GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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ぬわああああん疲れたもおおおおん


mission108 襲撃

 -極東支部-

 

 極東支部に異変が起きたすぐ後、外部居住区にアラガミが侵入した事を知らせる警報が鳴り響いた。

 自分達の所属する支部に起きた異変を理解するよりも先に外部居住区が攻撃され、極東支部はまるで蜂の巣をつついた様な大騒ぎとなっていた。

 

「おいッ!!外部居住区が攻撃されてるのか?!」

 

「どうなってんだ!!何で支部長からなんの指示もないんだよ?!」

 

「アーサソールは何処だ?!俺達は何処を守れば良いんだよ?!」

 

 誰もが状況を飲み込めず、何が起きているのか分からないため情報を求めてカウンターに居るヒバリの元に集まってくる。

 

「そ、それが…アーサソールに出撃命令が出てないどころか所在が分からないんです!!それに支部長や博士とも連絡が取れなくて…」

 

 しかし当のヒバリも何の予兆も無かった襲撃に戸惑いを見せていた。しかもこの直前には全部隊に理由もなく待機命令が出され、どう言うことなのかとガーランドに問いただそうと連絡を取ったが繋がらず、詳細が確認出来なかった事が余計に事態を混乱させていた。

 すると突然エントランスのモニターを始め、全ての画面に一瞬のノイズが走る。

 

『ごきげんよう、全世界の諸君。これより、人類史上最高の吉報をお届けします』

 

「ガーランド支部長?!」

 

 突然の事態に騒ぎになっている中、エントランスのモニターにはガーランドがが映し出され、極東支部は更なる混乱を見せていた。そしてこの場に居る者は知りようもなかったが、この放送はエントランスだけではなく、支部内全て、それからフェンリルが敷いた通信網を使って外部居住区や海外にも発信されていた。

 

『世界を捕食するアラガミが現れてから数十年…我々は貴重な自然や遺産、それから家族、友人、そして国を奪われ続ける苦しみに耐えてきました。しかし、その忍び難き日々に終止符が打たれる時が来たのです』

 

「な、何だよこの放送?!」

 

「ダメです!!全ての回線がジャックされています!!」

 

 ガーランドが言う吉報とは、アラガミに全てを奪われ、怯えて生きる生活が遂に終わると言うものだった。しかし、時代が変わると宣言するガーランドの様子は極東支部に赴任してきた時と同じ様に、熱意を感じる言動に対して目付き冷たいものだった。

 放送を止めようと試みるが、既に放送に使われる電波網は掌握されていて対処が出来ない状態だった。そしてガーランドの言う吉報はアラガミの恐怖からの解放と言うが、外部居住区の惨事とは相反する状況になっていて、ますます極東支部は混乱する。

 

『我々は独自の研究の末、新型ゴッドイーターの感応能力を利用してアラガミを管理、操作する事に成功しました。荒ぶる神々はもはや人類の脅威ではなくなろうとしています。極東支部の居住区を見ていただければお分かりになるでしょう。今やアラガミは究極の兵器になり得る存在です。そしてその神さえも従えるこの私、ガーランド・シックザールの元に、世界は統一される時が来たのです』

 

 アラガミ達を操る研究が成功した事を告げると、画面がガーランドから切り替わり、数人のアーサソール隊が映し出される。その画面に映る背景からして屋外、しかも多数のアラガミ達に囲まれ、ジワジワと距離を詰めて今にも襲われそうになっている。

 しかしアーサソールがアラガミ達に手を翳すと、途端に全てのアラガミ達は大人しくなる。そして今度はアーサソール達が全員同じ方向に指を差すと、アラガミ達もその方を向いて走り出した。

 それにしても釣られてカメラも同じ方を向くと、そこには防壁を破られ、既に多くの黒煙が立ち上っている極東支部の外部居住区が映った。

 

