GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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 今回はゴッドイーターの世界観の非情さと、主人公の決意の話です。


mission13 夢現

ルミコ「随分無茶したみたいだね...はい、おしまい!」

 

ユウキ「ありがとうございます。」

 

 帰投後、リンドウの命令で、病室で傷の治療をしてもらった。出血も止まり、傷が塞がり始めていたので、消毒と塗り薬を塗り、ガーゼと包帯で傷口を塞ぐ程度のもので済んだ。

 治療が済んだので病室を出ようとすると不意にルミコに呼び止められた。

 

ルミコ「何度も言うけど、あまりここに来ることがないようにね。」

 

ユウキ「…はい…」

 

 ユウキは目を逸らして返事をした。実際、この1ヵ月で何度かこうして傷の治療をしてもらっていた。これ以上何か言われる前にそそくさと病室を出た。

 

 -1週間後-

 

 ユウキが徹夜明けの任務を終えて帰ってくると、タツミが不機嫌そうにソファで何杯ものコーヒーを飲んでいた。

 

ユウキ「た、ただいま戻りました…何かあったんですか?」

 

タツミ「…あんたか。」

 

 いかにも機嫌がわるいですと言わんばかりの声色で返事をした。

 

タツミ「さっきの防衛任務でちょっとな…まあ、新入りのお嬢さんが優秀なのは分かった…でもよ…防衛任務は市民の安全が最優先なんだぜ?避難民をビビらすなって話だよ、パニクったら収集つかないだろ。掃討戦とは作戦の自由度が違うってことをご理解いただけないかねぇ」

 

ユウキ「まあ、パニックになたら避難させにくいですからね…」

 

タツミ「そうなんだよ!なのにあのお嬢さん避難中の民間人の目の前に発砲したんだぜ!民間人のことなんてお構いなしさ!」

 

 そんなタツミの愚痴を聞いた後、昼食に誘ったがもう済ませたとのことだったので、1人で食堂に向かう。

 食堂でジャイアント焼きトウモロコシ3本、大豆肉の肉丼、そしてプリンを注文する。やはりと言うか案の定と言うか、アリサの周りは人がいない。

 

ユウキ「ここ、いいですか?」

 

アリサ「…お好きにどうぞ。」

 

 前にもこんなやり取りをしたような気がする。アリサの許可を貰い、アリサの向かい側に座る。ユウキはずっと気になっていたことを聞いてみた。

 

ユウキ「アリサさん…防衛任務で民間人の近くで発砲したって聞いたんですけど、本当ですか?」

 

 アリサはため息をついて話始めた。

 

アリサ「その話ですか…極東支部の防衛班にはウンザリさせられますね。特に防衛班長さん…戦術より人々の気持ち…ですか?そんなことでアラガミを撃退できるとでも?話になりませんよ…」

 

ユウキ「でも、防衛任務の目的は拠点の防衛と市民の安全確保のはずです。避難民がパニックになったらその目的を果たす事も難しくなるはずです。」

 

アリサ「それも結局アラガミを全て倒せば済むことです。脅威を排除すれば安全も確保できます。」

 

ユウキ「パニックになると戦いにくくなりますよ?」

 

アリサ「関係ありません。邪魔なら脅して近づかせないようにするだけです。」

 

ユウキ「そ、そうですか…」

 

 さらっと出てきた恐ろしい発言に、ユウキは顔を引きつらせながら答えた。先に来ていたアリサは食事を済ませて出ていった。この後は講義があるので早めに食べ終え、ペイラーのラボに向かった。

 

 -ラボラトリ-

 

 ラボに着くと、先に出ていったアリサは勿論、コウタもいた。...机を枕にして完全に寝ていたが...

