【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO   作:MYON妖夢

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 おまたせしました。
 積もる話もありますがそちらはあとがきにて

 そして第三十八話最終決戦を話に矛盾が生まれないように訂正を入れました。よろしければ目を通していただけると幸いです。


第四十九話 限界の高さ

 真っ先にキリトが飛び出した。地を思い切り蹴り一気に加速する。

 それに一歩遅れて仁とシノンが追うように飛び出す。

 それと同時に天蓋の発光部から四枚の翼を背から伸ばし、白銀の鎧を身にまとい、キリトの剣すら上回る長大な剣を握った人型のMobが数体生まれ落ちる。守護騎士、ガーディアンと呼ばれる存在だ。

 それらは雄叫びを上げながら三人に向かって真っ直ぐに飛び出す。

 

「そこをどけええええっ!」

 

「遅いぜ!」

 

 キリトが振るう剣が騎士の長剣とぶつかり合い、火花を散らす。仁はもう一体の騎士の斬り降ろしを最低限のわずかな動きで避け、右の炎剣を垂直に振るう。伝説級の剣はそれだけで騎士の鏡の顔を両断し、そのまま半分に断ち切る。

 キリトが騎士を倒すよりわずかに早く仁が前に出る。そして顔をもう一度天蓋に向けた瞬間に、思わず苦笑してしまう。

 

「……流石に多いな。あの野郎クリアさせる気がないだけはある」

 

 そう呟く仁と、そのすぐ後ろで顔を強張らせるキリトやさらに後ろにいるシノンの視線の先には、恐らく数百は越えようかという勢いで守護騎士が生まれ、三人へ向かってくる姿が映る。

 一瞬怯んだ前衛二人の横を数本の矢が通り抜ける。

 それは全て一体の騎士に着弾し、一気に騎士のHPを削り取り純白のエンドフレイムにより包みこませる

 たかが一体。されど一体。頼もしい後衛に鼓舞されたように二人は一息に加速する。

 

「うおおおお!」

 

「いくぜぇ!」

 

 二人はシノンの射線を開けるように左右に少し分かれてダイブしてきた守護騎士と戦闘を始める。連携で一体を確実に処理するのではなく個人で数体を相手にする必要があると全員がすぐに判断したのだ。

 

「燃えろ!」

 

 仁が振るったレーヴァテインから炎の渦が発生し、数体の騎士を飲み込む。それを目で確認せずに別の騎士に狙いを定める。すでに攻撃モーションに入っている騎士を、左の無銘によって水平に薙ぎ払う。しかし向こうは大剣のリーチギリギリで構えていたのか、片手直剣の攻撃はわずかに浅く、HPを削りきるには至らなかった。しかし一撃でHPの八割ほどを欠損した騎士の動きは一瞬止まる。仁はそこを見逃さない。

 

「らぁ!」

 

 間髪入れずに突き出した右の突きが残ったHPを吹き飛ばす。エンドフレイムに包まれるのを確認せずに翅を空気に叩きつけてその後ろの騎士の懐に潜り込み、左の返しの逆袈裟斬りを放つ。

 今度は思い切り腰から肩にかけて切り抜く。再び目の前で白いエンドフレイムが発生する。

 

「ッ!」

 

 しかしいつも何人かで戦闘をしていて、一対多数になれていない仁は右から振りかぶられた大剣に反応するのが一瞬遅れてしまった。しかしチラリと見ただけで別の騎士に剣を振るう。

 好機とばかりに振り下ろされた大剣は、仁に当たる直前に金属音とともに大きくはじかれた。そして一瞬の後、騎士の体に三つの穴が開き白い炎が穴から吹き出し、騎士の体が包まれる。

 

「どっちも危なっかしいわね……」

 

 今度はキリトの横の騎士を射抜くために次の矢をつがえながらシノンが呟く。仁はシノンの腕を信用しているからこそ敵から目を離したのだ。

 仁は一体切り捨てながら周りを一瞬見回す。約五体に囲まれている。

 

「ソードスキルが使えりゃ多少は早いんだが……な!」

 

 同時に左右から攻撃してくる騎士を、自身を軸にして回転しながら片手の一撃ずつで真っ二つにする。そのままレーヴァテインの炎の刻印により炎の刃を放ち一体を焼き尽くす。そして回転の勢いのままつま先まで真っ直ぐに伸ばし、心意による紫の刃をわずかに宿した左足による突きを繰り出す。

 流石の心意といえどソードスキルなしの蹴りでは威力が乗らない。それでも五割ほどを削り、左の剣でもう一体ごと斬り払うことで全損させる。左の剣をすぐに引き戻してもう一度同じ位置に攻撃を放つことでもう一体も全損する。

 仁の周りに五つのエンドフレイムが浮かび上がるが、一瞥すらせずに翅を羽ばたかせて上へ加速する。さらに敵の数が増えるのを見て仁の表情が変わる。

 絶望の顔ではない。むしろその逆だ。

 

「面白れぇじゃねぇか……どこまでいけるか……」

 

 ニィッといつもの不敵な笑みを浮かべている。強い相手や逆境は真に命を賭けていない今、彼にとってはある種では元いた世界でのゲームのようにも思えるのだ。

 ――――尤も、普通の人間より長い時を生きた彼は、命を賭けていたとしても強い相手と戦うことは彼にとって気持ちのいいことになってしまっているのかもしれないが。

 

「おおおっ!」

 