『フェンリル本部、ならびに各支部の皆さんに告ぐ。直ちに全ての権限を放棄し、私の元に付きなさい。そうすれば身の安全と私の統治の元、恒久的な和平を保証しましょう。そして私に逆らう愚か者にはやがて誕生する最強の神(フェンリル)から怒りの鉄槌が下されるでしょう』

 

 再びガーランドがモニターに映される。自分の支配を受け入れるならばアラガミの脅威から救ってやる。しかしそうでない者には制裁を加えて従わせるか、最悪命を奪ってでも分からせる。この極東支部の襲撃は謂わば逆らう者はこうなると言うデモンストレーション…ガーランドが世界を支配するための贄として使われている事は映像を見ている者達には察することができた。

 

『それでは全世界の諸君、良い返事を期待しています』

 

 ガーランドの映像を介し、演説の様なフェンリルへの宣戦布告が終わると、モニターはプッツリと消え、真っ暗なものに変わった。

 当然その場に居た者は何を言っているのか理解が追い付かなかったが、この事態を介した引き起こしたのはガーランドだと言うことは分かった。しかしその事実は神機使い達を余計に混乱させる原因にもなった。

 

「なん、だよ…?今のは…?」

 

「じゃあ、居住区を襲ってるのは…ガーランド支部長だってのか?!」

 

「訳わかんねぇ?!どうなってんだ?!」

 

 先の映像に映っていた景色が本当に極東支部ならば、この状況を作り出したのはガーランド自身と言うことになる。まさかトップが所属する支部を見せしめの為に攻撃するなどとは考えが及ぶ筈もなく、誰もがどうすればいいか分からなくなっていた。

 

「何で…こんな…」

 

「アラガミを操って世界中の人間を服従させようってか…?ふざけやがって!!」

 

「ノ、ノゾミ…母さん!!」

 

 アリサは自らの野心の為に平然と大勢の人を殺められるガーランドの奇行を信じられずに困惑し、ソーマは傲慢極まるガーランドの計画に吐き気を催す程に嫌悪する。そしてコウタは今の状況に絶望しながらもノゾミとカエデの無事を信じ、待機命令を無視して外部居住区に向かおうとする。

 

  『ゴァァアッ!!!!』

 

 しかし突然出撃ゲートを突き破り、雄叫びを上げながら小型アラガミが複数侵入してきた。

 

「オ、オウガテイル?!」

 

「何でアナグラん中に?!」

 

  侵入してきたザイゴートとその堕天種達は極東支部の内部へ散っていき、オウガテイルは次々とエントランスの設備を破壊すべく暴れまわる。流石に神機使いでも神機を持っていない状態では戦えない。ただひたすら神機使いや支部のスタッフ達は瞬く間にパニックを起こして逃げ惑う。

 

「狼狽えるな!!」

 

 突然極東支部内に現れたアラガミに神機使いを初め、極東支部のスタッフが慌ててパニック状態となる中、凛とした声が響き渡る。

 その後、白い影が躍り出て、壊された施設から飛び出た鉄骨を掴んで引き抜きながら白い影はオウガテイルに飛びかかる。

 

「哈ッ!!!!」

 

 声の主はツバキだった。彼女は掴んだ鉄骨を侵入してきたオウガテイルの装甲が薄い頭に突き刺し、貫通した鉄骨はそのまま床にまで突き刺さった。

 オラクル細胞の塊であるアラガミを倒すことは出来ないが、これで足止めはできる。その間にツバキはヒバリを押し退ける様に放送機器の前に立ってスイッチを入れる。

 

「アナグラの全職員に通達!!これよりアナグラの指揮権は一時的に私が預かる!!

