GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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今回からスパイラル・フェイントをベースにした新章がスタートします。大筋は変わりませんが細かい流れはちょくちょく変わってます。


スパイラル・フェイト編
mission101暗躍


 -極東上空-

 

 所々雲が浮かぶ青空の下、フェンリルのエンブレムが書き込まれた大型の輸送ヘリが3機、横並びで極東の空を飛んでいた。この中で一番左にあるヘリの中には、ユウキが腕と足を組んで座っていた。しかしその傍らには神機が『1つ』しかなかった。そして反対側には長い金髪の眉目秀麗な紳士が足を組みながら本を読んでいた。しかしその紳士の左目に眼帯、右足は義足となっていて、

傍らには杖が立てかけられていた。

 

(ガーランド・シックザール…ヨハネス前支部長の実弟であり、ソーマの叔父に当たる男…何故アーク計画から1年も経ったこのタイミングで支部長に就任したんだ…?)

 

 ユウキが本を読んでいた男性、極東支部の支部長となる『ガーランド・シックザール』の思惑を考える。ヨハネスが死に、その後に空いた支部長の席を当時から狙っていたのは間違いないだろう。しかし、1年も間を開けたタイミングで就任に志願した理由は何なのか…それに別のヘリには『研究機材』と称した機械も多数積まれている。それらの理由も考えていると、ガーランド読んでいた本から目を離してふと外を見る。

 

「見えて来ましたね」

 

 そこには機械的で円形の高い壁に囲まれた都市が少し小さいが見えてきて、いつの間にか極東支部がもうそこまで見えるところまで来ていたようだ。

 

「極東支部…神々を殺して手に入れた虚構のアジールか…」

 

「…」

 

 突然ガーランドは極東支部を人々が生きられる仮初めの楽園だと詩的に表現したが、ユウキは何を言いたいのか良く分からなかった。ガーランドがこのタイミングで支部長に就任した目的等の考え事をしていた事もありそれに対して特に何も言わなかった。

 

「…あまり文学には興味がないみたいですね」

 

 ガーランドは『パタン』と音を発てて読んでいた本を閉じ、本を膝の上に乗せた。自身が詩的な表現で極東支部…フェンリルを表現したのだが、ユウキが無反応だったために詩や小説の様な文学には興味がないのだろうと判断したようだ。

 

「…いえ、今まであまり活字に触れこなかったので…何を言いたいのかよく分からなかっただけです」

 

「成る程。活字、本は良いですよ?自分の経験した事のない世界を魅せてくれる。その中でも『詩』は短い文章で内容をまとめていてね。詩はその短い文の中で多くの意味を持ち、数多の解釈をさせる…まさに文字、言葉を使った芸術なのだよ」

 

 話しかけられたユウキは組んでいた腕と足を正し、ガーランドの方へ視線を向ける。対してガーランド余程好きなのか、どちらかと言えばクールであまりしゃべらない印象を受けたのだが、この話題に関しては良くしゃべり、何となく意外に感じたユウキだった。

 

「そうですか」

 

「なんならお貸ししましょうか?活字初心者でも読みやすい詩集も手元にありますよ?」

 

「…考えておきます」

 

 本を読まないと聞くと、ガーランドは読みやすい本を貸すと言ったがのだが、ユウキはその場では答えを出さずに誤魔化した。

 

「受け取る…と素直には言ってはくれないのですね」

 

「…借りはしたものの読まないのが一番失礼かと…私の立場上、中々読書に費やす時間が取れない身なので」

 

「残念です…しかし、言われてみれば極東支部第一部隊の隊長にして切り札(エース)…すべての神機使いの中でも最上位の実力者ならば、様々な任務に引っ張りだこでしょう。事後処理の事も考えると…確かに自分の時間を持つのは難しいでしょうね」

 

 素直に受け取らないのはユウキなりに考えての結果だったようだ。それを聞くと、ユウキの仕事上の立場を察してガーランドも納得した。

 するとユウキは突然ガーランドから目を放して、ヘリの後ろ側を見た。その後立ち上がって壁に掛かっている受話器を取り操縦席へと内線をかける。

 

「後ろから追ってきている奴がいる。1号機はこのままガーランド支部長をアナグラへ、3号機はパイロットを2号機に移して待機。パイロットの移動が終わり次第2号機も1号機に続け」

