ソーマに意識を刈り取られたユウキとコウタが復活した後、ユウキは支部長直々に呼び出しを受けた。シオと戯れる第一部隊を置いて支部長室に入ると、何時の間にか出張から帰ってきたヨハネスがデスクに座っていた。
「やあ、ご苦労様。」
「お久しぶりです。支部長。」
出張のため支部長とは1週間程会っていなかったため、ユウキは少し畏まってあいさつをする。
「暫く留守にしていたが、出張中も君の活躍はよく耳にしていたよ。どうやら期待通り…いや、期待以上の活躍をしてくれているようだね。極東支部の支部長として私も鼻が高いよ。もしかしたら、君はリンドウ君を越える逸材なのかも知れない。」
「いえ…まだリンドウさんの足元にも及びませんよ。」
出張中もユウキ達の話は聞いていたようだ。ヨハネスはその事について高い評価をしているが、ユウキ自身は自分の評価はそれ程高くないと自嘲気味に笑いながら言葉を返す。
「フッ…以前も言ったが、そう謙遜する必要はない。もう少し自分の実力を信じた方がいいと思うがね。なぜなら今回呼び出した理由は…相応の実力が無いと任せられない案件なのだからね。」
実力が必要な案件…さらには支部長であるヨハネスから呼び出されるような事と言えば思い当たる事は1つしかない。
「もしかして…」
「そう。今からリーダーとして特務についてもらう。」
そう言うとヨハネスは肘を突いて話を続ける。
「特務の内容は様々だが、いずれに置いても1つの原則が設けられている。」
ヨハネスは一度目を伏せ、鋭くなった目でユウキを見る。
「『特務は全て支部長である私が直轄で管理する。』と言う原則だ。当然、任務中に得られた物品も例外ではない。」
要するに任務で得たものは全て渡せと言うことなのだろう。しかし、任務とはフェンリルを運営する上で、利益を得るようにしなければならない。これでは、ヨハネスだけが得をすることになる。そんなことをすれば本部を含め、周囲が黙ってはいないだろうとユウキは考えていた。
だが、そんな心配を余所にヨハネスは特務の説明を続けていく。
「全て特務は最高機密の任務だ。その性質上、チームではなく単独でこなしてもらう事になる。君ならば、例え困難な任務でも単独でこなせる…私がそう判断したものと思ってくれ。」
言わばフェンリルの利益となるオラクル資源や旧時代の遺物を着服しているのだ。こんな事を公に出来るはずもない。
「では、今回の特務の話だ。」
そう言ってヨハネスは端末を操作して、ある画面を映し出し、ユウキに見せた。
「…!!まさかこいつは!!」
そこには山のような巨体に複数の触手、頭にはギラリと不気味に光る複眼を持つアラガミが映されていた。
「そう。討伐対象は超大型アラガミ『ウロヴォロス』…このアラガミのコアと素材の回収が今回の特務だ。」
「…」
ユウキは思わず息を飲んだ。かつてリンドウが成し遂げた偉業…極東支部初となるウロヴォロスの単体討伐の事を思い出していた。
『ついにこの時が来た。』そう思いつつも不安と恐怖がユウキの心を支配していた。この巨大すぎる敵をどうやって倒すのか、その方法が思い付かなかった。
「本来ならソーマを同行させようと思っていたのたが、別の任務に向かう事になってね…悪いが今回は単独で出てもらう。」
「…分かりました。」
ソーマが同行出来なくなったことに、ユウキは大きな焦りを感じていた。他の任務が入ったのであれば、同行出来ないのは仕方がない事だと分かっているが、どうしても腑に落ちないでいた。
「今回は近くに大型アラガミの反応もある。これをターゲットに任務を遂行する…と言う通常任務に偽装してある。」
「なら…出発はいつもと同じでいいんですか?」
