あの後、リンドウ、サクヤのどちらかが共に行動したため、直接的な被害はなかった。人形呼ばわりされたままであったり、どこからかソーマが『死神』であると聞いたり、訓練に出たり、実戦に出たりした1ヶ月だった。
その間にコウタは実戦に出て2週間が経ち、経験を積み始めたようだ。周りからも後隙のカバーやトラップの扱いが上手い等、サポート面で高く評価されているようだ。
対してユウキは実戦で経験を積み、時間の空いた時は訓練をしていたため、神機の扱いが大きく向上して、変形を含めた各機能の動作時間が短縮された。その為、新型らしい遊撃に適した動きが出来るようになった。但しケガによる出血も多くなり、1ヶ月経たずに偏食因子を投与している。
余談ではあるがゴッドイーターは腕輪を介して定期的に静脈注射することで偏食因子を投与してる。偏食因子が血中に直接投与されることで、細胞が栄養を摂取するように偏食因子を取り込み、人体細胞をオラクル細胞に適応させるのだ。つまり、失血、吸収によって血中の偏食因子が少なくなると腕輪がそれを感知して偏食因子を投与するのだ。
ユウキは昨日のうちに偏食因子を投与し、今日の任務へ向かう。ここ最近は小型アラガミであれば多数で来ても対応できるようになってきたので、今回から中型のコンゴウ討伐に参加することになった。とはいえ1人で出るには危険なのでサポートが得意なコウタと組んで出ることになっている。エントランスに行くと先にコウタが来ていた。
コウタ「あ!来た来た!お互い無事で何よりだね!命あってのこの商売だからねぇ。俺に何かあると、母さんも妹も路頭に迷っちゃうから、気を付けないとな…」
深刻な顔つきになる。自分にもしものことがあったら家族がどうなるか理解しているからだろう。それだけ家族が大切であり、それ故に心配になるのだろう。リンドウさんが言っていたように真っ直ぐな人だ。そしてユウキはそんなコウタが少し羨ましかった。
コウタ「あ!そうだ!サクヤさんって知ってる…よね?もしかして仲いい?あの人ってなんかいいよね、美人だし、感じもいいし、強いしさ。戦うお姉さんって感じでさ…たまんないよなぁ!?」
サクヤの話になると突如ニヤけてだらしない顔になる。先ほどのちょっとカッコいい雰囲気は何処へいったのやら。欲に忠実な奴だ。別の意味でも真っ直ぐな人だった。
コウタ「よおおし、なんかテンション上がってきたぁあ!今回の任務、どっちが多くアラガミを倒すか勝負だ!勝ってサクヤさんにいいところ見せてやるぜ!」
討伐数での勝負を挑まれた。まあ、別に構わないのでとりあえず頷いておいた。そのまま2人で神機を受け取り、作戦地域に向かった。
-鎮魂の廃寺-
大きい寺がそのまま作戦地域となっているため、庭のような場所もあり、本堂もある。また、貴重な骨董品が見つかったり、日本家屋があったりするので外部居住区に入れない人がたまに住んでいたりする。更に言えば雨宮姉弟とサクヤもこの辺りに住んでいたらしい。
ヒバリ『作戦地域内にオウガテイルが3体浸入しました!先にそちらの討伐をお願いします!』
突如ヒバリ任務の更新が伝えられる。
コウタ「えっ!でもコンゴウは?」
ヒバリ『コンゴウは作戦地域付近に居ますが、今すぐにやって来る気配はありません。今のうちにオウガテイルを討伐して下さい。』
要約すると、紛れ込んできたオウガテイルを先に討伐し、未だ現れないコンゴウとの戦闘で邪魔されないようにする作戦に変更されたのだ。2人の実力と実績を考えるとその方が賢明だろう。
作戦の変更を了承したのでユウキは待機ポイントから飛び降りる。コウタもそれに続いて飛び降りる。ヒバリのオペレートで廃寺を右回りに索敵する。中心部に続く階段を登りきると、オウガテイルがいた。階段を登りきってすぐだったので相手にも気付かれた。
ユウキは左側、コウタは右側に跳んで挟み撃ちにする。この時、左側にもう1体オウガテイルが見えたので、装甲が展開できない旧型の銃身神機を使うコウタが挟み撃ちになるのは避けたかった。他にも全体を見る余裕があるコウタに、左側からオウガテイルが来る場合に教えてもらう目的もある。
左からユウキが切り込む。が、いつものように力が入らず怯む様子がない。オウガテイルが姿勢を低くして尻尾を振る体制を作る。怯むという予想が外れたため、ユウキに一瞬の隙ができる。
コウタ「当たれぇ!!」
コウタの神機が機関銃の様に火を吹く。オウガテイルは攻撃する瞬間にカウンターを食らったので完全に不意を突かれて体制を崩した。ユウキもインパルスエッジでオウガテイルを爆破する。ここで倒れたオウガテイルを捕食しようと構える。
コウタ「ヤバい!もう1体来たよ!」
コウタの言った通りさっきまで左の離れたところにいたオウガテイルがこちらに向かってきている。さすがにこんな近くでドンパチやっていると気づかれてしまう。ユウキに近づかない様にコウタが牽制する。その間にユウキはオウガテイルを捕食し、バーストする。そして、オウガテイルを突き刺したまま上に跳ぶ。コウタに向かっていくオウガテイルの真上に来ると、突き刺したオウガテイルをもう一方に投げつけた。上から重量物が落下してきたような状態になるため、下敷きになったオウガテイルが立ち上がるには時間がかかる。その間、コウタは撃ち続けて、ユウキは反対方向から一回斬りつけ、その後切り上げながら変形する。跳んだ先は当然フリーになっているので、コウタに受け渡し弾を渡す。
コウタ「よっしゃああぁぁ!!!」
力が溢れる感覚に興奮しているのだろうか?いつもより大きな声で吼える。先ほどよりも早い間隔で銃を吹かしている。なんとユウキが着地する頃には倒してしまった。
そのまま索敵に行くつもりが、更に上階から降りてきたオウガテイルがコウタの後ろをとる。ユウキがスナイパーで撃ち抜くとコウタも気づいたので、剣形態に変形して一気に近づく。
コウタ(そういえばバースト状態って時間が経つと切れるんだったな...よし!使ってみるか!)
