The transmigration of Eagle   作:fumei

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授業と三頭犬

 ホグワーツの授業はアルタイルにとって復習のようなものだった。もともと純血の名家では就学前の子供に家庭教師をつけて魔法の練習をさせるため、スリザリンの生徒たちの大半に授業に苦労するものはいなかったが。

 そのなかでもアルタイルはとびぬけて優秀だった。例えば、マクゴナガル教授の最初の授業でマッチ棒を針に変える練習があったが、それを一発でクリアしたのはアルタイルただ一人だった。

 マクゴナガル教授はアルタイルが変えた針を確認した後、感心しきった表情でスリザリンに5点加点した。その後、アルタイルは請われるままにクラスメイトにコツなどを教えて回ったので授業の終わりにはクラスの大体がマッチをわずかでも変えられるようになっていた。

 

 金曜日になると授業が始まって以降初めてのグリフィンドールとの合同授業があった。スリザリンの寮監を務めるセブルス・スネイプが教える魔法薬の授業だ。

 魔法薬の授業はスリザリンの談話室が存在する地下牢で行われる。材料の質を保つために、教室は日光を避けた地下に設けられているのだ。

 授業始めの出席を取るとき、スネイプはハリーの名前でわざと間を取った。

 

「あぁ、さよう。ハリー・ポッター。我らが新しい……スターだね」

 

 アルタイルの隣に座っているドラコと前の席のクラッブとゴイルはそれを聞いてクスクスと冷やかし笑いをした。出席を取り終わると、スネイプは授業の説明を始めた。

 

「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ」

 

 スネイプの説明は呟くようだったが教室が静かだったので、声が響いた。

 

「このクラスでは杖を振り回すようなバカげたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち昇る湯気、人の血管の中を這いめぐる液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。吾輩が教えるのは、名声を瓶詰し、栄光を醸造し、死にさえふたをする方法である───ただし、我輩がこれまで教えてウスノロたちより諸君がまだましであればの話だが」

大演説はクラスを一層シーンとさせた。

 

 するとスネイプ教授が突然「ポッター!」と呼んだ。

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」

ハリーはさっぱりわからないという顔をしていた。

 隣のロンを見るが、彼にもわからないようだった。彼らの後ろの席のハーマイオニーは手を高々と挙げている。

 

「わかりません」ハリーが答えた。

「チッ、チッ、チッ………有名なだけではどうにもならんらしい」

ハーマイオニーの手は無視された。

 

「ポッター、もう一つ聞こう。ベゾアール石を見つけてこいと言われたら、どこを探すかね?」

ハーマイオニーはさらに高く手を挙げた。ドラコは身をよじって笑っている。

 

「わかりません」

「クラスに来る前に教科書を開いて見ようとは思わなかったわけだな、ポッター、え?」

 ハリーはスネイプ教授の目をまっすぐに見つめている。

スネイプはハーマイオニーの手をまた無視した。

 

「ポッター、モンクスフードとウルフスベーンとの違いはなんだね?」

ハーマイオニーは遂に椅子から立ち上がり、手をこれ以上ないとばかりに伸ばした。

 

「わかりません。ハーマイオニーがわかっていると思いますから、彼女に聞いてみたらどうでしょう?」ハリーがそう言い返すと、グリフィンドールの席から数人笑い声を上げたが、スネイプがにらむとすぐに収まった。

 

「座りなさい」スネイプはハーマイオニーを座らせた。

 

「教えてやろう、ポッター。アスフォデルとニガヨモギを合わせると眠り薬となる。あまりに強力なため、『生ける屍の水薬』と言われている。ベゾアール石はヤギの胃から取り出す石で、たいていの薬に対する解毒剤となる。どうだ?諸君、なぜ今のを全部ノートに書きとらんのだ?」

生徒が一斉に羽根ペンと羊皮紙を取り出す音にかぶせるように、スネイプ教授がハリーに減点を言い渡した。

 

