GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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ついにアリサ復帰です。自分の犯した過ちを認めて、一歩前進する回となっております。


mission20 守る力を

 -エントランス-

 

 リンドウの捜索が打ち切られて1週間が経った。打ちきり当時は生きていると信じていた者達もリンドウが死んだと受け入れ始めていた。そんな中で、リンドウが居なくなる前のアラガミを倒し続ける日常が戻ってきた。

 現在、エントランスには訓練を中断して、その間に神機の簡易整備をしてもらっているユウキが休憩がてら缶ジュースを片手に出撃ゲート前で佇んでいる。するとコウタが話しかけてきた。

 

コウタ「今日も訓練?」

 

ユウキ「うん。」

 

コウタ「あんまり無理するなよ?俺から見たってかなりのオーバーワークだし…いつか体壊さないか心配だよ…」

 

 ユウキの訓練漬けの生活はもう日常化している。それは一部の人間には知られており、支部内にいるときは訓練室に行けば会えると言われる程だ。

 

ユウキ「分かってる。ちょっと無理する程度だから…大丈夫だよ。」

 

 口ではそう言っているが、実際はかなりの焦りや不安から、『ちょっと』無理する程度では無くなってきている。リンドウの様なベテランの神機使いでも死ぬときは死ぬのだ。そう思うと、次は自分の番になるのではないかと怖くてたまらない。

 そんな事を考えていると、エレベーターの扉が開いてアリサが出てきた。

 

ユウキ「アリサ。」

 

 ユウキの声を聞いて一瞬嬉しそうな顔をしたが、コウタが横に居る事に気が付くと、俯いて視線を合わせないようにした。他人の視線が酷く恐ろしく感じてまともに目を合わせる事が出来ない。そのままユウキとコウタの前まで着て、報告すべき事を報告する。

 

アリサ「…本日付で、原隊復帰となりました。また、よろしくお願いします。」

 

 アリサが暗い表情のままで報告する。

 

コウタ「本当?実戦にはもう出られるの?」

 

アリサ「…いえ…まだ…です…」

 

コウタ「…そっか…」

 

 会話が途切れて沈んだ空気の中、突如大きな声で話し声が聞こえてきた。

 

神機使い1「おい聞いたか?この間入ってきた新型の女…やっと復帰したらしいぜ。」

 

神機使い2「ああ、リンドウさんを新種のヴァジュラと一緒に閉じ込めて見殺しにした奴だろ。」

 

神機使い1「ところが、あんなに威張り散らしてたくせに、精神不安定で結局戦えなくなったんだとよ。」

 

神機使い2「あっははは!!なんだ!口ばっかりじゃねえか!」

 

 アリサに聞こえるように心無い罵声を飛ばしてくる。アリサ自身こうなって当然だと思っていたが、実際に目の前で言われるとかなり辛い。正直今すぐにでも逃げ出したかった。

 

アリサ「あなたも…笑えばいいじゃないですか…」

 

 泣きそうな顔になってコウタに自分を笑えと言ってきた。いっそのこと盛大に笑われば気も楽になれる。そう思っての発言だった。

 

コウタ「俺たちは笑ったりしないよ。な?ユウキ!」

 

ユウキ「うん。特別面白い話じゃなかったしね。」

 

コウタ「いや、その答えは何かズレてるだろ…」

 

アリサ「…」

 

 何とかアリサを元気付けようと一切持ち合わせていない笑いのセンスでどうにか引っ張り出したボケも、コウタの呆れが籠ったツッコミで真面目に返された。

 依然アリサは暗いままで、口を閉じている。

 

コウタ「あーえっと…それより、リンドウさんがやられた新種のヴァジュラ!」

 

 コウタがその場の空気に耐えきれなくなって話を振るが、その話題はアリサにとって、その後どうなったか知りたい話題であると同時に触れられたくない話題だった。

 

アリサ「!」

 

ユウキ「!!待ってコウタ!!」

 

 アリサは顔を上げるも、どこか複雑な感情が見え隠れしている表情になり、ユウキはアリサのトラウマを刺激するのではないかと思い、止めようとするが制止も虚しく、コウタは何か焦りながら話を続ける。

 

コウタ「ここ最近欧州でも目撃報告があったみたいだね。ここに来て新種との遭遇例が増えているのは何かの兆しなのかもしれないねー!なんて…」

 

 狼狽えながら話を続けているが、どこか空回りしているように感じる。その空気を感じ取ったのか、唐突にユウキの方を見て、肩を叩いた後両手を合わせる。とても鮮やかな流れだった。

 

コウタ「スマン。後は頼んだ…」

 

ユウキ「え!?ちょっ!!」

 

 この気まずい空気のまま置いて行かないで欲しかったが、そんなユウキの思いとは裏腹にコウタは去っていった。

 呆然としてるとアリサが話しかけてきた。

 

アリサ「あの…お願いがあるんです…」

 

 どこか言いにくそうにアリサが言葉を一旦区切る。

 

