第一部隊の目の前には先日発見された新種がいた。そしてその足元には右腕と頭を喰い千切られたリンドウが横たわっている。
サクヤ「リン…ドウ…?」
コウタ「そんな…」
2人ともリンドウの生存を強く願っていたこともあり、絶望に叩き落とされた様な表情になっている。
ソーマ「クソが!」
ソーマが新種に突っ込んでいくが、新種はそれを躱し、コウタに向かって走る。
コウタ「…え?」
『ブシャア!!』
一瞬のうちに距離を詰め、ユウキの隣にいるコウタの頭を喰い千切った。体から頭が離れたことで、血が噴水の様に噴き出して、ユウキの上から降りかかってきた。
ユウキ「…あ…?」
ユウキの頭が真っ白になる。コウタが死んだことを理解できずに固まっている。
サクヤ「くっ!!」
サクヤが銃を射ち、応戦するも新種はダメージを受けることなくサクヤにタックルする。勢いで仰向けに倒れたところを、動かないように前足でサクヤを押さえつける。
サクヤ「い…いや!やめt」
『グチャ!!』
動けないサクヤの腹を喰い千切り、臓物をぶちまけながら上半身と下半身が分かれた。
ユウキ「う…ぁ…?」
新種は最後にソーマを狙う。向かってくる新種をイーブルワンで切り裂く。しかし、新種の前足での切り裂きに押し負けてしまう。
『ゴリ!ズシャ!!』
骨さえも切り裂きながら、ソーマに3本の傷を作りながら引き裂き、血が飛び散る。
ユウキ(次は…俺だ…)
しかし、足が縫い付けられたように動けなくなっている。『殺される』そう思ったがどこからか声が聞こえてくる。
アリサ「いやぁ…来ないでぇ…」
アリサが座り込んでいる。今度は足が動く。神機を握り直し、アリサの元に行く。はずだったが、何時の間にか新種がアリサのすぐ後ろに新種がいる。
『ブチ!!』
助ける間もなく、アリサがの上半身が喰い千切られる。ユウキが呆然としていると、何時の間にか眼前に新種がいた。
ユウキ「あ…」
『ブチ!』『グチャ!』『ゴリ!』と、嫌な音をたてながら、新種がユウキの右腕を喰い千切る。勢いよく喰い千切ったため、ユウキが仰向けに倒れる。
ユウキ「があああアあアアアアあああアあアアアアあアアあ!!!」
痛みから叫び声をあげ、のたうち回っていると下半身を喰われた。
ユウキ「ぎゃああああああああアアアあああアあアアアアあアアあアあアアアアあアアあ!!!!!」
下半身を食われ、ズル!という音と共に胃や腸が飛び出る。
ユウキ(いっそ…殺してくれ…)
痛みから開放されたくて殺してくれと懇願する。新種の恐ろしい顔が眼前に来る。痛みに耐えながらもどこか冷静に『頭を喰われて終わりか』と考えていた。
ユウキ「びゃああああああああアアアあアアアあああアあアアアアあアアあ!!!!!」
しかし、頭を喰うのかと思いきや左の耳と肩を喰われ、早く殺せと願う。そうしていると新種がユウキの頭を喰う体制になる。
その瞬間、確かに死を望んだ筈なのに、喰われる直前に『死ぬのが怖い』と思った。
だが、そんなことを思っていても逃げる事すら叶わず、ユウキも喰われて死んでしまった。
ユウキ「ぅ…ぁ…」
そんな悪夢を見たせいで、ユウキは深夜に目が覚めた。
-自室-
悪夢を見てからというもの、眠る事ができずにいた。その間にあることを考えていた。
ユウキ(…俺は…このままで良いのか…?)
ユウキは自分の現在の実力と今後について悩んでいた。仮にリンドウが生きているなら、現場の状況からも手負いであると考えられる。さらに、救助が必要なリンドウが自分で現場から居なくなるとは考えにくい。ならば、手負いのまま新種に追い回されている可能性が高いと考えた。
そんな状況で捜索隊がリンドウを発見し、自分が救助に選抜されたとしたら、その時に新種を倒してリンドウを助けられるか?
