The transmigration of Eagle   作:fumei

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ハロウィーンその1

~ハリーside~

 

 三頭犬に遭遇した次の日、ハリーとロンはまだ疲労が残っていた。しかし、数時間たった後では昨夜の出来事が素晴らしい冒険だったように思えた。幽かに心残りだったブラックによる告げ口の心配もすぐに解消された。

 

「昨晩のこと?なんだ、言うわけないじゃないか」

 ハリーとロンが待ち伏せして昨日の一連の事件を口止めしようとブラックに話しかけたところ、そんな応えが返ってきた。

「僕も昨晩あんな時間にいたのは秘密の事情でね」

 ブラックはいたずらめいた表情で付け加えた。ブラックはあのハーマイオニーと同じように優等生で、融通をきかせるのも難しいかとハリーは考えていた。だからこそ、この返答には驚いたと同時に好感を覚えた。

 

 

 大広間ではマルフォイが2人がまだホグワーツにいることに驚いている顔が見られた。ハーマイオニーは2人に近づくとろくなことにならないと思ったのか、常に顔を背けていたが。2人にとっては余計な口出しをされずに済むと大喜びだった。今や、2人にとって最も重要なのはマルフォイにどうやって仕返しするかだった。

 

 一週間ほど後に、そのチャンスはやってきた。

 

 朝、生徒たちが朝食を摂ろうと集まる大広間に6匹のフクロウが列をなして飛んできた。いったい誰の荷物だろうと生徒が注目するなか、そのフクロウたちはハリーの前でその包みを落としたのだ。ハリーはまず手紙から開けた。すると手紙には中身が新品のニンバス2000であること、包みをこの場で開かないこと、それと今夜の練習について書かれていた。

 

「ニンバス2000だって!僕、触ったことさえないよ」ロンが羨ましそうに言った。

 

 2人は1時間目が始まる前に箒を見ようと、急いで大広間から出たが、玄関ホールに到達すると寮へ向かう階段のところでマルフォイと取り巻きの2人、加えてブラックが立っているのに気が付いた。

 

 マルフォイはハリーから包みをひったくると中身を確認した。

「箒だ」そう言って、包みを投げ返すマルフォイの表情は妬ましさと苦々しさが入り混じっていた。

「今度こそおしまいだな、ポッター。1年生は箒を持っちゃいけないんだ」

「ドラコはお父様に止められたしね」ブラックはマルフォイの表情とは逆に微笑んでいる。マルフォイの様子を面白がっているようだった。

「アルはちょっと黙っていてくれ」マルフォイがブラックを牽制した。ハリーたちと目が合うと、ブラックはおどけた風にウインクをした。ハリーは一瞬、場違いにも見惚れてしまった。

 

 調子づいたロンが我慢しきれずにマルフォイを挑発した。

「ただの箒じゃないぞ。なんたってニンバス2000だ。君、家に何持ってるって言った?コメット260かい?」

ロンはハリーに向かってニヤッとしながら付け足した。

「コメットって見かけは派手だけどニンバスとは格が違うんだ」

「君に違いがわかるのか、ウィーズリー。柄の半分も買えないくせに」

 

「そこまでにしなよ、ドラコ」ロンにかみついたマルフォイをブラックがやんわりと止めた。そのとき、フリットウィック先生がマルフォイの肘のあたりに現れた。先生は小さかったので、口論に夢中になっていたロンたちは気づかなかったのだ。

「君たち、言い争いじゃないだろうね?」先生がキーキー声で言った。

「先生、ポッターのところに箒が送られてきたんですよ」マルフォイが早速言いつけた。隣にいるブラックは苦笑している。

「いやー、いやー、そうらしいね。マクゴナガル先生が特別措置について話してくれたよ。ところでポッター、箒は何型かね?」

「ニンバス2000です」ハリーはマルフォイのひきつった顔を見て、笑いをこらえながら続けた。

 

 

「実は、マルフォイのおかげで買っていただきました」

 

 

 2人は怒りと当惑をむき出しにしたマルフォイを置いて、笑いを押し殺しながら階段を上がった。

 階段の上まで到着すると、ハリーは笑いで絶え絶えになりながら言った。

「だって本当だもの……もしマルフォイがネビルの『思い出し玉』をかすめていなかったら、僕はチームにはいれなかったし……」

「それじゃ、校則を破ってご褒美をもらったと思っているのね」背後を振り返ると、ハーマイオニーがハリーの持っている包みを睨みつけながら階段を上がってくるのがわかった。

