役人転生〜文部科学省学園艦教育局長に転生した私はどうしたらいいのだろうか〜 作:トマホーク
はぁ……やれやれ。昨日は色々ありました。
みほちゃんに追い掛けられて心に傷を負ったり、麻子ちゃんに連行されたり。
そうそう。
昨日は結局、夜遅くまで麻子ちゃんの家にお邪魔してしまいました。
私が帰ろうとすると麻子ちゃんが無言で私の袖を掴んで帰してくれなかったので。
まぁ、可愛い妹分の我が儘ですからね。
麻子ちゃんの気が済むまで付き合ってあげましたけど。
でも、その際に麻子ちゃんのお母さんから「まるで兄妹みたいね」と言われ麻子ちゃんが躍起になって否定していたのは何故だったんでしょうか?
……あぁ、そうですか。
流石にこんなおじさんと兄妹扱いされるのは嫌だったんでしょう。
彼女も多感な時期ですし。
しかし、麻子ちゃんに夜遅くまで捕まっていたので寝不足で眠いです。
麻子ちゃんもしきりにあくびをしていましたし。
それが原作に悪影響を及ぼさないかどうか心配だったのですが。
大丈夫みたいですね。
昨日と同じ場所から見ている限りでは無事にあんこうチームに合流出来たようです。
おっ、ちょうど今一年生チームのM3中戦車が行動不能になってあんこうチームが勝ちました。
とりあえず今の所は目立った異常は無いみたいですね。
順調に原作通り話が進んでいます。
それではそろそろ学園長に挨拶をして帰りますか。
ふぅ。挨拶に行ったら学園長にめちゃくちゃお礼を言われてしまいました。
以前の根回しの電話の際に、しばらくの間は高級な車に乗って学園に来ない方がいいと、それとなく教えて蝶野1尉が行った10式戦車のLAPES(ライプス・低高度パラシュート抽出システム)アタックで学園長の車が破壊されるのを防いだために。
あれを見過ごすのも可哀想ですからね。
まぁ、その代わりに学園長が乗ってきていた軽自動車はぺっちゃんこになってしまっていましたけど。
さて、挨拶も済みましたし帰りま――
「あら?辻局長じゃありませんか!!こんな所でお会いするなんて奇遇ですね!!」
オーマイゴッド!!
蝶野1尉とエンカウントしてしまいました!!
「ど、どうも。こうして直接お会いするのは、お久しぶりですね。蝶野1尉」
「えぇ、お久しぶりです。今日はどういったご用でこちらに――あっ!!分かりました。大洗の子達が気になって、こちらにいらしたんですね?」
「え、えぇ、まぁ。それで……どうでした?彼女達は」
「みんな筋がいい子ばかりでしたよ。そうそう特に西住師範のお嬢様がいたチームなんて、他のチームを悉く撃破していましたし」
「そうですか。でしたら良かった」
「フフフッ。辻局長は本当に教育熱心な方なんですね。お忙しいでしょうに影から彼女達を見守っているだなんて」
「ア、アハハハッ……」
……言えない。様子見がてらに心の洗濯に来ていただなんて言えない。
「所で……この後のご予定は空いていたりしますか?空いているのであれば、ご一緒にお食事でも……」
そう来ますよね。やっぱりそう来ますよね。
この流れは想定していましたよ。
だからこそ!!私は言いましょう!!NOッと!!
「えぇ。特に何もありませんし、私でよければ喜んでお相手を務めさせて頂きます。お約束もしていましたしね」
「ありがとうございます!!それでは学園長に挨拶をしてきますので、申し訳ありませんが少しだけ待っていてもらえませんか?」
「分かりました。では、ここでお待ちしています」
「お願いします。すぐに戻ってきますから」
……どうしてこう私はヘタレなのでしょう。
まぁ、しょうがないですけどね。
電話口ならまだしも面と向かって断る度胸なんか私にある訳がないのですから。
はぁ、それにしても……どうしましょう!?
女性のエスコートのやり方は仕事で覚えましたけどプライベートとなると……ッ!!
神よ、ヘタレな私に何故こんな試練をお与えになるのですか!!神よ!!