アリサ「えっと…その…私に、もう一度ちゃんと、戦い方を教えてくれませんか?今度こそ…本当に…本物の自分の意思で、大切な人を守りたいんです!」

 

 そう言うアリサは強い意思が宿った目をユウキに向ける。『大切な人を守る』と言っていたが、言葉で言うほど簡単な事じゃない。リンドウの一件でそれはユウキやアリサを含め、皆嫌と言うほど分かっただろう。なによりアリサは自分の心の弱さを利用され、奪う側に立った事を後悔していた。

 しかし、このまま何も出来ない、何もしないままでは変わる事は出来ない。自分の手の届く人を失って後悔しないように、それが何処かで償いに繋がると信じて戦い方を教えてくれとユウキに頭を下げて頼み込む。

 

ユウキ「分かりました。俺で良ければ、教えられる事…全部教えます。」

 

 そんなアリサの心情を察したのか、微笑みながら了承する。

 

アリサ「あ、ありがとうございます!」

 

 パッと顔を上げてお礼を言う。断られると思っていたのか、安堵した表情をしていた。その後何やら言いづらそうに会話を続ける。

 

アリサ「あ!お願いしておいてこんな事を言うのも失礼かも知れませんが…少しだけ時間を貰えませんか?その…やっておきたい事があるんです。」

 

ユウキ「分かりました。先に行って準備しますね。」

 

 そしてアリサはエレベーターに乗って何処かへ行った。ユウキはアリサとの任務に行くため、出撃ゲートに向かう…前に手に持った空き缶を捨てようとエントランス下階に空き缶を投げた。

 

神機使い1「いてっ!!」

 

神機使い2「っつ!!」

 

 投げた空き缶は先程アリサに罵声を浴びせた2人の神機使いの頭に当たってからベンチ横のゴミ箱に入った。

 

神機使い1「何しや…がる…」

 

神機使い2「やりやがったなこの人…形…」

 

 息巻いて反撃しようとしたが、ユウキの顔を見た瞬間に大人しくなった。彼らを見るユウキの目はいつかのように威圧的な目だった。下から見上げているため目元まで影が掛かり、暗がりの中ユウキの茶色の目がだけが不気味にギラついていた。『次は無い』と視線が物語っていた。

 視線だけで2人を威圧した後、興味が失せたように振り返って出撃ゲートを潜った。

 

 -役員区画-

 

 アリサは役員区画である人物を探していた。一通り探してみて見付からなかったので、出直そうとエレベーターまで戻ると、既にエレベーターは下まで行ってしまったようなので、戻ってくるの待っていた。

 しばらく待っているとエレベーターが戻ってきた。扉が開くとそこには探していたツバキが現れた。

 

ツバキ「アリサ…お前がここに来るにはまだ早いぞ?何かあったか?」

 

 ツバキはいつもの口調で、役員区画に居る理由を訪ねてきた。扉が開いたらまさか探していた人物が居るとは思っておらず、面食らってしまったが、ツバキがエレベーターから降りると、キャスケットを脱いで勢いよく頭を下げた。

 

アリサ「ごめんなさい!!」

 

ツバキ「!?」

 

 いきなり頭を下げてまで謝られたため、今度はツバキが驚く事になった。だが、謝る理由に思い当たる節があったので、平静を保ってアリサの話を聞く。

 

アリサ「今回の…リンドウさんの件は、私の…私自身の心の弱さが引き起こしたものです。」

 

 頭を下げたまま今回の事件が起こるきっかけとなった、アリサの過去を語り始める。

 

アリサ「両親の死がトラウマになって、その事を忘れるためにメンタルケアを受けて、本当にあのときの恐怖を忘れてしまいました。」

 

 語り続けるアリサに対してツバキは聞きに徹する。

 

アリサ「でも…あの日、あの新種を見たとたんに、その事を思い出して…怖くなって、その後何故かリンドウさんが両親を殺したアラガミだと思い込んでしまったんです。そして…リンドウさんに…銃を…」

 

 少しずつ声が弱々しくなっていく。こうして話していくうちに自分が何をしたのかハッキリと認識していき、罪悪感に押し潰されそうになっていく。

 

アリサ「謝って済む事じゃないことは…分かっています。でも、何も感じてないと思われるのも…嫌なんです。」

 

 『謝って済む事ではない』そう言いながら、自分は取り返しのつかない事をしたのだと実感した。

 

アリサ「自己満足にしかならない事は承知しています。それでも…最低限…謝らせて下さい。」

 

 最後まで語り終わって沈黙が流れる。しばらくすると今度はツバキが口を開く。

 

ツバキ「…顔を上げろ。アリサ。」

 

 先と変わらぬ口調でアリサに語りかける。言われた通りに顔を上げる。どんな罵声が飛んで来るのかと思い怖かったが、思っていた以上に落ち着いた様子で内心驚いた。

 すると、今度はツバキが話を始める。

 

