぱのねぷねぷが呼んでるよー!こんぱカームヒアー!」

「そんな叫んだだけで都合良く来る訳が無いでしょ…」

「呼んだですか、ねぷねぷ?」

「嘘ぉ!?」

 

丁度良いタイミングで皆が追いついてくれた。ふっふーん、これも主人公スキルの一つだよね!

…あ、何か今回はここら辺で終わりみたいだよ?いやー今回も良く働いたよね、わたし。そろそろお休みくれないかなー?…って訳でしゅーりょー!

 

 

「…え、ネプテューヌまさかその子をデートしてデレさせるの…?」

「させないよ!?」

「何でそうなるのよ!?」

 

…うん、まさかイリゼが最後にボケを入れてくるとは思わなかったよ……。




今回のパロディ解説

・デートしてデレさせる
原作の扉を始めとして様々な所で登場するデート・ア・ライブの代名詞の一つ。これが後にネプ×ノワのきっかけとなるかどうかは皆さんのご想像にお任せしようと思います。

・ソニック
ソニックシリーズの主人公である青いハリネズミの擬人化キャラ。当然ネプテューヌの主観での『ソニックばり』であり、決してマッハで走っていた訳ではありません。

・とったどー
いきなり!黄金伝説で濱口さんが獲物を捕まえた時に叫ぶあの台詞。…というのは勿論事実ですが、濱口さんオリジナルではなく元ネタはアントニオ猪木さんらしいです。

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