コウタはツバキからの講義でリンクバーストについてある程度聞いていた
コウタ「ユウキ!一旦離れて!」
そう言われて斬ったあとに離れる。コウタが受け渡し弾を装填し、発射しようと構える。すると砲身が膨らみ、爆音とともに大きな針が飛んでいく。針はオウガテイルに当たってミンチにした。コウタはここまで威力があると思っておらず、発射と同時に後ろに吹き飛んだ。
これで3体のオウガテイルを倒した。いつでもコンゴウを相手にできる。
ヒバリ『討伐目標、コンゴウが接近中!浸入予測地点は中庭です!気を付けて下さい。』
『グオオォォォ…』
コンゴウの咆哮が聞こえる。中庭の中心部まで戻ると、既にコンゴウがいた。ユウキもコウタも既にバースト状態は解除されている。先の戦闘で消費したオラクルも補給できているので、任務開始時の状態での戦闘になる。
コウタ「ゴリラみたいなカッコしやがって!俺の神機で蜂の巣にしてやる!」
こちらに気付いてコンゴウが吠える。ユウキは一気に近づき神機を振る。対してコウタは左に回り込みながら撃つ。神機の切っ先がコンゴウを斬る。しかし、ギィン!と鉄でも打ってるような音が出た。どうやら腕でガードされたらしい。以前戦った時はそんなに硬くなかったはず。違和感を感じているとコンゴウが腕を振り上げた。意識が逸れたため、回避が間に合わないと判断して装甲を展開する。コンゴウが装甲を殴り付け、その衝撃でユウキは吹き飛び、壁に叩きつけられる。その隙にコンゴウはコウタに狙いを定めて走ってくる。
コウタ「グレネード使うよ!」
ユウキが目を開けている可能性があるので、念のため合図を出す。バァン!という炸裂音と共に辺りが眩しくなる。コンゴウは目が眩み、蹲っている。その隙にコウタが撃つ。ここでユウキも復帰し、斬りつける。が、やはりあまり効いているようには見えない。そこで、バーストするために顎を生やして喰わせた。
鬱陶しいのかコンゴウは体をコマのように回転させて殴りかかってきた。それを後ろに跳んで避ける。...が
コウタ「マジかよ?!」
回転したままユウキを追ってくる。ユウキはそのまま何度も後ろへ跳び、コウタはひたすら撃ち続けるが、遂に弾切れを起こした。
因みにオラクルを自給できない旧型の銃身神機使いはオラクルを貯蔵してある薬莢をいくつか装填してある。これは旧型刀身神機、新型神機にも搭載されており、最後の薬莢も尽きると彼らから薬莢を受けとることもできる。
ようやく回転が止まり、隙ができる。ちょうどコンゴウがユウキの方を向いているので、顔面にインパルスエッジを叩き込む。爆破の勢いで大きく仰け反った。顔面爆破はさすがに効いたようだ。
コウタ「やりぃ!」
コウタも思わずガッツポーズとる。しかし
『グオオオォォォオオ!!!』
コンゴウが怒りで活性化し、その怒りをアピールするようにドラミングする。今度はコウタに向かって、体を丸めて前転しながら体当たりしてくる。それを避けながらもコウタは撃ち続ける。ユウキには後ろを見せることになったので、そのまま尻尾を斬る。
『ガアアァァ!!!』
今までと違い、異様に痛がっている。よくみると尻尾があの一撃でボロボロに砕けている。コウタもその事に気付いて、一旦後ろに大きく下がる。
コウタ「トラップ設置したよ!誘き寄せて!」
そう言われてコウタの方を見ると、黄色い光が見えた。攻撃を一旦やめてその光の方へ走る。案の定コンゴウが追走してくる。コンゴウがその光に触れると、痺れたように痙攣しだした。先ほどバーストが解除されたのでもう一度バーストする。その後コウタはひたすら撃ち、ユウキは顔面にインパルスエッジを連射する。すると顔面に大きな傷ができた。ここでコンゴウが動けるようになる。ユウキは止めの一撃と言わんばかりに全力で顔面を叩き斬る。その勢いで後ろに飛んだ。コンゴウは動かない。これで任務は終わり、コウタが近寄ってくる。
因みにユウキの通信機はコンゴウに吹き飛ばされたとき壊れ、コウタの通信機は受け渡し弾を撃ち、吹き飛んだときの衝撃でかなり不調になっている。ヒバリに任務完了の報告ができないが、通信がいつまでも来ないと、さすがに様子を見に来るだろう。
コウタ「お疲れ!強敵だったけどなんとか倒せたね!」
そんな事を言いながらユウキが先に帰投ポイントに向かう。コウタがこの後飯にしない?と聞いてきたのでコウタの方を見る。
すると、倒したと思っていたコンゴウが立ち上がっていた。 さらにコウタを喰おうと大口を開けている。
ユウキの目が大きく見開きあのときの光景がフラッシュバックする。エリックが頭を喰いちぎられた場面がコウタにすり変わる。人形と呼ばれている自分に友人と呼べる存在はコウタしかいない。そんな友人がいなくなる。そこまで考えたとき、リンドウの言葉を思い出す。
『気の合う仲間は、本当にかけがえのない宝だ。大事にしろよ?』
コウタは大切な友達だ。失いたくない。それを奪うのか?ふざけるな。お前らには...何も奪わせない!
