GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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ゴッドイーター3買っても正月明けるまで
やれないので小説投稿して満足します。

今回微グロ描写ありです。最初と最後に※印を着けておきます。


mission88 もういいや

 -???-

 

 ユウキが光に飲まれ、エイジス…世界から消え去った。そして目を覚ますとそこには真っ白で何も無い、ただっ広い空間が広がっていた。

 

(何だ…ここは?)

 

 ユウキが状況を飲み込めずに混乱していると、少しずつ辺りに景色が現れ始めた。洞窟か地下なのだろうか、岩肌に囲まれた大きな空洞、なのに消して暗いなどと言うことはなく、辺りはちゃんと見えている。そして空洞内には石造りの建物で出来上がった街が現れた。 

 

(…次から次へと…何が起こっている?)

 

 『まるでレンとリンドウさんの記憶を探った時の様だ』と思いつつ、次々と変わっていく状況にどうにか着いていく。以前にも似た経験をしたためか、思いの外冷静に状況を分析できた。

 

「何なんだ…ここは…?」

 

 ユウキは街を歩くが何処に行っても人は見かけないどころか生き物の気配を感じない。ポツリと呟いたユウキがここからどうしようかと考えていると…

 

「っ?!」

 

 咄嗟に右手で神機を掴んで右回転しつつ抜刀する。

 

  『ギィンッ!!』

 

 突然後ろから迫ってきた右爪を間一髪で防御し、甲高い金属音が鳴ったと思ったら倒したと思い込んでいたクロウが襲い掛かってきた。

 

「貴様っ!!生きてっ…!!」

 

 クロウもこの空間に居る事に、ユウキは驚きを隠せないでいた。動揺し、追撃のタイミングを逃した間にクロウが再びユウキに語りかけてきた。

 

「レイヴン…」

 

「だから…!!知らないつってんだろっ!!」

 

 クロウは相変わらずユウキの事をレイヴンと呼ぶ。いい加減鬱陶しく思ったユウキが怒りを露にして右の神機を振り抜いた。

 クロウの右爪を弾いたユウキが即座に左の神機に手を伸ばす。しかしクロウの左爪による反撃がユウキの追撃よりも先に飛んできた。左で手刀の構えでユウキに突きを繰り出す。

 

「クッ!!」

 

 身体を右に倒して躱すと、左手の神機を左上がりに抜刀する。しかし今度はクロウが右の爪で神機を受け止める。すると一瞬の硬直の間にクロウは左手を回してユウキの方に向けるとオラクル弾を撃ってきた。

 

「クッ!!」

 

 ユウキは後ろに跳んでギリギリのところでオラクル弾を躱す。

 

「ガッ?!」

 

 しかし次の瞬間には顔面に強烈な痛みが走り、さらに後ろに吹っ飛ばされた。痛みを堪え、後ろに跳びつつクロウを見ると、どうやらユウキに膝蹴りを浴びせたようだ。その結果、鼻頭に強い衝撃を受けた事で鼻血が出てきたがそんな事を気にする余裕は無い。

 間髪入れずにクロウが右から左の順にオラクル弾を発射する。対してユウキは左、右の順で装甲を展開してオラクル弾を受け止めるが、防御した瞬間爆発し、ユウキは両腕を外側に投げ出されて無防備になってしまった。

 そしてクロウが再び両手からオラクル弾を発射する。ユウキは咄嗟に右に跳んで避けるが、避けたと思ったら既にクロウがユウキの逃げた先まで移動していた。

 

  『ガキンッ!!』

 

「ッ?!」

 

 クロウが左爪を下から上に振り上げて攻撃する。ユウキは寸でのところで右の装甲を展開してクロウとの間に滑り込ませる。そして後ろに跳びつつクロウの攻撃による衝撃を緩和しつつ反撃に出ようとする。

 しかし、またしてもユウキが動く早くクロウが飛び出し、右爪で切り裂いてきた。

 

(こいつっ!!)

 

 ユウキは着地と同時に地を蹴り、上下反転しながらクロウを飛び越える。そのまま両手の神機を振り下ろしてクロウに斬りかかる。だがクロウが左に急回転して振り下ろされた神機を横から叩き付け、ユウキの体勢を崩させ、後ろに吹っ飛ばす。続いてユウキにオラクル弾を撃ち追撃するが、ユウキは何とか装甲を展開して防御する。

 

(さっきとは比べ物にならない?!)

 

 爆発したオラクル弾の衝撃で後ろに飛ばされたユウキが着地しながらエイジスで戦った時の事を思い出す。少なくとも直前に戦った時とは反応速度も運動能力も段違いに良くなっており、もはや別のアラガミと言ってもいい位だった。

 

「クソが!!」

 

 前回とはあまりに違う戦闘にユウキは苛立ち悪態をついた。さっきから相手の攻撃は何とか躱しているものの、それもいつ限界が来るのか分からない上、こちらの攻撃も一切当たる気配が無い。

 そんな事を考えつつ、ユウキは両手の神機を構えて前に出る。そしてユウキは両手の神機を外から内に横凪ぎに振り、クロウは両爪を上から下へと振り下ろす。両者の一瞬の硬直のあと、ユウキとクロウがほぼ同時に相手に蹴り飛ばした。

 互いに蹴り飛ばされて大きく間が空く。そしてユウキとクロウは同時に着地し、クロウが先に翼を広げて低高度で滑空しながら前へと出る。

 

(銃形態に…いや、奴が速すぎる。当たるとは思えない…なら…!!)