第二、第三部隊は外部居住区でアラガミの掃討!!第四、第五部隊はアナグラの防衛!!第六部隊は住民をシェルターに避難させろ!!600秒後に隔壁を作動させる!!非戦闘員はそれまでに避難しろ!!」

 

 流石は数々の激戦を潜り抜けてきた経験の持ち主だ。ツバキは迷う事無く次々と各部隊に指示を出す。

 そしてツバキは極東支部の切り札である第一部隊に指示を出そうとするが、その場にユウキがいない事に気が付いた。

 

「ユウキはどうした?!」

 

「わ、分かりません。アナグラに帰ってきたのは確認しているのですが…この騒ぎに気付かないなんて何かあったんじゃないかと…」

 

 この場に帰ってきたはずのユウキがいない。ここ最近の様子から、自分に危害を加える可能性があるなら真っ先に前に出て来るはすだ。しかも相手が人間ではなくアラガミならば、尚更容赦なく敵を討ちに来るだろう。

 しかし実際にはこの騒ぎに気づいた様な素振りも見せない辺り、本当に何処で何をしているのか検討も付かない状態だった。

 

「チッ!!ヒバリ!!ユウキの反応を追え!!」

 

「は、はい!!」

 

 ツバキの怒号の様な指示でヒバリが端末のキーボードを叩き、ユウキの腕輪の反応を探し始める。すると思いの外あっさりと反応が見つかった。

 

「反応…キャッチしました!!エイジスです!!それにこれは…」

 

「どうした?」

 

「アーサソール隊もほぼ全員居ます!!それに榊博士の端末反応も!!」

 

 ヒバリが反応を掴んだ場所はエイジスだった。しかもその横にはペイラーの端末の反応もある。それを取り囲む様にアーサソール隊の腕輪の反応がある辺り、ユウキとペイラーはアーサソールに拘束されているのではないかと、その場に居た者は考えた。

 

「ツバキさん!!」

 

「第一部隊はエイジスに向かえ!!アーサソールが集まっているならガーランドもそこに居る可能性が高い!!奴の企みを阻止しろ!!」

 

「…分かりました。行きましょう!!」

 

「了解!!」

 

 ユウキはエイジスに居る。それを知ったアリサとソーマは即出撃の体勢に入る。

 

「けどそれじゃあノゾミと母さんがっ!!」

 

 しかしコウタには守るべき家族がいる。安否が分からず、どうなったのかが気がかりだ。身を守る術を持たない家族とその身一つでも戦える同僚では家族を優勢したいと思うのも当然だ。今にも飛び出そうとするコウタにツバキは待ったをかける。

 

「大丈夫だ。先程お前の母上と妹は無事にシェルターに避難したようだ」

 

 そう言ってツバキは自分の端末の画面をコウタに見せる。そこには無事にシェルターに避難出来た事を知らせる通知が来ていた。ツバキは予め神機使いの親族が外部居住区に居る場合、シェルターに逃げた際に通知が来る仕掛けをした腕輪を持たせてあったのだ。

 

「ご家族の事は心配しなくてもいい。安心して戦ってこい」

 

「はいっ!!」

 

 これで第一部隊の目的ははっきりした。その際の心配事もなくなった事で、迷うことなく自らの神機とユウキの神機を持ってエイジスへと向かった。

 

 -神機保管庫-

 

 極東支部が襲撃を受けた後、技術班の面々で使用者のいない神機のロック作業をしていた。以前と違い、複数人での作業で極力時間を短くした事で、襲撃から然程時間をかけずに作業が終了しつつあった。

 

「リッカさん早く!!またアラガミが来ますよ!!」

 

「分かってる!!この子達のロックだけでも…!!」

 

 そんな中、残り数台の神機のロックをしていたリッカに、作業を終えた技術班のスタッフが逃げるように伝える。だがもう少しでロックが終わることもあり、リッカは作業を優先させてその場に残った。

 

  『ガァンッ!!』

 

「オウガテイル!!」

 

 しかし、残り数工程というところでオウガテイルが侵入してきた。完全に逃げ遅れてしまい、身動き出来なくなったリッカにオウガテイルが襲いかかる。

 

  『ブシュッ!!』

 

「…え?」

 