 目の前に肉薄した騎士を両手の剣を交差するように斬り降ろして四つの白い炎に変える。その奥に来た騎士を二刀合わせて水平に薙ぎ三つの白い炎に変えたところで、その先少し離れた位置にいる騎士を見て気を引き締めなおす。

 その騎士達五体ほどは光る左手を仁に向け、耳障りな声でスペルを詠唱している。初見殺しになるであろうそれだが、仁は何が来るのか知っている。

 スペルの詠唱が終わり、さらに勢いを上げて突進する仁に向かって計五本の光の矢が風を切る音とともに飛来する。

 一矢目、翅を上手く動かし減速しないまま回避。

 二矢目、わずかに体を傾けて回避。

 三矢目、仁から見て矢の内側に無銘を滑り込めせ、軌道を変える。

 四矢目、レーヴァテインで斬り捨てる。

 五矢目、回避しきれず膝に直撃、HPが一割ほど削れる。

 

「チィッ……」

 

 炎の刻印を発動。レーヴァテインが炎を纏い刀身を三倍ほどまで伸ばす。そしてそのレーヴァテインを横一列に並んだ騎士達に叩きつける。予想以上にあっけなくその身体は断ち斬られ、消滅する。しかし――――。

 

「おいおい……」

 

 その先でさらに倍近くの騎士が詠唱を終えようとしている。しかも近接タイプの騎士が六体仁に急接近する。

 

「これは流石に……キツイか」

 

 シノンの援護射撃が仁に肉薄する騎士を数体減らすが、それを埋めるように後ろから飛んでくる。

 刀身を伸ばしたレーヴァテインでも詠唱している騎士には届かない。ならばせめてと近接タイプの騎士を纏めて薙ぎ払い、無銘の二連撃で一体ずつ減らす。目の前の視界が開けた。

 しかしその視界はすぐに光が埋め尽くす。回避は確実に間に合わない。すぐにレーヴァテインの炎で数本を燃やし落とすが、風を切る音とともに炎を突き抜けて飛来した矢が仁の身体に五つの穴を開ける。

 

「ぐっ……」

 

 一気にHPがイエローゲージに突入する。残りHP約四割。しかし天蓋の石扉にももうすぐ手が届く程度の距離しかない。

 

「このまま突撃は……賢くねえか」

 

 そう呟いた仁の横をすさまじい速度で黒い影が飛んでいく。しかしすぐに光の矢と騎士が殺到し、もう数秒で手が届くといったところで黒色のリメインライトと化す。

 キリトのリメインライトを回収しようにも、仁のHPとこちらに向かってくるキリトに押し寄せた騎士達の数を鑑みれば、どうやっても今の仁には不可能であろうことがすぐに分かった。

 それでも、と翅を羽ばたかせて少しでも多くの騎士を斬り捨てる。後ろを見る余裕はもはや微塵もない。シノンのHPがまだ残っていることはパーティーメンバーなので視認できているが、シノンのHPもすでに残り三割ほどしかない。

 仁のHPも掠りダメージや避けきれない光の矢でじりじりと減っていく。

 

「ワルプルギスの使い魔より質悪いぜまったく……」

 

 ふと、わずかに数が減ったような気がした。ほんの少しできた時間で周りを見ると、下へ向かって飛ぶ騎士の数が少し増えているとわかった。

 そしてHPが残り一割程度しかないシノンが一層多くの矢を連射してくることも分かった。仁も炎の刻印を発動して一気に道を開くように炎を放つ。その横をすり抜けるように新しい人影が上へ上へと飛翔していく。

 

「――――キリト君!」

 

 シルフの少女、リーファだ。途中で受けた攻撃でHPを減らしたまま、仁とシノンが作ったわずかな隙間を通ってキリトのリメインライトを抱える。そのままリーファはダイブするように入口のほうへと向かう。仁もそれを追うように翅を空気に叩きつけて加速する。

 

「シノン! 撤退しよう!」

 

 無言で頷いたシノンのHPはもはや風前の灯火程度しかない。まだ二割ほど残っている仁がシノンを守るように殿に立ち光の矢を弾く。

 そしてリーファがダイブの勢いのまま離脱し、シノンも滑り込み――――それを見届けて一瞬委が緩んだ仁の背中に大剣が叩きつけられる。

 背中の鞘が受け止めたことにより両断はされなかったが、一気にHPが数メモリまで減り身体は凄まじい勢いで地面へと跳ね飛ばされる。

 

「やっべ……くっ!」

 

 地面追突スレスレで仰向けになった身体を思い切り翅で地面を叩きつけることで急ブレーキをかけ、そのまま転がるようにドームから離脱した。

 視界を、先ほどの光とは全く異なる暖かい日光が包み込んだ。




 はい。ここまでです。皆さんお久しぶりです。遅れてしまい申し訳ありません。

仁「遅いと何度も何度も……」

 モチベがどうにも上がりませんでした。むしろ他の作品を書きたいという欲求は凄くあるのですが。ゼロの書と終末なにしてますか(ryが今期凄く気になってます。小説全部買いました。まだ全部は読んでません。

仁「こっちも忘れずに書いてくれよ?」

 うん。こっちを書き出したのは、他の作品を書く前にとりあえずこっちを一区切りつけたかったんだ。だから頻度は今度こそ上がると思います。

仁「また伸ばすんじゃないだろうな?」

 今度こそ大丈夫。大丈夫。

仁「ならなぜ二回言うのか……」

 自分への念押しってことで一つ。さて、では。
 ここまで読んでいただきありがとうございます。

仁「次回もよろしくな!」

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