【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO 作:MYON妖夢
再び石扉が開く。それぞれ抜刀し視線を交わす。
「……行くぞ!」
キリトの叫び声を合図に地を蹴る。仁とキリトがほぼ同時に猛烈に加速する。その後ろにシノンが弓に矢をつがえ、さらに後ろでリーファとレコンが底面付近でヒールスペルを詠唱する。
天蓋から零れ落ちた騎士の先陣が二人の加速も相まって一気に接近する。
「お前と二人での前線コンビはいつ以来だろうな!」
振り下ろしてきた騎士の剣に横薙ぎで無銘を叩きつけて弾き飛ばす。
「いつもお前は少なくともほむらと一緒にいたからわからないな!」
その騎士を黒く巨大な剣が真っ直ぐに貫く。
「それもそうか! じゃあベータ以来かもなぁ!」
キリトに向かって突っ込んで来た騎士を切り払い、その勢いのまま自分に向かって来た騎士を両断する。
そして仁に向かって振り下ろされる一撃を重い一撃で弾きながら、重さゆえにそのまま袈裟気味に切り下ろす。
「やっぱ一体ずつ相手してるんじゃ埒が明かねえな」
「ある程度強引にでも行くぞ、ジン!」
「わかってる!」
バン!と翅が空気を叩く音とともにさらに加速する。加速の勢いのままに叩きつけられる一撃はさらに威力を増して騎士を吹き飛ばす。
しかし近付くにつれて騎士の量が増えていく。致命的な一撃は確実に防ぐが掠る程度は無視せざるを得ない。
一割ほどHPが削れたところで仁とキリトを青い光が包み、HPが回復する。——しかし。
「コイツら……!」
騎士の群の中から一群が方向を変える。二人を無視して一気に下降していく。
「ジン!」
「こっちは任せたぜ!」
キリトに言われる前に仁も方向を180度変える。真っ直ぐ下降しながら騎士の一群に切りかかる。
「俺が知ってるよりも多いな……!」
本来五、六体程度が向かうはずの一群はその二倍ほどの数で下降している。
仁の一撃で一体が消滅し、もう片方の一撃で瀕死に追い込む。その僅かなHPをさらに下から飛来した矢が削りきる。
一群がさらに別れ、矢の飛んできた方向へと向きを変える。
仁は大きく回り込むように飛行し、少し離れたところから一気に加速し、横から同時に二体の胴を二つに分ける。そのままシノンの隣へ飛ぶ。
「キリトと行かなくていいの?」
「今後衛がやられるのは不味い。それに俺の想定よりも分かれた一群が多い」
「策は?」
「俺にはねぇがもうじき来るぜ?」
そう言って再び加速する。リーファとレコンのほうに殺到する一群の先頭に向かって両方の剣を揃えて右から袈裟気味に切りかかりながら叫ぶ。
「安心して詠唱しな! 何体来ても食い止めてやる!」
最初の一群はほぼ壊滅したが、ヒールスペルが発動する度に新しい騎士達が下りてくる。そこに向かって真正面から切りかかる。回転しながら二撃で一体を確実に仕留め、一群の真ん中を突き抜ける。さらに反転して後ろから騎士二体を貫き、残った騎士を心意の蹴りと一撃の斬撃で仕留める。
同時に次の一群が降下してくる。それのさらに上を見ると天蓋が埋め尽くされ、キリトが小さな黒点となっている光景が見えた。
「ホントにキリがねぇ……キリトの援護に行くのはまだ無理かよ」
苦笑いしながら切りかかる。
一体を仕留めたところで視界の端に光が瞬くのが見えた。光の矢のスペル。一撃でもまともに食らったら一瞬だとしてもスタンするため確実に避けるか撃ち落とす必要がある。
「チィッ!」
左の無銘を完全に防御に回す。騎士の剣を防ぎ、その場で回転しながら右の炎剣で騎士を仕留めると同時に無銘で光の矢を切り捨てる。
しかし光の矢は一本ではない。続く飛来したそれは軌道を逸らすのが手いっぱいで、直撃は避けたものの右足と左肩をかすめる。
「思ったよりキツイか……!」
この位置で光の矢を素直に避けたら後衛に直撃する可能性がある。故に基本的に回避で凌ぐわけにはいかない。
