ジルクニフ日記   作:松露饅頭

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その12

▽月×日 060

 今日は久しぶりに帝スポを読んでたら、いつも楽しみにしていた「大爆発! 隣のナザリック美女晩御飯インタビュー」のコーナーが今回で最終回なのだそうだ。

 タイトルが適当に思えるのは中の人が本気で忘れた結果らしいので仕方が無いが、備忘メモに「ナザ美女」としか書いてないとか何の為の備忘メモだ。

 

 それはそれとして最終回の今回は特別ゲストで「ゴールド」という匿名女性らしいが、イラストだと長い髪の後姿・・・後姿じゃ意味無いじゃないか。

 普段は他所に住んでいて、ナザリックの友人に会いに来たそうだが、いつもならサクサクと痛快に殺される記者が、今回は無事のようだ。

 ただ、失礼な質問(いつもはこれで記者が殺される、というパターンが、このコーナーの肝だからな)だと、彼女がいつも連れているという、自慢の番犬が恐ろしい雰囲気を醸し出す様子は伝わってくるので、よっぽど大きな犬なんだろうと想像できる。

 魔犬でも飼ってるのかな?

 

 ちょっと気になったのは、この女性が記事の中で、このバハルス帝国皇帝たる私を「とても面白い友人」だと言っていることだ。

 俺にナザリックに出入りするような人外の女性の友人などいないし、三流ゴシップ紙につき物のデッチアゲにしても、この捏造を放置しては帝国の名誉に関わる。

 これについては断固抗議をしなければならないだろう。

 

 

 

▽月△日 061

 先日、会議の合間の休憩時間に〝雷光〟〝激風〟〝重爆〟の3人が揃って何やらやっていたので、ちょっと様子を覗いてみると、最近流行のゲームで楽しそうに盛り上がっていた。

 なんでも携帯型のマジックアイテムで、魔法で通信してバトルしながらナザリックのダンジョンを攻略するゲームをやっていたそうで、「ナザリックこれくしょん」略して「ナザこれ」というゲームらしい。

 そういえば最近では「素魔法(スマホ)」とか言う色々遊べるマジックアイテムがあるらしいことは知っていたので、庶民の嗜好に通じておくのも上に立つ者の嗜みの一環だと思い、ちょっと調べて手配しておいたのが今日手元に届いた。

 

 さっそく届いた「素魔法」を持って、たまたま近くにいた〝雷光〟に見せたのだが「素魔法買ったんですか!」と、なぜか羨ましがられた。

 不思議に思って「この前、「ナザこれ」やってたじゃないか」と言うと、「ナザこれ」は「PMP(プレイ・マジック・ポータブルの略だそうだ)」のゲームですから素魔法じゃできませんよ?」とアッサリ言われた。

「一緒にナザこれやりたかったんですか?」と言うのでムカついたから一発殴っておいたが、何もかもアインズの糞野郎が悪い。

 

 

 

▽月◇日 062

 帝スポを読んでいたら、今年から始まる大陸リーグの展望が載っていた。

「問題ではあるが戦争にするまでもない」というような懸案事項を、代表チームが野球で決着をつけて平和的に解決する、非常に重要な競技だ。

 カッツェ平野の虐殺に衝撃を受けた各国が、なるべく武力を行使せずに問題を解決しようと知恵を出し合った画期的な試みとなる。

 世界観?何を今更。

 

 参加国は、当初の予定では帝国エンペラーズを筆頭に、法国シックスバイブルズ、王国ベイブスターズ、評議国ドラゴンズ、竜王国ワイルドプリンセス、聖王国シープスとなっていたが、聖王国側の事情によりシープスが出場辞退している。

 

 選手は軍人・兵士・騎士等、国家の軍に属する者の出場が禁止な為、表向きは一般人からの選抜が基本になっているのだが、何せ国家の利益を左右することになるのだから、実際には冒険者を雇うなど、あの手この手の強化に余念が無い。

 

 我がエンペラーズもアダマンタイト級冒険者の漣八連と銀糸鳥を中心にして、捕手のポジションに死んだことになっている〝不動〟を守りの要として送り込んでやった。

 これで有利に事が運べるとほくそ笑んでいたのだが、驚いたことに最下位候補だと思っていた王国ベイブスターズが、あの「ガゼフ・ストロノーフ」を4番に据えるとは・・・もう戦士長じゃないから文句は言えないが、汚いなさすが王国きたない。

 ただ、台風の目はやはり、出場辞退した聖王国シープスの代わりに出場する魔導国アンデッツだろう。

 アインズの糞野郎のことだから、どんな汚い手を使ってくるかわかったもんじゃない。

 選手名鑑を見ると、どこかで見た全部同じ黒い目出し帽の選手がずらりと並んでいるんだが、なんだこれ?

