ジルクニフ日記   作:松露饅頭

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その11

◇月△日 055

 今日は一日会議のし詰めで疲れた。

 午前中は内政の細々とした方針を決定し、午後からはナザリック攻略検討会議だ。

 

 ナザリックの模型を参考に議論百出したが、まだ攻略の糸口は見えてこない。

 特に問題は4層のワー○ナ、5層ハン○、6層の竜○、そして8層の猛将エクレアを倒せるかだが・・・火山湖の大怪獣はなんとかなるだろう、もうDVDはポチったな? まさか俺を一人にはしないな? 信じてるぞ?

 

 片足持って行かれる覚悟で地雷をあえて踏んだら、実は中まで乾いてない犬のウ○コでした、という微妙な気分、HP半分持って行かれる覚悟をしてたのに、気付いたらなぜかHPは満タンなままで、MPを全部持っていかれました、という微妙な情けなさを皆にも味わって欲しいのだ。

 もちろん本当に買って文句言われても、俺の知ったこっちゃないが。

 

 検討すればするほど、やはりあの地下大墳墓は難攻不落の要塞と言えるが、そのうち必ず突破口を見つけ出してやるさ。

 あと、そういえば何か大事な援軍の会議をするのを忘れてる気がするが、忙しいと気ばかりが急いて、よくそんな気分に陥りやすいものだし、まあ、気のせいだろう。忘れよう。

 

 それにしても誰か悪戯者がいるらしく、寝室に置いてあるアインズフィギュアを会議室に置いていったヤツがいる。

 〝雷光〟が「あれ、自分で歩いて来ましたよ」などと青い顔で言ってたが、寝ぼけたんだろう。会議中に居眠りとはけしからんと叱っておいた。

 確かに、枕元に飾っていたはずが、なぜか朝にはベッドの下に転がっていたこともあったが、魔法に対する調査は、ちゃんと主席魔法使いに行わせている。

 マジックアイテムでもない、只のフィギュアが自分で歩くわけないじゃないか。

 最近弛んでるんじゃないかアイツ。

 

 

 

◇月◇日 056

 近隣の巡幸で、10日間ほど三騎士を伴って帝都を留守にしていた。

 領地内を直に視察するというのも重要な職務だ。

 

 しかし、どうやら留守の間に突然、魔導国から恐怖公が挨拶で来訪して来ていたという報告を受けた。どうもあそこの連中は事前にアポイントを取るということを軽視するきらいがあるな。

 俺が留守だったので代わりにロクシーが代理で応対したらしいが、ロクシーに聞いてみたところ「とても和やかに歓談してお帰りになられた」ということだった。

 どんな男だったか聞くと、「色黒で小柄だが、気品に溢れ、知的で物腰の柔らかい貴族、といった御仁でした」と言う。

「恐怖公という名は言いえて妙ですね」などと笑っていたのは良く解らないが、できれば直接話してみたかったな。

 

 しかし、「奥方に」と言ってプレゼントされたというブローチを見せられたのだが、精緻で繊細な細工を施した銀色に輝くゴ○○リというのはどういうセンスだろう?

 鳥でも動物でも、虫にしたって蝶とか色々あるだろうに、なぜあえて○キブ○なのだ?

 ロクシーは気に入ったと喜んでるようだし、偶々一緒にいて見せられた〝重爆〟も、「凄い」「綺麗」を連発してたが・・・これは俺のセンスの問題なんだろうか?

 

 

 

◇月▽日 057

 留守で読めなかった帝スポを久しぶりに読んだ。

 闘技場で武王vsスケルトン死国のリターンマッチをやってたはずが、なぜかカード変更になり、武王vsエスカルゴ○ンの試合になっていた。

 結果は武王がエ○カルゴマンを瞬殺し、エスカ○ゴマンは重態で今夜がヤマダ、と言うが誰か気付くやついるのかこのネタ。

 

 肝心のスケルトン死国は、過去記事によると急性胃腸炎で入院したらしく、それでカードが変わったようだ。いや、でもあいつホネ・・・胃腸?どこに?