二体を同時に倒したと同時に後ろから津波のような声のうなりがドームに響いた。
「来たな!」
後ろを見て確認はしない。サクヤ率いるシルフの精鋭部隊とアリシャ・ルー率いるケットシーの
「これを待ってたの?」
いつの間にか隣に来ていたシノンにいつものように不敵に笑って見せる。
「ああ。百人力だろ?」
「話してくれてもよかったの……に!」
シノンが腰の短剣を抜き、右から来ていた騎士の心臓を貫く。短剣の一撃では当然仕留めきれないが、シノンの後ろから蹴りが突き出され、騎士が消滅する。
「サプライズってやつだよ。まぁいつ来るか冷や冷やしたが」
「まったく……」
仁がさらに正面から来た騎士を二刀で倒す。その時後ろから声が響く。
「ジン君! シノノン! そこ危ないヨー!」
「おっと。アレの一斉掃射に巻き込まれるのは勘弁だな。前に行くか後ろに行くかならどっちがお好き?」
「分かってるでしょう?」
ニッコリとシノンに言われ、仁もニッと返す。
「まぁな」
二人同時に翅が空気を叩く。
「ドラグーン隊! ブレス攻撃用————意!」
「シルフ隊! エクストラアタック用意!」
二人の領主がよく通る声で部隊に指示を出す。それを聞いてから仁が言う。
「今から来る援護攻撃は十分に引き付けてから俺達の外側を円形に薙ぎ払う。離れるなよ!」
「了解!」
仁とシノンを無視し強大な攻撃を構える後ろの二種族の部隊に大量の騎士が一気に下降していく。二人もまた同じくそれらを無視する。
一部は二人を狙って切りかかってくるが、シノンの近距離射撃や短剣による攻撃によって一瞬怯み、仁によって切り捨てられる。
キリトが戦うすぐ近くまで来たとき、後ろから再びよく通る声が響く。
「ファイアブレス、撃てーーーーーーッ!」
その声が響くのに一瞬遅れて十本の炎の柱が仁達を囲むように屹立する。それらは天蓋を覆う騎士達の無数とも言える群れに突き刺さり、一瞬遅れて爆音とともに膨れ上がった火球がはじけ飛び、爆炎の壁を形成する。それによって数えきれないほどの騎士が吹き飛び、残骸とエンドフレイムをまき散らす。
それでも騎士達はすぐに補充され、キリトやその後ろの仁達に向かって飛んでくる。しかしそれらが迫りきる前にもう一つの声が響く。
「フェンリルストーム、放てッ!」
後ろから五十本のグリーンの雷光が稲妻のようにジグザグに宙を駆けてくる。それらは眩い閃光とともに縦横無尽に広がり、それら全ての閃光が騎士達を貫き仕留めていく。
「……ここだな。一気に突破する!」
確実にできた騎士達の壁の隙間に向かって突っ込む。シノンは器用にも矢をつがえ詠唱しながら仁の後ろにピッタリついて飛ぶ。
さらに後ろからリーファが最速で仁達を追い越し、シルフ隊が突っ込み、ドラグーンのブレスが援護する。開いた穴が少しずつ広くなっていく。
先頭のキリトに追いつかないまでも、確実に騎士を減らし、前へ出ていく。
「そろそろ前に出るとするか! レーヴァテイン!」
仁の呼びかけに応えるように炎剣から凄まじい勢いで炎がほとばしる。それを一振りするたびに炎がなぞるように巻き起こり、さらに多くの騎士を燃やし尽くす。
炎の向こうからダメージを負いながら突っ込んでくる複数の騎士は、シノンが魔法により分裂した五本の矢によってそれぞれ貫かれ、HPを全損する。
仁達を前に出させるようにシルフ隊が炎で倒し切れなかった横から来る僅かな騎士に切りかかる。それを見ることもなく仁とシノンが加速する。
「まだ追いつけねぇかよ!」
キリトとリーファが躍るように騎士を倒しているのは視界に入ったが、殺到する騎士達が接近を許さない。シルフ隊より前に出たためシルフ隊の援護もこの位置では期待できない。飛来する光の矢だけはドラグーンのブレスによって気にしなくていい。
「シノン! まだ行けるか?」
「まだまだ。と言いたいけど、矢が心許ないかしら!」
言いながら騎士の頭部を貫き一体撃墜する。
「じゃあそろそろ行かねぇと不味いってわけだ……!」