ツバキ「確かにお前のやっている事は自己満足に過ぎない。お前は謝ってスッキリするかも知れないが、それでリンドウが帰ってくる訳でもない。」

 

 正直、被害者の遺族からしたら謝られても困るというのが本音だった。謝ってもリンドウは帰ってこない。ツバキの言う通り、被害者側の人間が謝罪を望んでいなければ、謝罪はあくまで加害者側の自己満足にしかならないのだ。

 だが、アリサの謝罪したいと言う意思を突っぱねる訳でもなく、さらに話を続ける。

 

ツバキ「だがあれだけの事を仕出かしておきながら、謝罪もしないような奴だったら…私はお前を見下げていた。お前がリンドウにやったことを受け止めて、忘れないでいてくれれば…私はそれでいい。」

 

 遠回しに許してやると言っていた。ツバキもリンドウも、遠回しに伝えたいことを伝える辺り、やはり姉弟といったところか。

 アリサもその言葉の意味するところを察して、不謹慎かもしれないが少し嬉しくなる。

 

アリサ「ツバキさん…」

 

ツバキ「さぁ!神裂を待たせているのだろう?早く行ってやれ。」

 

アリサ「はい。」

 

 返事をするとアリサはエレベーター乗ってユウキの元に向かった。

 

 -嘆きの平原-

 

 アリサの特訓のために、ユウキとアリサは嘆きの平原まで実地演習に来ていた。今回の討伐対象はシユウ1体となっている。未だシユウは現れない。そのため、待機ポイントで標的が現れるまで待っている。

 静かにして待っていると、不意にアリサが話しかけて来た。

 

アリサ「すいません。こんなことに付き合わせて…」

 

ユウキ「構いませんよ。手を貸すって約束しましたからね。」

 

 ユウキが微笑みながら答えると、それに釣られてアリサも軽く微笑み返す。だが、一瞬間を置いて俯いてしまった。

 

アリサ「もう後悔したくない…自分の手で、自分の意思で戦えるようになりたいんです…」

 

 アリサが改めて決意を固める。

 

  『グオオォォォ…』

 

 アラガミの鳴き声が聞こえてくる。その後すぐにシユウが現れた。すると、アリサの呼吸が荒くなった。

 

アリサ「はぁ…はぁ…う!…あぁ…」

 

 アリサから血の気が引いて、再び錯乱しそうになる。

 

アリサ(パパ…ママ…やだ…怖い…怖いよ…!)

 

 両親が殺された事を思い出し、また誰か身近な人が目の前で死ぬかもしれない。或いは自分が殺されるかも知れない。そんな場面を想像してしまい、恐怖で体が言うことを聞かない。

 

ユウキ「アリサ!」

 

 ユウキはアリサの名前を叫び、アリサの肩を掴み、ユウキの方を見るようにする。

 

ユウキ「落ち着け!落ち着いて深呼吸して!」

 

 言われた通りに深呼吸する。そうしていると、少しずつ呼吸が整ってきて、大分落ち着いて来た。

 

ユウキ「大丈夫!アリサが戦えるようになるまでは俺がアリサを守るから…だから、絶対に2人で生きて帰るぞ!」

 

アリサ「は、はい。もう…大丈夫です。」

 

 大丈夫と聞いたらので、ユウキはアリサから手を離す。すると、不意にアリサが話しかける。

 

アリサ「強い…ですね。」

 

ユウキ「え?」

 

 アリサが何を言いたいのか分からずに聞き返す。

 

アリサ「これから命懸けの戦いをするのに…こんな風に他人を気遣える。そんな事が出来る貴方はやっぱり強い心の持ち主なんですね。」

 

ユウキ「…そうでもないですよ。俺はただ…自分が死ぬのも誰かが死ぬのも嫌なだけなんです。本当は俺も、自分が死ぬかもって思うと怖くてたまらないんです。戦わずに済むなら…戦いたくない。でも、この世界で戦わなければ…待ってるのは…死だ。」

 

 この世界での戦えない者の末路は想像するに容易い。アラガミに対抗できる手段を持たないため、ひたすら蹂躙されるだけだ。そんな世界で生き残るには戦う力が必要だ。ならば、その力を持っているなら生きるために戦う意外に選択肢はないのだ。

 

ユウキ「戦わなければ生き残れないなら、どんな奴とだって戦う…全力で死に抗ってやる…」

 

 このとき、アリサはユウキの表情が険しくなったのを見て、彼の生きる事への執着、その鱗片を垣間見た。

 

ユウキ「よし!早速今の俺が教えられることの1つを教えます!」

 

 先の雰囲気からガラッと変わっていつも通りの口調と表情になっていた。

 

ユウキ「第一部隊の命令は3つ。死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そして隠れろ。運がよければ不意をついて…ぶっ殺せ!」

 

アリサ「その命令は…」

 

ユウキ「うん。リンドウさんが最初に出した命令だよ。あ、でもこれじゃあ4つですね…」

 