 

 クロウが向かって来るなか、ユウキは距離を詰められる前に銃形態で撃破しようかと考えたが、ここに来てからのクロウの運動能力が高く、反撃速度も速い事から、撃ったところで当たらないと考え、両手の神機の柄を繋ぎ、1本の武器にしてクロウに向かって行く。

 

「押し通るっ!!」

 

 連結して両刃剣となった神機を振り下ろす。

 

  『ギィンッ!!』

 

 クロウが両爪で両刃剣を受け止める。その瞬間、ユウキは神機の連結を解除して、左の神機を逆手に持って下から振り上げる。しかしクロウは右足で神機を踏みつけて抑える。

 そして踏みつけた神機を土台にして一度上に上がって高さを調整する。

 

  『ベキッ!!』

 

 一瞬のうちにユウキの右胸に蹴りを入れる。それと同時に骨が折れる音が聞こえてきた。痛みに顔を歪め、蹴り飛ばされつつもクロウの挙動を確認する。すると既に追撃に来ており、右の爪をユウキの腹に向かって突き出してきていた。

 

「クッ!!」

 

 蹴り飛ばされて宙に浮いていたが、ユウキはどうにか左足で地を蹴り、右に身体を傾けながらクロウの爪を避ける。

 その体勢のまま右に神機で下から、左の神機で上から挟み込む様に振る。

 

  『バンッ!!』

 

 しかし、ユウキの攻撃よりも先に爆発音が響き、左の横腹に強い痛みと衝撃を受けて吹き飛ばされる。

 

「プバッ!!」

 

 盛大に血を吐き出した。どうにかクロウを見ると突き出した右の掌がユウキの方を向いていて、煙が上がっていた。

 ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてユウキは自身の横腹に一瞬目を向けると肉が抉れて中身が見え、腸が飛び出していた。

 

 

 

 

 クロウの体勢と自身が状況から察するにゼロ距離からオラクル弾を発射したのだろう。しかしユウキも負けじと右の神機で捕食口『メビウス』を展開する。

 

「う…らぁッ!!」

 

 痛む身体に鞭打って右の神機を振り上げ捕食する。バーストした事で飛び散った横腹が再生し始め、多少痛みも引いてきた。

 

「バーストすれば…」

 

 オラクル弾の爆発で吹き飛ばされたのを利用して、さらに左へと跳び距離を取る。その状態で両腕を左上に上げると、両手の神機の刀身が紅いオーラを纏った。

 

「こっちのものだッ!!」

 

 両腕を左上から右下に振り下ろして紅い斬撃を飛ばす。斬撃が2つ飛んできた事でいつもよりも密度の高い攻撃が飛んでいく。

 

  『ズガァァァン!!』

 

 轟音と共にクロウを飲み込んだ斬撃が辺りの建物ごと破壊し、辺りが土煙に覆われて視界が遮られる。『勝った』そう思って着地と同時に気が緩む。

 

「ッ?!」

 

 しかし気を緩めた瞬間に、クロウが土煙の中から飛び出してきた。ユウキは何とか右に跳び、クロウの突進を躱した。

 

  『グジュッ!!』

 

「グッ?!」

 

 避けたと思ったが、次の瞬間には先程負傷した左の横腹を喰われていた。何とか痛みに耐え、ユウキは体勢を立て直す。その間にクロウはそのまま滑空して一旦ユウキから離れる。そして一度上昇してクロウは振り返り、ユウキと向き合う体勢になる。

 

「グルァァアッ!!」

 

 クロウが大きく両腕を広げると青黒いオーラを纏い始める。そしてクロウは空中からユウキに向かって急接近してきた。そのまま一瞬の隙に距離を詰め、間合いに入ると爪を立てた状態で右腕を振り上げる。

 

(速い!!けど…反応できる!!)

 

 これまでに無い速さで驚いたが反応できる。クロウの間合いに入ったところでユウキは左足で地を蹴り、ほんの少しだけ前に出る。クロウの懐に先に入り、相手の間合いを潰しつつ自身の間合いに入るためだ。

 

(いける!!)

 

 クロウが攻撃するよりも先にユウキが間合いに入った。斬れると確信し、右の神機を内から外に振る。

 

  『ヒュンッ!!』

 

(え?)

