超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative 作:シモツキ
「皆ーー!盛り上がってるかなーーっ?」
プラネテューヌの教会…否、元は教会があった土地に建設されつつある、とある建物の一角に響くネプテューヌの声。大広間にて発せられたその声は、建物の工事が一時中止されている事もあって部屋中に届いていた。
…いや、ネプテューヌの声が響いていたのはほんの一瞬だった。何故なら……
『いぃぃぃぃえぇぇぇぇぇぇぇぇいっっ!!』
その部屋に居た面子全員が、これでもかという程の声量で言葉を返したからだった。幼女からご老体まで、まさに老若男女が集まった、端から見たら一体何の集まりなのかいまいちよく分からない集団が、アイドルのコンサートに来たファンばりに声を張り上げていた。
まさか自分の叫びを超えてくるとは思っていなかったのか、驚いた様な顔をするネプテューヌ。その後彼女は満足そうな表情を浮かべ、ゆっくりとメンバーを眺めた後……
「…別次元組とかはともかく、皆それぞれ国の重要な人物だったり人を取りまとめる立場なんだから、もう少し自分の身を弁えた反応するべきなんじゃないかなぁ」
『感じ悪っ!っていうか(ネプテューヌ・ねぷねぷ・ねぷ子・お姉ちゃん)(さん・ちゃん・様)には言われたくない(わ・ですわ・ですよ)!』
最悪の事を言っていた。これにはもう大ブーイングである。しかしネプテューヌも流石にこれは本気ではなかったらしく、「あははっ、冗談じょーだん。ノリの良い皆は大好きだよ!」とすぐに訂正をした。
「じゃ、改めて…今日は一連の騒動解決&一作目ゴールの打ち上げパーティー!ベールの推薦通り音頭はわたしが取らせてもらうよーっ!」
『いぇぇぇぇいっ!でも後半メタいっ!』
「それにしてもよくこんなに人集まれたよね!名有りはほぼ全員参加じゃない?」
『何せ最後のお祭り回ですからねっ!』
「皆キャラ崩壊レベルのハイテンションとメタ発言だね!でも良いよ、せっかくのパーティー、楽しまなくちゃ意味無いもん!」
某サンシャインさんばりに騒ぐ私達。我ながら頭おかしいんじゃないかとも思うけど…ネプテューヌの言う通り、せっかくのパーティーで仏頂面してるのなんてつまんないし、ぎゅうぎゅう詰めのスケジュールでこそ無かったとはいえ、それぞれ命懸けだったり多くの人の生活を左右する選択を強いられていたりと心的疲労が積み重なった末の今なんだから、多少後で恥ずかしくなり兼ねない位のテンションになるのも仕方のない話だった。…それに、私個人としてもこういう馬鹿騒ぎ、嫌いじゃないからね。
「さぁって、こういう場合今までを振り返ったりもするんだろうけど…会場のボルテージもマックスだしそういうのは飛ばしちゃうよ!これぞねぷねぷスタイル!」
音頭、というかただの盛り上げ役状態のネプテューヌ。そして彼女はパーティー開幕の宣言を口にする。
「よーし、それじゃ『皆お疲れ様!最後はぱーっと打ち上げしようよパーティー』開始だよーっ!勿論お金は全部ノワール持ち!皆じゃんじゃん食べて飲んでねーっ!」
「そんなの言われなくて…はぁぁっ!?そんなの聞いてないんですけど!?ちょっ、ふざけんじゃ…」
『いぃえぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!!』
「いえーい、じゃないわよ!っていうかケイとシアン!なに貴女達まで喜んでんのよ!?」
『……ノリで?』
「ノリで?…じゃ、なぁぁぁぁぁぁいっ!」
響き渡るノワールの絶叫。かくして、『皆お疲れ様〜〜パーティー』は幕を上げたのだった。……勿論、ノワール以外もお金を出して。
「しかし……開催までに結構時間かかっちゃったね」
