GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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最近涼しくなりってたと思う今日この頃、そう言えば100話を突破しました!ここまで続けられたのもコメントや評価をしてくださった方々のお陰です!ありがとうございます。


mission100 双竜再戦

 -荒野-

 

 ユウキが任務に出てから3日が経った。ディアウス・ピターの近縁種『天なる父祖』とプリティヴィ・マータを倒して以降、宣言通りに帰りがてらにわざわざ遠回りして、極東支部周辺のありとあらゆるアラガミを駆逐していた。当然、その間1度も極東支部には帰っていないが、その甲斐があったのか漸く本調子を取り戻しつつあった。

 しかし、支部一帯のアラガミは狩り尽くしたため、やることが無くなり1度極東支部に戻ろうとジープを走らせていた時だった。

 

(…この感覚…)

 

 座礁した空母のある港付近、そこで突然アラガミの気配を感じてジープを止める。どんなアラガミかは知らないが、強い事だけは分かった。

 

(…何処から出てきた?『アイツら』から情報は来てないが…)

 

 しかし、事前に『知らされていた』情報にはない、唐突に現れたアラガミの気配にユウキは怪訝な顔をする。

 

(まあいい…現れたなら叩き潰すだけだ…)

 

 『彼女達』も万能ではない。『こんな事もあるか』と思い、自身の気配探知もまだまだだと痛感しながら、アクセルを踏んで気配のする方に再びジープを走らせた。

 

 -愚者の空母-

 

 座礁した空母に着き、待機ポイントから戦闘地域を眺めていると白い竜が我が物で歩いており、さらには港から地下に空いた大穴からは黒い竜が登って来ているのが見えた。

 

(ハンニバルと侵食種、成る程…地下から来たのか。それに…)

 

 突然現れたアラガミはハンニバルとその侵食種、その2体が地下から登って来たのだと分かると、地下に対する気配探知の訓練も必要だろうかと考える。それと同時に、2体のハンニバルからは以前にも感じた『強者の波動』とも言える強い気配を感じていた。

 

(この感じ、以前勝てなかった奴だな。)

 

 強い気配を感じ取ったユウキは以前旧地下鉄で戦ったハンニバル達だとすぐに分かった。気配もそうだが何より、ハンニバルの左手の籠手に深い裂傷、ハンニバル侵食種には右半分の顔と胸部に抉れた痕…かつてユウキ自身が与えた傷痕が未だに残っていたため、すぐに分かった。

 

(特異な体質で偶然手にしたこの力…純粋に『俺自身で手にした力』ではないが、借り物の力とは言え使いこなせなければ宝の持ち腐れ…か…)

 

 今の異常な身体能力や感応現象を使った索敵、ブレイクアーツは自身がアラガミと人のハーフだと言う境遇で手にした能力に過ぎず、自ら鍛え上げて手に入れた力ではない。それは決してユウキ自身が強大な力を扱える程に強くなったとはならず、扱えなければ振り回されるだけだ。

 

(…使いこなしてみせる。あれからどれだけ上へ行けたか…以前は敵わなかったアイツらで試してやる。)

 

 今の自分がどこまでいけるのか、自分の現状を知るにもいい機会だ。そう考えていると、ユウキはすぐに待機ポイントから飛び降りてハンニバル達の前にゆっくりと歩いていく。そして港だった場所に来るとハンニバル達がユウキに気が付く。

 

『『グォォオッ!!!!』』

 

 ハンニバル達は吠え威嚇するが、ユウキは怯む事もなく至って冷静な様子で右は順手、左は逆手に神機を引き抜き、細く縦に割れた瞳孔の目になってハンニバルを睨む。

 威嚇の後、先にハンニバルが飛び出す。右手から炎を吹き出して飛びかかって殴り付けてくる。

 ハンニバルが拳を振り下ろす瞬間に右に大きく飛んで避けると、着地と同時に振り下ろした炎を纏った拳はコンクリートの地面を砕いた。次の瞬間にはハンニバル侵食種が3つの黒炎の輪を吐き出して避けたユウキを追撃する。それをさらにジャンプで避けると今度はハンニバルが左手で裏拳でユウキの後頭部を攻撃してきた。

 対してユウキは空中で右足を後ろから上へ突きだしてハンニバルの腕を蹴る。すると一瞬で地面に着地するが、今度はハンニバル侵食種が左手に黒炎の剣を作り、内から外へ横凪ぎに斬りかかってくる。

 ユウキは前に出て、侵食種の攻撃よりも先にその懐に入り込む。しかし侵食種は空いている右の拳で足元に居るユウキ目掛けて叩き込む。

 

  『ガァンッ!!』

 

 ハンニバル侵食種の拳はユウキを捉え、間違いなく当たった。しかしその時の音は肉を潰す様な音ではなく、鉄板を叩く様な鈍い音を発していた。

 

「…」

 

 そこには左の神機の装甲を展開し、表情を変える事なく涼しい顔で拳を受け止めるユウキがいた。仕止めたと思った相手が未だに生きていた事が意外だったのか侵食種の動きが止まる。

