規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士   作:kt60

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ミーユの謝罪とエルフ先生。

 カレンとマリナを乾かしてると、ドアからノックの音がした。

 

「誰だ?」

 

 声をかけるが返事はない。

 一応の警戒として、右手に魔力を携えた。

 マリナにも警戒するよう視線でうながし、ドアをあける。

 

「…………」

「…………」

 

 リリーナとミーユであった。

 リリーナはもじもじそわそわとしているが、ミーユは申し訳なさそうにうつむいている。

 とりあえず部屋に入れ、ドアを閉めて尋ねた。

 

「どうしたんだ? こんな時間に」

「わっ……わたしのほうは、用事がおおむね片付いたので、久方ぶりに……と思ってだな…………」

「ボクは……。今日のこと、謝ろうと思って…………」

「なんかしたっけ?」

 

「お昼の、決闘とかの…………件」

「問題なのか?」

「言うこと聞かされることになるんだぞっ?!」

「負けたらの話だろ?」

 

「勝つつもりなのか……?」

「そう言ったじゃん」

「…………」

 

「それに負けても、土下座してクツを舐めれば大したことにはならないだろうし」

「それって十分、大してるだろっ?! 大王スクイッドをひとりで倒せっていうぐらい無茶だろっ?!」

 

「それってそんな強いやつなの?」

「並の騎士や冒険者だったら絶対に手をだしちゃいけない、特殊指定危険生物だぞっ!」

「でもそいつなら、ひとりでやっつけたことあるけど……」

「はああっ?!」

 

「っていうか魔法使ったら、普通に一撃で行けたよ」

「一撃はすごいな」

「はっ……、あっ……、えっ……?!」

 

 リリーナは淡々とうなずくが、ミーユはすごい顔で驚いていた。

 もらった能力でデスゲームをやれと言われて能力を見たら、『コンビニのおにぎりの袋を、綺麗に破くことができる能力』を渡され

た人のごとしだ。

 

「とにかくそういうわけだから、今回のことで謝るような必要はないよ」

「じゃあ……。ボクのこと、嫌わないでくれる……?」

 

 ミーユは、上目使いで聞いてきた。

 

「当たり前だろ」

 

 オレはくしゃりと、頭を撫でた。

 

(……くすん)

 

 ミーユは、涙ぐんで鼻をすすった。

 とても愛らしいのだが、ちょっといじめたくなる。

 

「ただそれはそれとして、『おしおき』は必要かな……?」

 

 耳元でささやいて、首筋にキスをする。

 

「やっ……」

「っていうかさ、されるつもりで来てたところあるだろ?」

「そんなこと……」

 

 ミーユは否定しようとしてたが、体は素直で正直だった。

 下半身をさわってみれば、ズボンの上からでもわかるぐらいハッキリ濡れてる。

 

「避妊魔法も、ちゃんとかけてきているみたいだしな」

「ううぅ……」

 

 それはカマかけだったけど、ミーユは否定しなかった。

 されるつもりでないのなら、絶対にかけない魔法だ。

 

「ごごごご、ご主人さまっ」

「どうした? ミリリ」

「こちらにいらっしゃるのは、三公さまのミーユさまと、七英雄のリリーナさまでは……」

「その通りだな」

「はにゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」

 

 ミリリは、尻尾を踏まれた猫のような悲鳴をあげた。

 

「そんな驚く相手か?」

「ささささ、三公さまと言えば三公さまで、リリーナさまと言えば、リリーナさまでありまして……。

 ミリリのような奴隷など、埃を払うのと変わらない気安さで『処分』することもできるお力があると、上官様から……」

 

「まぁ誰かに雇われる前のミリリだったら、そうだったろうな」

「そんな三公さまたちとご主人さまは、どのようなご関係でいらっしゃるのですか……?」

「どんな関係って言われると……」

 

 オレはふたりを、チラと見やった。

 リリーナは頬を染め、胸に手を当て言ってくる。

 