ペイラーからの特務の時にも経験しているので、その辺りは問題ない筈だが念のため確認する。
(あれ?確か特務を受けた事は支部長に伝えておくって博士が言ってたような…)
「その通り。回収については専用の通信機を渡しておく。これで帰投前に私に直接連絡を入れてくれればいい。後はこちらで対処しよう。」
「!…了解しました。」
この説明を聞く限り、特務で利益を得るのはヨハネスだけのようだ。その事に対する答えの考察と、過去のペイラーの発言を思い返していた事もあって、返事に少しの間が空いてしまった。
それをヨハネスは見逃さなかった。
「…随分と懐疑的な目だね。」
「え?いえ!!そんなことはありません!!」
叱られるのではないかと思い、ユウキは慌てて否定する。
「いや…前リーダー、リンドウ君もこの話をしたときは同じような目をしていたよ。」
ヨハネスが姿勢を崩しながら話を続ける。
「そうだな…なぜ特務が極秘で行われるのか、少し説明しておこう。その理由はエイジス計画だ。」
「え?エイジス計画…ですか?」
機密性の高い特務を行う理由がエイジス計画とは予想していなかったので、思わず聞き返した。エイジス計画自体は公になっている計画なので、本来ならこんなコソコソと横領の様な真似をする必要はないはずだ。
「そう。通常、我々フェンリル各支部で入手した物品の一部は、本部に輸送され、さらにその一部が本部のものとなり、残りは資源の少ない支部に譲渡される。」
「…と言う事は、事実上本部に接収されている事になるんですよね。」
任務が『発注』され、戦果が『記録』として残っているのは、本部による接収する理由付けを確実なものとするためだったのだ。
もっとも輸送中にアラガミの襲撃を受けて資源が本部まで届かないと言うこともよくあるので、確実に接収出来る訳でもない。
「その通りだ。だが、それではエイジス計画の進捗に大きな影響が出る…それゆえに、本部には秘密裏に行われる任務…それが特務だ。納得して貰えたかな?」
「…ええ。」
一見筋は通っている様に思えたので、ユウキは取り合えず返事をする。
「何にしても、非常に危険な事をやらせてしまう事には変わりない。その見返りに、入手困難な物品と高額な報酬を用意しよう。」
ここまでの話では、横領の片棒を担がされているにも関わらず、得をするのはヨハネスのみだった。普通に考えればこんな条件では特務を受けるどころか最悪密告される可能性もある。
そこで、実行犯とも言えるゴッドイーターには破格の報酬を与えて、互いに利益を得られる関係を続ける仕組みを構築し、特務の事を黙っていてもらおうと言うのだ。
「これが成功すれば、エイジス計画が大きく前進する事になる。その事も忘れないでくれ。」
「はい。」
「そうだ。今のうちに渡しておこう。」
ヨハネスは立ち上がり、デスクの引き出しからインカムと錠剤が入ったケースを取り出して、ユウキに手渡した。
「この錠剤は?」
「榊博士と医療班が共同で開発した新薬…『回復錠』だ。」
「回復錠?」
初めて聞いた名前だったので、ユウキは説明を求める様に聞き返す。
「これを飲むと個人差はあれど、細胞が活性化して血管や臓器を優勢して傷の修復をする薬品だ。効果の事を考えると塞傷薬と言った方が良いかもしれないが、今回の特務で万が一の事があったら使ってくれ。」
「分かりました。」
要するに細胞分裂を促進させて、傷を早く治すものらしい。これがあれば多少大きな傷を負っても戦闘を続けられると言うことだ。逃げるにも傷のせいで動けない、と言った場合にも有効だあるようにも思える。