 ユウキが席に着くと、そんなことお構いなしと言わんばかりにペイラーは講義を始める。

 

ペイラー「アラガミ…オラクル細胞は発見された時、まだアメーバ状のものだった。それからミミズ状のアラガミが発見され、半年後には獣型のアラガミが発見された。」

 

 講義に合わせてスライドが変わっていく。最初は微生物の様な画像が映り、次に細長い微生物にも見える画像、最後に映し出されたスライドはオウガテイルの画像だった。

 

ペイラー「そして1年経つ頃には、1つの大陸がアラガミによって滅ぼされたんだ。彼らが食べたものの形質を取り込み、進化するとしても、異常なスピードだと思わないかね?」

 

 確かにその通りだった。例外はあるが、通常生物の進化には膨大な時間が必要になる。それをたった1年で人類を滅ぼしかねない強大な存在になり、多様な進化を遂げたのだ。普通に考えるとあり得ない事だった。

 ちらりとコウタの方を見てペイラーは講義を続ける。

 

ペイラー「…そう、正確には彼らは進化などしていないんだ。事実、オラクル細胞の遺伝子配列は変化していない…そう、一つとしてね。」

 

ユウキ「え…うん?」

 

アリサ「そんなはずはありませんよ!現にやつらは形態変化してるじゃないですか?」

 

 これだけ多様な進化を遂げているにも関わらず、遺伝子配列は変化していないと言う。どういう事か理解が追い付いていないユウキに対して、アリサは即座に反論した。

 

ペイラー「彼ら…アラガミもね、今の君と同じなんだよ。」

 

 アリサの表情が険しくなる。恐らく『アラガミと同じ』と言われた事が癇に障ったのだろう。しかし、ペイラーはその事に気がつかずに講義を進める。

 

ペイラー「食べたものの形質を取り込む言うのは、知識を得る、ということ。そう、ただ知識を得て賢くなっているだけなんだ。」

 

 コウタの横に移動して空虚を見つめてながらも講義を続ける。

 

ペイラー「どういう骨格をしていれば、早く動くことができるのか?空を飛ぶためにはどうすればいいのか?それこそスポンジが水を吸い込むように情報を取り込んで、わずか20年の間に、彼らは非常に高度な形態を得るまでに至ったんだ。」

 

 研究者の性なのだろうか、アラガミの進化の過程について語るペイラーは生き生きとしていて、珍しく声を大きくして、興奮したかのように語っている。

 

コウタ「うぅ~ん…」

 

 一度講義を止めて、落ち着いたのかコウタの頭をグーで軽く殴り、講義を再開する。

 

ペイラー「アラガミがコウタ君位勉強嫌いだったらよかったんだがね。」

 

 ペイラーはユウキとアリサの方を見て講義を再開する。

 

ペイラー「そう、彼らの勉強熱心さには舌を巻かされるばかりでね。なんと、ミサイルを発射するアラガミが目撃された噂まである。これが確かなら、彼らは人間の作った道具さえも取り込んだという事になる。実に興味深いと思わない?」

 

 そして再び少し上を見上げて、空虚を見つめてある可能性を語り始める。

 

ペイラー「それほどまでに複雑な情報を取り込めるのなら、まるで『人間』というアラガミが現れるのも遠い日じゃないのかもしれないね。」

 

アリサ「…人間という、アラガミ…?」

 

 ペイラーの意味深な発言を最後に講義は終了した。コウタを起こして、ユウキとアリサは任務に向かう準備をする。

 格納庫に行くとリンドウとサクヤが既に準備を終えており、2人は何時でも出撃できる状態だった。 

 車の用意のためサクヤは先に行ったため、残ったリンドウがユウキとアリサに話しかける。

 

リンドウ「ようお二人さん!講義はどうだった?」

 

アリサ「特に変わった事はありませんでした。」

 

 そう言ってアリサはそそくさと任務の準備に向かった。

 

リンドウ「どうにもアリサに嫌われているらしいな。」

 

ユウキ「リンドウさんが触れた時からあんな感じですよね。やっぱりいきなり触ったのがマズかったんじゃないですか?下手すればセクハラですよ?」

 

リンドウ「あぁ…やっぱそうかぁ?」

 

 そんなことを話ながら準備を終えて、バギーに乗り込み作戦地域に向かった。

 

 -贖罪の街-

 

 一度に20体と大量発生した小型種の殲滅のため、リンドウ、サクヤ、アリサ、ユウキは散開して各5体をノルマに戦闘を行っている。その全てがオウガテイルとコクーンメイデンであった。

 ユウキの周囲にはオウガテイル4体、コクーンメイデン1体と、丁度ノルマである5体が集まっていた。乱戦になるのは必至である。

 先ずは固定砲台となるコクーンメイデンを狙う。あまり時間をかけたくないので、一気に近づいて横凪ぎに切り捨てる。上手く真っ二つにして、バックフリップで後ろに下がる。途中でオウガテイルの真上を通り、掬い上げる様に斬り、縦に切り裂いた。