カン、とグラスを当て合って乾杯をする姉女神組&コンパとアイエフ。私達同様何人かで集まる者、誰が用意したのか謎のカラオケセットで歌い出す者、用意して貰った料理の山(何人かは自分の好きな料理を作って山に加えてたけどね)にアタックする者…という様に、皆それぞれ好きな様にパーティーを楽しんでいた。…因みに私達がグラスに淹れたのはアルコールじゃないよ?年齢の概念が無いっぽい私達女神は飲んでも大丈夫そうだけど…見た目的にはアウトだし。
「そうですわね。わたくしとしては、終わった次の日かその次の日辺りにやる気でしたけど…」
「怪我の治療やら事後処理でパーティーどころじゃなかったものね。怪我の方は、完治したのもつい数日前だったし…」
ベールとブランが苦笑をしながら私に同意をする。私達がマジェコンヌに勝利し、負のシェアの柱が消えてから既に数週間が経っていた。ブランはさらっと言ったけどどっちも大変で、特に守護女神の四人は包帯や湿布を貼った状態で書類と格闘したり国内を駆け回っていたりした。その間、私は『最高戦力として最前線で戦いながらも最高指導者としての職務もこなさなきゃならないなんて大変だなぁ…』と見ているばかり。…だって私の国も国民もいないもん、戦闘はともかく職務の方まで深く関わったらむしろ問題だもん。
「でもさ、これでやっとゆっくり出来るじゃん?これだけ頑張ったんだし、たっぷり休んでもバチは当たらないよね?」
「…ネプテューヌ、一応訊くけど…それ本気で言ってる?」
「うん、そうだけど…何かあったっけ?」
「何かって…
「……そうだった…」
げんなりとするネプテューヌ。事後処理において、最も割合を占めていたのがこれらの準備だった。実際これは今後の各国においてかなり大きな影響を持つ訳だから手を抜けないのも当然の話。
…だけど、記憶喪失のままである事が大きいのか…それとも別の理由があるのか、とにかくネプテューヌは他の三人に比べると乗り気じゃなかった。
「うぅ……イリゼ、わたしの代わりにお仕事してよ、お願いっ!」
「いやいやいや…私はオデッセフィアの女神だから。というか式典は女神化状態で出るものでしょ?」
「あ…ごめん、イリゼ…」
「ううん、いいよ別に。自分なりに納得はしてるからさ」
極力自然な笑みを浮かべて、自分の発言を気にするネプテューヌをフォローする私。あれから何度も試してみたけど…やっぱり、私は女神化出来なくなっていた。
「…納得出来るってだけでも、結構凄いわね」
「私もそう思うわ。私にとってこの力は命の次の次位に大事だもの」
「女神の力の恩恵は以外と多いですものね。特に不老は大きいですわ」
「え、何これもしや私の評価上がってる?後、多分私まだ不老だよ?」
「…そうなの?」
「うん。イストワールさんの説明ともう一人の私の言葉から推測するに、今の私は女神化に回せる程のシェアが手に入らなくなっちゃった状態っぽいからね。…それよりさ、今はパーティーを楽しまない?」
女神の力の件は納得しているとはいえ、あまり掘り起こされたくないのもまた事実。それに久しぶりに皆でわいわい出来る機会なのに小難しい話をするのも嫌だなぁ…と思った私は話を逸らす。すると皆も特に変な顔をする事もなく同意を示してくれる。…やっぱ皆も、私と同じ気持ちなのかな。
「…そうだね。それじゃ何する何する?ゲートボール?」
「何がどうしてゲートボールが出てくるのよ…」
「えー…あ、じゃあTCG?前やってくれるって言ったよね?」
「まさかこのタイミングで天界での会話を回収してくるとは…今度はほんとに何も持ってませんわよ?」
「むむ…だったらプリン早食い競争は?コンパ、プリンあるよね?」
「はいです。そう言うと思ってたくさん作ってきたです」
「流石コンパ、用意が良い…ってほんとに持ってきたの!?……ほんとに流石コンパだよ…」
ネプテューヌが会話を回して私達がそれに突っ込んだり、便乗したり、主導権を奪ったり…そんないつもの通りの会話を私達は繰り広げる。時々コンパのプリンを食べたり、他の集団にちょっかいをかけたりと、私達は大賑わいだった。そして私は、私の帰ってきたい場所が、また笑い合いたいと思った人達との日々が変わりなく、こんなに楽しく流れていく事が本当に嬉しかった。
