The transmigration of Eagle   作:fumei

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前半面倒だったら読み飛ばしてもいいかもしれない。


誘い

 魔法学における構成概念と説明

 

 魔法学においてはさまざまな構成概念が導入され、研究の発展に役立ってきた。魔法がもたらす現象を概念的に説明することは、現象を発見すること以上に難解な問題を含んでいる。それは現象に名前をつけることである。これまで魔法学理論の分野で、この問題は議論の火種となったきたし、なかには用法の違いにより間違った解釈もみられた。

 

 本書では魔法学における構成概念のいくつかを簡単に紹介したいと思う。

 

 魔法学で用いられる概念は、その内容によって2つに分けられる。1つは形而上的概念である。形而上的概念は観察下での実験者の行動と意思、発生した現象を抽象的に記述した概念であり、その内容は観察に完全に還元される。また、形而上的概念の記述内容は環境の状況に左右されるため、たとえば状況が変化した場合に記述の正当性は保証されない。同時に、形而上的概念では実験者の行動や意思がどのように現象に作用したのかについての情報を持たない。

 

 もう1つは形而下的概念である。形而下的概念は形而上的概念と異なり、観察に還元できない余剰意味を持つ。余剰意味とは、実験者の行動や意思が現象に作用するまでの過程のことである。この余剰意味は環境の状況が変化しても記述の正当性を維持するし、実験者の行動や意思がどのように現象に作用したのかについての情報を含む。形而下的概念では、現象がおこるまでの過程を理論づけることで普遍的に魔法を行使することを可能とする。

 

 近年の教育では、形而上的概念と形而下的概念を混同した指導をしているが、これは理論的混乱を引き起こす可能性がある。しかし、最近の調査で現象がおこるまでの過程を知覚できる者がいるとわかった。

 

 彼らに実験協力してもらい、我々は魔法の概念についてさらに考えを深めることができた。以下はその説明である。

 

 「魔法を使う」とは事象に対して意思という指向性をもたせた魔力をぶつけることで、念じた通りに改変することである。魔力は我々の体内に蓄積されるものと宙を漂うものの2種が存在する。多くの場合、体内に蓄積された魔力を外側へ放出するが、熟練した魔法使いの中には空気中に存在する微量な魔力を扱うことができる者もいる。

 

 次に、我々は吸魂鬼の生態から、魂が意思を生み出す働きを担うと考えた。例えば吸魂鬼の接吻によって、廃人のようになってしまうのは魂、すなわち意思を奪ってしまうためである。また、魂は体の成長と共に成長し、親和性が高まる。児童が稀に魔力の暴走を引き起こすのは体とのバランスがとれていないからだと推測できる。

 

 この概念は上記で述べた2つの概念を結びつける役割をすると我々は考える。なぜなら、この概念を当てはめることによって今まで難解とされてきた変身術をはじめ、様々な高等魔法をより具体的に説明することが可能になるからだ。…………

 

 

 

 

 

 

 アルタイルは読んでいた『魔法学概論』を閉じると、その本があった棚に目をやった。誰も読まないのか人気のないコーナーにあったが、おおよそアルタイルの探しているのと一致した内容が書かれている。

 序章を要約すると、感覚的に魔法を扱う概念と理論的に魔法を扱う概念の2種があったが、異なる2つの概念を考えながら魔法を使うのは難しい。最近になって、間を埋める概念ができて、ようやく複雑な魔法の説明がついたという内容だ。

 続章には、アルタイルが探していた変身術への概念を用いた詳しい説明が記述されている。

 

 アルタイルは他に借りる本をいくつか見繕うと図書館を出て、雨のせいで幾分か暗くなった廊下を進んだ。地下へ降りる階段はこの突き当りに設置されている。広大なホグワーツの造りでは、自分の寮へ帰るのも一苦労だ。それでもアルタイルが図書館通いを止めないのは、単に暇でやることが他にないという理由だけだった。