レーヴァテインの炎が暴れるように駆け回る。それの後にはエンドフレイムが複数残り、それの横をすり抜けるように二人が飛ぶ。
ようやくキリトとリーファのすぐ後ろまでたどり着く。
「遅かったな!」
「後衛ヒーラーを守りながら戦う辛さってのは案外キツイもんなんだよ! ……道を開く! 先行けキリト!」
無銘を納刀し、両手でレーヴァテインを大きく振りかぶる。呼びかける必要すらなくその刀身が今までにないほどの力が圧縮された炎に包まれる。
「オ――ラァッ!」
振り下ろすと同時に四人の視線の先を炎の渦が駆け抜け、扉までの道が開かれる。しかしそれもすぐに騎士達が埋め尽くさんと迫る。
「おおおっ!!」
キリトがリーファの背から離れ、一瞬で最高速まで加速し開いた道に突っ込む。
「キリト君!」
リーファがキリトに向かって長剣を投げる。それを左手でキャッチしたキリトが叫ぶ。
「う……おおおおおおーーーー!!」
見覚えのある超速の二刀流連撃。コロナのような勢いのそれはあの世界での《ジ・イクリプス》そのものだ。
恐るべき威力を持った二十七連撃は紙くずのように騎士達を切り刻み、扉の前へと剣技の主を運ぶ。しかしすぐに埋め尽くされ、仁には扉が見えなくなった。
「どうするつもり!?」
「なんとかするだけだ!」
「相変わらず無茶なこと言うわね!」
一瞬思考を走らせるような表情になるシノン。だがすぐに覚悟を決めたような表情になって叫ぶ。
「仁! 赤い方貸して!」
「分かった!」
疑う素振りすらなく今の相棒である炎剣をシノンに向かって軽く投げる。すぐに左腰に差していた霊刀と右腰から無銘を抜刀し、殺到する騎士を切る。
「少しだけ時間を頂戴!」
「任せろ!」
仁が殺到する騎士の対処をしながら押されるように少しずつ下がっていく。シノンは一度さらに下がって『炎剣を弓につがえる』
「行くわよ……貴方が行って!」
「シノンも行くんじゃねぇのかよ!?」
「これが一番確実。ただし……」
シノンがつがえた炎剣の刀身が激しい炎に包まれる。
「絶対助けてきなさい! 私の分まで!」
さらに炎の奥の刀身が淡い水色の光に包まれる。
「……ああ、任せろ!」
仁の真似をするようにシノンが不敵に笑い、柄を握っていた手を放す。真上に真っ直ぐ炎の矢となった炎剣が放たれる。同時にあまりの炎の勢いと剣の重量が反動となってシノンを襲い、物凄い勢いでシノンが真下に弾かれたように飛んでいく。
一瞬下に振り向くが、すぐに真上を見て加速する。
「うおおおおおおっ!!」
今までにない加速をし、炎剣に追いつき、その柄を握る。
その瞬間自分のそれではない強い心意を感じた。想いを噛み締め、さらに加速する。
「行っちまえぇぇぇっ!」
真っ赤な炎とシノンの水色の心意の光がなびき、仁の全身を包み込む。まるで赤と青の混じった炎の鳥のように飛翔する。
そのままの勢いで近付く騎士達は触れることすら叶わずにエンドフレイムと化す。そしてすぐに扉に到達する。
ズドォォォン!という轟音とともに、破壊不能オブジェクトであるはずの扉の中央に炎剣の刀身が半ばまで突き刺さる。
「にぃ! 手を!」
すぐ隣から響いたユイの声を頼りに、炎でチカチカする視界の中すぐにユイの手をつかむ。
直後、白く変貌したゲートの中に引っ張られるように突入した。
どうも、ペンタブを予約したMYONです。
仁「文もまだまだなのに今度は絵か?」
描いてみたくなってしまったんだなこれが。挿絵も自分で描けたら素敵じゃん?
仁「全部中途半端にならなきゃいいがな……」
というわけで次回からお待ちかねあの方の出番です。さてどうなるか俺にもまだつかめません! 仁君が制御できるかわかりません!
仁「次回はそう遠くない頃に投稿できるのか?」
今月はちょっと忙しいから微妙かな。
仁「努力はしてくれよ?」
もちろん努力はします。さて、ここまで読んでいただきありがとうございます。
仁「次回もよろしくな!」