 その後の魔法薬の調合をアルタイルはドラコと組んだ。スネイプはドラコと、そして一緒に組んでいたアルタイル以外の全員に注意をして回った。

 スネイプがドラコのゆでた角ナメクジを見るように指示したとき、アルタイルは視界の端でネビルが火が付いたままの大鍋に山嵐の針を投入しようとしているのが見えた。

針が鍋に入った瞬間、鍋は割れ、シューという音とともに周囲に毒々しい緑色の煙が広がった。ネビルは薬を浴びて、そこら中におできができている。

 

 こぼれた薬から生徒たちがバタバタと避難する中、アルタイルは冷静に自分の足元をプロテゴで保護した。

 

「馬鹿者!」異常の原因に気づいたスネイプがネビルを叱責した。「大方、大鍋を火からおろさないうちに、山嵐の針を入れたのだな?」

 泣き出したネビルを保健室に連れていくようシェーマスに言いつけると、そのままスネイプ教授は難癖をつけてハリーからさらに1点減点した。

 

 

 

 

 

 夕食後、アルタイルは談話室でくつろいでいた。

 

 ちなみに談話室のソファーは基本地位の高さで決まる。暖炉の前の特等席は大体名家の生徒か監督生、クィディッチのキャプテンの席になるのだが、アルタイルたちは現在その位置に座っていた。

「…薬をかぶったロングボトムの顔見たか?傑作だったな…僕は未だにあいつが純血だとは信じられないよ。本当はスクイブなんじゃないか?」

ドラコは午前の授業の話をしていた。

 クラッブとゴイルはわかっているのかわかっていないのか微妙な相槌をうっている。

 

「ここだけの話」

ドラコはひとしきりネビルを馬鹿にした後、紅茶でのどを潤し、アルタイルに話しかけた。

「アルはロングボトムが間違っているのに気づいていたんじゃないのか?」

 

「まさか」

アルタイルは読んでいた新聞から目を離した。「僕がわざと注意しなかったって?」

「さあ…でも、面倒くさがりの部分はあるだろう?だからそうじゃないかと思った。けどアルは否定するんだろう?君ってそういうやつさホント外面ばかり良くって…」

 

 アルタイルは自分が読んでいた新聞に再び目を落とした。

 

 新聞には「グリンゴッツ侵入される」と書かれていた。

 

「まさか」アルタイルはもう一度言った。

 

「わざと言わないなんてことはしないさ」

 

 

 

 

 

 次の週に入って間もなく、スリザリンの談話室にはある「お知らせ」が貼り出された。

 

 『飛行訓練は木曜日に始まります。グリフィンドールとスリザリンの合同授業です。……』

 

 その日からドラコの自慢話の中心は箒についてになった。ドラコはクィディッチ・チームに1年生が参加できないことの不満を唱えたり、自分の家にある箒がいかに素晴らしいかを自慢したりした。

 最終的にはいつもマグルの乗ったヘリコプターを危うくかわしたところで話は終わったが。

 アルタイルは当時ドラコの家で一緒に練習したのでドラコがヘリコプターを避けることができたのはドラコの実力ではなく、彼の父が魔法で箒を操ったからだと知っていた。

 

 ドラコが何度同じ話をするにも関わらず、彼を狙っているパンジー・パーキンソンはずっとドラコの隣に付いて箒の話をねだった。これにはさすがのアルタイルも懲りてしばらくの間ドラコから距離を置くことにした。その代わりにアルタイル個人に付きまとう人が増えたのには閉口する。勿論、そんな態度はおくびにもださないアルタイルだったが。

 

 

 

 木曜日の朝、アルタイルはマクゴナガル教授に入学する前から試そうと思っていた()()()()をお願いすることにした。大広間ですでに朝食を摂り、新聞に目を通しているマクゴナガル教授にアルタイルは話しかけに行った。

 

「失礼します、先生。実はお願いしたいことがあるのですが…」

 

 

 

 

 アルタイルが頼み事は普通の1年生がするものではなかったが、彼の授業中の態度が模範的だったのと、マクゴナガル教授が公平な立場から彼を評価していたこともあり、彼のお願いはすんなり通った。

 

「いいでしょう。ですが、1年生がやる内容としては高度な内容ですので、もう一度詳しい説明をします。少々遅くなりますが、夜の9時に私の部屋に来てください。いいですね?」