 他の生徒たちもクリスマス気分が抜けないのか談話室で話したり、ボードゲームに興じたり、各々ゆっくりと過ごしていた。アルタイルは談話室にいると、余計に誰かに絡まれるので図書館に来たという訳だ。後はゆっくり借りた本を自分の部屋で読もうと思っていた。

 

 ふと向かい側から誰かがやってくる。暗くなった廊下で、大分近づいてやっと相手はクィレルだとわかった。アルタイルはお辞儀して通り過ぎようとしたのだが、クィレルがアルタイルに話しかけてきた。

 

「ミ、ミスター・ブラック、い、今時間があるかな?す、少し、はは、話がしたいのだけど」

クィレルはいつも通りのどもり口調だったが、その表情はかたく、緊張しているとわかる。

 

 一方、アルタイルは今年の黒幕といえるクィレルから接触されたことに驚いた。何か、()に目をつけられるようなことをしただろうか?きっかけとなりそうなのはクィディッチでの件くらいだが、あれくらいのことなら少し優秀な生徒で片付けられるはずだ。

 しかしそれだけではないような気がするのはクィレルの切羽詰まるような態度のせいだ。アルタイルは本を抱えている状況だし、課題がたまっているとでも言い訳して辞退しようかとも考えたのだが、クィレルは断ろうものなら実力行使でも連れていくという様子だ。

 

 仕方なく、アルタイルは誘いを受けた。

 

 

 

 

 

 クィレルの後を追い、やってきたのはすぐ近くの空き教室だった。

 

「話とは一体なんですか?」

アルタイルが聞くと、クィレルは笑いを浮かべた表情でアルタイルを振り向いた。アルタイルは心の中で役者だな、と冷静に毒づく。どうせろくな話題じゃないのが予想できた。

 

「驚かないみたいだな」

 

口調が変わり、怯えた演技を止めたクィレルをアルタイルはじっと見つめ返す。そんな態度にもクィレルはますます気を良くしたようだ。

 

「さすが我が君が目をかけるだけのことはある。私の演技も想定内という訳だ……」

クィレルは冷たく鋭い笑い声を漏らした。

 

 我が君が目をかける?やはり()はアルタイルの何かに興味をひかれたようだと判断した。

 

「聞くところによれば、ポッター達に賢者の石について教えたそうじゃないか……4階に隠されているものに気づいていたんだろう?」

 

「……」

アルタイルは沈黙で肯定を示した。無闇に口を開かない方がいいと思ったためだ。正直に言うと、近距離からくるニンニクの臭いで気分が最悪だった。

 

「我が君はクィディッチの試合で錯乱呪文を解いたのが君だと知るとより興味をもったようでね……私には魔法が人一倍強いようにしか見えなかったが、我が君がそうではないと教えてくださった……アルタイル・ブラックの魂が異常なのだと……」

 

 アルタイルの表情は微塵も動かなかったが、内心では動揺していた。魂が異常?もしかして転生者であることがばれたのだろうか。

 

「我が君によると、君の魂は常人とは異なり、体に馴染んでいないという……君の魔法が強力なのは魂が外界に晒されていることで魔力が直接事象に作用するからだと……」

 

 確かに、アルタイルは自分の他に魂が体からはみ出ている人間を()()ことがない。異常とはそういう意味かとアルタイルは安心した。相変わらずポーカーフェイスを保っていたが。

 

「我が君は、君が何らかの方法で他人の体を借りているのだとお考えになった……そう、つまり……」

クィレルがゆっくりと頭に巻いたターバンを解き、その場でゆっくりと体を後ろ向きにする。

 

「俺様のようにな」

クィレルの頭の後ろはもう1つの顔、ヴォルデモート()が現れた。

 

蝋のように白い顔、ギラギラと血走った目、鼻腔が蛇のような裂け目になっている。

 

「この有り様を見ろ」

唇はなく、ただの裂け目が動き、声を発した。

 

「ただの影と靄に過ぎない……誰かの体を借りて初めて形になることができる……しかし、常に誰かが喜んで俺様をその心に入り込ませてくれる……」

 