 着地を狙って左のオウガテイルが針を飛ばし、後ろと右のオウガテイルは突っ込んでくる。針を後ろ跳んで回避しながら神機使いを逆手に持ち直す。そして後ろを見ながら、オウガテイルの首元に突き刺し、迫ってくる右のオウガテイルへ投げつける。

 直撃して動けなくなった隙に、左のオウガテイルにステップで近づいて斬りかかるが、特徴的な尻尾を振り回して攻撃してきた。それを一瞬、後ろに下がってやり過ごし、空振りした所で再び近づいて斬る。漸く立ち上がった残り2体のオウガテイルも、一瞬で近づかれて斬り倒された。

 ベテランであるリンドウ、サクヤはどちらも数秒で片付け、アリサも然程時間をかけずに終わらせて、任務を終了した。

 任務終了後、4人はバギーに乗り込み極東支部に帰投する。かつての繁華街として栄えた場所も、ビジネスの中心だったビル街も、今は他の場所と等しく荒野か砂漠と化している。

 そんな場所をサクヤの運転で帰投していると、ユウキはふと周囲が気になった。

 

ユウキ「…?」

 

 ユウキが何かの気配を感じて身を乗り出し、目を細めてバギーの前方を見る。

 

アリサ「何ですか?」

 

 アリサにはまだ何も見えていないのか、ユウキの行動が不可解だった。

 

ユウキ「サクヤさん…あれって…」

 

 ここまで来てようやく前方に何がいるのか確認できた。4人のキャラバンだった。まだ20代前半の青年が手を振っている。その青年よりも10程年上であろう壮年の男、細身の女性、さらには10歳程度の少女までいた。

 

サクヤ「リンドウ…」

 

リンドウ「ここで見捨てるのも寝覚めが悪いしな…まあ、可能性は0じゃない…」

 

 『ダメだったら最悪な結果になるがな…』とリンドウとサクヤは同じことを考えていた。

 そして、そのキャラバンをバギーに乗せて極東支部に向かう。キャラバンの目的地も極東支部のようだ。

 

青年「助かりました。まさか、極東支部の神機使いの方に拾っていただけるなんて。」

 

 青年の話にユウキとサクヤが受け答えする。どうやら、最初はもっとたくさんの仲間がいたようだが、数日で大半をアラガミに殺されたらしい。

 しかし、サクヤは話すときは笑顔を向けたり、表情の変化があったが、ユウキ以外の空気はどこか重いものになっていた。

 

少女「…」

 

 そんな中、少女がユウキの方をじっと見ている。

 

ユウキ「?…なに?」

 

少女「お姉さん達はゴッドイーターなんだよね?」

 

ユウキ「うん。そうだよ。…あと、お兄さんね。」

 

 念のため釘を指しておく。

 

少女「じゃあアラガミをやっつけてきたの?」

 

ユウキ「まあね。」

 

少女「へぇ~すごいね!」

 

 少女の目がキラキラと輝いている。アラガミと言う一般人には傷さえつけることのできない怪物を倒せる存在が目の前いるのだ。妬まれる一方で幼子からはヒーローの様に写ることもよくある。この子の眼差しもその類いのものだろう。

 そんな話をしていると外部居住区の装甲壁に着いた。

 

サクヤ「民間人用のゲートはあちらになります。私たちが案内できるのはここまでです。ここらは自己の判断で動いてください。」

 

青年「ありがとうございます。助かりました。」

 

少女「バイバイ!お兄ちゃん!」

 

 そう言ってキャラバンの人達は大きなゲートを潜った。すぐ横にはフェンリル職員用のやや小さめのゲートがあるので、神機使い組はそこからゲートを潜る。

 バギーから降りて、極東支部に続く地下道に入る手続きをしている途中、少し離れた所で大きな声が聞こえてきた。

 

青年「そんな!命がけでここまで来たのに!そんのあんまりだ!」

 

 先のキャラバンにいた青年だった。何やらフェンリルの職員と揉めているようだ。

 

職員「そう言われましても!」

 

青年「もう一度チェックしてくれ!そうすれば誰か一人くらい…」

 

 青年が食い下がる。しかし、ユウキには何故かそんなことになっているのか分からなかった。先程のチェックし直すと言うのが関係しているのだろうか?

