役人転生〜文部科学省学園艦教育局長に転生した私はどうしたらいいのだろうか〜 作:トマホーク
あ、そういえばこの前の試合で大破したアンツィオのP40重戦車の修理の手配をしてあげとかないと。
試合後に会った安斎君――アンチョビ君は何も言っていなかったですけど、きっと今ごろ修理費の捻出に頭を抱えているでしょうし。
「局長、こちらの書類にサインをお願いします」
「はい」
っと、それも大事ですが仕事を早く片付けないといけませんね。
今こなしている仕事をキッチリ片付けておかないと大洗とプラウダの準決勝戦を見に行けなくなってしまいますから。
……にしても忙しいです。
「それと、こちらの書類の確認を」
「…………下から三行目の誤字と左上の数値に不備があるので、修正してから各部署へ送っておいて下さい」
「分かりました。あと学園艦の解体をする際に出るスクラップの件で◯×業者が打ち合わせをしたいと」
「えぇ、分かりました。後で電話をして話をつけておきます」
はぁ……本当に忙しい。
以前にも触れましたが、私が本当の発起人では無いのに書類上では発起人兼責任者にされているため、私が責任を持って大洗の廃校と学園艦の廃艦手続きを進めていかないといけないという理不尽さ。
ふとした瞬間に書類を破り捨ててしまいたくなります。
これが私の役目(運命)とはいえ、なかなか精神的に厳しいモノがありますね。
何せ可愛い姪っ子分を苦しめる原因をせっせと作っているんですから。
まぁ、最終的にはみほちゃん達にとってプラスになるからと思って頑張っていますが……。
「局長、お茶を淹れてきました。一息入れられてはどうですか?」
「あぁ、ありがとうございます」
有難い事に高島君はいつもちょうどいいタイミングで気を使ってくれますね。
おや?茶柱が立ってます。
この先、何か良いことでもあるんでしょうか?
ふぅ……それにしても高島君が淹れてくれるお茶はいつもおいしいです。
「……」
「高島君?どうかしましたか?浮かない顔をしていますけど」
何か高島君がどんよりとしています。
この前フォローを入れるために2人で行ったお酒の席以降は、機嫌も良かったのに何故でしょう?
「……局長。もう準決勝ですよ?このままの勢いで大洗が決勝にまで進むような事になれば、いよいよ後が無くなってきます」
あぁ、その事を気にしていたのですか。
「そうですね。もう準決勝ですね――いやぁ〜楽しみです。私も彼女達がまさかここまで来るとは思ってもみませんでしたよ。これがあるから戦車道は面白い。彼女達の健闘にはますます期待が出来ますね」
本当は確信していましたけど(棒)
「何を他人事のように呑気な事をおっしゃっているのですか!!このまま本当に大洗が優勝でもしてしまったら色々と問題が!!」
「分かっています。けれどプラウダを破る事が出来たとしても決勝で待っているのはあの黒森峰か聖グロリアーナという強豪校。大洗が勝てる可能性はかなり低いでしょう。つまり高島君が危惧しているような事にはなりませんよ」
なるんですけどね、実際。
「そうはおっしゃいますが!!……はぁ、局長はもう少しご自分のお立場の事を心配して下さい。局長が廃校撤回の件を検討すると大洗の生徒に言った事がどこからか漏れて、局長の足を引っ張ろうとしている低脳な輩共が工作を行っているという噂もあるんですから」
「そんな噂が……まぁ、所詮は噂ですから放っておいて大丈夫ですよ」
うん。まぁ、その噂は本当なんですけどね。そして撤回の件を漏らしたのは私自身です。
よく嫌がらせをしてくる派閥からどうせ妨害があると思って意図的に漏らしました。
そうするときっと彼らは私を窮地に追い込むために大洗を優勝させようと動いてくれますから。
そして事実彼らは私の思惑通りに大洗への支援を行っていますし。
フフフッ……計画通り。愚か者共よ、せいぜい私の手のひらの上で踊るがいい!!ハーハッハッ!!
「放ってって……はぁ……やはり、ここは私がしっかりしないといけませんね」
「? 何か言いましたか?高島君」
「いえ、何も」
「そうですか。とにかく我々が今出来る事は仕事をこなしつつ、彼女達をただ見守る事です。そして、結果がどうあれ各々の責任を果たすことです」
「……分かりました」
さてと。高島君の目に何かの決意が宿っている事が気になりますが。
とりあえずキリのいい所まで仕事を片付けてから大洗とプラウダの試合を見に行きましょうか。