【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO   作:MYON妖夢

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お待たせしましたお久しぶりです。
積もる話もありますが、そちらはあとがきにて
※今回あまり原作と変わりありません


第四十八話 世界樹

ふわぁ~~~~~……おはようございます皆さん」

と四人の間にキラキラとしたエフェクトともにユイが現れる。あくびをしながら目元を擦っている。

 

「あ! エイミーちゃんもこっちに来られたんですね!」

 

「ああ。どうやらデータは残ってたらしい」

 

「よかったです!」

 

とユイがほとんど同じサイズになったエイミーと一緒に仁の周りを飛び始める。仁達はエイミーと会話することは出来ないが、カーディナルであったユイは別なのかもしれないと仁は何となく思った。

 

「おはよう、ユイちゃん。——あのね、昨日から気になってたんだけど……その、ナビピクシーも夜は眠るの?」

 

「まさか、そんなことないですよー。でも、パパがいない間は入力経路を遮断して蓄積データの整理や検証をしていますから、人間の睡眠に近い行為と言っていいかもしれませんが」

 

「でも、いまあくびを……」

 

「人間って起動シークエンス中はああいうことをするじゃないですか。パパなんて平均八秒くらい……」

 

「妙なことを言わなくてよろしい」

 

キリトがユイの頭をこつんと小突き、背中に大剣を背負うのを待ってから仁が言う。

 

「さて、そろそろ行こうぜ」

 

全員が返事をし、世界樹へ向けて歩き出す。

歩きながら周りを見て回すと、午後三時という時間にも関わらず、ポップのリセットの影響か仁が思っていたよりも人通りは多い。そして何より彼の目を引いたのは。

 

「やっぱり複数の種族が一つの街に集まってるってのはなかなか壮観だな。その中でもビルドによって装備は当然違うから面白い」

 

「そうね。今までは私もケットシー領付近からは出なかったし、他種族を見る機会も少なかったから新鮮な気分」

 

「ネタ装備もちょこちょこいるな。やっぱりゲームはああやって楽しんでこそだよな。俺はあまりしないだろうが」

 

と皮肉気味に仁が苦笑しながら言う。

シノンも少しの苦笑と共に言う。

 

「でも、仁のネタ装備は案外見てみたいわ。普段と違ってギャップが面白そうだから」

 

「俺自身そういうのは慣れてないし、しばらくはしねぇかな」

 

「あら、残念」

 

などと話しながら歩いていると、やがて通りの先にモスグリーンの円筒状のものが市街の表面に何本も伸びているのが見えた。よく見るとそれは木の根であることがすぐにわかった。それらは上へと伸びながら徐々に合流し、アルンの頂点で一つに集まっている。

それの根元からは今までどの世界で見た木など比べ物にならないほど巨大な幹がまっすぐに上空へとその身を伸ばしている。

それは伸びて伸びて、飛行可能エリアを優に超え、白いもがかかりわずかに放射状に広がる枝を見て取れる。

そう、それこそが——

 

「世界樹……圧巻だな」

 

そう呟いて三人を見ると、同じように上を見上げているのが見えた。

 

「あれが……世界樹……」

 

キリトがそう囁く。

 

「うん……すごいね」

 

「確かこの樹の上にも街があって、妖精王オベイロンと光の妖精アルフが住み、王に最初に謁見できた種族がアルフへと転生することが出来る。って話ね」

 

シノンが言う。それを聞いた仁はわずかに顔をしかめる。

 

「実際一種族のみで攻略は出来ていないのにどこまでが転生範囲なのか怪しいところだがな」

 

無言のまま樹を見上げていたキリトが真剣な表情で振り返る。

 

「あの樹には外側からは登れないのか?」

 

「どうやら進入禁止エリアだ。飛ぶにも飛行可能エリアにも、翅の飛べる時間にも限りがある。何人も肩車して限界突破した連中のほうの話は、なんでもすぐにGMからの修正で障壁を配置されちまったらしい」

 

「なるほどな……とりあえず根元まで行ってみよう」

 

四人は大通りを歩き始める。あらゆるパーティーの間を縫うように進んでいくと、前方には大きな石段と大きく口を開けるゲートが見えてきた。その中はアルン中央市街。この世界の中心だ。

階段を登り門をくぐろうとしたその時、突然ユイがキリトの胸ポケットから顔を出し、いつになく真剣な顔で上空を見上げ始めた。

 

「お、おい……どうしたんだ?」

 

キリトが周りの人目を気にしてか小声で囁くようにユイに問う。他の三人もユイの顔を覗き見るが、ユイは無言のまま見開いた瞳を世界樹のずっと上に向けている。そして小さく掠れた声が漏れ出る。

 

「ママ……ママがいます。それにねぇも」

 

「な……」

 

キリトが顔を強張らせ、今度は周りの目など気にせずに声を上げる。

 

「本当か!?」

 

いや、むしろ——

 

(周りの目なんて気にする余裕はないよな)

 

仁自身も確実にほむらがいることが分かり、表情はあまり変わってこそいないが内心早く助けに行きたいのだ。

 

「間違いありません! このプレイヤーIDは二人のものです。座標はまっすぐこの上空です!」

 