「形がなくても、魂だけの状態でも魔法は使えるだろう。」

アルタイルは自分の考えを言ってみた。

 

「そうだ。魂だけでも魔法は使える。しかし、それではゴーストと変わらない。命の水さえあれば、俺様は自身の体を創造することができるのだ……自分の魂の大きさに合った器がな」

 

 ヴォルデモートはアルタイルの全身を舐めるように見た。生理的嫌悪がアルタイルを襲ったが、気のせいだ。ヴォルデモートは恐らくアルタイルの魂を見ようとしているのだろう。しかし、クィレルに寄生している今は知覚できないはずだ。魂を見ることができるのは、魂が外界に触れている状態の時のみだ。推論だが、アルタイルがヴォルデモートの魂を知覚できないのは、クィレルに完全に寄生しているからだ。ヴォルデモートがハリーの中にある自分の魂を見れないのも同じ理由だ。

 

「俺様に協力するなら、賢者の石で新たに貴様に合う体を創ってやろう……どうだ?悪い話じゃないだろう」

ヴォルデモートの見るに堪えない顔がにやりとした。

 

「別に、必要ない」

アルタイルは短く返す。

 

「必要ない、だと?では、クィレルがハリー・ポッターの箒に魔法をかけて振り落とそうとしていたことをダンブルドアに黙っていたのはなぜだ?賢者の石を狙っていることも分かっていただろう。なぜダンブルドアに教えてやらなかったんだ?俺様にはわかるぞ、貴様もダンブルドアを倒そうとしているんだろう!なぜ、より強大な力を望まない?俺様と手を組めば全てを思い通りにできるというのに!」

 

「……」

アルタイルの指がピクリと動き、即座に判断を下すのを躊躇するように腕を組んだ。そして、少しの間考え込んだのち、アルタイルは口を開いた。

 

「僕の目的は――――」その瞬間、ビッターンという何かが廊下を打つ音がアルタイルの答えを遮った。続いて、聞き馴染みのある笑い声が廊下から響いてくる。勧誘を邪魔されたヴォルデモートが舌打ちをする。

 

 アルタイルは言いかけていたことを止め、優等生の仮面を被りながら言い直した。

 

「他所に聞かれていい内容ではないでしょう。では、僕はこれで失礼します」

 

 

 

 

 

 クィレルに一礼して廊下に出ると、教室内のじめっとした空気から解放された気がした。アルタイルが廊下の笑い声が聞こえた方へ向かうと、案の定ドラコがいた。ネビルに足縛りの呪文をかけて、彼が焦ってもがく様を笑っている。

 

 アルタイルは無言呪文で足縛りの呪文を解くと、持っていた本をわきに抱え、ネビルに手を貸した。

 

「あ、ありがとうブラック……」ネビルは震えながら立ち上がった。

 

「ドラコには僕が言っとくから。後は任せて」

アルタイルはネビルに行くように促すと、堅い表情でドラコに向き直った。ドラコは突然廊下に現れたアルタイルに驚いているようだ。

 ネビルが2人をチラチラと気にしながらも立ち去るのを確認すると、アルタイルは保っていた堅い表情を崩し、呆れたようにドラコを見つめる。

 

「何やってるんだよ……」

 

「アルこそなんで邪魔するんだ!」ドラコがアルタイルに噛みつくように返した。

 

「いつも言ってるけど……そういうのはドラコの品格が疑われるからやめた方がいいぞ」

 

「アルだって本気で止める気はないだろ」ドラコがそっぽを向きながら不満を垂れた。

 

「まぁ、今回は助かった」アルタイルがふと言葉を漏らす。

 

「え?なんだって?」

 

「なんでもない」

 

 

 

 




説明するの難しい(お手上げ)


さっさと1巻終えたい……この後はサクサク進めたいと思っています。思っているだけで実行できるかは別ですが!


お気に入り300users超えました。ありがとうございます!
感想も受け付けています。今回わかりにくいと思うので、疑問があればぜひ。自分の中での整理合わせて答えていきたいです。

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