もう何も考えずにコンゴウに突っ込む。銃形態に変形する暇はない。神機を剣形態のまま突き出すが届かない。
ユウキ(なんでもいい!届け!)
すると神機から一瞬で顎が生えてきた。
ユウキ「伏せろ!コウタあああぁぁ!」
突き出した顎からジェット噴射のようにオラクルを吹き出し、高速でコンゴウに突っ込む。コウタはなんとか頭を抱えてしゃがみこんでそれを避け、ユウキはコンゴウの胴体に喰らい付く。その勢いでコンゴウは後ろに倒れる。そのまま胴体に乗り神機に胴体を喰いちぎらせた。そのときコアも捕食したようで、コンゴウの活動も完全に停止した。
コウタもユウキも突然のことで唖然とする。暫くして、ようやくコウタが口を開く。
コウタ「あ…えっと…大丈夫?」
ユウキ「ん…大…丈…夫…」
ふと神機を見てみると、いつもの捕食口ではなく、刺々しく、後ろに延びた砲塔のような角が生えていた。
何が起きているのか混乱していると、突然手を掴まれ、ブンブンと上下に振られた。
コウタ「お、お前!喋れるようになったのか?!てか声低っ!もっと女の子のような声だと思ってた!え?てか声低い!」
テンション上がりっぱなしで一方的に話しかける。ユウキは困惑してあ、とかう、とか言っている。そして気になっていたことをコウタに聞いてみた。
ユウキ「あ…怪我…し…てな…い?」
まだ上手く話せないのか、たどたどしく聞いてきた。
コウタ「うん!大丈夫!なんともないよ。」
コウタはいつもの調子で答えた。その様子から本当になんとも無いのだろう。それを確認すると
ユウキ「よ…かっ…た」
安心したのか、ぎこちなく笑った。
コウタ「うっ!!」
コウタが若干赤くなり、ユウキから顔を背ける。
コウタ(いやいや落ち着け!藤木コウタ15歳!ユウキは男だぞ!顔は確かに女の子みたいで綺麗だけど!それでも男だ!俺はホモじゃない!俺が好きなのは女の子!!俺はノーマルだ!!!ホモじゃない!!!!)
落ち着いたのかコウタはユウキに向き直る。ユウキは小首を傾げてぎこちない表情でキョトンとしている。
ユウキ「ど…した…の?」
コウタ「なんでもない。」
そんなやり取りをしていると不意にコウタの通信機からノイズが聞こえた。
ヒバリ『ザザ!…き……えますか?…ウキさ…コウタ……』
コウタ「はい!こちらコウタ!ノイズがひどいけど聞こえます。」
ヒバリ『状況………おねが…し…す。』
コウタ「状況は…コンゴウの討伐に成功。コアも回収しました。」
ヒバリ『…ア反応……かくに…しま…た。帰投……下さい。』
なんとか重要なところは聞こえたので帰投準備に入る。
コウタ「お疲れ!帰ろうぜ!」
ユウキ「…ん」
こうしてコンゴウの討伐任務は終了した。
ユウキ(結局あれは何だったんだろう…帰ったらツバキさんとリッカさんに聞いてみよう。)
最後に発現した捕食形態について考えていた。神機のことはツバキかリッカに聞いてみるのが一番早くて確実だろうと考えながらコウタの後に着いて帰投した。
To be continued
今回は初の中型、コンゴウ戦でした。初めてコンゴウのミッションをやった時はどうにかこうにか尻尾を切ろうと必死になってたことを思い出しました。
そしてコウタごめんよ。君をホモキャラみたいにしてしまった。今回のはあくまでネタなのでそんな路線に行く予定はありませんのであしからず。