「この度はご苦労様です、皆さんm(_ _)m」
自分専用の、ちっちゃな食器に精進料理もびっくりな程慎ましい量の食べ物を載せて移動するわたし。わたしが向かった先は、教祖の三人が集まっている場だった。
「あぁ、お互いお疲れ様、イストワール」
「お疲れというか、この後も国家間での仕事があるけどね…」
「仕方ないですよ、チカさん。それに平和になった故の仕事と考えれば、ありがたいものです」
別にわたし達教祖は特別仲が良い訳ではない。悪い訳でもないけれど、女神に比べるとフットワークが重いが為にあまり会う機会がなく、そういう意味では良いも悪いもなかった。そんなわたし達が自然と集まったのは…少なからず、わたし達も浮かれていたからかもしれませんね。
「さて、せっかく教祖が集まったのだから、情報交換でも…と、来るまでは思っていたけど…どういう訳か、この場に来たらその気が失せてしまったよ」
「あ、わたしもです。しかし珍しいですね、ケイさんはビジネスライクさに定評があるのに…」
「会場の雰囲気に当てられたのかもしれませんね。せっかくの機会ですし、たまには息抜きも良いと思いますよ( ̄∀ ̄)」
「しかし…こっちもこっちで中々突飛な面子よね」
と、何となく皆思っていたものの口に出せなかった事を、教祖歴が一番短かったからかチカさんが述べる。確かに、妖精っぽい人工生命体のわたし、見た目どころか言動まで男性に寄ってる(男性は男性でも美少年風)ケイさん、ベールさんの前とそれ以外でキャラの変わる、性格に反して病弱なチカさん、そしてわたし達や女神の皆さんと普段接しているにも関わらず、悪影響を全く受けていそうにないミナさんと、わたし達教祖も中々に個性的だった。ゲイムギョウ界は、変な集団ばっかりである。
「…ブラン様達の様に、わたし達で旅をしたら中々ネタになるかもしれませんね」
「いや、まぁ…ネタにはなるかもしれないけど…」
「ネプテューヌさん達とは違う意味で一筋縄ではいかない旅になる気がします…(^_^;)」
「僕達は、あくまで同じ立場の人間として、適度な関係でいるのが一番良い気がするね…」
「で、ですよねー…あはは…」
乾いた笑い声を口にするミナさん。前述の通り、わたし達は仲が悪い訳では無いんですけど…なんていうんでしょうね?同僚以上友達未満というか何というか…。
「…と、とにかく乾杯しましょ、なんか変な空気になっちゃったし…」
「そ、そうですね。…あ、あまり強くやらないで下さいね?(´・ω・`)」
「あぁ…普通の感覚でやったらイストワールさんは跳ね飛ばされ兼ねませんしね」
「ある意味君が一番突飛だよ…じゃあ、乾杯」
そうして乾杯を交わすわたし達教祖組。何といったら良いのかよく分からない関係性だし、快活に話が進む事も無いだろうとは思うけれど…この関係も、そんなに悪くはないと思うわたしでした。
「消えない鎖〜その手で壊して〜♪」
字幕と伴奏に合わせて歌い出すマベちゃんことマーベラスAQL。ドュクプェやらステーキやら太巻きやらを手にそれを聞く(たまに合いの手を打つ)別次元組のメンバー。彼女達は現在、カラオケセット周辺に陣取っていた。
「しかし、ステーキまで出るとは思ってなかったにゅ。来て正解だったにゅ」
「案外誰かの持ち込みなのかもしれないよ?あたしの食べてる太巻きもそうっぽいし」
「ステーキを持ち込んでも冷めちゃうと思うよ…?」
どちらかと言うと会話そのものより、食事やカラオケを楽しむ彼女達。…が、それもその筈、女神や教祖達と違い基本的にフリーだった彼女等はパーティー開催前に積もる話はあらかた終えてしまったからだった。
「でも、カラオケなんて久しぶりだなぁ…わたし何歌おう…」
「私は刻司ル十二ノ盟約でも歌おうか…」
食事ばかりに没頭するのも味気ない…という事でカラオケセット周辺を陣取っている彼女達。彼女達が歌う歌はどうも何か含みのある様な気がしているが…誰もそれは突っ込まない。色々な意味で面倒な事にならないよう、パロディは深く掘り下げ過ぎない。それがゲイムギョウ界人の共通認識だった。