 リンドウが初めてユウキと任務に行ったときに出した命令を、今度はユウキからアリサに出す。生きて帰る。それを守らせるための命令だ。

 

ユウキ「今回の任務では生き残る事さえ考えてくれればいい。あとは実戦の空気を思い出しながら動いてみて。」

 

アリサ「は、はい!」

 

ユウキ「よし!行こう!」

 

 ユウキが待機ポイントから飛び降りてシユウに向かって走り出し、アリサもそれに続く。

 それに気が付いたシユウがいきなり滑空して距離を詰めてきた。

 

ユウキ「チィ!」

 

アリサ「キャア!」

 

 突っ込んでくるシユウをそれぞれ横に跳んで回避する。ユウキは綺麗に受け身を取ってすぐに迎撃に向かう。だが、アリサは受け身を取れずに倒れ込む。

 シユウは受け身を取れなかったアリサに狙いをつける様に姿勢を落として構える。

 

アリサ(い、いや…来ないで!)

 

 アラガミを前にして恐怖で動けなくなる。

 

ユウキ「させるか!」

 

 迎撃体制を取っていたユウキがシユウの首を撥ね飛ばす。その勢いでアリサとシユウの間に割り込む。不意を突かれたシユウに隙が出来る。その隙を利用して、ユウキはシユウの胴体を蹴り飛ばし、アリサと距離を離す。その間にアリサは地面を這いずりながらシユウから離れる。

 アリサが離れた事を確認すると、ユウキは蹴り飛ばしたシユウに向かって走る。その間に体勢を建て直したシユウが摺り足でユウキに近づいて上段から半円を描く軌道の手刀を放つ。それをジャンプで躱すが、即座にシユウが突っ張りの要領でユウキに攻撃する。

 

ユウキ「グッ!」

 

 装甲を展開して防ぐが、間髪入れずにシユウの掌から衝撃が放たれる。

 

ユウキ「ガァ!」

 

 衝撃でユウキが吹き飛ばされて、竜巻の傍にある壁に叩きつけられる。このままではユウキが危ないと感じ、銃形態で援護しようとするも、リンドウを撃とうとした事が頭を過り撃てないでいた。

 叩きつけられた隙をついてシユウがオラクル弾を放つ。それをジャンプで躱しつつ後ろを向く。竜巻の傍にある壁は反り立つような形状をしているため、振り向いた瞬間に一気に壁をかけ上がる。

 そして壁の中腹ほど来ると、シユウの真上に跳んで、上から爆破レーザーを撃ち込む。それに被弾しながらもシユウは上空のユウキにオラクル弾を放つ。それを剣形態に変形し、装甲を展開して防ぐ。衝撃で少し上に飛ばされたが、同じ方法でもう一度攻撃出来る。そう思ったが、なぜかシユウとの距離が離れていく一方だった。

 

ユウキ「うわああぁぁ…」

 

 どうやら上に飛ばされた衝撃で竜巻に巻き込まれたらしい。必死にインパルスエッジを連射して竜巻から逃れようとする。

 その隙に、シユウはアリサに目をつけ、アリサに向かって滑空していく。

 

アリサ「ひっ!!」

 

 迫り来るシユウを目の前に小さく悲鳴を上げる。

 

アリサ(殺される!!)

 

 もうお仕舞いだと思い、思わず目を瞑る。

 

  『パァン!!』

 

 シユウの真上から銃声が聞こえてきた。その瞬間シユウの背中から爆発が起こり、地面に叩きつけられる。

 

ユウキ「間に合ええええぇ!」

 

 ユウキが空中からプレデタースタイル穿顎で急降下する。が、距離がありすぎて捕食前に穿顎が解除されてしまう。すると、神機を後ろに突き出してインパルスエッジを放つ。爆破の勢いでさらに加速し、その後神機をシユウに向かって突きつける。

 

ユウキ「らあああぁ!!」

 

 そのまま隕石のような勢いでシユウの上から神機を突き刺す。ちょうどコアを破壊したらしく、シユウは活動を完全に停止した。

 倒したことを確認すると、安心したのかアリサはその場に座り込んでしまった。

 

アリサ「すいません…結局何も出来ませんでした。」

 

ユウキ「いや、こっちこそごめん。アリサを1人にしてしまいましたね。」

 

アリサ「次は、ちゃんとサポート出来るようにします。」

 

ユウキ「うん。でも…あまり自分を追い込まないようにね?」

 

アリサ「はい。」

 

 ここでユウキがアリサに手を差し出す。少し戸惑ったが、アリサは素直にその手を取り、立たせてもらった。

 『ありがとうございます』と礼を言い、待機ポイントに向かって移動する。その間にここ最近で気になったことをユウキに聞いてみた。

 

アリサ「あ、少し気になったんですけど、時々口調が変わるのって、もしかして素が出ているんですか?」

 

ユウキ「はい。敬語は…まあ癖みたいなものですかね。」

 

アリサ「あの…私の前では素の口調で話してくれませんか?」

 

ユウキ「え?」

 