 

 しかし神機は敵を捉える事はなく空を切る。何が起こったのか分からず、次の動作に移れずに動きが止まる。

 

  『ズシャッ!!』

 

「グアッ?!」

 

 突然右腕に痛みが走り、血が吹き出る。そしてクロウが一瞬で目の前を横切る。いつの間にかクロウが右側に移動して攻撃したのだろうと判断したユウキは次は左から来ると考えて左を向く。

 

(来た!!)

 

 案の定左からクロウが向かってきた。ユウキは身体をクロウの方に向ける動作と共に左手の神機を内から外に振り、身体の捻りを加えて威力と勢いを着けて攻撃する。

 

  『ヒュンッ!!』

 

(っ?!また?!)

 

 しかし神機は再び空を切る。いつの間にかクロウはユウキの目の前から消えていた。

 

  『ブシュッ!!』

 

「ガッ?!」

 

 今度は背中の左側を切りつけられて血が吹き出る。

 

「く…そぉ!!!!」

 

 半ば自棄になって左に回転して、後ろに居るクロウを攻撃する。しかしクロウは後ろに大きく跳んでそれを躱す。また手応えはなく、神機はクロウを捉える事はなかった。

 完全に避けきるとクロウは三度目の攻撃を仕掛ける。また一瞬のうちにユウキとの距離を詰め、両腕を広げて攻撃体勢になる。

 

「これなら!!」

 

 今度は両手の神機を外から内に振り、ハサミの要領で左右から攻撃する。これならば左右に逃げる事は出来ない。そう考えていたが、突然クロウがほんの少し小さくなる。

 

「ブゴァッ?!」

 

 しかし今度はクロウの右爪がユウキの腹に突き刺さり、盛大に血を吐き出した。さっき小さくなったのは、少しだけ後ろに下がり、神機の間合いから逃げたからだった。ユウキがそれに気付いた時には、クロウがユウキを投げ飛ばしていた。

 

「グッ!!」

 

 腹の痛みに小さく呻いて顔を歪めながら、空中で体勢を整えて着地して踏ん張る。

 そしてユウキが反撃しようとクロウを見据えると、既にクロウは間合いに入っていた。

 

(え?)

 

 目の前のクロウが視界から消えたと思ったら既にユウキの右腕を深く切り裂いていた。

 

(ちょっ…?)

 

 全く反応出来ないまま今度は後ろから背中を切りつけられる。

 

(まっ!?)

 

 逃げようと左足を後ろに出したところで右足を切られる。

 

(何だよ…)

 

 そして最後は正面からアッパーカットの様な軌道で切り上げ、ユウキの胴体を切り裂いた。

 

(まったく…)

 

 切り上げられた衝撃でユウキは大きく宙を舞い、血を撒き散らしながら放物線を描いて地面に叩きつけられた。

 

(歯が…立たない…?)

 

 何が起こったのか理解出来ないままユウキは全身を切り刻まれて地べたに倒された。知覚出来たのは右腕と背中と腹への攻撃だったが、倒れたまま自分の身体を見てみると至るところに裂傷がついていた。

 

 ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして知覚出来たところのうち実際みえたのは右腕と腹だったが、腹は中身が見えるまで切り開かれ、内臓ごと切り刻まれていた。右足は文字通り皮一枚で繋がっている状態で、右腕は骨の辺りまで切り裂かれて辺りを血溜まりを作り、まさしくボロ雑巾の様にされて倒れていた。

 

 

 

 

 この状況をようやく理解し、何故こんな事になったのかが分かった。最初は反応こそ出来ていたが思考が追い付かず、結果的に相手の行動を読みきれず、動きに反射的に反応していただけだったのだ。しかし、今はその反応すら出来ないまま瀕死に追い込まれた。

 『勝てない』そう覚ったユウキに止めをさすべく、クロウが一歩ずつゆっくりとユウキに向かって歩いてくる。

 

(俺…結構頑張ったよな…?)

 

 クロウが向かってくるのは分かるが、もう身体を動かす事さえ出来ない。今までの事が鮮明に思い出される。

 

(シオと別れる事になっても…終末捕食を防いで…リンドウさんの神機を使って…レンと出会って…リンドウさんを助けて…ユーリの神機を使ったせいでアラガミ化して…)

 

 アーク計画、リンドウの救出、そして自分がまだ弱いと思い知ったユーリの死、そこから生き残る為に再び禁忌を犯した事、それでも自らの迷いのせいで多くの人を死なせた事…たった1年の間にいろんな事がありすぎたが、どれもこれも昨日の事の様に思い出せる。

 

(ずっと死に物狂いで戦って…痛くて怖くて…頭がおかしくなりそうでも…アラガミ化を抑え続けて…アラガミに…負けて…)

 

 力が抜け、身体が沈んでいくような感覚になる。そして布団で寝るかのような心地よさはあるが、身体は寒いとさえ感じる。今にも意識が消えそうだが頭はスーッとスッキリしていく不思議な感覚を覚えたまま、ユウキは意識を手放し始めた。

 

(帰る場所も…もうない…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…もう…いいや…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  『ブジャッ!!』

 

 鮮血が宙に舞った。

 

To be continued


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