The transmigration of Eagle   作:fumei

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組分け帽子

 ハグリッドが扉を叩くと、城の中からエメラルド色のローブを着た背の高い黒髪の魔女が現れた。───マクゴナガル教授だ。

 マクゴナガルは扉を大きく開け、生徒を中に入るよう促した。入った先は玄関ホールになっていた。ホールは広く、正面に階段、右側にはほかの学年の生徒が集まっている大広間に繋がっている。マクゴナガルは生徒たちを小さな空き部屋へと誘導した。

 

「ホグワーツ入学おめでとう」教授は祝辞を述べると続いて寮の説明をした。

 寮はグリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクローそしてスリザリンの4つ。良い行いは加点され、規則違反は減点される。

 教授は最後に身なりを整えるよう告げ、部屋から出て行った。

 

「アルは寮がどうやって決まるのか知っているのか?」

落ち着かない様子のドラコが尋ねる。前からスリザリンに入ると豪語していたが、実際に組分けを前にして不安を感じているようだ。

 

「知らないけど」

アルタイルは当然組分け帽子のことを覚えていたが、黙っているのがホグワーツの習わしだと思ったため、当たり障りのない答えを返した。

「魔法を習っていない子やマグル出身の子がいるから、本人の素質のみを見るものだと思うよ」

アルタイルの言葉を聞いた周りの生徒が目に見えてホッとした。

「まぁ、ドラコは問題なくスリザリンに入れると思うよ」

 

「本当に知らないんだろうな…?まぁ、アルが言うなら間違いないか」

 

 しばらく待機していると、マクゴナガル教授が戻ってきて、生徒を一列に並べた。アルタイルはドラコの後ろに並んだ。1年生の行列は小部屋を出て、再びホールへ戻り、二重扉を通って大広間に入った。

 大広間は魔法でたくさんのろうそくが浮かべられ、空間を明るく照らしている。上級生たちが着席している長テーブルの間を通り、一行はマクゴナガルの指示で教員テーブルに背を向ける形で並んだ。

 マクゴナガルが持ってきた組分け帽子がスツールの上で歌いだした。

 

 

私はきれいじゃないけれど

人は見かけによらぬもの

私をしのぐ賢い帽子

あるなら私は身を引こう

山高帽は真っ黒だ

シルクハットはすらりと高い

わたしはホグワーツ組分け帽子

私は彼らの上をいく

君の頭に隠れたものを

組分け帽子はお見通し

かぶれば君に教えよう

君が行くべき寮の名を

 

グリフィンドールに行くならば

勇気ある者が住まう寮

勇猛果敢な騎士道で

他とは違うグリフィンドール

 

ハッフルパフに行くならば

君は正しく忠実で

忍耐強く真実で

苦労を苦労と思わない

 

古き賢きレイブンクロー

君に意欲があるならば

機知と学びの友人を

ここで必ず得るだろう

 

スリザリンではもしかして

君はまことの友を得る

どんな手段を使っても

目的遂げる狡猾さ

 

かぶってごらん!恐れずに!

興奮せずに、お任せを!

君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)

だって私は考える帽子!

 

 

 組分け帽子が歌を歌い終わるとマクゴナガルがABC順で名前を呼び、組分けが始まった。アルタイルはBなので序盤に呼ばれるはずだ。

「アボット・ハンナ!」「ハッフルパフ!」

「ボーンズ・スーザン!」「ハッフルパフ!」

「ブート・テリー!」「レイブンクロー!」

 

「ブラック・アルタイル!」

マクゴナガルが呼んだ瞬間、広間にざわめきが広がった。

 

「ブラックだって?」「10年前に捕まったじゃないか」「それはシリウス・ブラックでしょ」「子どもなんかいたっけ?」「いなかったはずだよ」「じゃあ親戚?」

 

 アルタイルが1年生の列から抜け、テーブルから見える位置に出ると、上級生のざわめきの半分は違う内容へ変わった。女子生徒はアルタイルの容姿に見とれ、ため息を漏らし、ぜひ自分たちの寮へ来てほしいと願った。

 

 アルタイルは多くの視線に晒されながらも、普段通りの足取りで組分け帽子へ向かった。そして、組分け帽子を自分の頭に乗せた。

 