 

 まあいい。

 いつも楽しみな「突撃!隣のナザリック美女」のコーナーだが、今回、どこを探しても名前が載ってない。

 イラストによると、長いストレート髪の、眼帯をした可愛らしい少女だが、記号と数字が書いてあるだけで、肝心の名前がわからんではないか。

 記者のミスだろう、数人射殺されているようだが、しっかりしてくれないと読者が困る。

 今回の少女は大人しいのかほとんど喋ってないが、それでも美しい女性というのは疲れた男心を和ませてくれるものだ。

 そういう意味で「激突!ナザリック美女インタビュー」コーナーは・・・コーナー名、中の人が素で混乱してるっぽいのだが、もうこれでいいよな。

 

 

 

◇月□日 058

 情報部から、「魔王ヤルダバオトによる王国の騒乱」事件の詳しい情報がもたらされた。

 事の発端は、王国内の犯罪組織が入手して隠匿していた「悪魔を使役できる魔法のアイテム」を「魔王ヤルダバオト」自らが奪取に動いたということらしい。

 これに対抗する王国は、「蒼の薔薇」と「漆黒」というアダマンタイト冒険者チームを雇ったらしいが、特に「漆黒」のモモンという男は単騎で魔王を圧倒する強さだという。

 さらに犯罪組織のアジトを壊滅させたメンバーの中には、王国最強のガゼフ・ストロノーフと並ぶと言われる戦士「ブレイン・アングラウス」と、「セバス」なる謎の人物がいたらしいが、この「セバス」も「漆黒」のモモンに引けを取らない強者だという証言があるらしい。

 しかも、この人物は帝国商人の家に仕える執事だと言うではないか。

 早速、探し出して繋ぎをつけるように命令しておいた。

 

 対魔導国を考えれば、冒険者である「蒼の薔薇」や「漆黒」のモモンはモンスター退治という形で雇えるだろうし、帝国の臣民たる「セバス」も問題無いだろう。

「ブレイン・アングラウス」については、まだ立ち位置が不明な点があるため定かではないが、もし雇えるならば大きな戦力だ。

 そしてこれが秘策中の秘策だが、事件後に発見されて現在は王国の秘匿する所となった、「悪魔を使役できるアイテム」を入手できるならば、「魔王ヤルダバオト」を対魔導国の戦力として利用できる可能性があるというのだ。

 まだ細かい詰めは必要だが、あの糞野郎を倒す希望の光が見えてきたと言えるのではないだろうか。

 

 

 

▽月○日 059

 今日は王宮での公務が終わって、久しぶりに邸宅の方に戻ったのだが、どうもロクシーのやつが使用人を一部入れ替えたらしく、見慣れない者が数人いた。

 全員が白手袋以外は黒一色の執事服で、目・鼻・口の部分だけ白い縁取りのある黒い目出し帽をしているんだが、あれは何か流行りか?

 ロクシーに聞くと、「よく働いてくれて助かってますよ」と上機嫌だったが、確かに以前より掃除が完璧に行き届いていて、空気まで美味しいような気がするほどだった。

 

 誰かの紹介かと聞くと、「恐怖公」の知り合いの、「エクレア」とか言う御仁の紹介だと言ってたが、確か「エクレア」といえばナザリックの猛将とかいう、あの「エクレア」のことだろうか?

 だとするなら、これは上手くすればこちらの陣営に引き込むことができるのではないだろうか?一考の価値がある。

 ただ、たまたまバードマンのヌイグルミ(あれはロクシーの物か?)を運んでいた使用人にすれ違って、ちょっと声を掛けてみた所、「イー!」としか喋れないのには困ってしまった。

 まあ、こちらからの意思疎通は全く問題ないようだし、仕事は完璧のようなので様子を見ることにしよう。

 

 




2016/03/20 各話にナンバリングを追加しました。
2016/04/16 文章の一部加筆修正を行いました。
2016/05/02 文章の修正を行いました。

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