規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士 作:kt60
ミーユをかばうと決めてから、一週間がすぎた。
相手からの動きは特にない。
父さん曰く、
『今回のような場合では、王を通して使者を寄越すのが一般的じゃからのぅ。それがくるまでは大丈夫じゃろうて』
とのことだった。
オレはくるであろう戦いに備え、父さんと訓練をする。
場所はいつも特訓をしていた荒野だ。
「それでは行きます」
「うむ」
オレは地を蹴り打ちかかる。
振りおろし、薙ぎ払い、バックステップを踏んでファイアボルトの魔法を放つ。
炎の性質もあわせ持つ雷撃を、しかし父さんは木剣で弾く。
オレは再び突っ込んだ。
父さんと切り結ぶ。
いなされたオレの斬撃が荒野の岩を砕いたり、外れた魔法がクレーターをあけたりとした。
「いやはや、腕をあげたのぅ」
「父さんこそ、相変わらずの強さですね」
父さんはにこやかに言うが、オレはけっこうキツかった。
足払いの寸止めや、拳での寸止めを何回も受けている。
マリナと組めば手加減モードの父さんには勝てるけど、一対一だとまだまだキツい。
一本、二本と浅い打ち込みを入れることはできたが、逆に言うとそこが限界。
致命的な隙が生まれ、木剣を首筋に突きつけられる。
「……参りました」
「うむ」
「すごいな……」
「すごいです……」
「さすがは、レインのお父さんなんだぜな……」
「すさまじい戦いを見学させていただきました……」
「魔竜との戦いで死にかけていた人間の動きではないな……」
ミーユとミリリとカレンに、リンやリリーナも感心していた。
(ちゅっ。)
マリナはオレのほっぺたにキスをして言った。
「次はわたし。」
「うむ」
あぐらをかいて座ったオレは、ミリリを膝に乗せて見学をする。
「はにゃあぁ…………♥」
「ちゃんと見とけよ?」
「はっ、はいです、にゃ」
恍惚モードだったミリリを注意し、マリナと父さんに目を向けさせる。
魔法戦が始まった。
父さんが放つ無数の火球を、マリナはツララで撃ち落とす。
右手でツララを放ちながら動き回り、左手では別の魔法の力を溜める。
「アブソリュート………ゼロ。」
ガキイィン!
父さんが立っていたところに、巨大な氷柱ができあがった。
霧があがって見えないが、放つタイミングは完璧だった。
父さんは、確実に飲まれたと思われる。
普通であれば勝負アリ。
だがウチの父さんは、氷漬けにされたぐらいなら普通にでてくる。
マリナは油断せずに魔力を溜めると、霧が晴れるのを待った。
霧が晴れ、氷柱が現れる。
が――。
父さんはいない。
回避した様子がなければ氷の柱を砕いたわけでもないのに、柱の中に姿がない。
氷柱は、円柱状の空洞があるだけだ。
しかし柱をよく見れば、地面に穴があいていることに気づく。
いったいどういうことなのか。
オレはすぐに気づいたが、マリナのほうは気づくのが遅れた。
気づいた時には遅かった。
マリナの背後に父さんが回り、その背に木剣を寸止めした。
「どっ……どういう魔法なんですにゃっ……?!」
「自分を包む氷を溶かして足場も溶かして、マリナの背後まで穴を掘り進んだんだよ」
「めちゃくちゃです、にゃあぁ……」
「でもオレの父さんだし」
「確かに……。ご主人さまのお父さまなら……」
驚愕していたミリリだが、そんな感じで納得してくれた。
っていうか父さん、強くなってる。
たぶんオレとの訓練があるから、負けてられないとかそんな感じだ。
マリナの訓練が終わったら、ミリリやカレンたちの訓練もした。
父さんが休憩し、オレがやる。
カレンとリンとミリリの三人に、リリーナが補助魔法をかけた。
補助を受けた三人のステータスは、こんな感じになる。
カレン
HP 20270/20270(↑20000)
MP 20000/20000(↑20000)
筋力 20222(↑20000)
耐久 20188(↑20000)
敏捷 20208(↑20000)
魔力 20000(↑20000)
リン
HP 20330/20330(↑20000)
MP 20000/20000(↑20000)
筋力 20300(↑20000)
耐久 20250(↑20000)
敏捷 20900(↑20000)
魔力 20000(↑20000)
ミリリ
HP 20260/20260(↑20000)
MP 20220/20220(↑20000)
筋力 20235(↑20000)
耐久 20230(↑20000)
敏捷 20290(↑20000)
魔力 20227(↑20000)
明らかにおかしい。
「少々、本気をだしてしまったかな?」
とか言っていたが、出しすぎである。
残念なところも多い上にロリ化しているショタコンエルフのリリーナだけれど、実力自体は本物だ。
オレは苦戦させられつつも、無事に勝利し『ご主人さま』の面目を保った。