 

「あれっ、僕たちとは口をきかないんじゃないの?」

「そうだよ。今更変えないでよ。僕たちにとっちゃそっちの方がありがたいんだから」

 そう2人が返すとハーマイオニーは怒って行ってしまった。

 

 

 

 毎日たっぷりの宿題や週3で行われるクィディッチの練習で忙しく、気づくとホグワーツに来てから2か月もたっていた。授業の方もやっと基礎がわかってきたので面白く感じるようになっていた。

 

 ハロウィーンの朝、ハリーはパンプキンパイを焼く匂いで目が覚めた。

 廊下では「トリックオアトリート」の合言葉が響き、楽しそうにしている生徒が行きかっている。

 

 

 午前の「妖精の魔法」の授業では、フリットウィック先生がそろそろ物を飛ばす練習をしましょうと言った。先生がネビルのヒキガエルをぶんぶん飛び回らせるのを見てからというもの、ハリーはやってみたくてたまらなかった。

ハリーはシェーマス・フィネガンと組んだ。そして、ロンはなんとハーマイオニーと組むことになった。このことには2人ともカンカンだった。2人はハリーが箒を受け取ったあの日以来、一度も口をきいてなかったのだ。

 

「さあ、今までの練習を思い出して。ビューン、ヒョイですよ」

 

 最初に向かいの列に座っているアルタイル・ブラックが成功させた。フリットウィック先生はスリザリンに加点すると、ブラックに他の生徒の補佐をするよう指示した。

 

 実演するとなると案外難しいことがわかった。ノートをとってわかったつもりになっていたが、実際に杖を振ってみると全く効果が現れないのだ。ちゃんとビューン、ヒョイとやったのに、ハリーの羽もシェーマスの羽も机に張り付いたままだった。ついにはシェーマスが癇癪をおこして杖で羽に火をつけてしまったので、ハリーは帽子で火を消す羽目になった。

 

「調子はどう?」そこへ教室を回っていたブラックがやってきた。

「最悪だよ」燻ぶっている羽根を見ながらハリーが答える。

「ハリーがやっていたのを見ていたけど杖の振り方は完璧だったよ。あとは多分…イメージを明確にすることかな」

「イメージ?」ハリーが聞き直した。隣のシェーマスも疑問に思ったようだった。

「そう。魔法は使う人の意思で効果の程度が違うんだ。上手にイメージすることで最大限の効果が現れるんだよ。試しにこの羽が浮くところを想像しながら杖を振ってみて」

 

 ハリーは自分の目の前にある羽がフワリと宙へ浮き上がるところを想像した。そのイメージを頭に思い浮かべたまま杖を振りながら呪文を唱える。

ウィンガーディアム レヴィオーサ(浮遊せよ)

 ハリーが呪文を唱えた瞬間、今までびくともしなかった羽がハリーの目の高さまで浮き上がった。

 

「わあ!できたよ!」ハリーがそう言って振り返ると羽は落ちてしまった。「あ、落ちちゃった…」

「持続させたいなら羽から目を離さないことだね」最後にブラックはそうアドバイスすると別の組のもとへ行ってしまった。ハリーは引き続きイメージを忘れないようにしながら練習した。

 

 

 

 クラスが終わった後のロンの機嫌は最悪だった。

「だから、誰だってアイツには我慢できないっていうんだ。僕だってできるならブラックと組みたかったさ。そしたらできただろうに」廊下の人ごみを押し分けながら、ロンがハリーに言った。

 すると、背後から誰かがハリーにぶつかり、追い越していった。ハーマイオニーだった。ハリーはその時にハーマイオニーが泣いているのを見てしまった。

「今の、聞こえていたみたい」

「それがどうした?」

 ロンも多少気にしたのかしばらく黙っていたが「誰も友達がいないってことはとっくに気が付いているだろうさ。」と言った。

 

 ハーマイオニーは次の授業どころか午後も一切姿を現さなかった。

 ハリー達がハロウィーンのごちそうを食べに大広間へ向かう途中、ハーマイオニーがトイレで泣いていて、一人にしてくれとパーバティに頼んだことを小耳にはさんだ。そのことを聞くと、ロンもまたバツの悪そうな顔をした。それでも大広間の飾りつけを見た瞬間、ハーマイオニーのことは2人の頭から吹っ飛んでいた。

