規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士   作:kt60

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vsネクロ 決着編

 戦いは終わった。

 父さんやオレは、座らされたネクロを見つめる。今さら抵抗はしないと思うが、念のために縛っている。

 

(ひしっ………。)

 

 オレのことが心配で仕方なかったらしいマリナが、オレの脇腹あたりにくっついてくる。

 父さんが言った。

 

「どうするべきかのぅ……」

「公的な機関に引き渡したら、どうなりますか?」

「よくて死罪。悪くて死ぬまで実験の材料じゃろうな」

「実験の……ですか」

 

「死霊術士は、ただでさえ珍しいからのぅ。

 特にネクロは、大陸の中でも随一の使い手じゃ。

 調べてみたい輩は多いじゃろうて」

 

「そうですか……」

 

 それを聞くと心が重い。

 ネクロはけして、悪人ではなかった。

 ただ悲しみに押し潰されて、心を壊してしまっただけだ。

 

 もしも逆の立場なら、オレもどうなっていたかわからない。

 恋人がマリナしかいない世界で、マリナが死んでしまったら――。

 本当に……わからないのだ。

 

 けれども、だけど。

 ネクロは、リリーナを――。

 考えていると声がした。

 

「わたしも話に混ぜてはくれんか?」

 

 聞いた覚えのある声だ。

 というより、今思いだしていた声だ。

 振り返って見る。

 そこにいたのは、まさしく――。

 

「リリーナ……?!」

「ああ、わたしだ」

 

 そこにいたのは、まさしくリリーナ。

 けれども、様子が変わっていた。

 単純な雰囲気やまとっている空気感は変わっていない。

 しかし誰がどう見ても、まったくの別物と言える変化があった。

 それは即ち――。

 

「縮んでる……?」

 

 身長一四〇に届いているかどうかも怪しいほどに、ミニミニとした姿になっている。

 これは恐らく、ミリリより小さい。

 完全なロリっ子だ。

 

「っていうか、どうして……?」

「わたしは治癒のエキスパートだからな。

 五体が四散した程度なら、回復魔法でなんとかできる」

 

 ええー……。

 

「ななっ、なんだ、その顔は!

 念のために言っておくがな、灰になったら再生できんぞ?!

 しかも体内の魔力を、七割近くも消費している!

 ゆえに短期間で連続再生することは不可能であるし、他者にかけてやることもできん!

 この程度なら、多少の修練を積めば誰にだってできる!」

 

「そうなんですか……? 父さん」

「ワシは無理じゃぞ……」

「ボクも手足ぐらいなら再生できるけど、四散したら流石に無理かな……」

「クウウッ……!」

 

 ロリ化したリリーナ――略してロリリーナは、歯噛みして悔しがった。

 もっとも、これは仕方ない。

 父さんの仲間ということは、どこかおかしいとイコールである。

 父さんの仲間で治癒魔法のエキスパートともなれば、バラバラになった状態から再生できるぐらいは当然とも言える。

 

 っていうかホント、常識外れすぎるでしょう。

 父さんはもちろんのこと、父さんの仲間の人たちも。

 

「いずれにしても、わたしが生きていたのだ。この件は、わたしに預からせてほしい」

「まぁ……リリーナが言うなら」

「ワシとしても、息子のレインとおヌシが言うなら、それで構わん」

「礼を言う」

 

 リリーナは、ネクロにざっざと近寄った。

 ネクロは覚悟を決めたかのように、瞳を閉じる。

 リリーナは目を細め、ネクロの頭をげんこつでぶん殴った。

 そして――。

 

「以上だ。今後また狂いそうになったら、わたしのところに話をしにこい。

 それでなお狂いそうなら、その時こそは介錯してやる」

「それで……いいのかい?」

「わたしは貴様の友人だ」

 

 それだけ言ったリリーナは、オレたちのほうを見た。

 

「わたしからは以上だ。

 この判断に不満があるなら、キミたちのほうで個人的にやってくれ」

「あなたに任せると言いました。ですから二言はありません」

(ぎゅっ………。)

 

 オレが言うと、マリナはオレにくっつく力を強めた。

 オレに同意する時の合図だ。

 

「ワシはどうせ、おヌシであればそう言うと思っていたから『任せる』と言ったところがあるからのぅ」

 

 父さんも、白いヒゲをさする。

 

「よし」

 

 リリーナは、ネクロの縄を解いた。

 ネクロは、乾いた笑い声をもらした。

 

「ハハハハ。甘いなぁ……キミたち」

 

 仰向けに倒れ、手の甲で目元を抑える。

 

「キミたちがそんなだからボクは……世界もキミたちのことも、大好きなんじゃないか……」

 

 溢れた涙がこめかみを伝った。




そういうわけで、リリーナさんは生きていましたヽ(・∀・)ノ
なかなかトンでもない設定ですが、レリクス父さんのお仲間ですので仕方ないですね。

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