 もうダメだと思い、思わず目を瞑る。しかし、血の吹き出す音が聞こえてきたと思えば、いつまで経っても痛みが襲ってくる気配はなかった。

 

「死ん…でる…?」

 

 恐る恐る目を開けると、そこには真っ二つに切り裂かれたオウガテイルが血を流して倒れていた。

 

「誰が…?」

 

 この場には神機使いはいないはずだ。一体誰がオウガテイルを倒したのかと考えていたが、今は避難が先だということを思いだし、すぐにシェルターへと避難した。

 

 -エントランス-

 

 神機使い達が出撃して以降、エントランスを含めて多くのフロアに小型種が侵入して、極東支部を荒らし始めた。極東支部に残った神機使いがアラガミ排除のために戦う中、ツバキもそこら辺に落ちていた建材用の鉄骨を片手に戦っていた。それも、戦況分析とオペレート、それからツバキが指示を出す為の情報整理を担当するヒバリを守る為であり、ツバキは鉄骨を振り回してヒバリからアラガミを遠ざけている。

 

「クッ!!内装が入り組んでいる上に重要機材があっては戦いにくいか…!!」

 

 エントランスを守る他の神機使い達も、重要な設備に攻撃を当てない様に戦うのは難しいらしく、数は減っているものの防戦一方という状態だった。

 

「多少備品や機材が破損しても構わん!!アラガミの排除を優先しろ!!」

 

 このままいずれ劣勢になると考えたツバキは施設と戦力を秤にかけ、戦力を取って指示を出す。

 それを聞いた神機使い達は設備を守る様な戦い方からアラガミを倒す事を優先した戦い方にシフトした。そのお陰か、すぐに態勢は立て直され、アラガミの数は減ってきていた。そんな中、勢いを取り戻しつつ神機使い達から逃れてきたオウガテイルがツバキの元に向かってきていた。

 

「チィッ!!」

 

  『ザシュッ!!』

 

 対応が遅れた。そう思い焦りを感じながらも鉄骨を振ろうとした頃には、オウガテイルは後ろに居た何者かによって切り裂かれる。そこにはツバキ達も知らない金髪長身の女性、それから10歳前半と思われる少女…シェリーとライラが立っていた。

 

「お前達…何者だ?」

 

「私たちは敵ではありません。今のところは…ですが」

 

 当然ツバキは警戒するが、シェリーが自らを味方と称した事で一瞬警戒心を緩めたが、最後の挑発的な一言でツバキは一気に警戒心を強めた。

 

「…信用できるとでも?」

 

「神裂ユウキの意思に従う者…と言えば、多少は信用してもらえますか?」

 

 ここで何故ユウキの名が出てきたのかと驚きはしたものの、ユウキの息のかかった人物と言う事でツバキは少し警戒を緩める。

 

「主君の命令だよ。ここを守れってね」

 

「…分かった。信じよう」

 

 現状、問題行動を起こしはするものの、明確に敵対してはいない。そのユウキが極東支部を守れと命じ、それに従っているならば戦力としても十分期待できる。ツバキはシェリーの言うことを信じて、ライラと共に防衛戦の戦力に加える事にした。

 

「なら私達はこのまま支部の防衛に加わるわ」

 

「良いだろう。ヒバリ、状況は?」

 

「神機保管庫のアラガミは大多数を駆逐、出撃ゲート付近にもアラガミは居ません。現在はここと各フロアに侵入したアラガミの対応中です。どうやら博士のラボや役員区画に集中している様です。恐らく機密情報や研究設備の破壊が目的ではないかと思います」

 

 ツバキの同意を得られたので、シェリーとライラは極東支部の防衛に加わる事になった。ツバキが状況確認を求めると、ヒバリはキーボードを叩いて情報を集める。

 アラガミの反応から、狙いはペイラーの研究室や支部長室等に記録されている研究データではないかと考える。それを聞いたツバキは2人の配置を高速でシミュレートして、何処に配置するのがベストかを考える。

 