「勿論です、先生。ありがとうございます。」

 話が終わると、マクゴナガル教授は立ち上がり、グリフィンドールのテーブルで何やら揉めているハリー達のもとへと向かった。

 

 

 その日の午後3時半、アルタイル含めたスリザリン生は校庭に集まり、飛行訓練の授業を心待ちにしていた。少し遅れてグリフィンドール生が到着してすぐに、担当教官のマダム・フーチがやってきた。マダム・フーチは「なにをボヤボヤしているのですか」と生徒たちに箒のそばに立つよう急かした。

「右手を箒の上に突き出して」マダム・フーチの指示を出した。

「そして、『上がれ!』と言う」

 アルタイルは小さく「上がれ」と魔力を込めながら言うと箒はすぐに手の中に収まった。

 

 この行為自体は箒に乗ることに必要な過程ではないが、箒を操るうえでは自分の魔力をコントロールすることが大事である。したがって、このように魔力を放出するうえで一番大事な要素である意思を上手く言葉に乗せることで箒に言うことを聞かせることが可能となるのだ。

 

 全員が正しい乗り方をマスターすると、次にマダム・フーチは飛ぶ工程に移った。

「さあ、私が笛を吹いたら、地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないように押さえ、2メートルぐらい浮上して、それから少し前かがみになってすぐに降りてきてください。笛を吹いたらですよ───1,2の───」

 マダム・フーチが笛を鳴らす前にネビルが飛び上がった。

 

「こら、戻ってきなさい!」マダム・フーチはネビルに声をかけたが、すでに箒はネビルの制御下から離れ、シャンパンのコルク栓が抜けたようにヒューッと飛んで行った。声にならない悲鳴を上げ、ネビルはどんどん地上から離れていく―――

 

 グリフィンドール生の悲鳴やスリザリン生の嘲笑をよそに、アルタイルは杖を取り出した。

 

スポンジファイ(衰えよ)

 

アルタイルが杖を向けた先、地面がクッション状にやわらかくなる。

 

レビコーパス(身体浮上)

 

気を失って箒から滑り落ちてきたネビルは減速し、静かに降ろされた。

 

 突然呪文が聞こえた周りの生徒は驚いたが、唱えたのがアルタイルだと知って納得した。すでに1週間でアルタイルの優秀さは学年で知れ渡っていたからだ。

 

 地面に降ろされたネビルにマダム・フーチが駆け寄り、状態確認した。

 

「適切な対応でした、ブラック。スリザリンに5点あげましょう。ネビルは気絶しているようなので、医務室に連れていきます。その間誰も動いてはいけません。箒もそのままにして置いておくように。さもないと、クィディッチの『ク』を言う前にホグワーツから出て行ってもらいますよ」

「先生、僕も心配なので付いていってもいいですか」

「いいでしょう。さあ、行きますよ」

 そうして、アルタイルとマダム・フーチ、担架で運ばれるネビルの3人は医務室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

「ハリーが退学?」

 

 医務室から戻ってきたアルタイルが夕食の席で聞いたのは、ハリー・ポッターがマダム・フーチの言いつけを破って箒に乗り、それを見たマクゴナガル教授に連れていかれた……という話だった。

 

「そうさ。僕が投げた思い出し玉をアイツがキャッチしたところをちょうどマクゴナガルがみていてね」

 

「残念ながら、退学にはならないと思うよ」

アルタイルはハリーがシーカーになったくだりを思い出しながら言った。つまり、ドラコの作戦は逆に敵に塩を送ってしまった、ということだ。

 

 自分の思惑が外れたドラコは夕食の席を立つと、グリフィンドールの席に座るハリーに再び喧嘩をふっかけに行った。アルタイルは我関せずとばかりに、スリザリンの席で黙々と夕食を食べた。

 

 

 

 

 

 

 

 マクゴナガル教授の個人授業から地下牢へ帰る途中、上の階の方からガラガラガッシャーンというすさまじい音が聞こえてきた。

 アルタイルが気になって階段を上るとロン、ハーマイオニー、ネビルを引き連れたハリー一行と出くわした。

「わあ、ブラック!」驚いたロンが大声を上げた。

「静かにして、ロン!ブラックあなたなんでここにいるの?」ハーマイオニーが声を抑えて、アルタイルに聞いた。

「僕は…… 「それよりフィルチは巻いたの?」アルタイルが答えるのをロンが遮った。

「巻いたと思うよ」汗を拭いながらハリーが答えた。

 

