規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士   作:kt60

81 / 111
番外・謎の洋館編
番外 謎の洋館編


「はにゃあぁ……!」

 

 家の外。

 ミリリが両の手をかざし、土魔法を使用する。

 マリナの氷とオレの炎でぐちゃぐちゃの泥と化した地面から、モーターボートの形が生まれた。

 

「偉いぞ、ミリリ」

「はにゃうっ……♥」

 

 ミリリを撫でてしっかりほめて、火炎魔法を発射した。

 モーターボートを、しっかりと焼いて固める。

 ミリリの魔力が残ってるため、これでけっこう固くなる。

 

「行くか」

「うん。」

「にゃうっ!」

 

 オレたちは乗り込んだ。

 オレとマリナに、ミリリとミーユ。

 カレンとリンとリリーナも乗り込んでいるため、かなりの所帯だ。

 

「それではの」

「はい」

 

 オレは両手に魔力を込めた。

 ハンドルから伝わった魔力が、後ろの排気口にまで流れる。

 

「ん………。」

 

 マリナが氷で道を作った。

 オレは火をだす。

 

 ボウンッ!

 

 モーターボートは、一気に進んだ。

 オレの魔力がこもった船は、時速150キロはだしている。

 流れる風が気持ちよければ、流れる景色も爽快だ。

 

 すると背後に気配を感じた。

 後ろのほうをチラと見る。

 

「おぉーい」

 

 父さんだった。

 

 時速150キロはでているはずのボートを、普通に走って追いかけてきていた。

 

 しかもお互いの距離は、すごい勢いで縮まっている。

 父さんの高速移動だ。

 オレはゆっくり、ボートを止めた。

 

「なんですか……?」

「ちと忘れ物をしてのぅ」

 

 父さんは、息も切らさずに言うと、懐から手紙をだした。

 

「竜人の里についたら、これを『スケイル』に渡しておいてくれ。

 ワシからと言ってくれれば、伝わるはずじゃ」

 

「はい、わかりました」

「うむ」

 

 オレは再び車をだした。

 父さんは、にこやかに手を振っていた。

 

「レインの父さん、このボートに走って追いつこうとしてたぜな……?」

「そこはやっぱり、レインの父さんだよな……」

「すごいです……にゃあ」

 

 カレンらが、そんなふうに言っていた。

 ボートは進む。

 氷を作るマリナの魔力が重要なので、疲れたら言うように言ってある。

 

(くい、くい。)

 

 隣のマリナが袖を引いたら、速度をゆるめる。

 

「どうした?」

「きゅうけい………したい。」

 

 オレはボートを止めてやる。

 

(ちゅっ………。)

 

 マリナはほっぺにキスをしてきた。

 豊満なバストを押しつけるかのように、オレに体を寄せてくる。

 

「マリナ……?」

「上が気持ちよくなると、下も気持ちよくしてあげたくなる………。」

 

 オレの手を取り、股の付け根にいざなった。

 一言で言うと濡れていた。

 触れた瞬間わかるぐらいの湿りけだった。

 

 ちょっどうかと思ったが、いつも通りのマリナであった。

 それで普通に始めるあたり、マリナのことは言えないが。

 青空の下でするのって、爽やかで気持ちいいんだよね。

 

「お前らな……」

「まったく……」

「ご主人さま……」

 

 ミーユやリリーナは頬を染めてあきれるが、ミリリは頬を染めてもじもじとした。

 手招きすると寄ってきた。

 

「スカートあげてみて」

「はにゃう……」

 

 ミリリはスカートをたくしあげた。白いパンツが、いやらしく濡れていた。

 マリナとのコトが終わったあとは、バックでやさしくしてあげた。

 

 もちろん普通の休憩も取った。

 草原にいたイノシシを捕まえて、コトコトと煮込む。

 

 マリナ特製のシチューだ。

 香りがいい。

 ツゥ――と味見をする顔は、綺麗でもあった。

 

 ふぅー、ふぅー、ふぅー。

 冷ましてから食べる。

 

 肉はとてもジューシーだ。

 ジャガイモは、噛むとほろりと崩れて広がる。

 ニンジンやタマネギも、ほどよいアクセントになってよかった。

 平凡な具材だが、マリナの味付けセンスがよかった。

 オレやミリリはもちろんのこと、カレンも四つん這いでガツガツと食ってた。

 そろそろ四つん這いをやめてもいいんじゃないかと思ったりするが――。

 

「なぁ、カレン」

「ぜな?」

 

 と顔をあげるカレンは、かわいい。

 

「口が汚れてるぞ」

「ぜなぁ♪」

 

