役人転生〜文部科学省学園艦教育局長に転生した私はどうしたらいいのだろうか〜 作:トマホーク
悪夢のような現実
ついこの間まで私はミリタリーとアニメが好きな普通のサラリーマン(25歳・独身)でした。
……何故“でした”という過去形になっているのかと言いますと。
映画館で嵌まりに嵌まったガルパンの劇場版を鑑賞中(10回目)に意識を失い、気が付けば赤ん坊になっていたからです。
どうしてこうなった?
エンドロールが終わった次の瞬間に眠りに落ちるように意識を失って、気が付いたら赤ん坊。
なんの冗談なんでしょうか?事実は小説よりも奇なりとは言いますが奇が過ぎます。
まぁとにかく。
確かな事は私がというサラリーマンから辻廉太という名の男の子に生まれ変わったという事実と私が生まれた世界には戦車道という武芸が存在した事です。
そう。つまり……私はガルパンの世界に転生してしまったようです。
正直言ってワクワクが止まりません。
生で原作キャラを見る事が出来る上に、あまつさえ彼女にする事が出来るかもしれない。
しかも、自分の頑張り次第ではハーレムを築く事さえも出来るかもしれない。
――と、傲慢な考えを抱いたのがいけなかったのでしょうか。
私に定められた運命は残酷なモノでした。
まず第1に少なく見積もっても原作開始まで数十年の時間がありました。
自分のいる年代を理解したのは私が15歳の時。
あまりに早く行動を開始して親に化け物扱いをされないように擬態を徐々に解き始めた頃です。
戦車道が女性の武芸という風潮に満ち満ちていた当時、男の私が戦車道に興味を示すのも憚られたため、こっそりとビデオに録画した戦車道大会の映像を深夜親に隠れて見ていたら……西住“しほ”さんが……黒森峰女学園の隊長として八面六臂のご活躍をされておりました。
この時点で私は全てを悟りました。
原作開始時点で私……おじさんじゃん……高校の原作キャラに手を出したら一発アウトじゃん……青少年保護育成条例違反じゃん……と。
いえ、そもそもその前に前の人生で25歳・独身(童貞)だった私には彼女を作るスキルなんて無かったです。
ハーレム?女の子に囲まれたら緊張で硬直してしまう私には無理です。
そうして現実の苛酷さを思い知り、うちひしがれていた私に追い討ちを掛けるように突き付けられた更なる現実。
それは『辻廉太』という人物に転生しているという事。
辻廉太――……この名を聞いて分かる人(ガルパンおじさん)は分かるでしょう。
そう。あの役(悪)人です。
七三分けの髪型と黒いセルフレームのメガネにスーツ。
そんな典型的なお役人姿でガルパンに登場し大洗女子学園――学園艦を廃艦に追い込もうとした張本人。
ガルパン唯一の悪役と言ってもいい人物です。
つまり原作キャラ達とムフフなフラグなど立てれる訳が無かったんです。
……神様は私をどうしたいのでしょう。
ガルパンが好きな私をガルパン世界に放り込んだのに、原作キャラに試練(絶望)を与える配役を任せるなんて。
何ですか?私が何かしたんですか?神様に対して何かしたんですか?
畜生めぇぇぇぇぇぇーーー!!!!
こうなったら自棄です!!役人なんかになってたまるもんですか!!
私はひっそりとみぽりんの活躍を眺めるんです!!
大洗のⅣ号戦車や38(t)戦車、駆逐戦車ヘッツァー、Ⅲ号突撃砲F型、八九式中戦車甲型、M3中戦車LEE、B1 bis、三式中戦車、ポルシェティーガーの獅子奮迅の戦いを応援するんです!!
聖グロリアーナ女学院やサンダース大学付属高校、アンツィオ高校、プラウダ高校、黒森峰女学園、そしてエキシビションマッチや大学強化チームとの戦いを固唾を飲んで見守るんです!!
……等と、あらぶった時期もありました。
結論から言いましょう。世界の修正力はハンパなかったです。
ワンチャンあるかもと、しほさんに手を出そうとすれば死がちらつく事件事故に遭い。
更には大学を卒業したら大洗にある中小企業に入社する予定だったのが、世界の修正力で文部科学省に入る事になってました(試験に行った記憶が無いのに、試験を受けた記憶があるというホラー)
しかも、ご丁寧に文部科学省学園艦教育局。
ふ、ふふっ、ふふふふふふ……いいでしょう……どうあっても私に悪役をやれというのでしょう?
辻廉太として原作通りに事を運べというのでしょう?
えぇ、やってやりましょう。
やってやりますよ。
ですが、ただで悪役をやるとは思わない事です。
原作通りに話を進めはしても、全身全霊を賭けて彼女達を支援してやります!!
見ていなさい、神様!!
彼女達は私が守ってみせます!!
……さて。それじゃあまずは原作開始前の大洗女子学園がⅣ号戦車以外を――それこそ原作で活躍する戦車達を含めて全部売却してしまったという難案件をどうしましょうか。
…………神様、原作通りに物語を進ませるんじゃなかったんですか?