と、そこで歌い終わったマーベラスAQLがマイクを下ろす。
「ふぅ、楽しかった。……あ、そう言えば皆はこれからどうするの?」
「歌うつもりだが?」
「そ、そんな数十秒後のことじゃなくて…やっぱり、どっかの次元に行くの?」
彼女のその問いは、皆が気になっていた事だった。ネプテューヌ達と違い、故郷の次元も目的も違う彼女等は、ずっと同じ次元で過ごすという事が今まで無かった。目的があって自ら去った事は勿論、無関係だった騒動に巻き込まれて次元移動する事もあった彼女達は、そもそもこうして先の事を語り合う事自体殆ど無かった。
「うーん…わたしは、もう少しここにいるかなぁ。今まで行ったゲイムギョウ界とこことは、少し違うみたいだし」
「わたしもだよ。この次元特有のゲームがあったらやりたいから」
「あたしは…冒険に出る為の資金集め直さなきゃだから、あたしもそうなるね。…まぁ、どうせ次も船が難破して無一文になっちゃうと思うけど…」
「そっか、皆そうなんだね。…これって、偶然かな?」
「…いや、それはどうなのだろうな」
意味深な発言をするMAGES.。アイエフ同様普段から時々そんな感じの発言をする彼女だったけど…今回は皆、その言葉に賛同するかの様な表情をしていた。
なまじ様々な次元、様々な騒動を経験してきた彼女達は、何となく思っていた。きっとまた、この次元で何かが起こると。
「…何かあった時、ねぷ子達だけじゃ不安だにゅ」
「ふふっ、ブロッコリーちゃんは毒舌の割に人の世話するよね」
「世話じゃないにゅ。ほんとに女神とその仲間達だけじゃ洒落にならない展開になり兼ねないだけだにゅ」
「…確かにな。他の女神も時折危なっかしい所を見せる」
「まぁ、それを言ったらあたし達もだけどね」
「だよね。結構ネプテューヌさん達に助けられてるし」
「うんうん。だから次何かあった時は、その時も協力してあげたいよね」
各々言う事は違ったが、結局は鉄拳の言う通りだった。更に言えば、イリゼと同じ様に彼女達もネプテューヌ達との旅や協力が好きだからこそ、ここに残るのだった。
彼女達の予想は、正しい。だが…いや、だからこそ、彼女達は平和である今を大切に、その平和な日々を謳歌するのだった。
……因みに、この十数分後ネプテューヌ達が合流し、急遽カラオケバトルとなったのだが…それはまた別の話。
会場の一角、BARの様なセットが置かれた場所で一人飲みをする男がいる。彼の名はサンジュ。彼は、自分はこの場に何故呼ばれたのだろうかと疑問に思っていた。
「…これを飲んだら、帰るとしようか…」
カラン、と氷の入ったグラスを傾け一口煽るサンジュ。そんな彼に声をかけたのは、意外な人物だった。
「…隣、良いか?」
「……っ!?お前は…」
目を見開くサンジュ。彼の横に来たのはシアンの父親だった。元々は友人であり、とある事故をきっかけに疎遠となってしまったサンジュとシアンの父親。彼等の再開は、実に十数年振りであった。
「…どうして、ここに…」
「シアンに呼ばれたんだよ。…ありがとな、うちの娘に協力してくれて」
「……っ…礼を言われる筋合いはない…昔、お前を助けられなかった私には…」
ゆっくりと首を横に降るサンジュ。しかしシアンの父親はそれを見て笑い出す。
「…何がおかしいんだ」
「何がも何も…あれはお前のせいじゃないっての。俺の想定不足、俺のミスだ。お前は昔からそういう所あるよな」
「…五月蝿い、第一人が気にしてる事を簡単に笑うな」
「だから気にする必要は無いんだよ。当事者の俺がそういうんだから、間違ってる訳あるか」
「お前……」
「…だから飲もうぜ、久しぶりによ」
そう言ってグラスを持ち上げるシアンの父親。サンジュはそれを見て、躊躇し、俯き…ゆっくりと息を吐いた後、自身のグラスを持ち上げた。
そして打ち合わされる二つのグラス。二人が今より少し若かった、あの時の様に。