 どう言うことかわからずポカンとする。なんとも間抜けな表情をしていた。

 

アリサ「私の勝手な都合ですけど…素の口調だと、頼りがいがあって…落ち着くんです。」

 

 要するに安心出来ると言うことかだろうか?余計なトラブルにならないように今まで敬語で話してきたが、その話し方では頼りないのだろうか。

 だが、今のアリサには安心できる場所が必要だ。今はユウキしか居ないかも知れないが、そこからアリサの居場所が広がり、頼れる人が沢山居れば大車の治療の時のように依存する事も無いだろう。

 そんな事を考えていると、突然アリサが慌てたように話を続ける。

 

アリサ「ご、ごめんなさい!勝手な事を言って!さっきのは忘れてください!」

 

 断る理由がないので、忘れろと言われたが、アリサの希望通り素の口調で話す事にした。

 

ユウキ「いや。素の口調が良いなら、アリサの前ではこの話し方に変える。すぐに変えられるかは分からないけど…」

 

アリサ「ありがとうございます。こんな我儘まで聞いて貰って…」

 

ユウキ「気にするな。『仲間』…だろ?」

 

 こうして2人は極東支部に帰還した。

 -エントランス-

 

 2人がエントランスに戻ると、珍しく人が殆ど居なかった。それを確認すると、アリサは『やるべきことが残っている』と言って、帰投後にエレベーターに乗って何処かへ行ってしまった。

 そんな様子を影から見ていたコウタが、ユウキに話しかける。

 

コウタ「な、なぁ…アリサのやつ怒ってなかった?怒らせるつもりなかったんだけど…」

 

ユウキ「うん。特に怒ってなかったよ。」

 

コウタ「そっか…リンドウさんがやられた話はマズかったなぁ…」

 

 出撃前の会話で地雷を踏み抜いた事を気にしていたようだ。本人には到底聞くことは出来ないので、こうしてユウキに聞いてきたのだ。

 

ユウキ「俺としてはあの空気の中で置いていかれた事を謝ってほしいんだけどな?」

 

 ユウキがジト目でコウタを睨む。

 

コウタ「わ、わりい!あの空気に耐えきれなかったんだよ!」

 

 コウタが土下座しそうな勢いで謝ってきた。だが、実はユウキ自身気にしていなかったので、その様子をいたずらが成功したと言った感じででケラケラと笑いながらコウタをからかった。

 気が済むまで笑った後、その日は訓練室に籠ることにした。

 

 -翌日-

 

 どうやら、アリサが『やるべきこと』は大方終ったようだ。ユウキと別れた後、ツバキに謝ったように、サクヤやソーマ等のリンドウと親しい者達から始まり、支部内ほぼ全ての者に謝罪して回ったのだ。大半の者はアリサを罵ったが、中には変化を認めてくれた者もいた。

 まだまだこれから大変だろうが、今のアリサなら乗り越えられると思い、ユウキは一安心した。

 そんな中で次の実地演習に向けて、アリサとユウキはエントランスでブリーフィングを行っていた。

 

アリサ「今回の相手はコンゴウとグボロ・グボロですね。2体とも電撃による攻撃が有効です。」

 

ユウキ「うん。でも雷属性の装備を持ってないんだよな。」

 

アリサ「なら…銃撃戦になりそうですね。」

 

ユウキ「う~ん、やっぱりそうなるか…ただ、2人とも後衛ってのもな…」

 

 本来後衛は前衛の陽動があってこそ動けるものである。特に神機の銃形態では防衛行動は回避しかない。こうなると、前衛が攻撃を誘導しなければ後衛がバックアップに集中出来ず危険だ。

 

ユウキ「よし、俺が前衛でアリサが後方からバックアップ…これで行こう。」

 

 アリサの現在の状況を考えると前衛に出すよりも、後衛でバックアップ兼戦術の指示をして貰う方が良いと考えたのだ。

 配置を決めて、作戦内容が決まったが、出撃まで少し時間がある。今回の任務では雷属性の装備があればかなり有利に進めることが出来る。が、持っていない事がここで響いてくるとは思わなかった。

 

ユウキ(そろそろ属性のバリエーションを増やした方が良いか?)

 

 そこまで考えて、ふと装備で疑問に思った事をアリサに聞いてみた。

 

ユウキ「属性で思い出したんだけど、大半の神機使いは装備の強化はしても変更ってあまりやらないよな?」

 

アリサ「そうですね…装備を1つに絞るメリットとして、神機との適合率が上がりやすくなるなる事と、強化されていくスピードが段違いに早いからですね。むしろ、神裂さんみたいに装備のバリエーションを増やす人の方が珍しいですよ。」

 

ユウキ「なるほど。装備があれば臨機応変に戦えるけど、多くの装備を使う分、神機との適合率が上がりにくいのか。」

 