 ふいてあげた。

 そうすると、例によってと言うべきか。

 

「レイン。」

「ん?」

「わたしも汚れた。」

 

 マリナがカレンとおんなじように、口の横にシチューをつけてた。

 かわいい。

 食事休憩が終わったあとは、のんびりと横になる。

 太陽の光を充填し、再びボートに乗り込んだ。

 

「なっ、なぁ、レイン」

「どうして? ミーユ」

「ちょっと考えがあるんだけど……」

 

 ミーユはオレに耳打ちした。

 

「面白そうだな」

 

 オレが言ったら、ミーユは前の席に乗り込んできた。

 すこし詰める格好になるが、オレにくっつくマリナがうれしそうだったのでよしとする。

 

「行くぞ」

「うん」

(こく。)

 

 マリナが氷の道を作った。オレは魔力をハンドルに通す。

 発射する。

 勢いがついてきたところで、ミーユが風の魔法を使う。

 

「んっ……!」

 

 透明な風が、ボートの下で強く吹く。

 それに乗ったオレたちは――飛んだ。

 高度にすれば、マンションの屋上ぐらいであろうか?

 木々やすれ違う馬車が、模型のように小さい。

 

「すごいです……にゃあ」

「さすがはわたくしのミーユさまと、ミーユさまのレインさまです」

「このような発想があるとはな……」

「マリナの氷魔法ですべることができるなら、ボクの風魔法で飛ばせるんじゃないかと思って……」

 

 照れくさそうなミーユだったが、満更でもなさそうだった。

 空の旅は続いた。

 オレが炎で浮力のサポートをしなくてはいけない分、氷ですべるよりもスピードはゆるい。

 ただその代わり、マリナはゆっくりと休める。

 

(くぅー………。)と穏やかな寝息を立てて、オレにもたれるマリナはかわいい。

 マリかわいい。

 

 休憩と発進をくり返し、夜になったら野宿する。

 そんな旅を続けていた三日目の朝。

 マリナの氷で滑走してると、雨がぽつぽつと降ってきた。

 

「これはまずいな」

 

 元が土のボートであるため、雨はけっこう染み込んでくる。

 オレはボートを止めた。

 

「ファイアードーム」

 

 火炎魔法を使用して、みんなを包む。

 ドーム状に展開された炎は、近づく雨を蒸発させてく。

 

「けっこうキツいな」

 

 例えて言うなら、空気イスをやっているような感じだ。

 短い時間なら平気だが、長いこと続けろって言われるとキツい。

 

「けっこうで終わるぜな……?」

「雨に対抗できる魔法を維持し続けるって、フツー無理だろ……」

「そこはまぁ、さすがの少年――ということだな」

「そういうものなのか」

 

 確かにオレで、けっこうとはいえキツいものなら、ほかの子みんなだと不可能レベルに厳しいかもしれない。

 

「んー……」

 

 オレはドームの体積を広げた。

 水が当たる部位も増え、よりジュワジュワと言うようになる。

 

「とりあえず、テント立てちゃってくれよ」

「はいですにゃんっ!」

 

 ミリリがピシッと敬礼し、テントの設置を始めた。

 ざぁざぁざぁ。

 雨は強まる。カミナリも降ってきた。

 

(ふるふるふる………。)

 

 オレのマリナが、小さく震えた。

 両手で耳をふさいで、ふるふる縮こまっている。

 

「カミナリは苦手?」

(ブンブンブンっ!)

 

 マリナは小さく縮こまっているクセに、首はブンブン左右に振った。

 が――。

 ピシャアァンッ!

 

(びくううっ!!!)

 

 カミナリの音で(><)な顔になったりしては、説得力のカケラもない。

 

「やっぱり怖いんじゃないか」

(ブンブンブンっ!)

 

 マリナはあくまで否定した。

 

「おと………なければ。へっ………。」

「音がなければ平気なのか」

(こくこくこくっ!)

 

 マリナは必死でうなずいた。

 この怖がりっぷりでは、テントだと厳しいかもしれない。

 なんて風に思っていると、リリーナが言った。

 

「あちらのほうに洋館があるぞ?」

「え?」

 

 リリーナが指差したほうを見る。

 確かに遠目に、洋館があるのが見えた。

 家一軒ない街道に、ぽつんと一軒建っている。

 しかし正直に言うと……怪しい。

 

「確かに怪しくはあるが、金持ちが狩りをするための別荘として設置していることもある。

 少なくとも、行ってみて悪いということはあるまい」

 

 もっともであった。

 オレはテントの設立を中止するよう指示をだし、洋館へと向かった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。