 その隙にユウキは身体を右に流してハンニバル侵食種の右手から逃れる。右手から標的が消えて抵抗がなくなって右手が地面を殴る。その間にユウキはハンニバル侵食種の懐に飛び込んで跳び上がり、右回転しながら左手の神機で侵食種の胴体を斬り裂く。そしてユウキは左足で侵食種を空中で蹴ってその場から離れる。

 ユウキとハンニバル侵食種が交戦した僅かな間に、向き合う様に体の向きを変えたハンニバルだったが、その間にユウキが一瞬で眼前に近づいて来た事で対応が遅れて動きが止まる。

 

  『ズシャッ!!』

 

 ハンニバルの顎を右の神機で下から斬り落とし、その反動で胴体に向かって飛ぶ。そして逆手持ちのナイフで刺す様な動作で左手の神機をハンニバルの胴の右端を突き刺す。すると突き刺した所を軸にしてユウキは大きく振られてハンニバルの後ろへ回る。最後には後ろへ回り込む動作で神機を引き抜き、ハンニバルの後ろを取る。

 

「…」

 

 後ろを取ったユウキはハンニバルの背中を蹴り飛ばす。ハンニバルは衝撃で正面の侵食種と激突し、侵食種を押し倒して転び、その隙にユウキは2体のハンニバルに飛びかかる。そして新たなプレデタースタイルを展開して捕食する。

 

  『『グジュッ!!』』

 

 右は黄色い捕食口の『壱式・黃支子』、左は青い捕食口の『壱式・天色』を展開して捕食してバーストする。 

 

  『グォォオッ!!』

 

「…」

 

 ユウキがバーストして追撃しようとするが、それよりも先に体勢崩しに巻き込まれたハンニバル侵食種が左手で作った黒炎の剣を振る。ユウキはそれを後ろへ跳んで避け、その間に2体のハンニバルは体勢を立て直す。

 

  『ゴォォオッ!!』

 

 ハンニバルがユウキに飛びかかり、侵食種が着地を狙って黒炎のブレス攻撃でユウキを追撃する。対してユウキは属性解放を発動して、左の神機の刀身を大きな氷の刀身に変える。

 

「…ッ!!」

 

 先に侵食種のブレスが迫ってくる。ユウキは氷の刀身を地面に叩き付けると、目の前に氷の壁を作り出してブレスを防ぐ。ブレスの熱で『ブジュッ!!』と音を経てて氷の壁が溶けて辺りに水蒸気が立ち込め視界が遮られる。

 その瞬間ハンニバルが右ストレートを放つ。その時の風圧で水蒸気を吹き飛ばすと、ユウキが既に右腕を通りすぎてハンニバルの眼前に来ていた。

 

  『バチバチッ!!』

 

 右の神機の刀身が電撃の刀身へと変わりハンニバルを斬る。電撃を受けたハンニバルは痺れて動きを止める。その間にすれ違い様にハンニバルを蹴って侵食種の方へと跳びかかる。対してハンニバル侵食種は左手で黒炎の剣を作り横凪ぎに振るう。

 剣が自身に届く直前、ユウキは右の神機を下に向けてインパルスエッジを発射する。その衝撃で上へと浮き上がり、黒炎の剣を縦に回転しつつ避けつつハンニバル侵食種の上を取る。そして通りすぎる際に回転を利用して氷の刀身で侵食種を斬り凍り付けにする。そして着地の瞬間には右の神機を振って電撃を飛ばす。侵食種を覆っていた氷を砕いて感電させる。

 しかしハンニバル侵食種はすぐに復活し、ユウキが着地すると同時に尻尾を振りつつ向きを変える。ユウキは左の神機でそれを防御するが、衝撃で後ろへとずり下がる。

 その間にハンニバルも復活して追撃に出る。ハンニバルは炎の槍を作ってユウキに飛びかかっきた。ユウキは左へと避けるが、その先へと侵食種が殴りかかってくる。それを後ろへと下がって避けるが、間髪入れずに2体のハンニバルが炎の剣を作ってユウキに襲い掛かる。

 

「…」

 

 対してユウキは両手の神機の属性解放を解除し、装甲を展開して防御する。

 

  『『ギンッ!!』』

 

 腰を落とし、装甲が甲高い音を経てて防御に成功する。以前はその腕力にまったく敵わなかったが、今では片手で止められた事に自分でも少し驚きつつも、即座に反撃に出る。右の神機でハンニバルの炎の剣を弾き、その直後に左の神機を傾けて黒炎の剣を滑らせて自身の身体の外側に流して一気にハンニバル侵食種に近づき、通りすぎる際に胴体を斬り裂いた。

 その後急ターンして追撃する。しかし2体のハンニバルも同時に反撃に出る。まずはハンニバル侵食種が左手で黒炎の剣を作りつつ左へ急回転して反撃する。

対してユウキは地面スレスレへと飛び込んで躱し、侵食種が左腕を振り抜くと一気に胴体へと近づく為に跳び上がる。対して侵食種は右腕を振り押して反撃する。ユウキは空中で身体を捻って左の神機で右腕を斬り落とす。さらにもう一度回転して肩から右腕を斬り落とす。

