スキマ妖怪、邁進す   作:りーな

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何となく書きたくなった。
アルベド大勝利。


幕間:避けられない試練

「そろそろ覚悟を決めて頂戴」

 

王都での作戦から数日後、アインズがナザリックに帰還したのち、紫に今までの礼も含めて「何かお願いしたい事とかないのか」と聞いた直後の返答である。

 

「何の覚悟ですか」

「決まってるじゃない────さっさとシャルティアかアルベドに手をつける覚悟よ!」

「ちょっと待ってください何言ってんですか」

 

血迷ったのだろうか、と思ったアインズだったが、残念ながら全くの正気である。

 

「いや、二人ともNPCとはいえ、ペロロンチーノさんとタブラさんの娘みたいなものですよ?手出したら二人にしばかれそうな気がするんですけど」

「自分の好みを何でもかんでも詰め込んで俺の嫁宣言してたペロロンチーノさんは兎も角、タブラさんは喜びそうな気がするのよね。あの人、NTR属性保有してたし」

「………」

 

否定できない辺り、ギルドメンバーの業は深い。

 

「という訳で、ちゃちゃっと手出してきなさい」

「いや無理ですってぇ!」

「そんなだからヘタレって呼ばれるのよ」

 

撃沈した。

ぬおおお、と妙な呻き声を上げているアインズを見下ろしながら、本当にどうしてくれようかこの骸骨、などと紫は考えた。外見幼女なシャルティアはまだしも、アルベドは紫の目から見ても魅力的な女性だと思うのだが。ただヤンデレの部分はどうにかして欲しいと切に思う。おのれタブラめ。

取り敢えずこの醜態を見る限り、今日は話が通じそうにない。時間も遅いし続きは明日話しましょう、と呼びかけ、紫はそそくさと自室に戻った。アインズも遅れて自室に戻り、妙な気疲れからかベッドに埋もれた直後に眠りに落ちた。アンデッドなのに。

ただ、アインズは紫がいい笑顔を浮かべていたことを知らなかった。アインズの受難は近い。

 

 

翌日。

 

 

「なんじゃこりゃあああぁぁぁ!」

 

アインズの絶叫が響き渡った。さもありなん。朝起きたら失った筈の肉の体になっていたのだから、絶叫の一つや二つも上がろうというもの。絶叫を聞きつけたのか、紫が満面の笑みでスキマから突如出現した。こいつだな、とアインズは確信する。正解である。

 

「あらあら。あらあらあら。モノ(・・)が無いのならまだしも、あるならせめてどちらかだけでも相手しないと駄目よねえ?」

「色々と言いたいことはありますが、取り敢えずその腹立つ笑顔をやめてください」

 

にこにこと笑う紫の姿に、アインズの頬が引きつった。骸骨でない分、表情が非常に分かりやすい。苛立った態度とは裏腹に、アインズの内心は焦燥一色。シャルティアは兎も角、常日頃から超絶肉食系女子として我が道を爆走するアルベドに狙われるなど、貞操の危機の前に命の危機を感じてしまう。主に全部搾り取られて。しかし恋する乙女センサーから逃げ切れる自信はアインズにはない。故に職務に逃げた。

 

「今日は一日中書類仕事でもしましょうかね」

「昨日の分は張り切ったアルベドが全部捌き切って、今日の分は私とデミウルゴスだけで処理する予定よ。そういう風に通達もしてあるし」

 

そんな逃げ道など速攻で潰されたが。

 

「冒険者の仕事に────」

「身代わりとして既にパンドラを派遣してるわ。ナーベラルにも通達済み、パンドラにもイメージを崩さないように言い含めてあるから一日位なら全然平気よ」

「新たに加えた支配領域の視察に────」

「代わりに藍が行けるように手配は済ませてあるわ」

「回覧板にあった男性守護者同士の懇親会を────」

「明日に予定を調整したわ。今日は偶然(・・)コキュートスとマーレに予定が入ってたらしいし」

 

にべもない。

徹底的に先回りして封殺していくその手腕は見事だが、どう考えても果てしなく無駄な使い方である。ナザリックの後継者問題という点ではそうでもないのだが、アインズからすれば傍迷惑な発揮の仕方だと言わざるを得ない。

 

コンコン、とノックの音が響く。

 

紫が更に笑みを深めた。それだけで誰が来たのか理解したアインズは、指輪の力を使って転移しようとして────指輪が無いことに気付いた。見れば、自分で嵌めているものとは別に、紫の手で弄ばれている指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)がある。いつの間に、と思う間も無く、紫が扉を開いた。

そこに居たのは、純白の悪魔。くふー!と妙な声を上げながら、ぷるぷると環形動物の蠕動を思わせる動きをしている。興奮からか顔が紅潮しているのも相まって、その奇異な行動すらも例えようもなく妖艶に見えた。

紫は静かに部屋の外に出て、肩を叩きながらアルベドに二言三言囁いたかと思うと、優しく背を押してアルベドを部屋に入れ、これまた静かに扉を閉じた。鍵を掛け、“本日入室禁止”の貼り紙を貼っておくのも忘れない。

紫はすぐさま歩き去った。故に後の出来事を知る者は当事者達しか居ない。ただ付け加えるのなら、次の日はアンデッドの癖に疲れ切ったアインズと、妙につやつやとしたアルベドが見かけられたそうな。アインズはその疲れを、男性守護者達との風呂で癒したという。もしかしたらそこまで計算されていたのかもしれない、とアインズが思い至ったのは、事が起こってから一週間後のことだった。




シャルティアはペロロンチーノに操を立てることにしました。なので参加してません。

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