「フーム」

アルタイルは帽子が自分の耳元で話すのが聞こえた。

「ブラック家の子だね? 20年前に1人だけグリフィンドールへ組分けたが、さてさて…」

 

 アルタイルは5歳より以前の記憶に閉心術をかけた。

 

───このことだけは知られてはいけない。

 

「おや、閉心術をしているね? 君には隠したい過去がある……勉学に積極的、レイブンクローに向いている……しかし、一番はここだろう………スリザリン!」

 

 帽子が叫ぶと他の3寮からは主に女子生徒の落胆のため息が聞こえた。スリザリンからは純血の王族とも謳われるブラック家の生徒を手に入れたことで歓声が上がった。アルタイルは帽子をとると、教員席へ優雅に一礼をした。そして、組分けの間からずっと向けられた視線に気づかないふりをしたまま歩き出した。

 

 スリザリンのテーブルへ向かうと監督生が立ち上がり、彼を歓迎した。スリザリンの女子生徒はアルタイルを自分の横へ座らせようとしたが、その数分後には右をクラッブとゴイル、左をドラコに割り込まれたので叶わなかった。

 

「ポッター・ハリー!」

 

 やがて今年の組分けの大本命、ハリーの名前が呼ばれると広間にシーッというささやきが広がった。スリザリンのテーブルからも有名なハリーがどの寮に組分けられるのかと注目されている。

 

「ポッターはスリザリンには来ない」

ドラコがむっつりとした表情でハリーの組分けを見ながら言う。

 

「列車でのことかい?」

アルタイルには思い当たることがあった。

 

「相変わらず察しがいいな……そうだよ。ポッターの奴、僕の握手を拒んでおいて血を裏切る者(ウィーズリー)とは仲良くしていた。きっとあとで後悔するだろう」

 

 アルタイルは「そう」とだけ返した。

 

 まもなくハリーはグリフィンドールへ組分けられた。グリフィンドールの席からは割れんばかりの歓声が挙がっている。一つ向こうのテーブルでは「ポッターを取った!ポッターを取った!」と赤毛の双子が騒いでいる。一通り盛り上がると次の1年生の名前が呼ばれ、組分けは再開された。

 

 

 最後にブレーズ・ザビニがスリザリンになり、組分けの儀式は終了した。帽子が片されると、教員席の特等席に座っていた白髪の老人ダンブルドアが立ちあがった。

 

「おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう!歓迎会を始める前に二言、三言言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこらしょい!以上!」

スリザリンの生徒たちは義務的に拍手した。

 

 歓迎会が始まり、テーブルは食べ物でいっぱいになった。隣のドラコの「うちの家の方がもっと豪華だ」と言うのを聞き流しながら、アルタイルは少量ずつ自分の皿に盛った。ドラコはしばらくしてから自分の隣に現れた血みどろ男爵のせいで食が進まないようだった。

 食べ物が消え去り、デザートが出てくるようになると、テーブルの話題は学校のことから家族の話に移った。隣のドラコが上級生を相手に家の自慢話をしている。マルフォイの姓も純血の間ではブラックに次いで有名である。

 

「僕の父上は魔法省で官僚をやっていて、ホグワーツの理事にも籍を置いています」周りの生徒はドラコを憧憬の目で見ている。

 

 少し離れた席から女の先輩がアルタイルに話しかけた。

 

「ブラック、あなたの家は?」

 

 アルタイルは少し目を見開いた。彼の両親はすでに他界している。無神経にもそのことに触れる人がいるとは思わなかったのだ。話を振った女の先輩は隣の生徒に肘で突かれている。彼女は自分がまずいことを聞いてしまったことに気づいたようだった。

「ご、ごめんなさいブラック。悪気はなかったの。ただ…」

 アルタイルは内心呆れていたが、そんな態度を表には出さず儚げな微笑みを浮かべた。

 

「いいですよ、先輩。知らない人がいても仕様がないですし…」

他の知らない生徒もアルタイルの様子で事情を悟ったようだった。深く追及されずに家族の話題はさりげなくフェードアウトしていった。

 

 

 