「聞いての通りだ。お前達には博士のラボに向かってもらう」

 

「はーい!!」

 

「分かりました」

 

 ガーランドがラボを狙うのは、万が一が起きたための対抗手段を潰す意味合いがあったのではないかとツバキは読んだ。ペイラーの頭脳は味方であれば心強いが敵であれば厄介な事この上ないはずだ。今ペイラーがエイジスに連れていかれたのもそれが理由の1つだろう。しかし、ペイラーの傍には極東支部最強戦力のユウキもいる事からもペイラーが生きて帰って来る事も十分にあり得る。

 そこでこの戦いが長期化した時の事を考え、対抗手段を守る意味でもシェリーとライラを研究室へと送り込む。それを了承したシェリーとライラは普段は閉ざされている非常階段を使って地下へと進んでいく。

 

 -ラボラトリ-

 

 シェリーとライラがツバキの指示通りにペイラーの研究室に来ると、既に神機使いが3人、アラガミは神機使い1人に対して3、4体という状態で戦っていた。ただでさえ狭い通路で戦いにくいのに複数体を相手にするのでは苦戦するのは当然の事だった。

 

「クソッ!!こんな狭い通路じゃマトモに戦えない!!」

 

「増援に来たよー」

 

「あぁ?!誰だお前ら?!女子供が何しに来たんだよ?!」

 

「あんだと?!」

 

 ライラが増援に来たことを伝えるが、この非常事態で防戦一方な状況ではまともな思考ができない状態だった。知らない人間ということもあり、神機使いとは思わず暴言に近い言葉で迎える。当然ライラも頭に来て暴言で返した。

 

『おいっ!!誰か来たんなら役員区画にアラガミが侵入してるんだぞ!!こっちの応援に来いよ!!』

 

「博士のラボも襲われてるんだぞ?!行けるわけないだろ!!」

 

 どうやらシェリーとライラが到着した事は通信で他フロアに伝わっているようだった。しかし全員余裕がないのか、増員を自分の所にまわせと荒い口調で喧嘩を始めた。

 

『ベテラン区画にもアラガミが来て…クッ!!狭くて戦いにくい!!誰か回り込めないのか?!』

 

『新人区画は片付いた!!次は?!』

 

「ラボに来てくれ!!」

 

『何を言ってる!!役員区画だろ!!』

 

「こっちには博士の研究データがあるんだぞ?!」

 

『こっちにも機密情報があるんだぞ!!』

 

 手が空いたものが居ると自分の元に来いと喧嘩をを始める。統制が取れずに現場は混乱を極めていた。

 

「上から指示が来ないぞ?!どっちに行けばいいんだよ?!」

 

 どうやらツバキからの指示はここには届いてないようだ。いつもなら近くにコクーンメイデンが居て、ジャミングを受けているのだと想像できそうなものだが、この非常事態に冷静な判断ができないでいるようだった。

 

  『ズガァンッ!!』

 

「ビービーうるせぇんだよっ!!!!」

 

 突然神機使いの1人を襲っていたオウガテイルが通路の奥に吹っ飛んだ。その理由はすぐに分かった。ライラが辺りの設備が破壊されることを気にすることなく巨大なバスターブレードを振ったからだ。

 さらに暴言を吐かれた後で頭に来ていたことと、情報1つが来ないだけで混乱を極め、統制がとれなくなる等あまりの体たらくっぷりを見ていたライラが遂にキレた。

 

「細けぇ指示がねぇと動けねぇのか木偶の坊ども!!テメェらのその頭は飾りかぁ?!」

 

 苦戦する、指示が来ないという理由でまともに戦えなくなる神機使い達の姿を見てしびれを切らしたライラが狭い通路を破壊しながら次々とアラガミを倒していく。

 

「喚いて足引っ張るだけなら隅っこに固まってろ短○ども!!邪魔するならお前ら全員アラガミの餌にすっぞゴラァ!!」

 

「…はぁ」

 