ユウキがそんな事を考えていると、ヨハネスが話の締めに入ったので意識をそちらに戻す。
「困難な任務を私個人から発注する…これは更なる信頼の証とも言える。君には期待している。頑張ってくれ。」
「はい。」
返事をしてユウキは支部長室から出る。すると、すぐ近くに腕を組ながら壁に背中を預けているソーマが居た。
「ソーマ…」
「とうとうお前も呼ばれたか…これだけは言っておく、アイツは信用するな。」
何となくソーマの雰囲気が少し前と同じ、誰も寄せ付けない鋭いナイフのようなものに戻っているように感じた。
しかし、それよりもソーマが実父であるヨハネスの事を悪く言うことが何だか悲しく思えた。
「ソーマの…父親だろ?」
それを聞いたソーマがユウキに背中を向けて歩き出す。
「…アイツを親父だと思った事は1度もない。」
一言だけ言ってソーマはエレベーターに乗り込んだ。
-嘆きの平原-
ユウキはウロヴォロスが居る平原に来ていた。作戦区域中央には常に竜巻発生している。竜巻せいなのか、雨も休むことなく降り続けている。
そのため雨音も止まることがない。得意の聴覚での索敵は少し難しくなっている。
(…居る…)
竜巻を囲む様に捲れ上がり、山にも見える高さまで隆起した地面で向こう側が見えない。聴覚で索敵するまでもなく、気配や感覚でその存在を感じる。
待機ポイントから飛び降りて、銃形態に変形してステルスフィールドを展開する。隆起した地面を右回りに進んでいくと、そこには無数の触手が絡まり合って出来た前足と不気味な複眼、小振りな山とも言える体が視界に入った。
「…でっか…」
思わず声に出して感想を言ってしまった。声に反応して、ウロヴォロスは声の主を探すように複眼をユウキの方に向ける。
「やるしか…ないか!」
強化したガストラフェテス改から狙撃弾が放たれ、ウロヴォロスの複眼に命中する。それと同時にステルスフィールドが解除され、互いに視界の正面に入る事になった。
『ヴオオォォォォ!!』
ウロヴォロスが不気味な声で吠え、ユウキが正面から突っ込む。
「先手必勝!」
ユウキが鮫牙を展開して、ウロヴォロスの足元に潜り込んで後ろ足を捕食してバーストする。
その勢いでウロヴォロスを通りすぎて後ろを取る。そのまま反転してインパルスエッジを打ち込むが、ウロヴォロスの後ろを守る甲殻には傷ひとつ付いていなかった。
(なんて硬さだ…後ろからは攻撃できないな…)
『ヴォオオォォオォォオ!!』
ウロヴォロスが雄叫びをあげると、前足を前方に伸ばして、その巨体からは想像もつかないほどの早さで回転して周辺を凪ぎ払う。
「ぐあっ‼」
咄嗟に装甲を展開するが、バックラーであるティアストーンでは衝撃を吸収しきれず、ユウキは大きく後ろに吹き飛ばされる。
その間に、ウロヴォロスはユウキと向き合うように向きを変える。ユウキも装甲を収納、迎撃体勢を整えてウロヴォロスに向かって走る。すると、ウロヴォロスが右の前足を地面に突き刺した。
「っ!!」
すると、極太の針の様なものに変形したウロヴォロスの足がユウキの足元から生えてきた。もし、迎撃体勢を整えた後、即座に走り出さなかったら、今ごろ串刺しになっていただろう。
そんな状況にゾッとしつつ、ユウキはウロヴォロスの眼前でスタングレネードを叩きつける。辺りが閃光に包まれて、ウロヴォロスの視覚が失われる。
「はっ!!」
短い気合いと共にウロヴォロスの前足を切り裂く。あっさりと斬れてダメージは通る様だが、相手があまりにでかすぎる。そのため、深く傷をいれても、人間で言うところのかすり傷程度にしかならない。
(ちっ!!前足が太すぎる。大したダメージにならないか…なら、もっと細い、薄い場所…後ろ足だ!)