 

職員「申し訳ありませんが規則です。あなた方の移住は認められません。退去しなのいなら…」

 

 言い終わる前に職員が銃を構える。当然、防衛手段を持たないキャラバンの人たちは怯えながら後退りする。

 

ユウキ「やめろ!」

 

サクヤ「ユウキ!」

 

 サクヤが止めようと叫ぶが、そんなことは知らんと有刺鉄線を軽々と飛び越える。サクヤも続こうとしたが、リンドウに止められ、代わりにリンドウが飛び越えた。

 ユウキが銃の砲身を掴み、力ずくで下ろさせる。

 

ユウキ「何でこんなことするんですか!?民間人を撃ち殺す気ですか?」

 

 ずっと疑問に思っていた。この人達を助けるために極東支部に連れてきた筈なのに、何故門前払いされなければいけないのか。しかし、ユウキは外部居住区に入居するための条件を知らなかった。それ故に、現実がいかに非情であるかをこの後に思い知ることになる。

 

職員「彼らは入居条件の簡易適正試験を通らなかったんです。フェンリルの規則により、新たに外部から入居を希望する場合、フェンリル職員、または偏食因子の適正がある者とその親族以外の入居は認められません。」

 

 偏食因子への適正がない。つまりアラガミと戦える可能性さえないと言うこと。フェンリルはそんな人間は支援する必要はないとして切り捨てる規則を作っていたのだ。そうなれば、適正の無い者は外部居住区の外で、アラガミにただ怯え、飢えに苦しみながら外で生きなければならなかった。

 そんな事が許されるはずがない。彼らが諦める前に答えを出せ!ユウキはそう考えて必死に思考する。

 

ユウキ(外部居住区に入居できる条件は何だった?あの職員の言ったことを思い出せ!)

 

 『フェンリル職員、または偏食因子の適正がある者とその親族以外の入居は認められない』

 

 確かこう言っていたはずだ。彼らはフェンリル職員でも適合候補者でもない。残る可能性はそれらの『親族』であること。ならばこの場で書類上俺の親族にすると宣言すればもしかしたら通るかも知れない。いや、最悪個人で面倒を見るとすれば、そこまでフェンリルも介入してこないはず。

 

ユウキ「な、なら俺が面倒を見まs」

 

リンドウ「新入り!」

 

 個人で面倒を見る。そう伝える筈だったのに、リンドウに止められる。怨めしげにリンドウを見る。しかし、リンドウは冷めた目でユウキを見る。

 

リンドウ「借金返して、生きていく金を残すのが精一杯のお前に…何ができる?」

 

 そしてユウキはハッとする。今の自分にはそんな余裕はない事を思い出した。かつて生きるために窃盗を繰り返した分の借金を返済している最中なのだ。資金的にも余裕はなく、自分が食べていく分と装備品に使用する代金がギリギリで残っている程度なのだ。

 リンドウの一言で現実を突き付けられた。

 

リンドウ「このご時世だ…優しさで人は生きていけねぇんだ…」

 

 とどめとなる一言だった。優しさで人は救えないという現実を突き付けられ、ユウキの目から僅かな可能性の光が消えた。

 

青年「…行こう…」

 

壮年「行くってどこへ!?」

 

女性「ここ以外に安全な場所なんて…」

 

青年「探すしか無いだろう…色々…お世話になりました。」

 

 それだけ言うとキャラバンはゲートを潜り、外へ出る。全員目に光がなく、表情には絶望が色濃く表れていた。

 しかし、ゲートが閉まるその間際に見えてしまった。先程まで皆と同じ表情をしていた少女だが、こちらを見て、悲痛な表情で泣き叫んでいた。

 

ユウキ「まtt」

 

 『待って』そう言って手を伸ばした。しかし、その言葉は最後まで紡がれることはなく、少女の手を掴む筈だった手はゲートによって阻まれた。

 ユウキはその届かなかった手を強く握り、殴った所がひしゃげる程の力でゲートを殴る。表情には絶望、悔しさ、後悔といった様々な感情が混ざりあっていた。

 

ユウキ「何で…こんな…あの人達が何をしたって言うんだよ…」

 

リンドウ「人一人が生きていく食料や物資、さらには土地が無い状態だ。その少ない物資を、戦える人間の為に使うか、戦えない人間の為に使うか…どちらかを選ぶとしたら、お前ならどうする?」