 通常、神機は装備される武器や装甲によってベースとなる性能が決まる。それは神機のコア、通称『アーティフィシャルCNS』が装備の特性を学習し、性能やギミックを引き出すからだ。いくつも利用すればその分学習する量が増えるので、強化のスピードが遅くなる。また、1つの装備に絞ることで、神機側が多少使用者に合わせてくれるのだ。

 

ユウキ「色々教えるって言ったけど、逆に俺が教わってばっかりだな。」

 

アリサ「そうでもないですよ?実戦のなかで様々なものを利用していて色んな発見がありましたよ。」

 

 『そっか。よかった』と呟き安堵する。実際、戦闘にならなければ教えることが出来な上、きちんと教えられているのか不安ではあった。

 そんな中、ふと時間を確認すると、出撃の時間が迫っていた。

 

ユウキ「そろそろか…よし、行くか」

 

アリサ「はい!」

 

 -嘆きの平原-

 

 現在、作戦領域内でコンゴウと戦闘している。最初にたてた作戦の通り、ユウキが前衛で、アリサが後衛を担当して戦闘している。

 コンゴウがユウキに殴りかかって来たので、それを後退して回避する。その隙をアリサが狙う。

 

アリサ(…大丈夫…やれる!)

 

 アリサが意を決して銃弾を放つ。コンゴウが苦手な雷属性の銃弾の雨がコンゴウを襲う。堪らず、コンゴウが前に飛ぶ。

 しかし、その先には神機を逆手に構えて、下から切り上げようと待ち構えているユウキがいる。そのまま抵抗も出来ずに、切り裂かれて、コンゴウは真っ二つになった。

 なんとかコアの位置を避けていたため、損傷させることなく回収し、グボロ・グボロの捜索を始める。

 3分も捜索していると、グボロ・グボロが現れた。アリサが銃弾を放って奇襲を仕掛ける。不意を突かれてグボロ・グボロが動きが止まる。

 その隙にユウキが近づいて、シュトルムを展開する。一気に距離を詰めて捕食する。その間、誤射しないよう射線をユウキからずらすように移動して撃ち続ける。

 鬱陶しく感じたのか、グボロ・グボロはじたばたと暴れ始めた。ユウキは少し後ろに下がりつつジャンプして躱す。遠距離攻撃をしているアリサには当然意味がない。ユウキが跳んでいる間に、グボロ・グボロの砲身がユウキの方を向く。その瞬間、神機を振り下ろし、砲身を捉える。そのまま捉えた場所を軸にして飛び上がる。

 即座に後ろに穿顎を展開しつつスタングレネードを準備する。背ビレを喰らい、そのまますれ違い様にスタングレネードを投げつける。

 嘆きの平原は常に厚い雨雲が掛かっているため、とても暗い。そんな状況で突然の閃光で、いつも以上に視力の回復が遅くなる。その隙にラストスパートをかけるようにアリサが神機を吹かし、ユウキが滅多切りにする。

 

ユウキ「おらぁ!」

 

 ユウキの気合いが入った一撃でグボロ・グボロは上下に別れて倒された。任務が終了し、2人は撤退した。

 -3日後-

 

 その後もアリサと中型、小型種の討伐任務に向かい、少し感覚が戻って来たようだ。今日はアリサが復帰してから初の大型種の討伐任務となる。現在、その任務のブリーフィングをエントランスで行っていた。

 

アリサ「ボルグ・カムランが相手ですね。やはりセオリー通り氷属性か雷属性で攻めるべきでしょうか?」

 

ユウキ「その方が良いでしょう。俺も交戦経験は1回しかないし、下手に奇抜な事をしないで、堅実に行った方が良いと思う。」

 

 実際、以前戦ったときはまぐれで生き残ったようなものだったため、不安はぬぐいきれなかった。しかも、このボルグ・カムランは2人にとって相性最悪とも言える相手だった。

 

アリサ「なら、今回の問題点は敵の硬さですね。」

 

ユウキ「だね。斬撃も銃弾もなかなか通らない。今回はアリサも前線に出る可能性も視野にいれないとな。アリサ、行けそう?」

 

 アリサの精神状態を考えると、前線に出すのは危険だと思ったが、今回の相手は長期戦になると考えられるので、恐らくアリサの神機のオラクルが持たないだろう。

 

アリサ「…はい。やります。」

 

 アリサが強い目でユウキを見てハッキリと答える。できる、できないではなくやると言ってきた。ここはアリサを信じて、前線に出す作戦を考えるべきだろう。

 アリサを前線に出す事を前提にした作戦に組み直す必要がある。するとアリサがやや自嘲ぎみな表情をして話しかける。

 

アリサ「こうやって考えてみると、私の教えてもらった戦術は本当にアラガミを倒すことしか考えていないんですね。現地の情報や時間帯によってもこちらの動きやすさが変わってくる事を考えると、戦術を組むと言うのは難しいですね。」

 

 アリサの教わってきた戦術はあくまでアラガミを倒す事に特化している。そのため、防衛や偵察では真価を発揮しないのだ。それでも以前のアリサはアラガミを倒せば全て丸く収まるとして、どんな任務でもアラガミを倒す事を最優先としていたのだ。