 隙が出来た侵食種に止めを差そうと右の神機を振り上げる。しかしハンニバルがユウキの左側から炎の輪を吐き出して迎撃する。ユウキは左の神機で装甲を展開し、下からは神機を振り上げて炎の輪を叩き付けつつ防ぐ。その勢いで急激に降下しながらかつて抉った傷を起点にした起動で唐竹割りを繰り出した。

 

  『ブシャァッ!!』

 

 勢いの乗った一撃が侵食種の弱い所を捉えてハンニバル侵食種を真っ二つに両断して倒した。しかし侵食種を相手にしている間にハンニバルが両手に炎を纏って殴りかかってきた。右の拳でユウキを殴り着けるが、少し後ろへと下がって避けると、ハンニバルに向かって跳びかかる。しかしハンニバルは左の拳でユウキを殴りかかるが、ユウキは右の神機の装甲を展開しつつ、左の神機と一緒に拳に両手の神機を振る。右の装甲で拳を防ぎつつ、左の神機はハンニバルの拳を突き刺して殴り飛ばされるのを防いだ。

 その際、装甲でハンニバルの拳を防いだ事でユウキに回転力を与え、そのままハンニバルに向かって行く。そして両手の神機を振り下ろして二の字に斬り裂いて3つに分割した。

 

「…」

 

 2体のハンニバルを倒したユウキはつまらなさそうに2体の死体を見ていたが、しばらくすると、神機にハンニバル達を喰わせる。

 

(…まだまだ…か…)

 

 神機にハンニバルを喰わせつつ今の戦闘について反省する点を考えていく。

 

(今のは単に身体能力にに助けられただけだな。せっかく鋭くなった感覚もまだ生かしきれてない。)

 

 確かにアラガミの部分が表に出たことで身体能力の大幅な強化、感覚の鋭敏化と言った変化はあった。しかし強化された感覚を生かしてはいないし身体能力は制御しきれてないない様に思えた。

 聴覚であれば動く際の足元の音や筋肉、骨の音から動きの先読みする、嗅覚で炎が燃える時の匂いを察知してどう動くかを読む、肌で空気の振動を捉えて何をするか考える…そしてそれらを処理できる様に思考速度を速め、敵が動き出す前に敵を討つ。

 それをできる様にならなければいけない、その為には何をすべきかを考えながらコアを回収し、残ったハンニバル達の死体を今度はユウキが食べ始めた。

 

 -極東支部-

 

 ユウキはハンニバルを喰った後、ようやく極東支部に帰ってきた。3日間一度も帰ってくる事なく『偶発的』に任務をこなして来た人間がようやく帰ってきたのだ。エントランスにいた者達は当然驚いたが、今のユウキとは関わりたくないがために特に声をかける事なくその場から離れていった。

 

「ユ、ユウキさん?!」

 

 ユウキがヒバリ任務の終了を報告しようと会いに行くと、ようやく帰ってきた事に驚いていた。

 

「い、今まで何をしていたんですか?!この辺りのアラガミの反応がほぼ全て消えましたが、ユウキさんの仕業ですか?!他の人への仕事もなくなって不満が出てるんです!!貴方も危険な目に合うのは分かりきってるんですからこんな事はこれっきりにしてください!!」

 

 ユウキが周囲のアラガミを駆逐した為に、仕事を受けたが現地に行っても仕事がなくなっているなんて事が続いていた。出撃前に堂々と不正に任務を処理すると言っていた。ここ最近でアラガミの反応が急激に減った理由もすぐに分かった。不正に任務を処理した本人にヒバリはすぐさま止める様に、珍しく声を荒らげて抗議する。

 

「…なら俺の報酬はディアウス・ピターの近縁種とブリティヴィ・マータの討伐報酬だけでいい。あとはお前たちにやる。素材も全てやる。俺は敵を確実に排除できるし、連中も戦わずに報酬が貰えるなら文句もないだろう?」

 

「そう言う問題では…」

 

 しかしユウキは悪びれる事もなく、報酬を分配するから面倒な事をこれ以上追及するなと言ったが、ヒバリはそんな事を許すはずもなかった。

 

「何と言われようと俺のやり方は変える気はない。戦わずに済むならそれに越したことはないだろう?」

 

「ちょっ?!ちょっと!!」

 

 そう言うと止めようとするヒバリを無視してユウキは報告書を持って神機の調整をしに神機保管庫に向かった。

 

To be continued




あとがき
 ついに本小説が100話を突破しました。長かった…多分この辺でエンディングまで折り返しになる…はず。
 さて、小説内でも書きましたが今回の相手はうちの子が以前ボコボコ(?)にされ勝てなかったハンニバル達です。かつて敵わなかった強敵を倒す展開は好きで熱い展開にしたかったのですが、どうにも今回は(も?)さっぱりし過ぎてる気がします。
 うーん…どうにもその辺をうまく描写できるだけの描写力が欲しい。

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