 

『イエッサー。3号機への移動は?』

 

「今すぐだ。あまり時間がない。すぐ編隊を組め」

 

 そう言うと、ユウキは受話器を置いて立て掛けていた神機を握る。ヘリの扉を開けると、既にヘリが3台、扉を開けた状態で上へと上がる様に横並びになって待機していた。

 ユウキはヘリから飛び出して真ん中、2号機へと乗り移る。そして2号機の扉の横からロープを取り出し、次は3号機へと飛び移る。そして3号機を自動操縦に切り替え、ロープを伝わせてパイロットを2号機へと移すと、ユウキはロープを外す。それを合図にガーランドを乗せた1号機、その護衛の2号機は速度を上げてその場から離れた。

 

「お手並み拝見…といきましょうか」

 

 ガーランドが呟く中、ユウキはヘリが離れていくのを見届けると1度操縦席にヘリを自動操縦の指令をホバリング状態に切り替える。

 その後ユウキは扉まで移動し、ジャンプして扉の縁に手をかける。すると懸垂の様な動作をして勢いよくヘリの上へ昇る。そして中心まで移動すると装甲板に手をかける。

 

  『バゴンッ!!』

 

 鉄板が波打つ時の様な音と共に装甲板が剥がされる。そこにはいつも左手で使っていたユウキの神機が格納されていた。ガーランドに自分が特殊な体質だと知られると、そこから特異点に行き着く可能性がある。そのため、その事を悟られない様彼と会う時には神機を1つだけ持ち、もう1つは別のヘリに隠しておいたのだ。

 ガーランドを乗せたヘリが遠ざかっていくのを再度確認すると左手で神機を取り、向かって来ているアラガミの気配を探る。

 

(5…6…いや、7か…進行ルートを考えれば…予測通り、最近発見された『ヨルムンガンド』が相手になるだろうな…)

 

 気配を探りつつ、現在の状況から相手の戦力を予測する。そしてユウキは瞳孔を縦に割った鋭い目付きに変わり、両手の神機を銃形態に変形して構える。

 

(ブレイクアーツを使わずにここから倒すとなると…ヨルムンガンドの外骨格を破るためには出力を最大まで上げて同じところに2発は当てないとな…となると、持ち弾は計10発、敵1体に2発使い、誘導にも使うとなると…せいぜい2体、多くて3体か…)

 

 ヨルムンガンド…半年前程前に東南アジア上空の成層圏で発見された飛行型では最大級の新種のアラガミだ。普段は成層圏を飛行しており、下に降りてくる事も珍しいため、出会う事さえ難しいアラガミだ。

 しかし、ここ最近の中東ではヘリの襲撃はザイゴート種やサリエル種よりもこのヨルムンガンドによる襲撃が多くなり、通行中のヘリがよく捕食される。その結果、必然的にジュラルミンの様な軽くて硬い金属をよく捕食する事になるため、非常に硬度の高い外骨格を持つ事となった。

 極東支部に帰ってきてから調べあげた敵の情報と自身の状況を頭の中で整理する。ブレイクアーツを使えばこの状況からでも簡単に敵を殲滅できる。しかし、それでは自身の特異性をガーランドに知らしめる事になる。そこからユウキに宿る特異点にたどり着く可能性があるため、それだけは避けなければならない。

 となると特別な能力なしで相手をしなければならない。普通の射撃でも出力を最大まで上げてのピンポイント狙撃ならばヨルムンガンドの外郭を貫いて内部のコアを破壊できる。そして初撃による奇襲が成功すれば1体は確実に仕留められる。

 そんな事を考えながら小さく見えてきたヨルムンガンドの1体に照準を合わせる。

 

  『ダァンッ!!』

 

 爆音と共に太いレーザーが飛んでいく。そのまま遠方にいるヨルムンガンドの1体の口内に吸い込まれてコアを貫いた。唐突にレーザーが飛んでくると言う奇襲を受けて、ヨルムンガンド達が動揺して三々五々に散りながらもユウキに向かって飛んでいく。