答えはNoだ。リンドウを手負いにするような敵に今のユウキが勝てるとは思えない。その時にソーマが出るのなら倒せるかも知れないが、その他の神機使いでは恐らく死ぬだろう。逆にリンドウの邪魔になる可能性の方が高い。
ならただ落ち込んで捜索隊の報告を待つよりは、救助の時にリンドウを助けられるように強くなる方がいいのではないか?時間が無いため確実ではない。だがただ待っているよりは、リンドウを助ける事に繋がるのでないか?ユウキはそう考えた。
どちらにしてもこのまま神機使いをやっていくとこのような事が何度も起こるだろう。その度に仲間を失うなんて嫌だ。何よりも自分の死が怖い。弱いままでは奪われ続けるだけだ。
そこまで考えると、もう体は動き出していた。いつも着ているコバルトのフェンリルの制服に着替えて訓練室に行く。深夜帯なのでエントランスにも人は居ない。そのまま神機を持って訓練室に向かった。
-翌日-
朝になり、深夜に使用許可を得ずに訓練室を使用したことで、ツバキからこっぴどく怒られた。
ツバキ「全く…訓練中に何かあったらどうする気だ。今後はこのようなことのないように!」
ユウキ「はい…すいません…」
ツバキからの叱責が終わると、ユウキが本来ツバキとしたかった話をする。
ユウキ「ツバキさん、お願いがあります。」
ツバキ「…なんだ?」
ユウキ「時間がある時でいいので...俺を強くしてください。」
ツバキ「…」
ツバキは一瞬黙った。何故このタイミングでそんなことを頼むのか?気になって聞いたところ、ただ捜索隊の報告を待つよりは強くなって救助で足を引っ張らないようにする方がリンドウ救助に繋がるとの事だった。
ユウキ「お願いします!!」
そう言ってユウキは頭を下げて頼み込む。
ツバキ「あまり時間はとれないぞ?それでもいいのなら観てやろう。」
ユウキ「ありがとうございます!!」
ユウキは礼を言いながら、もう一度頭を下げる。ツバキはどうするか迷ったが了承することにした。
そのまま訓練の申請のため、ヒバリのもとに向かう。
ユウキ「ヒバリさん、お願いがあります。」
ヒバリ「はい?なんでしょう?」
ユウキ「俺がアナグラにいる間、訓練室を使いたいのですが…」
ヒバリ「はい。時間帯はどうしましょう?」
訓練の時間は普通は長くて3時間程度なので、いつ頃、どのくらいの時間使用するのか聞いてきた。しかし、ユウキが伝えた時間帯は普通ではなかった。
ユウキ「アナグラにいる間ずっとです。」
ヒバリ「え?!ほ、本気ですか?」
ヒバリもこの答えには驚いた。極東支部にいる間はずっと訓練すると言っているのだ。
訓練室はいくつかあるため、どこか1つは空いているので、丸一日訓練することが出来ない訳ではない。だがどう考えても無茶苦茶だった。
ユウキ「本気ですよ…少しでも早く強くならないと行けないので…」
ヒバリもしぶしぶ納得してくれた。ただし、1人の都合で何時までも訓練室を占拠するわけにもいかないので、他に利用者がいる場合はその人を優先すること、使用時間の限界は深夜に0時までとすること、この2つが許可を出すことの条件だった。
ユウキ「ありがとうございます。あ、アリサに面会ってできますか?」
ヒバリ「えっと…先生がいる時なら面会可能になったみたいですね…まだ回復の兆しが見えないらしいですが…」
ユウキ「わかりました。ヒバリさんが心配していたことも伝えておきますね。」
そう言ってユウキは病室に向かった。
-病室-
アリサが病衣に身を包み、ベッドで眠っていた。
アリサ「すぅ…すぅ…」
ユウキ「アリサ…大丈夫…?」
大車「話しても無駄だよ。効果の高い鎮静薬が届いたのでね、当分意識は戻らないはずだ。」
ユウキ「…アリサ…」
ユウキは心配して思わずアリサの手を握る。
ユウキ「!!?!」
一瞬だったがユウキの知らない景色が脳内で再生される。逃げ惑う男女、こちらを見る黒い顔、画面に映るリンドウの姿、それらの再生が終わるとアリサの瞼がピクリと動いた。
アリサ「あれ…ここは…私…どうして…」
アリサがボンヤリしながらも目を覚ましてユウキを見る。
大車「い、意識が回復しただと?!…まさか…し、失礼する!」
ユウキ「え?」
あからさまに動揺して病室を出ていく。こういう場合、突然目覚めた患者に異常が無いか調べるのではないだろうか?
そんなことを考えているとボンヤリとした口調でアリサが話しかけてきた。
アリサ「今…あな…た…の…」
そこまで言うとアリサは再び眠ってしまった。
ユウキ(…何だっなんだ…?今のは…)
知らないイメージを脳内に直接刷り込まれた様な感覚になり、まるで実際に体験したようだった。
ユウキは先の感覚に疑問を持ちながら無意識にアリサに触れた自分の手を見つめていた。
-病室前の廊下-
大車「はい。ええまさか意識を取り戻すとは…」
大車は廊下に出て、誰かに電話を入れる。余程予想外だったのだろう。動揺して早口になる。
大車「詳しくは分かりませんが…ええ例の…」
ハッキリとした理由は分かってないようだが、アリサが目覚めた原因について、ある程度の目星はついているようだ。
大車「はい、新型の小僧と『感応現象』が起きたのではないかと…はい、どうしましょう…隔離しますか?」
この会話からも、アリサが意識を取り戻したというのは大車と連絡先の相手には余程都合が悪いらしい。
大車「そうですか…では暫くはこのまま…はい、では私はこれで。」
その言葉を最後に大車は通話を切った。
To be continued
今回は短めで少し読みやすくなったのではないかと思います。その代わり物語は進んでいませんが...
今回初めて本格的なグロ描写を書いてみたのですがなかなか難しいですね。できるだけ生々しく書きたかったのですが...文書で書くとなるとさらに難しく感じます。