ネクサスキューブ
スピリットの世界を再現したバーチャルリアリティーシステム。
ネクサスによってバトルが有利になることもある。
魂が激しくぶつかり合う戦いを終えたわたし―――――――――ネプテューヌ達は、プラネテューヌ北区に破壊行為を行った犯罪組織マジェコンヌの元工作員リンダもとい下っ端をゲーム会社の社長ナムコの強力により止めることに成功した。
だけどこれで終わったわけじゃない。下っ端が持っていたバトルデバイス、PS・βを何故持ってるかを突き止めるために尋問する必要がある。
「さあ~って、なんであんたがそれを持ってるのか聞きたいところだけど?まず誰から貰ったの?」
下っ端が持つPS・βを軽くトントンと中指でナムコは叩き、個室で尋問が始まる。わたしたちは窓越しでその場を見る事に。
あの後、変身を解くのを勧めたんだよね。でもナムコちゃんが「アイツは元工作員だから油断は出来ないわ」って言って変身したままで尋問しようとしたらしいけど、ネプギアが上手く説得してくれたおかげで変身を解いてくれたよ。さすが我が妹!
「だから!それを言っちまったら契約を破ることになるッつーの!アタシはこの口が裂けても言うつもりはサラサラねェ!」
キレ気味で下っ端は言う。
ナムコちゃんを説得出来ても下っ端は説得できないこの様子。
「さっきからあの調子だね……」
さすがにネプギアもあれを見たら呆れるよね……、早く終わらせてゲームがしたいよ。
「しばらく意地を張って時間を稼ぐ気つもりよ」
アイエフことあいちゃんが言う。
まさかスピリット絡みの事件がバトルデバイス配信前にプラネテューヌで起きるなんて思いもしなかったよ。
「こんなヤツに時間を取るのは嫌だけど、起きてしまった以上仕方がないわ」
結局そうなるよねー。んじゃ、あとはナムコちゃんに任せよっか。
〇
ちょっと!?わたしに押し付けないでよ!
はぁ……プラネテューヌの女神様はいつもこうなのかしら……?ま、いいわ。
ネプが説明した通り、今わたし――――――ナムコはこのリンダという下っ端に聞き込みをしてるわ。
「はぁ……ホント往生際が悪いわね。これだからビジネスウーマンはね~」
「てめェもビジネスウーマンだろうが!」
『リンダ……お前、コンビニってところのアルバイトをしてたんじゃねぇのかよ?』
まあ……行き場がなくなった以上、大抵はアルバイトでもしてるわよね。
「おいてめェ、今鼻で笑ったろ?」
「あっ、バレた?」
「『バレた?』じゃねェよ!このアマァ!」
全く、これぐらいで怒るなんて見苦しいわね。
「そんなことはどうでもいいわ」
わたしは布製の手袋を右手に履き、PS・βを取り上げる。
「お、おい!なにしやがる!」
「あんたの口から聞かなくても、これを調べればわかることよ」
このデバイスになにか細工を仕掛けてるはずよ。その細工を調べ上げて特定出来れば―――――――
「返しやがれクソガキ!」
「うっさいわね!あーだこーだ言って意地を張るあんたがクソガキよ!」
次の瞬間、外の窓が割れ光弾が地面に落ちて煙が視界を妨げる。
そのチャンスを下っ端は見逃さず、すぐにPS・βを取る姿が見えた。
「こいつは返してもらうぜ!」
やったぜ、と言わんばかりの笑顔でリンダはすぐにわたしたちから立ち去る。
「あっ!コラ!待ちなさい!」
―――――――――――
「なんか爆発が起きた!?」
あ、
あたふたとしてるうちにガシャンッとドアが開いて下っ端が全力で逃げ出した。
「あいつ……逃げ出す気ね!」
「ア、アイエフさん!」
ネプギアは止めようとするも止められず、あいちゃんはすぐに下っ端の後を追う。どうしよう……わたしたち……。
「アイツはどこ!?」
ナムコちゃんは焦ってる様子でわたし達に聞く。
「あっちです!アイエフさんが今追ってるので居場所がわかるはずです!」
「よし、ついて来なさい!」
ナムコちゃんも続いて走る。もうこれはどうするか決まったも同然だね。
「行くよ!ネプギア!」
さらにわたし達もナムコちゃんに続いて走る。
――――――――――――
もう今日で外出るの何回目だろ……とりあえずプラネテューヌ北区の住宅街に逃げたって聞いたけど中々見つからない。
「ったく……どこにいるのよあのDQNは……!」
「見当たらないですね……」
うぅ……もし逃がしたらいーすんになんて言われるんだろう……それにノワールにまで知れ渡ったら色々マズいよ……。
『ネプ殿、まだ奴の気配は感じるから安心してくれ』
「えっ、それはどういう意味?」
スターブレードの言葉にわたしは困惑した。
そもそも気配って近くにいなきゃ感じないんじゃ……?