 

ユウキ「俺の感覚だけど、アリサの教わった戦術は何も障害がない状態で真正面からアラガミを叩き潰す事に特化していたんだと思う。任務内容によってはそれが危険な場合もあるから…そこは使い分けが必要だな。」

 

アリサ「そうですよね…任務中には不測の事態が起こりえるものですからね。」

 

ユウキ「そうだね。でも、俺やタツミさんも思っていることだけど、その歳でそこまで突き詰めた戦術が身に付いている事はすごい事だと思う。」

 

アリサ「あ、ありがとうございます…」

 

 素直に褒められてアリサの顔が赤くなる。

 

ユウキ「そろそろ時間だ。行こう。」

 

 ふと時計を見ると出撃の時間が迫っている。戦術を練っていないため、不安はある。スタングレネードとホールドトラップを持てるだけ持って任務に向かう。

 

アリサ「はい!」

 

 そして2人は出撃ゲートを潜った。

 

 -愚者の空母-

 

 待機ポイントに着くと、遠目でボルグ・カムランを発見した。どうやら食事に夢中なようだ。

 

ユウキ「よし、俺が最初に前線に出て陽動するから、アリサは高低差を利用して隠れながら遠距離攻撃…オラクルが尽きたら俺と交代するって事で。」

 

アリサ「はい。」

 

 結局現地についてもまともな作戦が思い付かなかったため、簡単にお互いの立ち回りを決めるだけとなった。

 実際、こんな状態では不安しかないが、来てしまった以上アイテムを駆使して倒しすかない。

 ユウキがボルグ・カムランのすぐ近くまで接近して、チャージ捕食を展開する。今回は大捜索後に正式に解放された『ミズチ』ではなく、いつもの『壱式』を使用している。今回は広範囲を捕食する必要がないことと、ボルグ・カムランの堅さを考慮しての事だった。

 壱式で足の関節を狙って捕食する。これでユウキはバーストしたが、ボルグ・カムランも気がついて襲ってくる。だが、今はアリサの支援が届く範囲で戦いたい。一旦後退して、橋と船が接触している辺りまで戻る。

 

ユウキ「アリサァ!」

 

アリサ「行きます!」

 

 アリサが神機を吹かし、総攻撃を仕掛ける。だが、前面に盾を構えられてまともにダメージが入らない。

 

ユウキ「構うな!撃ち続けろ!」

 

 効いていないにも拘らずそれでも撃てと指示を出す。アリサは何か策があると信じて撃ち続ける。ユウキは依然盾を構え続けるボルグ・カムランの盾を蹴り上がり、盾の真上に跳ぶ。

 

ユウキ「吹っ飛べ!!」

 

 神機を構えてインパルスエッジを発射する。すると盾が砕けて、結合崩壊を起こす。爆破の勢いで回転しながらボルグ・カムランの方へ跳ぶ。胴体の上まで来ると、回転の勢いを利用して斬りつける。

 

  『キィン!』

 

ユウキ(くっ!硬ってぇ!)

 

 無慈悲にも金属音が響く。斬った場所も申し訳程度に傷がついているだけだった。だが、破壊力のある一撃なら攻撃が通りそうだと分かった。

 

  『キシェアアア!!!』

 

 不気味な奇声をあげてボルグ・カムランが活性化する。ボルグ・カムランはユウキの方を向いて突然頭を下げ始めた。何をしているのかと考えた瞬間、頭から大きな針を飛ばしてきた。

 

ユウキ「!!」

 

 驚きこそしたが、ある程度規則的に飛んできているため、どうにか掻い潜りながらも近づいていく。ボルグ・カムランの眼前まで来ると、切り上げつつ変形させて、アラガミバレットを放つ。先程ボルグ・カムランが放った針と同じものを撃ったが、ボルグ・カムランの頭に当たって突き刺さるだけだった。やはり相当堅いらしい。

 対してユウキが撃った衝撃で後ろに飛んだ。それと同時にスタングレネードを投げつける。ちょうどボルグ・カムランが盾を構えるが僅かに遅く、スタングレネードが盾の内側に吸い込まれて爆発した。

 

ユウキ「アリサ!」

 

アリサ「はい!」

 

 この隙にユウキとボルグ・カムランの後ろで撃ち続けていたアリサが交代する。目が眩んで動けないボルグ・カムランをアリサがチャージ捕食でバーストする。

 ちょうど動けるようになったボルグ・カムランがアリサを狙って尻尾の針で突き刺す。だがそれを横に跳んで綺麗に躱して、ボルグ・カムランに接近する。

 ユウキはそれをサポートするため、ボルグ・カムランの後ろに爆破レーザーを打ち込むと、その衝撃でボルグ・カムランが怯む。

 その隙をついてアリサはボルグ・カムランの懐に入り込み、ボルグ・カムランの頭を斬るが、金属音がするだけで薄く傷がつくだけだった。

 