 

 資金も資源も土地もない。そんな状況を作り、今もなお人類を脅かすアラガミに対抗できる人間を生かすために資源を使うのが普通だ。戦えない人間に与える資源がないのだ。

 ユウキもその事は理解している。だが認めることができないうえに、ひとつの疑問が浮かんだ。

 

ユウキ「…なら何で!…リンドウさんはあの時、俺を神機使いにしたんですか…」

 

 リンドウとユウキが初めて会ったときはまだ適正が発覚していなかった。リンドウの言い分であれば、ユウキは間違いなく『戦えない人間』だったのだ。なのにあの時のリンドウはユウキに手を差し伸べたのだ。

 

リンドウ「…直感だな。お前なら最強クラスのゴッドイーターになれる。そう思ったから引き入れた。」

 

 あの運動能力を見て、『最強クラスのゴッドイーターになると思った』と言うことが引き入れた理由のひとつではある。他にも理由はあるがほとんどが私情であった。

 いつの間にかしゃべらなくなり、俯いていたユウキが不意にしゃべった。

 

ユウキ「…リンドウさん。」

 

リンドウ「…何だ?」

 

 ここにきて、ユウキにひとつの可能性が思い付く。

 

ユウキ「あなたの言う通り…最強の神機使いになれば…俺の要求はフェンリルに通りますか…?」

 

 そう、フェンリルにとって必要不可欠な神機使いになり、自分の要望を通すと言うものだった。先のようなキャラバンの人たちを連れてきて、『彼らを保護しなければ二度と神機を握らない。』といった脅しをかける事だった。確実ではなく、現実味もないやり方ではあるが、今思い付く中では一番可能性があるやり方だった。

 幸いにもリンドウはユウキに最強クラスの神機使いになる可能性が大いにあるといっていた。

 

リンドウ「ハッキリ言うと…分からん。俺の要求は稀に通るかどうかって感じだ。」

 

 要求と言っても、ビールを一本多くするとか、品質を上げたものにすると言った小さなものである。そんな大それた要求が通るとはリンドウは思っていない。

 ユウキの言い分からすると、恐らく全ての難民を救おうとするだろう。そうするとフェンリルがどうなるか、フェンリルがユウキに何をするかを理解していた。

 だがリンドウはそれを伝えるか悩んだ。自分の無力さを思い知ったところに追い討ちをかけるように、最後の希望を奪うと立ち直れないかもしれない。そう思うとこの事を伝えることができなかった。

 さらに、エイジス計画の進行状況は完成形の1%にも満たない状況であるため、完成にはまだ何十年とかかるとされていることも伝えられない要因であった。

 

ユウキ「可能性は…あるんですよね…」

 

リンドウ「可能性だがな…」

 

そこまで聞くとユウキは鋭い眼光でリンドウを射貫いた。

 

ユウキ「なら…俺はあなたを…リンドウさんを超える。あなたの言う…最強のゴッドイーターになって…こんな世界…変えてやる!」

 

 しかし、ユウキはその思想がどれだけ我儘で、自身や周りを危険に追い込むか気付いていなかった。

 

To be continued




 今回は夢(理想)と現(現実)についてでした。後先考えずに誰彼助けようとする理想を追う主人公と、助けられる人間に限りがあると現実を突き付けるリンドウの対比が表現できたら幸いです。
 ゴッドイーターの世界観ってゴッドイーター以外には地獄より酷い世界なんじゃないかと書いてて思いました。アニメではそんな現実の非情さを描写していました。この描写はかなり印象に残っていたので、このような場面を書いてみたいと思っていました。
 このような現実を突き付けられ、それを
変える為に強くなる。そんな決意をしましたが、その方向性が間違っている事に主人公はまだ気付いていません。この決意がどの様に変わっていくか、はたまた変わらないのか、どう成長していくのか今から楽しみにしながら考えてます。
 ちなみに、主人公はゴッドイーターになるまで窃盗を続けていましたが、お咎めなしなんてことはなく、借金として返済する事を民間人に約束させて、リンドウはユウキをゴッドイーターに引き込みました。
 今回の話でとある矛盾があります。これに気が付くと主人公の経歴が予想できるかもしれません。難民達を必死に助けようとする所でも予想がつくかも知れません。

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