「スピリットは気配が強く、消すのはかなり難しいみたいだから気配を少し遠くに離れても感じるのよ。カードバトラーならね」
なるほど……遠くにいても気配は感じるんだね……。
「いい加減に諦めなさいよ!」
遠くからあいちゃんの声が聞こえる―――――――ってことは!
「ハァ……ハァ……ここで……諦めてたまるかってんだァ……ハァ……ハァ……」
噂をすれば下っ端を追いかけてるあいちゃんがいた!しかも下っ端は息が切れかけてる!ここまで追い詰めるなんてあいちゃん有能!
「早く捕らえて!これは
ちょっ!?わたしのセリフ取られた!?
ナムコちゃんが下っ端を挟もうとしたその時、再び光弾がナムコちゃんを襲い掛かる。
「やばっ!?」
ナムコちゃんは奇襲が来ることが予測してたかのように大きく一歩飛び下がり、砂埃が巻き起こる。
「ちぃ……!誰よ!?今相手にしてる場合じゃないのよ!!」
砂埃がなくなると下っ端が消えた代わりにわたし達の前に一人の鎧男が現れた。オリーブ色の龍の鱗を纏った巨大な鎧に、甲冑は凶暴な太陽の龍をイメージさせるデザインだ。
その男は銃とPS・βを組み合わせたような武器を腕に装着して銃口をナムコちゃんに向けてる
「この女はこの次元の全てソードアイズを集結させる一つの駒だ。そう簡単にデバイスと共に渡すわけにはいかない」
鎧男はボイスチェンジャーを使って言い出す。
「ってことは、あんたもアイツと関係してるってわけかしら?」
あいちゃんが鎧の男に問いだす。
「だとしたら?」
鎧男はあいちゃんに挑発をかけるよう首を右に倒し聞いてくる。
「当然その重々しい鎧とコワモテの甲冑を剥がして聞き出すに決まってるじゃない! 」
ナムコちゃんは【バトルドライブ・MEGA】を左腕に取り付ける。
あの機種はわたしだけが持ってる訳じゃなく、ナムコちゃんも持ってるんだ。
ナムコちゃん曰く、あれは今使ってるのが使えなくなった時に使うデバイスだったみたい。
「悪いけど、バンコレの社長!そいつはあんたに任せるわ!わたしは下っ端を追いかけるから!」
「怪我はまだ治ってないみたいから無理しないで頂戴」
あいちゃんは「言われなくても分かってるわ!」と言葉を残して下っ端の探し続けるため、向こうに走って行った。
「待たせたわね、いくわよ!スターブレード!変身!」
電源ボタンを入れると変身待機音が鳴り響き、デバイスにデッキをセットする。
『
デバイスにデッキを取りつけ、具現化したスターブレード・ドラゴンのプロセッサのパーツを装備する。
「よし、わたしも変身―――――――」
「素人女神は引っ込んでプロの戦いを見てなさい!」
酷い……そんな言い方しなくても……。
スターブレード自前の剣で鎧男より先に攻撃を仕掛ける。だけど―――――――――
「ふんっ!」
鎧男は右腕に身に着けてる籠手を盾にナムコちゃんの攻撃を凌ぐ。
『馬鹿なっ!?スターブレードは赤のスピリットの中でも最高クラスのスピリットなのに自分の腕だけど凌いで何故動じないんだ!?』
シャイニング・ドラゴンは目が飛び出るくらい驚いた。
「フッ……これぐらいの攻撃を凌げるのは当然の事!」
鎧男は腕で振り払い、ナムコは一定の距離を置いて下がる。
「この鎧型プロセッサユニットのベースにしてるスピリット【太陽凶龍アポロ・ガンディノス】は、神話として語り継がれてる【太陽龍ジーク・アポロドラゴン】と【凶龍爆神ガンディノス】の二体を融合させたスピリット。そう簡単に倒されまい」
ガンディノスとアポロドラゴン……シャイニング・ドラゴンから聞いたけど、神話のスピリットを融合だなんて聞いたこともありゃしないよ……!