アリサ「くっ!!神裂さん!交代してください!リンクバーストします!」

 

 ユウキがアリサの方に走り、アリサはユウキに向かって走る。それをボルグ・カムランが追走する。

 ユウキがアリサとすれ違い様にホールドトラップを仕掛け、一度ユウキも下がる。すると、ボルグ・カムランがトラップに掛かる。

 アリサからの受け渡し弾を受け取り、リンクバーストLV3が発動する。いつも以上に力が湧いてくるのが分かる。

 

  『ブチッ』

 

 ユウキの中で何かが千切れる様な音がした。

 

ユウキ「あああぁぁぁ!!!」

 

 ボルグ・カムランの盾の隙間を縫ってユウキが全力の一撃を振るう。

 

  『ブシァ!!』

 

 今まで斬撃が効かなかったにも拘らず、たったの一撃でボルグ・カムランの巨体が血を吹き出して切り捨てたられた。

 

  『ズガアァン!!』

 

 ボルグ・カムランが斬り倒された瞬間に、その後ろから何かを破壊する音が聞こえてきた。少し待っていると、砂埃が晴れて状況の確認が出来るようになる。そこにはボルグ・カムランと同じ切られ方をした廃墟があった。あまりの威力の高さに2人とも唖然としていた。

 

アリサ「あ、お、終わり…ですよね?」

 

ユウキ「あ、ああ。終わりだな…」

 

 我を忘れていたが、どうにか落ち着いて任務が終了したことを確認し、コアを回収した。

 

アリサ「あの、神裂さん。」

 

 不意にアリサが話しかける。

 

ユウキ「なに?」

 

アリサ「あの、神裂さんの事、下の名前で…ユウキって呼んでも良いですか?」

 

 ここまで復帰の手伝いをして貰って、苗字呼びと言うのはなんだか素っ気ない気がした。それ以外にも親しくなりたいと思っての提案だった。

 

ユウキ「ああ。いいよ。」

 

アリサ「ありがとう…『ユウキ』。」

 

 許可も出たので早速名前で呼んでみた。

 

アリサ(あ、あれ…?)

 

 だが、アリサには何か違和感があった。それを誤魔化す様に先に待機ポイントに向かって移動する。

 

アリサ「さ、さあ!任務も終わった事ですし、帰還しましょう。」

 

ユウキ「ああ。」

 

 ユウキがその後ろに続いて移動する。

 

アリサ(なんでだろう…名前で呼んだだけなのに…すごく恥ずかしい…)

 

 待機ポイントに戻る間、アリサの顔は真っ赤になっていた。

 

 -極東支部-

 

 極東支部に着くとアリサがユウキを呼び止めた。

 

アリサ「あの…これまで私の都合に付き合ってくれて本当にありがとうございました。お礼と言っては何ですが、受け取ってほしいものがあるんです。ついてきてくれますか?」

 

 そう言われてついていく。目的地は整備室のようだ。神機の整備をしているのだから、当然リッカがいる。

 アリサは整備室に着くと真っ先にリッカに話しかける。

 

アリサ「リッカさん。うまくいきましたか?」

 

リッカ「うん。我ながら良い出来だよ!」

 

アリサ「渡したいものと言うのはこれなんです。」

 

 そう言うとアリサとリッカが下がり、あるものが目に止まる。その先にはアリサが使っている装甲と色違いの蒼い装甲が鎮座していた。

 

アリサ「『ティアストーン』…受け取って貰えませんか?」

 

 鮮やかな蒼い色をした装甲はティアストーンと言うらしい。

 

アリサ「ティアストーンは元々私がロシア支部にいた時に使ってたんです。ただ、ロシアを出る直前に色々あって壊れてしまって…でもティアストーンにはたくさん守ってもらいましたから、名残惜しくて修理してもらっていたんです。ユウキに是非、使ってもらいたいんです!…使っていただけますか?」

 

ユウキ「…」

 

 どうやら思い出の品らしい。しかし、それを聞かされている本人は、半分ほど聞き流してしまっていた。

 その沈黙を受け取りの拒否だと思い、アリサの表情が一気に暗くなる。

 

アリサ「やっぱり…私のお古なんて…嫌ですよね…」

 

ユウキ「あ!いや…綺麗だったからつい見とれてて…本当に貰って良いのか?」

 

 聞き流していたが、思い入れのある物だとは分かっている。そんな物を貰うと言うのはどうにも抵抗がある。確認のため貰って良いのか尋ねる。

 

アリサ「はい!是非使ってください!」

 

ユウキ「ありがとう。リッカ!」

 

リッカ「オッケー!早速装備を変更するよ!」

 

 翌日、ユウキの神機には蒼い装甲が取り付けられていた。

 

To be continued

 




 アリサの復帰についてですが、原作ではツバキさんに謝罪している描写が無かった筈なので、自分なりに書いてみました。
 罪を認めてトラウマを克服する事で成長するところが描けていたら幸いです。

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