規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士   作:kt60

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朽ち果てた大聖堂。その地下にあるもの

 雑魚を蹴散らし進んでいくと、大きな建物に行き当たった。

 大聖堂、と言えばよいのだろうか?

 屋根の上には巨大な十字架があって、建物の形もそんな感じだ。

 

 ただ本来の大聖堂であれば神々しいステンドグラスで飾られていそうな場所が、空虚なる空洞と化している。

 漂っている瘴気も、異様な濃さを発している。

 

「すさまじい瘴気だな……」

「なにかあるとしたらここ――っていう感じだね」

「………。」

 

「不安か? マリナ」

「すこし………。」

 

 オレはマリナを、抱きしめてなだめた。

 

「どうするよ……レイン」

「ううーん、そうだなぁ……」

 

 オレは軽く周囲を見渡し、変わったところがないかどうか確認してみた。

 そういうものは特にない。

 

「リリーナは、得意だよね? 人の魔力を察知するの」

「このメンバーの中ではそうだな」

「リンは、音で聖堂の中に人がいないかどうか探って」

「了解です、レインさま」

 

「ミリリは土魔法の応用で、聖堂の中を探知とかできない?」

「やってみますです、にゃあ……!」

「そういうことなら、わたしが補佐をしておこう」

 

 リリーナが、自身の指をパチッと鳴らした。

 

 ミリリ

 HP   20320/20320(↑20000)

 MP   20060/20260(↑20000)

 筋力   20275(↑20000)

 耐久   20265(↑20000)

 敏捷   20330(↑20000)

 魔力   20252(↑20000)

 

 

 ステータス強化呪文だ。

 相も変わらず、上昇の幅はおかしい。

 だがリリーナは、父さんの仲間でもあったエルフだ。

 ゆえにこの程度なら、『できて当然』になるらしい。

 

「それではお探りさせていただきます、にゃあ……!」

 

 ミリリは地面に両手をつけた。

 目を閉じる。白い魔力が地面へと浸透していく。

 ミリリの先輩であるカレンが、対抗意識を燃やして言った。

 

「アタシはなにか、するべきかぜなっ?!」

「カレンは、ええっと……」

 

 特になにも思いつかなかったオレは、適当に言った。

 

「パンツでも見せて」

 

「ぜなあぁ?!」

「特になにも思いつかなかったんだけど、ただ突っ立たせておくのもどうかと思ったんで……」

「それでパンツは、意味がわからないぜなぁ……」

 

 と言いつつも、カレンはスカートをたくしあげた。

 恥ずかしいのだろう。顔は真っ赤で涙目だ。

 オレはかわいいおパンツごしに、無防備な股間をくにゅくにゅといじった。

 

「ぜなあぁ……!」

 

 カレンの口から、甘く切ない声が漏れた。

 

「少年……」

「レインさま……」

「ご主人さま……」

 

 リリーナやミーユはもちろんのこと、ミリリもわりと引いていた。

 

「えっち………(///)」

 

 唯一マリナは、オレの手を取り自分のをさわらせてきた。

 マリナの敏感な部位は、とてもやわらかで気持ちがよかった。

 

「どっ、どっ、どっ、どういう光景なんっすか……?!」

 

 ローリアが、もっともらしい突っ込みを入れていた。

 それはさておき。

 

「聖堂の中に、人の気配はないって感じでいいか?」

「それらしき魔力はない」

「物音もいたしません」

 

「ミリリは?」

「人の気配などは、しないのでありにゃすが……。

 地下に大きな空洞があって…………はにゃあああっ!!!」

 

 ミリリの全身に、黒い魔力が駆け巡った。

 

「ミリリ?!」

 

 オレはミリリを抱きしめた。黒い魔力が、オレの体にも移る。

 皮膚を焼いてくるかのような、悪意のカタマリのような魔力だ。

 

「ディレイトヒール!」

 

 リリーナが、咄嗟に回復を入れてくれた。

 オレとミリリの体から、黒い煙が立ち登る。

 

「平気か? ミリリ」

「大丈夫です……にゃあぁ」

 

 口ではそう言うミリリだが、中々に辛そうだった。

 

「なにがあったかは、わかるか?」

「黒い……黒いナニカ。でした……にゃあぁ…………」

 

 ミリリはカクりと気を失った。

 

「…………」

 

 発症するは、眠りの呪いだ。

 この都市にくるきっかけとなった、冒険者たちがかかったというやつだ。

 

「この大聖堂の地下に、なにかある――ということのようだな」

「そうみたいだね」

 

 オレはミーユたちに視線をやった。

 

「やっぱり……ボクたちは下がっていたほうがいい……?」

「それを考えていたんだけど……いっしょのほうがいいかな、って思った」

「わたしとマリナに、少年がいるところ以上の安全地帯はないであろうからな」

「ありがと……」

 

 ぴと……。

 ミーユが、オレの腕にくっついた。

 

「くっつかれると、戦いにくいんだが」

「あっ、そっ、そうだよね! ごめん!!」

 

 指摘されて慌てて離れる。

 かわいい。

 

「しかし中に人がいなくて、ヤバいやつがいるって言うなら、することはひとつだな」

 

 オレはスッと右手を構えた。

 右の手首を左手で握りしめ、反動に備える。

 キュオッ――と、大気が震える音が鳴る。

 紅を帯びた|金色《こんじきの魔力が、右手のひらの先に集まる。

 

「しょ、少年?」

(あせあせ。)

 

 リリーナが戸惑う横で、マリナがちょっぴり焦りつつ、ミーユやミリリを自分の近くへと寄せた。

 リリーナも、無言でマリナのそばに寄る。

 

「ん………!」

 

 マリナは無言で、氷の魔法を展開した。

 厚さ二十センチの、氷のドームが生成される。

 オレは叫んだ。

 

「焼き払え! エルキェラット・エクレーヌ!」

 

 紅を帯びた閃光が、大聖堂に放たれる。

 雲に届かんとするその閃光は、瘴気にまみれた空気を切り裂く。

 死霊都市の空が割れ、一条の光と青い空に白い雲が視界に入った。

 そしていびつなる大聖堂は――。

 

 跡形もなく消え去っていた。

 

 マリナが作った氷のドームは、魔法の余波で半壊し、地面もガラス状になっていた。

 まともに戦っていたら厄介だったかもしれない死霊が、成仏していくのも見えた。

 そして地下への入り口が、ぽっかりと見えている。

 

「ごういん、だな……」

「すごい………。」

「すごい……」

「すごいっす……」

「でもこれが、手っ取り早いかと思ってな」

 

 オレは入り口に向かって進んだ。

 入り口からは、一際濃ゆい瘴気がでている。

 

「下は階段か……」

「それもかなり古いようだな」

「でもとりあえず、降りてみるしかないよね」




この作品の三巻が、11月の30日に発売します。
見かけたときはよろしくお願いします。

http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-75172-7.html

あとは私の別作品のコミックが、11月の22日に発売します。
この作品のえっちぃところが好きな人なら確実に楽しめると思うのでよろしくお願いします。
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_MF00000033010000_68/

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