役人転生〜文部科学省学園艦教育局長に転生した私はどうしたらいいのだろうか〜 作:トマホーク
はぁ……朝一番からとんだ目に合いました。
高島君と蝶野一尉には板挟みにされますし、初めてお会いした蝶野一佐とも“色々”とありましたし。
……初っぱなからこれだと後々が思いやられますが、人生は塞翁が馬。
次はきっと良い事があるはずです。それに期待しましょう。
「――では、車輌監査スタッフの皆様。本日はよろしくお願い致します」
さて。予定していた挨拶回りはここで最後ですね。
後は審判部本部に行って試合が始まるのを待つだけ――
「許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん」
――という訳にもいきませんか。
うーん。本音を言えば呪詛の念を垂れ流しにしているこの人物をスルーしたいのですけれど。
それをすると後が厄介ですね。致し方ありません。
「高島君、私はちょっとあの人と個人的な話があるので先に審判部本部へ行っておいてもらえますか」
「はぁ……それは構いませんが。しかし、大丈夫なんですか?あの人、目が血走っていますしブツブツと独り言を」
「大丈夫です。いつもあんな風なので」
「そ、そう……なんですか。分かりました。では先に審判部本部へ行っていますね」
「えぇ、お願いします」
説明の手間を省いたら高島君の中でヤツに対する盛大な誤解が生まれてしまったような気がしますが……まぁ、いいでしょう。
「こうして直接顔を会わせるのは久し振り……ですね」
「あぁ、そうだな。死ね」
ふむ。これまでのおふざけのせいで随分とお怒りのご様子。
……さっきまで美人の整備士と楽しげに会話していたんですがね。
全く、感情の振れ幅が大きいヤツですよ。
「お義父さん、機嫌を――」
「誰がお義父さんだー!!」
ハッハッハッ、やっぱり常夫はからかいがいがありますね。
「元気そうで何より」
「そっちこそ。……それで?今回は何をするつもりなんだ?裏方の僕まで引っ張り出して。前みたいな無茶は勘弁して欲しいんだが」
おや、さっそく本題に切り込んでくるなんて珍しい。いつもならもう少しふざけ合うのですが。
まぁ、今はあまり時間が無いので助かりますけど。
「いや、今回はただ単に親切心から呼んだだけです。2人が高校に入ってから2人の試合を生で見たことないんでしょう?」
「お前……ウゥッ!!」
いや、泣くことは無いでしょうに。
……まぁ、常夫の置かれている状況からしてみればそれもしょうがないですか。合掌。
「あら、ずいぶんと賑やかね」
「何のお話なのかしら?」
ッ、どうして家元コンビがここに!?到着するのはまだ後の筈。
……あ、分かりました。
2人とも自分の子供の晴れ姿を一瞬たりとも見逃すまいと早めに来ましたね?
全く、親バ――不味い。凄く睨まれてます。
この人達はエスパーか何かなんでしょうかね?怖い怖い。
「いえいえ、男同士の他愛のない会話ですから先生方のお耳に入れるような話では」
「そう」
「残念ですわ」
「まぁ、強いて言うのであれば常夫が整備士の女性にデレデレしていたという話です」
あらら、ついうっかり口が滑ってバラしてしまいました(棒)
「ふぁッ!?き、貴様!?」
「……あなた?」
おぉう。しほさんの髪の毛が逆立っています。……何か、目も赤く光っている気が。
「ち、違うんだ!!しほ!!これは――」
「あっちでお話しましょうか?」
「は、はい!!」
あぁ……常夫がしほさんに連行されてしまいました。
いつ見ても心踊る光景ですね。他人の修羅場は蜜の味〜。
「ウフフ。本当に仲睦まじいですわね、あのお二人は」
「えぇ、全く。羨ましい限りです」
何だかんだ言ってあの2人は仲がいいですからね。
話があると言っても大方イチャイチャしてるだけでしょう。
「あらあら。でしたら……うん、やはり……そうですわね」
うん?千代さんが何か企んでいる……?
嫌な予感しかしないんですが。
「どうかしましたか?」
「いえ、何でも無いですわ。それでは私はこれで」
行ってしまわれました。
うーん。千代さんが何かを企むと、それは大体ろくでもない事なんですよね……。
今回は一体何を企んだのやら。