「……良かったな、親父。良かったな、サンジュ…」
それを見つめるのはシアン。幼きいつかに見た様な、尊敬する二人の技術者のその様子を、やっとまた見る事が出来たと、彼女は心から安堵していた。
「はぁ、ここまで理解のない人が世の中にいるとはね…」
「あぁ、同じ男としてそれこそ理解出来ない」
「それはこちらの台詞ですね。私も貴方達を理解出来ませんよ」
何やら言い争う三人の男。それを眺める一人の少女。男達の目は真剣だった。信じるものを口にする、漢の目であった。
対して少女の目は半顔だった。少女は呆れた声で、もう何度目か分からないその言葉を口にする。
「…何を思って皆さんは巨乳と貧乳のどっちが良いかを真昼間から激論してるんですか……」
アホらしいと思いながらもその場を離れないフィナンシェ。別に激論の行く末が気になる訳ではない。単にほっとくと暴走してブランやベールに迷惑がかかり兼ねないと思っているからだった。
「激論もするさ!巨乳とは人類至高にして至宝の存在!男なら誰しもこれを夢見るというもの!」
「はっ、何のご冗談を。貧乳、いや慎ましき胸とは即ち、女性の奥ゆかしさや思慮深さを物語る存在。貧乳はステータスなのですよ」
「それは女性を見て胸を見ず、だよ。全体ばかりを気にしては、個々の美しさが分からなくなってしまわないかな?」
「何ですかその木を見て森を見ずみたいな言葉は…一点ばかりを気にして全体を蔑ろにする方が視野が狭いと思いますがね」
これがもうずっと続いているのである。この様な場でそんな話をしている貴方達が一番視野が狭いんじゃないでしょうか、とフィナンシェは突っ込みたい気持ちに駆られたが、そんな事をしても意味が無いのは明白。むしろ論争を加速させればパーティー終了まで一応無害なんじゃないかと思い始めたフィナンシェは、最後に一言言って去ろうとする。
「…いや、もう妥協点探せば良いじゃないですか。それじゃわたしはこれで……」
「……待てフィナンシェ。今、妥協点と言ったか?」
「え?…まぁ、言いましたけど…」
「妥協点、か…その発想は無かった…」
「…何を言っているんだい兄さん。僕達と彼の間に妥協点なんて…いや、まさか…」
「妥協も何も、相反する意見が折衷出来る訳…が……」
何かに気付いた様な様子を見せる兄弟とガナッシュ。いまいちよく分からずきょとんとするフィナンシェを他所に、彼等は三人同時に呟く。
『…女神化前は貧乳、女神化後は巨乳…彼女は盲点だった……』
「…………はぁぁぁぁっ!?」
信じられないものを見たかの様な反応をするフィナンシェ。男三人は、満足のいく結果を導きだせたと言わんばかりに握手を交わす。
そして次の瞬間、真に迷惑をかけられ兼ねないのはネプテューヌだと気付いたフィナンシェは彼女の元へと走るのであった。
……最も、ガナッシュは貧乳であれば誰でも良いという訳ではなく、兄弟も普段は女神化していない事の多いネプテューヌに見向きをする訳がなかった為、ネプテューヌが迷惑を被る事はほぼ無かったりする。
わたしは今、後悔している。発想そのものは悪くなかったと思うけど、あまりにも無策過ぎた。そのせいで……
『…………』
四人もいるのに誰一人喋らないという、大変気の重い空間が出来上がってしまった。
十数分過去へと戻れるのなら、『…せっかくだし、わたし達妹組で何か話そうよ』…と、言ったあの時のわたしに注意をしてあげたい。
そもそもの話、わたし達は面識自体がほぼ無かった。一度顔を合わせた程度の相手と仲良く喋るのは流石に無理がある。わたし達のお姉ちゃんみたいに人付き合いが豊富ならともかく、今のわたし達にそこまでの社交性はない。うぅ、今更お姉ちゃんを呼ぶ事も出来ないし…どうしよう…。
『…………』
やっぱり誰も話さないわたし達。…でも、このままじゃほんとにいつまでも話せない気がするし…ここは提案をしたわたしがきっかけとなる言葉を言うべきだよね。こういう時は、趣味の話がベター、かな。よ、よーし……!