前足を斬るも、連続で同じ場所を斬らねば効果が薄いと感じて、標的を後ろ足に変える。
「ぜあ!」
再び短い気合いと共に後ろ足を斬る。今度は足の太さの半分程の深さの傷を作る。『行ける!』と思った瞬間、突然ウロヴォロスが上体を起こす。何か嫌な予感がして、ユウキはウロヴォロスから離れる。
しかし、その行動が仇となった。ウロヴォロスはあちこちに光弾をばらまいて、辺りを無差別に攻撃し始めた。
「グッ!!マジかよ!!」
バーストが解除されながらも辺り一帯に降り注ぐ光弾を辛うじて前後左右に跳んで避ける。最後の一撃はユウキの頭上に降ってきた。それを装甲を展開して上に構えることで、ウロヴォロスの攻撃を防ぎきる。
ユウキが装甲を収納して反撃しようとすると、突然、ウロヴォロスの複眼から強烈な光が放たれる。
「あああ?!め、目が…!!」
強い光で目が眩み、視界を失う。ユウキはどこに何があるのか分からなくなり、オロオロと狼狽える。
その隙にウロヴォロスの角が光だす。
「があああああ!!」
突然肌が焼かれる様な痛みを覚えて、叫び声をあげる。その痛みの正体ウロヴォロスの放った極太のレーザーだった。そのレーザーが当たると同時にユウキは吹き飛ばされる。
レーザーに焼かれてからどうにか立ち上がる。何やらドスドスと大きな音が聞こえる。その正体を知るために、見えなくなった目を開くと、どうにか辺りを見渡せるようになっていた。
「…え?」
視力が回復すると同時にユウキの視界に入ったのは、極限までアップになったウロヴォロスの複眼だった。ユウキの視力が失われている隙にウロヴォロスが近づいてきていたのだ。
「!!」
次の瞬間、言葉に言い表せない程の衝撃がユウキを襲った。山の様な巨体のウロヴォロスが体当たりしてきたのだ。そのままウロヴォロスは前進して、ユウキを壁との間に挟み込んだ。
それと同時に鳩尾の下辺りで、体の内側から強い衝撃が走った様な感覚を覚える。
「あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"ぁ"あ"ぁ"あ"!!」
激痛が走り思わず悲鳴を挙げる。だが、叫び声を挙げている最中にゴボゴボと汚い音が喉の辺りで鳴る。
「ごぶぅえぇぇえ!」
ビチャビチャと音を立てながら血を吐き出し、痛みで正常に働いていない思考を無理矢理働かし、ウロヴォロスを見る。
すると、ウロヴォロスがユウキを押し潰そうと上体を起こし始めていた。
「!!」
『殺される!』そう思った瞬間にはもう逃げようとしていた。痛みのせいでのたうち回りたいが、それでも動かない体を動かしてひたすら逃げる。
少しずつ倒れ込むウロヴォロスを見つつ、血を吐きながらも全力で走り抜ける。完全に倒れる少し前にウロヴォロスの体の陰から出てギリギリで避ける。
しかし、今度はウロヴォロスが倒れ込んだ時の衝撃で地面が揺れ、上手く走ることが出来なくなった。そこに間髪入れずに風圧でユウキを吹き飛ばす。
3回バウンドした後、ゴロゴロと転がりながらウロヴォロスから離される。神機を持ったまま転がったせいで全身に深い裂傷がいくつも出来て、辺りに血が流れる。
「はっ!!はっ!!…ぐっ!」
どうにかして短い呼吸が出来るようになったところで倒れたままポーチを漁る。出撃前にヨハネスから渡された回復錠を探し出して、口の中に放り込み、ガリッと言う音を立てながら噛み砕く。
すると、薬が作用したのかすぐに痛みと吐血は収まり、全身の傷も塞がり始めた事で戦闘を再開出来るようになった。
動けるようになると、ユウキは獣の目でウロヴォロスを睨む。
「ヤりやがったナクソ野郎…!!」
悪態をつきながら神機を握り直して立ち上がる。
「ぶッ殺す!!!!」
殺意を込めた一言を放つと同時にウロヴォロスに飛びかかる。対するウロヴォロスは横凪ぎに前足を振って迎撃する。
ユウキはその前足に神機を突き刺して触手に張り付いた。ウロヴォロスは張り付いたユウキを振り落とそうと神機が刺さった触手を振り回す。
しかし、ユウキは触手に足を着けて、神機で触手を切り裂きながら昇っていく。そしてウロヴォロスの肩まで昇ると神機を振り抜く。
