そして、今日無事誕生日を迎えることができました。記念にFGOに課金したらタマモキャットが出ました。もちろん自費です。プレゼントなんてもらったことないや・・・
ドラマツルギーはいつかの波打つ大剣を使わずに肉弾戦を仕掛けてきた。やはり剣というものは視覚的な恐怖があるので、こちらとしては非常にありがたいのだが、これは完全に予想外である。
ドラマツルギーのパンチはかの霊長類最強の男も真っ青なものであった。風を切る音が耳元を掠め、空気が揺れる。
格闘家でも見切れないような、喰らえば一発でK.O.されてしまうようなパンチを紙一重に避けることができているのは、一重に吸血鬼化による運動性能の向上による。こう言ってしまうとなんだかひょいひょい避けている武道の達人のように思えてくるがそんなことはなく、無我夢中であちらこちらに走り、時にはモンハンの緊急回避よろしくダイブしていただけなのだ。
「どうした! 逃げ回ることしかできんのか! ハートアンダーブレードの眷属よ!」
「はぁっ、はぁっ、うる、せぇ、な! 舌噛め!」
唯一の反論が舌噛めってなんと小物らしいことだろう。というか、吸血鬼なんだから舌噛んだところですぐ再生しちゃうだろ。
そこで一つ閃いた。自分の血吞めばパワーアップできるんじゃね? と。よくあるではないか。血を吸って一時的にパワーアップ的な。無限ループで自己強化できるとか最強じゃねぇか。
「・・・なにを一人で悶えている?」
「あ、いや、ちょっと、舌噛んだだけです」
結論から言ってただ痛いだけだった。噛んだところですぐに再生し、血など吞めず終わってしまったのだ。傷は治っても、痛覚という感覚は残留するため少し痛い。そして、ドラマツルギーの呆れた目線がすごく痛い。
「どうする? 今からでも同胞にならんか? お前の動きは中々筋がいい。・・・No.2くらいにはなれるだろう」
しかも、さっきまでNo.1だったのがNo.2に降格していた。なんだか泣きそう。
「お断りだっての。むしろ、こんな小物いらねぇだろ」
「いいや。この状況下で軽口を叩けるほど肝の据わった男はそうはいまい」
「そうかよ」
今度は俺から仕掛けた。某国家錬金術師のように手を叩き、手にフランベルジェと鉄球を創造する。
この決戦に備えて俺がしてきたことといえば、まさにこの“創造スキル”を使いこなすことだった。以前キスショットが言っていた「創りたい物を思い浮かべて創るだけじゃ。ぐわーとな」というのは実に的を得ていて、創りたい物を想像することで具現化することができる。錬金術師のように物質の構成を理解する必要もなく、錬成陣も等価交換も必要ない。賢者の石よろしく無から有を創り出せる、正に“創造”。
しかし、あくまで“創造”。性能や強度は本物に劣るし、世界の修復力を受けるため永遠に存在させることはできない。
だが、いくら早く動こうが、力があろうが、素人同然の俺では剣を掠らせることすら叶わないだろう。
そこで、俺はフランベルジェを創造したのだ。自分の武器を使われると多少なりとも動揺を誘えると考えたためである。まぁ、実物の剣なんてフランベルジェしか見たことがなく、想像しやすかっただけというのもあるのだが。
実際、フランベルジェを見たドラマツルギーには動揺が見て取れた。その隙に鉄球を力任せに投擲し、避けたところに剣を振り下ろす。
「ほう! 創造スキルまで使いこなすか! だが、まだ甘い!」
いつの間にかドラマツルギーの両手にはフランベルジェが握られており、俺の一閃はいとも簡単に受け止められていた。
むしろ、二刀を持っているドラマツルギーの方が優勢となり、俺の剣を受け止めている方ではないもう一刀で左腕を切り落とされてしまった。
「いってぇぇぇぇぇぇぇ!!」
血が噴水のように吹き出し、グラウンドの土が血で染め上げられる。だが、それも一瞬の出来事で、痛みで目を閉じているうちに左腕は生えており、まき散らされた血液も蒸発して消えていた。服までは再生しないので左袖だけがない不細工な格好になってしまったが。
再生速度に感動している間もなく、ドラマツルギーの剣が迫ってくる。なんとか切断だけは避けて距離を取り、地面に手を叩きつけ地面を隆起させドラマツルギーの腹部を貫く。
「面白い使い方をする。益々殺すには惜しい人材だ」
「はっ、知ってるか。全は一、一は全ってな」
恰好つけて見たが、ハガレンごっこをしてるみたいでなんとなく気恥ずかしい。だが、漢のロマンなので目を瞑っていてほしい。
「そうか。だが、その程度では私を倒すことなどできんぞ」
土如きではドラマツルギーの鋼のような身体を貫くことはできなかった。だがそんなことは織り込み済みだ。