「わわわ、わたしはわたしは、オオオ、オトナの関係――というやつだな!」

「オッ、オトナの……」

「関係だっ!」

「はにゃあぁ……!」

 

 言われたミリリは、両のほっぺに手を当てた。

 シンデレラストーリーを、目の当たりにした女の子みたいな顔をしている。

 

「フフフフ……。そうだ。オトナのわたしを、もっと尊敬するがいい」

 

 先生は腕を組み、あまり尊敬できないようなことを得意げに言った。

 逆にミーユは、自信がなさげだ。

 胸の前で指を絡ませ、もじもじとしてオレを見ている。

 

「どういう関係かな……。ボクと、オマエ……」

「どういう関係かって言われれば……」

 

 オレはミーユを抱き寄せた。

 その唇に、キスをする。

 

「っ…………」

 

 驚いたように目を見開いたミーユだが、オレは構わず舌をねじ込む。

 ミーユは、ギュッ……と強く目を閉じて、オレのキスを受け入れた。

 唇を離し、ミリリに言った。

 

「まぁ、こんな感じの関係かな」

「はにゃにゃあっ?!」

「そんな意外か?」

「ミーユさまとご主人さまは、どちらも男性、では……」

「ミーユ=ララ=グリフォンベールは少女だろう?」

 

 リリーナが、こともなげに言った。

 

「えっえっえっ?!」

 

 あまりにも、こともなげに言われたせいだろう。

 ミーユは自身をぺたぺたさわり、ボロがでていないか確認した。

 

「ミーユは整った顔立ちであるにも関わらず、少年独自の妖艶さがない。これは即ち、少女であることの証明だろう」

「「それでわかるのっ?!」」

 

 オレとミーユの声がハモった。

 さすがショタコン先生だ。感じる力が半端ない。

 

「あっ……あの、みんなには、その…………」

「無論、言うつもりはない」

「ありがとう、ございます……」

 

 ミーユは、うなだれるように頭をさげた。

 

「しかしこの場の五人中、三人がキミと関係を持っているわけか」

 

 リリーナがつぶやいた。

 言われてみるとその通り。

 なかなかすごい空間だ。

 やっていないカレンにしても、本番以外は大体してるし。

 リリーナが、ミリリに小さな袋を渡した。

 

「はにゃ?」

「あけてみたまえ」

「はい……」

 

 ミリリは袋をあけてみた。

 ぽんっ!

 中からキノコが飛びだして、真っ白い胞子をまいた。

 

「はにゃっ……、うぅ…………」

 

 ミリリはころりと眠りに入った。

 

「見ての通り、眠りダケだな」

 

 リリーナはカレンにもそれを与えた。

 眠ったふたりを、ふたつあるベッドの右側に寝かせる。

 

「キミの気配を診る限り、このふたりと『する』ことにはためらいがあったからな。手っ取り早く、眠らせることにした」

「どうして、それが……?」

「わたしはこれでも、魔竜殺しの英雄だからな。その程度のことはわかる」

 

 なんとも嫌なスキルであった。

 こんなスキルを持っている英雄は嫌だ! みたいな特集を組んだら、わりと上位にくるような気がする。

 

「とっ……とにかくこれで気兼ねせず、オトナの時間を楽しむことが可能となったわけであるな……」

 

 先生は、頬を染めて言ってきた。

 自分がセックスしたいからって、小さな子どもに眠りクスリを盛ってしまうエルフさん二八〇歳。

 一見すれとなかなか酷いが、よくよく見ると最高に酷い。

 

 しかしこの場に、異議を挟むものはいなかった。

 

「ん………♪」

「ええっと……」

 

 マリナは服を脱ぎ始めるし、ミーユもまごまごとしている。

 仮に文句を言う可能性があるとしたら、ミーユひとりだ。

 が――。

 

「お前も並べよ」

「うん……」

 

 オレがさらりと尻を撫でると、大人しく服を脱いだ。

 三人そろってベッドの上で、四つん這いになる。


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