 口汚く罵って神機使い達に邪魔だと言って下げさせる。そしてキレたライラを見たシェリーはしばらくは荒れそうだと思いながらため息をついて残りのアラガミを倒していった。

 

 -外部居住区-

 

 ガーランドの手によって襲撃された外部居住区はあらゆる施設が破壊されて瓦礫に山が出来上がった状況で、既に多数の火の手が上がり黒煙が立ち上っていた。当然、外部居住区の住人は混乱しながらも自主的にシェルターへと逃げ込んでいた。しかし、それでも多くの人が逃げ切れずにアラガミに喰われ、建物の崩壊に巻き込まれて命を落としていた。

 そんな中、赤と黄色のヴァジュラテイルから逃げる親子に2体のアラガミが襲いかかる。

 

  『バンッ!!』

 

 しかし青い狙撃弾が赤いヴァジュラテイルの側頭部を撃ち抜き、赤黒いチェーンソーの様な腕が黄色のヴァジュラテイルを切り捨てる。

 

「早く逃げろ!!」

 

「3番シェルターがまだ空いてるわ!!急いで!!」

 

 アラガミを倒したのはリンドウとサクヤだった。ユウキと別れた後、2人は外部居住区に潜伏していたのだが、このような事態になった為に一足先に防衛戦を開始していた。

 民間人に避難先の情報を伝えると、襲われていた親子はサクヤの指示通りのシェルターに避難した。その間もリンドウとサクヤはアラガミ達の相手をしているが、2人だけではアラガミの侵攻を防ぐことはできず、次々と施設を破壊されていく。

 

「統制されたアラガミってのは思ったより厄介だな…どうあっても守りの薄いところを突かれてしまう」

 

「私達2人だけじゃ守りきれない…!!」

 

 2人ではどうしてもアラガミを相手にするにしても手が足りない。自身の力不足を悔やみながらも次々とアラガミを倒していく。そんな中、小さな少女が独りでザイゴートの群れに追われているのが目についた。

 

「クッソォ!!」

 

 リンドウは少女に向かって駆け出す。

 

  『バスッ!!』

 

 先頭のザイゴートを切り裂いてリンドウが少女とアラガミの間に割ってはいる。

 

「当たれっ!!」

 

 次いでサクヤが数体のザイゴートを纏めて撃ち抜く。突然の乱入者と横からの攻撃に、ザイゴートは動きを止める。その隙にリンドウが右腕を横凪ぎに振り、残った敵を一掃する。

 少女の周辺にアラガミがいない事を確認すると、リンドウが少女に話しかける。

 

「もう大丈夫だ。走れるか?」

 

 余程の緊張状態だったのか、リンドウの問いかけに言葉で答えるのではなく、激しく首を上下に振って走ることができる事を伝える。

 

「よし、ならあっちにシェルターの入り口が見えるか?俺が一緒に行くから、走ってあそこに逃げるぞ。いいな?」

 

 リンドウが指差す方向にはアラガミの襲撃に備えるためのシェルター、その入り口が見えていた。

 少女は勢いよく首を縦に振る。するとリンドウは少女を抱えて、シェルターへと逃げる為に走り出す。

 

  『グォォオッ!!』

 

「リンドウッ!!」

 

 しかし後ろからコンゴウが転がりながら急速に接近してくる。コンゴウの追撃に気がついたサクヤがすぐにコンゴウに銃口を向けるが、それよりも先にコンゴウが体を丸めてリンドウと少女に向かって転がり始める。

 リンドウなら大丈夫と目を離した事が完全に裏目に出た。既に照準が狂ってしまった事で支援が遅れ、少女を抱えたリンドウに攻撃が当たることがほぼ確定していた。一か八か、リンドウは少女を抱えたまま反撃しようと右腕を構える。

 

  『ダァンッ!!』

 

 しかし、突然コンゴウの横から爆発が起き、その衝撃で飛ばされて倒れた。そして爆発のした方を見ると、そこには見覚えのある人物が瓦礫の上で銃口を向けていた。

 