 そして1番左で他のアラガミから離れているヨルムンガンドに照準を合わせる。次の瞬間にまた太いレーザーを3発連続で撃ち、間髪入れずに照準を少しずらして2発のレーザーを撃つ。すると3つのレーザーは平行に飛んでいき、合流しようとしていた、照準を合わせたヨルムンガンドの進路を阻み進行を止める。そして動きを止めたヨルムンガンドの横側から、2発のレーザーが連続で飛んでくる。1発目のレーザーがヨルムンガンドの外骨格に大きな凹みと傷をつける。そしてそこと大して変わらない場所に、もう1発のレーザーが着弾する。するとレーザーはヨルムンガンドの外骨格を貫通して、内側のコアを貫いた。

 続いて右端で遠回りしようとするヨルムンガンドに銃口を向ける。先と同様に誘導の為、まずは1発レーザーを撃つ。下、そのまま左と計3発のレーザーを撃ち、そこから少しずらして2発連続で撃つ。

 するとヨルムンガンドは眼前に走ってきたレーザーを避けようと下に下がる。しかしその先にもレーザーが飛んできて行く手を阻み、再度向きを変えて右側へと進路を変えた。またもやヨルムンガンドの眼前にレーザーが飛んできたので当たらない様にその場で動きを止める。だが瞬間にはレーザーが2つ飛んできて、ヨルムンガンドの胴を横から貫きコアを破壊した。

 計3体のヨルムンガンドを倒したところで、どちらの神機もオラクルが切れたため、ユウキはずっと構えていた神機を一旦下ろした。

 

(口内から内側を狙撃できたか…これを毎回できるならば楽になるんだがな…)

 

 オラクルを使い果たした事で遠距離の攻撃手段をなくしたユウキは神機を剣形態に変形して待機する。すると高速で大きな口を持った黒い巨大なムカデにハチの翅を生やしたアラガミ、『ヨルムンガンド』が4体、急加速して接近してきた。

 

  『『『『キァァア!!!!』』』』

 

「…」

 

 悲鳴に近い雄叫びを上げてヨルムンガンド達が再び集まって一斉に飛びかかってくる。ユウキはヘリから飛び出して最も近い位置にいるヨルムンガンドの『口』に向かって跳ぶ。しかし、大口を開けたヨルムンガンドはそのままユウキを『バクンッ!!』と一口で喰ってしまった。

 

  『ズシャッ!!』

 

 だが次の瞬間にはヨルムンガンドが上下に斬り裂かれ、その中から喰われたと思われたユウキが飛び出してきた。

 

「…」

 

 そしてユウキは体を縦回転するコマの様に捻り、倒したヨルムンガンドを斬りつけてオラクルを補給する。そのまま斬ったヨルムンガンドの尾先に行くと、ヨルムンガンドの死体を土台にして、残りのヨルムンガンドを倒すべく右側へと飛び出す。

 

  『キシャァァア!!!!』

 

 空中では満足に動けないユウキに向かって、目の前の敵が口を開けて迫ってくる。対してユウキは左手の神機を下に向かけると、インパルスエッジを撃って跳ねる。標的を上に逃がした事でヨルムンガンドの口は敵を捉える事なく『ガチンッ!!』と音を発てて閉じた。

 その間にユウキは標的の上を取り、外骨格の隙間にある間接に沿うように右の神機を振って翅ごと斬る。外骨格で守られてない部分への攻撃だったため、あっさりとヨルムンガンドの頭を斬り落とした。その後、斬り捨てたヨルムンガンドを蹴って離れて後ろから迫ってくるヨルムンガンドに向かって行く。

 

  『キャァァア!!!!』

 

 しかし今度は別のヨルムンガンドが左側から向かってきた。対して右の神機で穿顎を展開し、急加速して突進を避けて元々攻撃する筈だったヨルムンガンドの背中に喰い付いた。そしてバーストした状態ですぐにインパルスエッジを発射し、ヨルムンガンドの背中の外骨格を砕きいた。その勢いでユウキは後ろへと飛び、離れるついでに今度は左側の神機でインパルスエッジを撃ち、敵の頭を砕きながら勢いでヘリの方向へと飛ぶ。

 そして空中で右の神機を銃形態に変形して、怯んだヨルムンガンドに向かってレーザーを発射して砕いた頭を貫通させる。その後、ユウキはヘリの上へと着地して、右の神機を剣形態に変形して再び迎撃体勢を取る。

 

  『キシャァァア!!!!』

 