 デザートが消えると、ダンブルドアが再び立ち上がった。広間は静寂が支配し、聞き入る体制が整っている。

「エヘン───全員よく食べ、よく飲んだことじゃろうから、また二言、三言。新学期を迎えるにあたり、いくつかお知らせがある。1年生の諸君、構内にある森は立ち入り禁止じゃ。上級生でも決して入ってはならぬ」

ダンブルドアはグリフィンドールの双子を見ながら言った。

「管理人のフィルチさんからも注意事項がある。授業の合間に廊下で魔法を使うことは校則違反じゃ」

「最後に、とても痛い死に方をしたくない人は、今年いっぱい4階の右側の廊下に近寄らぬように」

 

 何人かの生徒が笑った。しかしアルタイルはそれが冗談の類ではなく、そこに賢者の石が隠されていることを知っている。

 

「では、寝る前に校歌を歌いましょう!」

ダンブルドアはそう言うと杖を取り出し、校歌を書き出した。

「みな自分の好きなメロディーで。では、さん、し、はい!」

アルタイルは歌っているふりをした。周りのスリザリン生も同じように歌っているふりをしているか、もはや口を開けていない者もいた。

 

 一番遅いウィーズリーの双子の歌が終わると、ダンブルドアは大きな拍手をした。

「ああ、音楽とは何にも勝る魔法じゃ」

「さあ、諸君、就寝時間。駆け足!」

 

 スリザリンの1年生は静かに引率の監督生に付いていき、階段を下りて暗い地下牢へ向かった。監督生はむき出しの石壁の一つでとまり、「純血!」と合言葉を言った。中に入ると大理石でできた談話室が広がっていた。暖炉と椅子には繊細な彫刻が施され、緑がかったランプがつるされている。監督生は生徒たちを1か所に集めると歓迎の言葉をかけた。

 監督生の指示で新入生は解散し、自分たちの部屋に入った。アルタイルはドラコ、クラッブ、ゴイルと相部屋だった。部屋には緑の絹の掛け布がついたアンティーク調の4本柱のベッドが配置されている。

 アルタイルは寝巻に着替えると早々にベットに入った。その日は夢も見ないほどの深い眠りだった。

 

 

 

 

 

 

~sideダンブルドア~

 

 

 

 ───六年前にその少年を見たとき、トムの再来を見た気がした。

 彼は母親の亡骸が埋められていくのを冷めた目で見つめている。その横顔から両親を亡くした悲しみを読み取ることはなかった。彼はただ俯きがちに死者に黙とうを捧げていた。

 葬式に参列し、遠くから彼を見ていたダンブルドアとふと顔を上げた彼の視線が交わる。彼の表情には一瞬驚きが現れた。

 記者たちに囲まれた時、彼の表情は悲しみに満ちていたが、ダンブルドアにはその表情が作られたものだと感じた。

 

 少年は葬式以来、父親の生家に籠っているらしいと肖像画からの情報で知った。以前まで暮らしていた母親との住まいには定期的に掃除をするために戻るだけだそうだ。

数か月前、ホグワーツの生徒名簿に彼の名が浮かび上がってきたため、生存を確認できた。

 ブラック家の屋敷には大仕掛けな保護魔法がかかっていて、ふくろうが手紙をとどけることができなかった。スネイプに派遣するついでに少年の動向を探ってくるよう指示する。6年前の彼がどう成長しているのかが気になった。

 

 スネイプの報告では問題という問題はなかった。ダンブルドアも賢者の石にかかりきりになり、懸念は風化していった。

 

 ところが、新入生の歓迎会で彼の姿を見たとき、ダンブルドアは約50年前にタイムスリップした心地がした。生徒の列から少しだけ抜きんでた長身、その1人の顔が視界に入った瞬間トムを連想してしまった。その生徒は美しい黒髪だったが、瞳は血で染められたような色ではなく、グレイの色をしていた。

 

 

 彼はまもなくスリザリンへ組分けられた。組分けの間、ダンブルドアはずっと彼を見ていた。彼はすでに多くの者を魅了していた。そんなところまでトムを彷彿させた。どうかトムのようになってくれるなとダンブルドアは願うばかりだった。

 




イラスト描きました。アルタイル(5年生くらい?)
【挿絵表示】



寮はスリザリンです。いったい主人公組とどう絡んでいくんだ…(考えてない)

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