神機を振り抜いた後に、今まで見たことの無い鎌にもクチバシにも見える細長い捕食口を展開する。
「喰い潰セぇ!!」
展開した捕食口でウロヴォロスの肩を喰い千切る。すると、いつもなら捕食口が収納されるのだが、今回は収納されずに追撃する。
『グチャッ!グチャグチャッ!!』
一度捕食した後、一瞬の内に2連続で捕食する。
「オラァア!!」
ユウキがバーストして、咆哮と共に限界以上の力を込めた一撃を捕食した場所に叩き込む。
力んだせいで全身の傷口が再び開いて全身から血が吹き出る。それでも限界以上の一撃で攻撃した事で、ウロヴォロスの右前足が切り落とされる。
片足を失い、ウロヴォロスは巨体を支える事が出来なくなって倒れ始める。完全に倒れる前にユウキはウロヴォロスから離れるが、その際にバーストが解除される。落下の途中で銃形態に変形して、ウロヴォロスの頭を撃ち抜いた。
ウロヴォロスが倒れた時の風圧で吹き飛ばされないように、ユウキは神機を地面に突き刺してしっかりとその場に踏み留まる。
「チィ!!」
その隙に、ウロヴォロスが左の前足を地面に突き刺して、下からユウキを串刺しにしようとする。それを後ろに跳んで回避する。
「サッさト…」
2回目の下からの串刺しを回避して神機を突き刺す。
「クタばれェ!!」
3回目の串刺しを回避すると同時に、負傷覚悟で触手を左手で殴り、破壊する。
すると、ウロヴォロスの角が光だして、極太のレーザーを放つ。
「クソが!!」
さっきのレーザーと違い、辺りを凪ぎ払う軌道のレーザーを放つ。それを上に跳んで回避すると、インパルスエッジで空中で跳ねる。その行く先はウロヴォロスの頭の真上。そこで神機をしっかりと握る。
「フっ飛べエぇァア!!」
咆哮と共にユウキが神機を振る。すると、ウロヴォロスの頭を切り落として吹き飛んだ。
「喰イ潰セェェェエ!!」
着地と同時にチャージ捕食『ミズチ』を展開してウロヴォロスを飲み込むような形で喰い付く。
「グギっ!…ぎイ!」
が、巨大なウロヴォロスを喰い千切るには力が足りない。それでも喰い千切るため全力を越える力を込めて喰い付く。
「あああァァアあァアア!!」
ユウキが吼えながらさらに力を込める。すると、少しずつ捕食口がウロヴォロスにミズチの顎が食い込み始める。
『ブシャアァァアアァア!!』
半分程食い込むと、一気にウロヴォロスを喰い千切る。その際、コアも一緒に捕食して回収した。
「はぁ…はぁ…」
肩で息をしていると、突然ユウキの体から力が抜ける。そのまま力尽きて手足を放り出して、仰向けになるように倒れた。
倒れた状態のまま、ヨハネスから受け取ったインカムに手を当て、スイッチを入れる。すると、ノイズが一瞬入って誰かと繋がった。
『ご苦労だった。資材回収の準備は出来ている。何時でも帰投してくれ。』
ノイズ混じりにヨハネスの声が聞こえてくる。孤独な戦場の中で、他人の声を聞いた事でようやく戦いが終わったと実感を得ることが出来た。
「…了解しました…」
静かに返事をして、インカムから手を離す。そのまま手をだらんと投げ出し雨が降り続く空を見上げていた。
「まだまだ…遠いな…」
何時か越えると誓った背中が、未だに手の届かない高みにあると思い知らされ、理想とする強さには程遠いと実感する。
そんな悔しさを胸に、ユウキは意識を手離した。
To be continued
後書き
遂にウロヴォロスとの初戦闘です。実機だと肩書きは立派なのですが、実際に戦ってみるとさほど大きくもないし、苦戦もしないかったので、拍子抜けした事を思い出しました。
ゲームだから仕方ないとは言え、あんな大きさの敵に体当たりされたら衝撃で体の内側がどうなるか…
ウロヴォロスにはレーザーよりもその巨体を生かして戦ってもらいました。
しかしまあ、主人公がぼろ雑巾みたいにされて漸く勝てたのに、リンドウさんは軽い怪我で済んで帰ってきたあたり、リンドウさんの強さってやっぱり化物クラスだったんですね…
回復薬はバースト時程では無いですが、細胞を活性化させ、細胞分裂を促して血管や臓器を優先して、致命傷となる傷を塞ぐ薬と言う設定にしました。