 

 魔法でできた千匹の蝙蝠が黒雲のように宙を飛び、くりぬきカボチャの中のろうそくが広間を明るく照らしている。そして、ご馳走は入学式と同じように金色の皿の上に突如現れた。

 大はしゃぎでハリーがポテトをさらによそろうとしたその時、『闇の魔術に対する防衛術』のクィレル先生が部屋に全速力で駆け込んできた。

 生徒たちが何事かと見つめるなか、クィレル先生はダンブルドア先生の席までたどり着き、あえぎながら言った。

 

「トロールが……地下室に……お知らせしなくてはと思って」

言い終えるとクィレル先生はその場で気絶してしまった。

広間は大混乱になった。1年生は叫んで食べ物を倒すし、上級生も事態を把握できていないようだった。

 ダンブルドア先生が杖で何度か爆音を立てることで、やっと広間は静寂を取り戻した。

 

「監督生よ」重々しくダンブルドア先生の声が響いた。

「すぐさま自分の寮の生徒を引率して寮へ帰るように」

 

 監督生のパーシーの引率でハリーたちはホールから寮へと続く階段を上った。道行く生徒が行き交い、ハリー達もハッフルパフの一団とすれ違う中ハリーは突然ロンの腕を掴んだ。

「ちょっと待って……ハーマイオニーだ」

「あいつがどうかしたかい?」

「トロールのこと知らないよ」ハリーがそう言うと、ロンは唇をかんだ。

 

「わかった。だけどパーシーに気づかれないようにしなきゃ」

 

 2人はハッフルパフ寮生の集団に紛れ込み、誰もいない廊下へ出て、女子トイレの方へ急いだ。

 

 しかし、角を曲がったところで後ろから足音が聞こえた。

 

 ハリーとロンが思わず隠れて、陰から目を凝らすと、足音の正体はスネイプだった。

 

「どうして他の先生と一緒に地下室に行かないんだろう」ハリーにはスネイプの行動が不審だと思った。

 

 スネイプが廊下から去ると、2人は隠れていた場所から出てできるだけ音をたてないようにしながら進んだ。

 

「何か臭わないか?」ハリーとロンの鼻を異臭が襲う。

次に音が聞こえた。低いうなり声と思い何かを引きずる音だ。

 ロンが震える指で指した先には向こうから大きいものが近づいてくるとわかる影。

 2人が銅像に隠れて見ていると、月明かりに照らされてヌーッと現したその姿は───トロールだ。

 

 トロールは2人の前を通り過ぎと、あるドアの前で立ち止まると中へ入っていった。

 

「鍵穴に鍵が付いたままだ。中に閉じ込めてやろう」ハリーが言った。ロンがその意見に賛同し、2人は息をひそめ───鍵を閉めた。

 

「「やった!」」

 

 2人はもと来た廊下を走り、角を曲がりながら勝利を確信していた───その悲鳴を聞くまでは。

恐怖がありありと滲むその悲鳴はたった今、ハリーたちが鍵をかけた部屋から聞こえた───女子トイレだった。

 

「「ハーマイオニーだ!」」2人は同時に叫ぶと、トイレへ全速力で走った。ドアを開けて2人が突入すると、ハーマイオニーは奥の壁に張り付いて震えていた。───よかった。まだ生きている。

 ここから先のことはよく覚えていない──とにかく必死で───戦った。

 

 

 気付くと目の前には倒れたトロールとその鼻に刺さった自分の杖。女子トイレは惨状となっていた。

「これ……死んだの?」

 

「いや、ノックアウトされただけだと思う」ハリーはトロールのズボンで汚れた杖を拭った。

 

 

 その後、現れた先生にどう説明しようかとハリーが俯いていると、なんとハーマイオニーは先生に嘘をついて2人をかばってくれた。

 

 マクゴナガル先生はハリーたちに5点加点すると、寮に帰るように言いつけた。

 談話室に着くと、中はハロウィーンパーティの続きで賑わっていた。

 

 みんながワイワイと騒ぐ中、ハーマイオニーだけがポツンと一人扉のそばで立っている。3人の間には気まずい空気が流れたが、それも一瞬で、互いに顔も見ず「ありがとう」と言うと食べ物を取りに別れた。

 

 

 それ以来、ハーマイオニー・グレンジャーは2人の友人になった。

 

 

 

 

 




一旦投稿。次はハーマイオニー視点。

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