「さ、最近飾りたくなる様な基盤見つけたんだ!」
「た、対物ライフルの破壊力って魅力的よね!」
「え、えほん…好き、なの……」
「く、クッキーっておいしいわよね!」
『……え?』
全員で目をぱちくりさせるわたし達。一体どんな偶然なのか、まさかの四人同時発言だった。そしてその後始まる、話題の譲り合い。しかもこの譲り合いも譲り合いで結構被ってしまい、まともな話へと入ったのはそれから数分後だった(わたしの話題とユニちゃんの話題はそれぞれ自分にしか分からないせいで全く使えませんでした。…残念)。
やっとの事で話を始めるわたし達。でも、すぐ話題が尽きてしまったり、それぞれ知識不足なせいか会話が盛り上がらず、結局お姉ちゃん達が合流してくれるまで楽しい会話というものはいまいち出来なかった。
わたし達妹組が仲良くなるまでは……もう暫く、かかるのかもしれない。
「随分と、時間がかかってしまいましたな」
不意に後ろから声をかけられるマジェコンヌ。サンジュ同様何故呼ばれたのか分からなかった彼女へと声をかけたのは、イヴォワールだった。
「お前は、確かリーンボックスの…時間とは?」
「勿論、
「…申し訳無い、私が弱かったばかりに……」
「責めるつもりはありませんぞ。貴女の勇姿は、よく知っておりますからな」
「よく、知っている…?」
「見た目通り私は長生きですからな。…貴女が、先代と共に犯罪神の封印に当たったという話は、若造の頃の私にとっては心踊る冒険談と同義でしたぞ」
彼の言葉に、マジェコンヌは目を見開く。もしかしたら自分が汚染させる前から生きている人がいるかもしれないとは思っていたが、まさかこんな近くにいるとは夢にも思っていなかった。
そんなマジェコンヌの驚きを他所に、イヴォワールは楽しげに話す女神達に目をやる。
「…マジェコンヌさん。グリーンハート様達が…皆様がいつまでも平和でいられると思いますかな?」
「……それはないだろう。いつかはまた戦いとなる。それも恐らく、一度ではないだろう…」
「やはり、ですか…」
マジェコンヌも、イヴォワールも…そして世界の記録者であるイストワールも分かっていた。女神の人生は戦いの人生。一時の平和はあったとしても、恒久の平和を得る事は決してなく、命尽きるその時まで戦いからは逃れられないという事を。今は幸せそうに笑い合う彼女達も、いつかはその手を人の血で染める事もあり得るという事を。
「……支えたいですな、女神様達を…」
「そう、だな。…私達の出来る事を、やれる限り…」
だから彼女等は祈る。少しでもこの平和が続く事を。少しでも、皆が笑っていられる事を。
記念写真を誰かが撮ろうと言った。中々のメンバーが揃ってるという事もあり、それにはすぐ全員が賛成し…案の定ぎゃーぎゃー五月蝿い写真撮影となった。
「よっし、本作ラストシーン、終了のポーズ、びしっ!」
「最後の最後までパロディ!?」
「ちょっ、ちょっと近い…近いですって!」
「これ写る?撮ったら見切れてたとかないよね?」
写真一つでも時間がかかってしまう、ふざけてしまう彼女達。でも、それが彼女達の日常だった。
信次元・ゲイムギョウ界。思いが力に、感情が形に、夢が未来に姿を変える世界。争いも、戦いも、謀略もあるけれど…それでも、そこでは今日も様々な人間が、色々な日々を…楽しく暮らしている。
今回のパロディ解説
・「消えない鎖〜その手で壊して〜♪」
閃乱カグラのアニメ版OP、Break your worldの歌い出しのパロディ。何故マベちゃんがこの歌を歌っていたのかは…まぁ、見た目を知ってる方ならすぐ分かりますね。
・「刻司ル十二ノ盟約」
シュタインズゲートのアニメ版EDの事。こちらも原作プレイヤーや、本作におけるこれまでのMAGES.の言動を覚えている人であれば歌おうとする理由が分かると思います。
・貧乳はステータス
SHUFFLE!やらき☆すたに登場する名(迷)台詞のパロディ。…まぁ実際ステータスですよね。私は他の魅力に合う胸を持っているのが一番良いと思いますがねっ!
・「〜〜本作ラストシーン〜〜びしっ!」
生徒会の一存 碧陽学園生徒会議事録及びそのアニメ版のヒロインの一人、桜野くりむの台詞のパロディ。本作のパロディは生徒会で始まり生徒会で終わりました、満足です。