役人転生〜文部科学省学園艦教育局長に転生した私はどうしたらいいのだろうか〜   作:トマホーク

14 / 79
お茶会

さて。不満気なダージリン君を眺めているのも楽しいですが、そろそろ話を先に進めましょうか。

 

「それで……頼みというのはそれだけですか?」

 

「いえ、最後にあと1つ。辻局長にわたくし達の指導をお願いしたいのです」

 

「指導?何故私に?私はただの役人ですよ?」

 

「あら、フフフッ。またまたご謙遜を。今から20年ほど前にとある戦車で当時存在した戦車道チームを全て“単身”で破り、西住流の新たな伝説を築いたのは他でもない貴方ではありませんか」

 

「……何の事でしょうか?あの一件でしたら犯人が西住流としか分かっていないはず。……それにあの時使われた戦車は戦車道における規定を無視していたのですから伝説とは言えないでしょう」

 

な、何故……何故ダージリン君が、あの一件の真実を知っているんですか!?

 

違うんです!!

 

あれはしほさんと常夫の結婚を認める最終試験としてかほさんに無理やり各学園艦の戦車道チームと戦わさせられただけなんですよ!!

 

それに世間では常勝不敗とか言われてますけど、実際はそんな華々しいものじゃなくてルールガン無視の強い戦車を使った卑怯な戦いだったんです!!

 

というか、失敗したらしほさんに潰すって言われてたから頑張るしかなかったんです!!

 

しほさんは脅し文句が殺すとかそんな可愛らしいモノじゃなくて、潰すとか裂くとか具体的な殺害方法を提示してくるから余計に怖いんですよ!!

 

あの人マジでやりかねないんですから!!

 

「では……そういう事にしておきましょうか。でも指導はお願い致しますね。以前拝見させて頂いたあの卓越した指揮能力や射撃術、操縦術をまた学びたいので」

 

卓越した指揮能力って……いたって普通の能力しか無いんですけど……。

 

「あぁ、もちろんただでとは言いませんわ。OGの方々を説き伏せて頂き指導の話を受けて下さるのであれば……この写真をお渡し致しましょう」

 

「写真?……こ、この写真は!?」

 

つい先日蝶野1尉をビジネスホテルに運び込んでいる時のモノじゃないですか!?

 

誰が撮ったんですか、こんな写真!?

 

「フフフッ。聖グロリアーナ女学院が誇る情報処理学部第六課――通称GI6の部長であるグリーンがたまたま撮ったモノですの。すこし遠目ですから精度が悪いですけれど、これは間違いなく辻局長ですわよね?」

 

グリーン?……公式ファンブックの『月刊戦車道』の小説に登場するあのキャラクターですか!?

 

何て余計な事を!!っていうか、たまたまってあり得ないでしょう!!

 

何ですか、私は見張られてるんですか!?

 

「辻局長もこの写真がうっかり流出してしまって、痛くもない腹を探られるのはお嫌でしょう?」

 

「……えぇ、困りますね」

 

ゲロまみれの私の姿が公開されるのはどうでもいいですが、蝶野1尉に風評被害が行くのは防がないといけませんね。

 

「でしょう。フフッ、泥酔した女性……しかも恋人でもない方とホテルへと消えていく。取り方によってはとんでもないスキャンダルに――」

 

「ん?スキャンダル?あぁ、彼女とでしたら(仕事と戦車道で)親しいお付き合いをさせて頂いていますから、その点は大丈夫だと思いますよ」

 

うおっ!?

 

ティーカップが床に落ちて割れてしまいました。

 

だれが落とし――って、ダージリン君?

 

「ダージリン様!?」

 

「だ、大丈夫、ダージリン!?」

 

「し、した、親しい……お、お、お付き合いッ!?どういうことですの!?この写真の方はまさか恋人なのですか!?そんな事は聞いていませんわよ!!」

 

えーと。ダージリン君は何をそんなに慌てているんでしょうか?

 

というか、蝶野1尉と私が恋人として付き合える訳がないじゃないですか。

 

「恋人……?ハハハッ、私がこんな美人の方とお付き合い出来る訳がないでしょう」

 

「え?でも、今……いえ、何でもありませんわ。違うのであればいいです。コホン。私とした事がお見苦しい姿をお見せしてしまいましたわ。ごめん遊ばせ」

 

「……?あ、そうそう。こんな交渉染みた事をしなくても一言お願いをしてくれればOGの方々には話をしますよ。指導の方は仕事の関係で厳しいかもしれませんが」

 

「……宜しいのですか?こう言ってはなんですけれど……OGの方々は気難しい人が多いですわよ」

 

「えぇ。まぁ、何とかしましょう。何せ他でもないダージリン君の頼みなのですからね。頑張りますよ」

 

子供の頼みを聞いてあげるのが大人の役目でもあるのですから。

 

「……」

 

あれ?なんかダージリン君が真っ赤になってるんですけど。

 

「落ちましたね」

 

「私のデータによると95パーセントだった傾慕率が100パーセントになったわ」

 

ペコ君とアッサム君が私とダージリン君を見ながら小声で何かを言ってますが……何なんでしょうか。

 

「……卑怯ですわ……そんな事を言われたらわたくし……っ、失礼。電話が。はい。わたくしですわ。えぇ、はい。――大洗女子学園?戦車道を復活されたんですの?おめでとうございます。……結構ですわ。受けた勝負は逃げませんの。ではご機嫌よう」

 

うん?あぁ、原作にあった大洗女子学園からの練習試合の申し込みの電話ですか。

 

「失礼しました。大洗女子学園から練習試合の申し込みの電話でしたわ」

 

「ほぅ……練習試合ですか」

 

この練習試合に負けた罰ゲームでみほちゃん達はあんこう踊りをする事になるんですよね。

 

……マイカメラの準備しとかないと(ゲス顔)

 

「えぇ、もしよろしければ辻局長もご覧に来てくださいませ。かつて辻局長ご教授頂いたその成果をお見せ致しますわ」

 

「分かりました。是非とも見させて頂きますよ。……あぁ、楽しみです」

 

みほちゃんVSダージリン君。

 

ようやくあの戦いが生で見れます。

 

「フフッ、辻局長は本当に戦車道がお好きなのですわね」

 

「えぇ、好きですよ。戦車道。――それにダージリン君のパンツァージャケット姿が好きなんですよね、私。あの凛々しくて気品溢れる姿が何とも――おっと、もうこんな時間ですか。すみませんが次の予定があるのでここで失礼させていただきますね。ではまた」

 

「……」

 

「ご機嫌よう」

 

「ご機嫌よう」

 

あれ?……うーん。

 

なんか頭の中の考えをポロっと口走ってしまったような気がしないでもないですが……。

 

まぁ、何も言われなかったのですから大丈夫でしょう。

 

さて、帰りますか。

 

「……」

 

「辻局長、帰ってしまわれましたね」

 

「そうですわね。最後にとんでもない置き土産を残して……」

 

「どうしましょう……“これ”」

 

「しばらくしたら元に戻るのでは?」

 

「それもそうですね。戻るまでそっとしておきましょうか」

 

「えぇ」

 

「それにしても……辻局長もあんなセリフを無自覚で言うのですからタチが悪いです」

 

「あの方の毒牙に掛かった乙女がどれ程いるのでしょうか?」

 

「さぁ?はっきり言えるのは、ダージリン様が最早手遅れだという事だけです」

 

「そうですわね」

 

「「はぁ……」」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。