「お姉ちゃん……スピリットの世界にも神話があるの?」
「えっ……?まあ、聞いたことは聞いたけどほとんど覚えてないや……」
『ネプテューヌ、事が済んだら復習の時間だ』
うぅ……シャイニング・ドラゴンの話は長いから覚えてられない……いっそのこと輝龍から鬼龍に変えたら……?
「さ~って、次はこちらから行かせてもらうか!」
鎧男は自身に纏ってる重々しい造形の鎧と見合わず、素早い右ストレートを放つ。
ナムコちゃんは剣で攻撃を防ぐが衝撃に耐えられず滑り込むように下がり、剣の表面に拳の跡が残ってる。
さらに追い打ちをかけるように鎧男は籠手のギミックで龍の鉤爪に変形し、両腕で引き裂く。
だけどナムコちゃんも負けてない。引き裂く動きを流れるようにかわし、一瞬の隙を突き右脇を斬る。
でも――――――斬ろうとした部位は斬れず、弾かれる。
弾かれた剣の刃を握り、鎧男は彼女に問う。
「その剣の切れ味が鈍いのは何故かわかるか……?」
その言葉と共に握る力は強くなり、剣に割れ目が入る。
なんとかしようとナムコちゃんは剣を必死に抜こうとするけど全くびくともせず、離す気配もない。
「それはスターブレード・ドラゴンとの
答えが出ると共に剣は砕かれ、ナムコちゃんのお腹に左手で殴り込む。
「スピリットととの共振率を高めるには大量のコアを摂取しなければならない!スターブレード・ドラゴンの必要とするコアは多数!」
説明すると同時に拳の連打が徐々に激しく襲う。
「そしてなにより、お前はパートナースピリットのことをまだまだ知らない!」
この言葉と共に放つ乱撃は重い音が耳に響く。
「もはやお前は刀の使い方を知らずに鞘に収めたまま振り回してる子供も同然だぁ!!」
乱撃の次の一撃の拳がナムコちゃんを吹き飛ばす。
「はぁ……はぁ……そろそろゲームエンドにしてやろうか……!」
鎧男は息を荒くしながらデッキから一枚カードを引く。このままじゃナムコちゃんは……。
「ふんっ……ゲームエンド?バカね、スピリットの力を纏った攻撃は精神的な疲労を進行早めるわ……!」
確かに。ナムコちゃんの言う通り、さっきの猛威を振るう連続攻撃で鎧男はとても疲れてる……。
この状態で大きい一撃を放ってもそんなにダメージはない……。
「俺がそんなことを考えずに攻め続けてると思うかな……?」
鎧男がデッキから引いたカードは【バーニングサン】のカード。
『Flash!』
カードを読み込んだ瞬間デッキからカードが一枚飛び、そのカードは静かに蒼く燃え上がって翼を持つ獣のスピリットの姿に変える。
「アイツ……一体何を……!?」
そのスピリットは鎧男の方に突っ込む。
でもあのスピリット……なんか様子がおかしいよ!?