 しかしその間に最後のヨルムンガンドが雄叫びを上げながらすぐ近くまで迫っていた。

 

(…)

 

 対してユウキは表情を変える事なく、再び神機を握り直した。

 

 -地上-

 

 居住区ゲートの外側、ソーマ、アリサ、コウタがジープに乗って待機していた。3人は万が一に備えて地上のアラガミを殲滅、そしてヘリに何かあったときの救助部隊として配置された。周囲のアラガミは既に討伐し終えて、ヘリが来るのを交代で監視していたのだが、そんな中コウタがようやくヘリを見つける。しばらくコウタが双眼鏡を覗いていると、ユウキが乗り移ったと思われるヘリからレーザーが飛んでいくのが見えた。

 

「ホントに来たね…ヨルムンガンド…」

 

「ユウ…大丈夫でしょうか?」

 

 次々とレーザーが発射され、その後にはヘリに群がってくるヨルムンガンドが斬り倒されていくのを見ながらコウタは呟く。

 元々ヘリを空中で襲撃する事自体は珍しくもない。ただ極東では未だにザイゴートやサリエルによる襲撃ばかりでヨルムンガンドによる被害の報告はなかった。だが事前の打ち合わせでペイラーとユウキはヨルムンガンドによる襲撃が来ると予見し、見事にそれを的中させた。

 いつもなら感嘆した様子で感心するであろうコウタだったが、今回はなにやら冷めた様子で予測を当てたことに驚いていた。その結果、ユウキは慣れない空中戦をせざるを得なくなり、アリサは何事もなく終わるようにと気が気でなかった。

 

「アイツなら大丈夫だろ」

 

 ソーマがそんな不安を払拭する様に心配する必要はないとジープのボンネットに腰掛けながら言った。

 

「俺達を含み、アナグラの全員を相手に喧嘩を売り、その上で周囲のアラガミを単独で殲滅できるんだ。少なくとも前よりは遥かに強い。条件が悪いとは言え、ヨルムンガンド程度にアイツが殺られるとは思えない」

 

「それは…私もそう思いますけど…」

 

 記憶を取り戻してからは極東支部周辺のアラガミを単騎で殲滅し、他の神機使いの仕事を奪い、衝突してきた。少なくとも大型種を無数に相手にしていても地上では無類の強さを発揮している。しかし空中と地上では勝手が違う。足場を失えば落下して普通は死ぬ。しかも今回はたった1つの足場で大型を複数相手にして空中戦をしている。ソーマは大丈夫だと言うが、それでも心配になるのは仕方ない事でもある。

 

「あ、倒したみ…ん?」

 

 ヨルムンガンドを全て倒した事を確認したコウタだったが、ヘリが体勢を崩したのを見ると表情が険しくなる。

 

「あ、あれ…?ヘリが堕ちてる?」

 

「何?!」

 

 体勢を崩したヘリは煙を上げながら落下していく。何が起きたのか最初は理解が追い付かなかったが、すぐにヘリが攻撃を受けたと理解して思わず呟く。

 それを聞いたソーマか血相を変えてコウタを問いただそうとするが、それよりも先にアリサが動いた。

 

「ユウは?!どうなったんですか?!」

 

「わ、わかんないよ!!コイツ使ってもヘリとかヨルムンガンドぐらい大きくないと見えないって!!」

 

 アリサがコウタに事の詳細を尋ねるが、戦闘があった空域から防壁まではまだかなりの距離がある。ヘリやヨルムンガンドの様子がギリギリ分かるような大きさでしか見えない状態ではヘリに乗っていたであろうユウキの様子など、双眼鏡を使っても分かりようがない。

 とにかく情報が欲しい。ソーマが運転席に座るとコウタとアリサもジープに乗り込む。

 

「チッ!!とにかく現場に行くぞ!!」

 

 コウタが若干モタついているが、全員乗った事を確認するとソーマはアクセル踏み込む。アリサはしっかり捕まっていたから問題なかったが、コウタは発車の勢いで少し振り落とされそうになりつつも急いでヘリが落ちていく場所に向かった。

 

 -墜落現場-

 