何度も何度も手を叩き、地面から槍を伸ばしたり、投擲したりと小賢しい攻撃を繰り返す。巨体とは思えない身のこなしで避けられるが、そんなことはどうでもいい。
「何度やっても同じだ。そう何度も――」
瞬間。風に流された巨大な布がドラマツルギーを包む。視界と動きさえ封じてしまえば初心者の剣筋でも当てることなど意図も容易い。
そう。俺が何度も手を叩いたのは手を叩かなければ創造スキルが使えないと思わせるため。土で攻撃していたのは砂埃を巻き上げ視界を悪くするため。
総武高は潮風により風向きが変わる。より強い風吹く瞬間を見計らって巨大な布を手を叩かずに創造。あとは風が運んでくれる。
別に風向きを読めるとかではない。ここ1年間、一人ベストプレイスで昼飯を食べていればなんとなくわかるようになっただけなのだ。え、昼飯なんて一人で食べるものだろ? ご飯を食べてるときは喋っちゃいけないって教わっただろ。
「ぐっ・・・」
左腕を切り落とされたドラマツルギーは初めて表情を崩し、続けて振るわれた俺の剣をバックステップで避ける。
「なんだこれは!?」
「今頃気付いたのかよ!」
そう。本命はこれ。
土で作った槍の中に鋼鉄を混ぜ、ドラマツルギーの背後に檻擬きを仕掛けておいたのだ。
戦いに備えて何度も何度もシミュレーションした結果がこれしか思い浮かばなかったのだ。
追い打ちをかけようとフランベルジェを振り上げたところでドラマツルギーは剣を捨て、地面に手をつけていた。というか、土下座をしていた。え、俺悪役みたいだからやめてくれない?
「・・・なんのつもりだ?」
まだ決着はついていない。油断を誘うつもりなのだろうか。
「見ての通り降参だ。日本ではこうするのだろう?」
「いつの時代の日本だ」
外国人特有の間違った日本文化に笑いが込み上げそうになるも、何とか堪え剣を握り直す。
「待て。降参だと言っているだろう」
「証拠はあるのか?」
ドラマツルギーは俺に
「この腕では戦いようがない。自力で負けていようが、経験では勝てるものだと思っていたのだがな・・・。力だけでなく、策を弄することにも長けていては私に勝ち目などない」
「それは過大評価だろ。つーか、その左腕だって簡単に再生するじゃねぇか」
さっき俺が切り落とされたときなんていつ再生したかもわからないくらい早かった。
「勘違いしているようだな。お前達のように一瞬で再生できる吸血鬼などそうはいない。まあ、それでも私は再生力の低い部類なのだが――それでも、お前は珍しい部類の吸血鬼なのだぞ。言ったであろう。あのハートアンダーブレードの眷属だとな。私なぞとは格が違うのだ」
「・・・そうだったのか」
吸血鬼って不老不死のイメージがあるし、これが普通なんだとばっかり思っていた。
――自力で負けていようが、経験では勝てるものだと思っていたのだがな――
どうにかこうにか一閃浴びせられた程度の実力では、こんな筋肉隆々の化物よりも優れているという実感は全く湧かない。むしろ、服のボロボロさから言えば何度殺されかけたことだろう。
「降参、と言ったからにはキスショットの右足は返してもらえるんだろうな?」
「約束は守る。すぐにでもあの軽薄な男に渡しておこう」
「わかった」
「では、示談成立だ」
そう言うと、彼の姿が次第に霞始め、夜へと溶けていく。
「ハートアンダーブレードの眷属よ」
「なんだよ。また勧誘か?」
姿が消え、何もないところから響く声に不気味さを覚えつつ答える。
「誘いたいのは山々だが、それは止そう。何せ負けてしまったからな。最後に警告をしようと思ってな」
「警告?」
「ああ。残りの二人は私と違って本気で殺しに来るだろう。油断はしないことだ」
四天王の中でも私は最弱ってやつだろうか? これで最弱だったら心折れるわ。引きこもりたい。
「それともう一つ。元人間としての忠告だ。――引き返すなら今だ。人間に戻りたいのであれば」
「別にこのままで構わねぇよ。便利だしな」
「・・・そうか」
それっきり厳めしい男の声は聞こえなくなった。
とりあえず、俺の学園異能バトルの第一回戦は終わりを迎えたらしい。
「お兄ちゃん・・・?」
どうやら一息は吐けそうにないらしいが。
本当は捻くれた戦闘シーンを書きたかったのですが、「捻くれたってなんだよ。つーか初戦闘にそんなん無理じゃね?」ってことでこんな結果になりました。
結構余裕そうな戦闘に思えるかもしれませんが、実際ボロボロで一歩間違ったらやられてるレベルだと考えて下さい。
あと、今更ですが、この作品は空いた時間にさっと読めることを目指してるため読者の皆様に自己補完していただくシーンが多々あります。ぜひ、妄想を重ねつつ、一緒に楽しんでいただければ幸いです。