 

 

 

▽月▽日 063

 日課の帝スポを読んでいたら、新たに「ナザリック美女写真館」というコーナーが始まるかも知れないらしい。

 作者曰く、「話の導入に困ったんだ・・・」と言ってたので、後に引っ張るつもりはないそうだが、誰かが勝手に描くのは止めないとも言っていた。

 

 それはそれとして、なぜ帝スポがナザリック情報を入手できるのか疑問だったのだが、偶々宮殿に出入りしていた記者に聞いた所、帝スポでは他国の新聞と記事の相互提供契約を結んでいるという。

 つまり、これまで読んでいた「ナザリック美少女対談」などのコーナーは、ナザリックスポーツ新聞社の取材記事だった、という訳だ。

 そういえば「セレブライトの竜王女密着24時」「読者のお悩み相談・カイレ様が斬る!」「不定期連載小説・ナザリック学園」なんてコーナーもあるもんな。

 ちなみにナザ学のファンなのは皇帝の威厳というものがあるので内密にしておいて欲しい。

 しかし、それなら我が帝国に関連した独自コーナーは無いのか? と記者に聞いたところ、帝スポ独自記事は配信専用で載せないらしい。

 どんな記事なのか聞いても「命に関わりますから」と、頑として教えてくれなかった。

 そんな大袈裟な話でもなかろうに、その内ナザリックにいるロウネにでも聞いてみるとするか。

 

 

 

▽月□日 064

 ナザリックから突然あの糞野郎が訪ねて来た。

 事前連絡を寄越せと言ってあるのに、アポイントという概念が理解できないのか?

 お陰で竜王国援軍派遣検討会議は延期せざるを得なくなった。

 

 幸い前回のように後から護衛のデスナイトやスケルトン、悪魔が数百単位でワラワラ追いかけてくることが無かったことは助かったが、その代わりに双子の闇妖精を連れて来ていた。

 用件を尋ねると、魔導国で学校を開校するので、そこで学ぶことになる双子を連れて我が帝国の魔法学院を見学したいのだと言う。

 嫌味か?

 あそこはフールーダに次ぐ次世代の魔法詠唱者を育てる場所なのに、そのフールーダと同等以上の魔法を使えるだろう双子に見せて何になると言うのだ。

 

 そのことを説明すると、案外あっさり納得していたが、その後の雑談(さっさと帰れよ)で学校の名称をどうするか相談された。

「エ・ランテル魔法ゼミナール」だとか「AOG魔導国魔法学校」「アインズ魔法専門学校」「ナザリック学園」など候補を並べて意見を聞かれたが、面倒なので適当に「ナザリック学園」でいいんじゃないかと言っておいた。

 俺の知ったことか。

 

 




ジル君日記 補足
 今回、作者の無能によって話に上手く組み込めず、泣く泣く削った情報を追加。

 評議国ドラゴンズと竜王国ワイルド・プリンセスですが、元々は竜王国もドラゴンズの名称を希望していた所、名称使用権を賭けた試合の結果、勝者の評議国がドラゴンズとなりました。
 敗れた竜王国は国民アンケートの結果、第一位の名称は竜王国ロリータだったのに対し、女王が拒否権を発動して現在の名称となっています。

 王国ベイブ・スターズについては、国王が名称に悩んでいた折、王女の発した「ベイブ(子豚さん)・・・」が切っ掛けとなって現在の名称が決定。
 王女はただ単に、第二王子が歩いてるのを見てなんとなく反射的に呟いただけなのは秘密。
 ぶっちゃけ中の人がベイスって言いたかっただけじゃないかって?
 知らん話だ。

 シープスの出場辞退の裏には悪魔の影・・・こりゃ言わなくてもわかるか。


2016/03/20 各話にナンバリングを追加しました。
2016/04/16 文章の一部修正を行いました。
2016/05/02 文章の修正を行いました。

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