『あれはスピリットではない!』
「スピリットじゃないって……じゃあアレなに!?」
『あれは【ブレイヴ】……!ソードブレイヴと違い、自分の意思で動く生きる装備品だ!』
そ、装備品!?じゃあつまり――――――
「
ケルベロードは翼を残し、鎧男はケルベロードと合体して鎧の柄も赤と黒が混じった模様に変化した。
『まさかブレイヴまで人の兵器にすることが可能だとは……!』
シャイニング・ドラゴンは今まで以上に驚いていた。
「
デバイスからケルベロードのカードを取り出し、デッキホルダー型デバイスに読み込む。
『
籠手から獣の牙が生え、力を全て牙に集中し青いオーラを纏いナムコちゃんを下から上へと切り裂くように刺す。
「きゃあっ!?」
『GATE_SHUT』
この攻撃を耐えられず、ナムコちゃんの変身状態は解けてしまい倒れ込んでしまった。
「ナムコさん!」
ネプギアはすぐに駆けつけ、ナムコちゃんの腕を肩に回して立つ。
わたしもデバイスを左腕に取り付けて警戒するけど、突然鎧の男は後ろを振り向き向こうへ歩く。
「敵を目の前にして背中を見せるなんてどれだけ舐めてんの!?あなた!」
ナムコちゃんは鎧男が取った行動に激昂する。
「舐めてる?違うな。俺は殺戮なんて興味はない、始まってすぐ退場したらゲームにならないからな」
鎧男の言葉に心が滾った!この感覚は怒りだと言っても過言じゃない!
「この混乱を……戦いをゲームだと思ってるみたいだけど、わたしたちはスピリットの出現で混乱を招いてるんだよ!?」
そうだ……ノワールの教会にスピリットが入り込んだあの時だって……!
「下手な使い方をしたせいでノワールも……あいちゃんも怪我をしてるんだよ……?死ななきゃいいってものじゃないんだよ!!」
ナムコちゃんは驚いてるような表情で固まる。
「……フン」
鎧男は鼻で笑いながら地面に一発拳を入れて再び砂埃を撒き散らす。
砂埃のせいでなに見えない……砂埃がなくなった時には既に鎧男はいなくなってた。
「……また、逃がしちゃった……」
2回も逃がしたわたしが情けなく感じたのは初めてだった。1回目は失敗しても、2回目は必ず成し遂げていたはずなのに……。
『ネプテューヌ……まだ次がある。その時に取り戻せばいいんだ』
そうだけど……もし、また失敗したら……もう……。
するとネプギアのNギアの着信音が鳴り響き、電話に出た。
「はい。はい……わかりました、お姉ちゃん達に伝えときます」
ネプギアも切なそうに電話電話を切った。
「お姉ちゃん、ナムコさん……下っ端さんのことだけど……」
「……逃げられた……でしょ?」
「……うん」
ナムコちゃんは再び驚愕したような表情で拳を強く握る。
やっぱり、ナムコちゃんも逃がしてしまったことにすごく後悔してるんだね……。
ねぇ……ノワール……ノワールだったらこんな時どうするの……?
Save・The・Data……
どうも、ブランを出したくても作業スピードが遅くて出せないアポロです。
今回のラストがいつもよりシリアスになってしまったのはエグゼイドを見たからかもしれません……。
まあそんなことはさておき、今回出したキャンペーンXレアスピリット【太陽凶龍アポロ・ガンディノス】の脅威と、ナムコちゃんより熟練のカードバトラーの登場により、展開がより熱くなったと思います。謎が増えて行くばかりのこの事件、果たしてどうなるのやら……。
次回の予定はノワール目線で進む予定でいます。次回も楽しみにしててください。
少しでもカードバトラーが増えますように……。