 ヘリの墜落現場まで距離があったため、時間がかかったが何とか無事に目的地に到着した。すぐに3人はユウキの捜索を始めるが、結局見つかったのは、燃料の残りに引火して小さく火が上がっているヘリの残骸と、空から落ちてきたヨルムンガンドの血と死体と探すまでもないものばかりだった。

 

「ヘリの残骸とヨルムンガンドの死体だけでユウが見当たらない…どう言うことだ?」

 

「ユウ…一体何処に?」

 

 ヘリと一緒に落ちてきた筈のユウキが周辺に見当たらない。どう言う事なのかとソーマとアリサは頭を悩ませている中、コウタは心ここにあらずと言った様子でユウキの捜索をしていた。

 

(もう戻って来ないんじゃないの…?」

 

 記憶を取り戻してから豹変したユウキは何かあればすぐにでも何処か手の届かない所に行きそうな雰囲気を出していると感じていたコウタは思わず小声で呟いた。

 

「コウタ!!なんて事言うんですか?!」

 

「ぅえッ?!な、何?!」

 

 もう戻る気はないのでは?と口にした事で、また出ていっただけでなく最悪落下死したのではないかと連想してしまったアリサはコウタに対して怒りをぶつける。しかし、コウタは無意識に呟いていたようで、アリサに咎められると心底驚いた様子だった。

 そんな中、突然ソーマの端末に着信が入る。ソーマは電話に出ると、スピーカーモードに変え、周りにも聞こえる様にする。

 

『皆、聞こえるかい?ガーランド新支部長の命令だよ。ユウキ君の捜索は一時中断して、支部に戻って欲しい。』

 

 声の主はペイラーだった。どうやらユウキが殿を勤めた甲斐あって、ガーランドは無事に到着出来たようだ。しかし助けられた当の本人はユウキを捜索するどころか打ち切りに近い判断を下した。それを聞いた瞬間、ソーマは表情が険しく、コウタは複雑な表情になり、アリサは怒りを露にした。

 

「そんな!!まだユウが見つかってないんですよ?!」

 

『悪いけど、さっきも言った通り、これはガーランド支部長からの命令だよ。君たちは1度戻るんだ。それに、彼にはアラガミ化もある。それを使えば高所からの落下程度では死にはしない。だから、戻ってきなさい』

 

 アリサが反発して捜索を続行すべきとしたが、ガーランドの指示と言うこともあり、極東支部に戻る様に強く言い直す。

 ペイラーの言う通り、アラガミ化することで落下した程度では死なないのは事実だ。それならば何故この場で待たずに行方を眩ませたのか。納得いかない状況を不審に思いながらも、 アリサ達はその場をあとにした。

 

 -10分後-

 

 3人が去った後、ヘリの墜落現場に10人程の人影が現れる。その人影は全員、白いジャケットを来て、頭にはヘッドギアを着けて黒いバイザーで目元を隠していた。そして全員手には『剣と盾と銃』が一体になった神機…所謂、新型神機を所持していた。

 新たに現れた者達はヨルムンガンドの死体を目視で少し調べると、次々に神機を構えて捕食口を展開する。

 

  『グジュッ!!』

 

 捕食口を展開した者の1人が捕食すると、それに合わせて次々と捕食してヨルムンガンド達のコアを回収する。

 

「隊長、ヨルムンガンドのコア、全て回収しました」

 

「了解。速やかに帰投する。全員遅れるな」

 

 隊長と呼ばれた短い金髪の青年はコアの回収が完了したと報告を受けると、すぐに撤退するように指示を出す。それを聞いた隊員達はすぐさまその場をあとにすると、ヨルムンガンド達の死体はコアを失った事で霧散していった。

 

To be continued




あとがき
 今回から斉藤ロクロ先生のスパイラル・フェイト編がスタートです。
 漫画オリジナルのヨルムンガンドの蛇にも虫にも見えるデザインやガーランド氏から滲み出る小物感がすごい好きです。読み返してみるとコアバレットや感応波など本家に逆輸入(?)された設定もいくつかあったりとこの頃から感応種とかが想定されていた様にも思えました。
 さて、お話の方はスパイラル・フェイトでもヨルムンガンドにヘリが襲われて主人公の加々美リョウ君が落っこちて記憶喪失になりますが、うちの子はまた行方不明になりました。察しが着いた方もいるかも知れませんがこの章ではうちの子は出番少な目です。

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