 ところが、すぐ近くのドアが開き中からピーブズが飛び出した。5人を見て歓声を挙げている。

 

「黙れ、ピーブズ……お願いだから……じゃないと僕たち退学になっちゃう」ピーブズはなおもケタケタと笑っている。

「真夜中にフラフラしているのかい?1年生ちゃん。チッ、チッ、チッ、悪い子、悪い子、捕まるぞ」

「黙っていてくれたら捕まらずに済むよ。お願いだ。ピーブズ」

「フィルチに言おう。言わなくちゃ。君たちのためになることだものね」

そう言うピーブズの目は意地悪く光っている。

 その様子に苛立ったロンが「どいてくれよ」とピーブズを払いのけるとピーブズは大声を出した。

 

 

「生徒がベッドから抜け出した!……「妖精の魔法」教室の廊下にいるぞ!」

「とにかく……付いてきて!」

ハーマイオニーがアルタイルを無理やり引っ張って走り出した。

 

 しかし、廊下の突き当りでドアにぶち当たった───鍵が掛かっている。

「もうおしまいだ!一巻の終わりだ!」ロンがうめいた。フィルチの足音が聞こえる。ピーブズの声を聞きつけたのだ。

「ちょっとどいて……アロホモラ(開け)!」ハーマイオニーがハリーの杖をひったくり、呪文をつぶやいた。

 鍵が開くと4人はなだれ込み、アルタイルも巻き込まれた。

 

 

 

「どっちに行った?早く言え、ピーブズ」

「『どうぞ』と言わなきゃ、なーんにも言わないよ」

「仕方がない……どうぞ」

「なーんにも!ははは。言っただろう。『どうぞ』と言わなきゃ『なーんにも』言わないって!はっはのはーだ!」ピーブズがフィルチをからかって消えると、フィルチは悪態をついて別の場所を探しに行った。

 

「もう大丈夫だ……ネビル離してくれよ!」ハリーがヒソヒソ声で言った。何も言わないネビルを不思議に思って振り返ると、ハリーは見た。怪獣のようなその姿を。そして自分たちが今いる場所がどこだかを悟った。

 怪獣は犬の頭を3つ持っていた。あまりの恐怖にハリーたちはドアを倒れこむように開け、先ほど通った廊下を飛ぶように走る。ハリーたちが談話室に着くまで、フィルチや思わず連れてきてしまったブラックのことは頭から抜けていた。それほどのインパクトが怪獣にはあったのだ。

 

「あんな怪物を学校の中に閉じ込めておくなんて、連中はいったい何を考えているんだろう」やっと息をついたロンが口を開いた。「それに……ブラック……「あなたたち、どこに目をつけているの?」

ハーマイオニーがつっかかるように言った。「あの犬が何の上に立っているか見なかったの?」

 

「床の上じゃない?」ハリーは怪物の頭で精一杯で足元は見ていなかった。

「ちがうわ……床じゃない。仕掛け扉の上に立っていたのよ。何かを守っているに違いないわ。それに……ブラックですけど……階段のところでとっくに別れたわ。これで懲りたでしょ。もしかしたらみんな殺されていたかもしれないのよ。無関係のブラックも一緒にね。もっと悪いことに、私たち退学になったかもしれないのよ。では、みなさん、お差し支えなければ、休ませていただくわ」

 ハリーとロンはポカンとしてハーマイオニーを見送った。

 

「お差し支えなんかあるわけないよな。まるで僕らがアイツを引っ張り込んだみたいに聞こえるじゃないか。それに……無関係のブラックを連れてきたのだってアイツだぜ」

 ロンの愚痴をよそにハリーはハーマイオニーの言ったことが気になっていた。

 

「グリンゴッツは何かを隠すには世界で一番安全な場所だ……たぶんホグワーツ以外では……」

 

 




スネイプに質問されるかと思ったか?残念!このスネイプは原作に忠実だ!


マクゴナガル教授の個人授業長すぎじゃね?(突っ込み)

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