「お待たせしました!!」

 

「カノン?!」

 

 『グォォオッ!!』

 

 爆発を引き起こしたのはカノンだった。予想してなかった増援にサクヤは思わず驚きの声をあげる。しかしその間にサクヤの後ろからシユウが接近してきた。両翼手でサクヤを叩き潰そうと振りかぶる。だが次の瞬間には狙撃弾がシユウの頭部を撃ち抜き、続けざまに発射された狙撃弾が胴体を貫いてコアを破壊する。

 

「油断大敵よ」

 

「ジーナ!!」

 

 声が聞こえた方を見るとジーナが神機を構えていた。続けざまに増援が来る中、コンゴウが起き上がりリンドウへの反撃を試みた。だが右腕を振り上げた瞬間に何者かに背中からチャージクラッシュを叩き込まれた。

 ミンチへと姿を変えたコンゴウの後ろにはブレンダンが神機を振り下ろした後の構えで立っていた。しかしそのさらに後ろにはボルグ・カムランが接近して来ていた。ボルグ・カムランが近付いてくる中、突然口腔内に電属性のレーザーが撃ち込まれる。弱点ヶ所に弱点属性を撃ち込まれ、ボルグ・カムランが怯むと、その隙にもう1人がボルグ・カムランの頭にハンマータイプの神機による一撃が叩き込まれ、ボルグ・カムランの頭蓋は砕けてぺしゃんこになった。

 

「ブレンダン・バーデル、これより前線に加わる」

 

「大丈夫ですか!?」

 

「加勢します!!」

 

「ブレンダン!!それにフェデリコとアネットも!!」

 

 続いての増援はブレンダン、フェデリコ、アネットの3人だった。次々と防衛班が揃いつつある状態で、今度は近くに現れたコクーンメイデン、それ接近してくるサリエルに無数のオラクル弾が浴びせられる。

 コクーンメイデンは倒せたがサリエルはまだ健在だったが、奇襲のお陰で怯んで隙はできた。その間に何者かがサリエルに接近し、鋭い太刀筋で切り伏せた。

 

 

「まったく、俺様がいねぇとだらしねぇな!!」

 

「アンタらだけに報酬は渡さねぇぞ」

 

「シュン!!カレル!!」

 

 そして次に現れたのは得意気なシュンと報酬アップを狙うカレルだった。遂に防衛班が1人を除いて揃った。防衛班がここまで揃って来ているのならば、最後の1人も必ず来るとリンドウとサクヤは確信を持った。

 

「第二部隊、及び第三部隊!!これより居住区防衛の任に就く!!」

 

 最後に防衛班班長のタツミが現れ、正式に外部居住区の防衛任務に就く事をリンドウとサクヤに伝える。リンドウと目が合うとタツミが不敵に笑う。それを見たリンドウもそれに連れて笑った。

 

「反撃しましょう!!リンドウさん!!」

 

「よし、押し返すぞ!!食い潰せぇぇえ!!!!」

 

 タツミの言葉を聞いたリンドウの号令と共に神機使い達が雄叫びが響き渡る。遂に神を操る暴君への反撃が始まった。

 

To be continued




あとがき
 お久し振りです。3月中は緊急の案件ばかりやっていたので全く進んでいませんでした。
 そんなこんなでだいぶ放置していた間に例のウイルスが蔓延しているようですが、しばらくは基本の対策を徹底して感染しないようにお気をつけ下さい。
 本編の方はガーランドが本性を現し、アナグラと外部居住区が襲撃されました…いっつも襲撃されてんな。
 そんな中でも目を引くのはやっぱり漫画でもあったツバキさんの鉄骨ズドンですね。どんな腕力してんだよこの人…退役したのに現役の連中よりもはるかに強いんじゃないかな?この人も人間辞めてる勢に片足突っ込んでる気がするなぁ…

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