それを聞いた瞬間キリトの表情が見て取れるほどに変わり、背中の翅をいきなり広げて破裂音とともに彼の姿が真上へはじけるように飛び出す。

 

「ちょ……ちょっとキリト君!」

 

リーファも異常な速度で急上昇するキリトを追って翅を広げて飛翔する。

 

「仁……どうするの?」

 

「……まぁ冷静になんかなれねぇよな。しかし……。とりあえず追いかけよう」

 

内心では仁も冷静なわけではない。しかしここで自分も取り乱してしまうわけにはいかないため無理矢理に押さえつけている。

 

二人も翅を展開して急上昇する。しかしキリトやリーファは相当に早く、なかなか追いつけない。

やがて雲海を抜け、コバルトブルーの世界が視界に広がると同時に視界の先でキリトが見えない何かに衝突する。虹色の光をまき散らしながら落雷のような強い衝撃が辺り一面へと広がる。そしてキリトの身体は脱力し、落下に入る。

 

「あの馬鹿……!」

 

仁が一気に加速するが、追いつく前にキリトは意識を取り戻したようだった。しかし再びすぐに上昇を開始し、同じように障壁に阻まれる。

加速した仁はシノンを置いていく形になるが、リーファすら追い越しキリトへと到達し、腕を掴みあげる。

 

「ストップだキリト! 翅じゃその先に行くのは無理だ!」

 

「行かなきゃ……いけないんだ!」

 

「一度冷静になれ! お前らしくもねぇ!」

 

「ジンだって……ほむらが待ってるんだろう!?」

 

「そうだよ……でもだからこそ一旦落ち着け! 方法が浮かぶもんも浮かばなくなる!」

 

言い合いをしているうちに二人が追いつき、ユイがキリトの胸ポケットから飛び出す。しかしナビピクシーであるユイの身体すら障壁は拒む。しかしユイは障壁に両手をつき口を開く。

 

「警戒モード音声なら届くかもしれません……! ママ! ねぇ! 私です! ママ!」

 

声が届いたのかどうかは仁には分からない。しかし……。

 

「何なんだよ……これは……!」

 

背中の剣の柄に手を伸ばすキリトを仁が制止する。

 

「落ち着けっての!」

 

制止の声をあげながらも仁はまっすぐに上空を見つめている。やがて——

チカリ。と小さな光が一度瞬いた。

 

「あれは……」

 

その光はひらひらとこちらへ降ってくる。キリトが柄から手を伸ばし、光へ向けてその手を差し伸べす。

その光はキリトの手の中に収まる。そしてキリトがその手を開くと。

 

「……カード?」

 

リーファがつぶやく。確かにそれはカード型オブジェクトであることがわかる。

ユイがキリトの横から身体を乗り出し、カードに触れながら言う。

 

「これは……システム管理用のアクセス・コードです!」

 

「!?……じゃあ、これがあればGM権限が行使できるのか?」

 

「いや……恐らくあの時と同じようにシステムコンソールが必要になるだろう。ユイでも……」

 

「……システムメニューは呼び出せません……」

 

「でも、どうしてこんなものが……もしかしてほむら達が?」

 

「多分、そうだと思います」

 

キリトはカードをぐっと握りしめる。対して仁は口の端が持ち上がるのを感じた。

 

(やっぱり、何もしないで待ってるわけなかったな)

 

「リーファ。教えてくれ。世界樹の中に通じているっていうゲートはどこにあるんだ?」

 

「え……あれは、樹の根元にあるドームの中だけど」

 

リーファは眉を寄せながら続ける。

 

「で、でも無理だよ。あそこはガーディアンに守られてて、どんな大軍団でも突破できなかったんだよ? いくら君が強くたって……」

 

「それでも、行かなきゃいけないんだ」

 

キリトがカードを胸ポケットに収めるのを見ながら仁が言う。

 

「リーファ。ここまでこいつのこと助けてくれてありがとな。けど、こっからは俺達の問題なんだ。巻き込むわけにはいかねぇ」

 

「今まで本当にありがとう。ここからは俺達で行くよ」

 

「キリト君……ジン君……」

 

リーファは泣きそうな顔で口籠もる。それを見たシノンが言う。

 

「ごめんなさいね……やるって言ったら聞かないのよこの二人……それに、私も」

 

「シノンさん……」

 

「事が済んだら改めて、ね?」

 

リーファに頭を下げてから、先に急降下していってしまった二人を追ってシノンもその翅をはためかせて急降下する。

やがてシノンも追いつく。

 

「正直勝算は薄い! だが、やるんだろう?」

 

「……ああ。一刻も早く……行かないと」

 

「冷静になりなさいキリト。そんな調子じゃ剣の調子も悪くなるわよ」

 

すぐに地面が見え、三人とも衝撃音とともに着地する。周りのプレイヤーの驚きの顔も気にせずキリトがユイに小声で話しかける。

 

「ユイ、ドームとやらへの道はわかるか?」

 

「はい、前方の階段を上ればすぐです。でも……いいんですか? 三人とも。今までの情報から類推すると、ゲートを突破するのはかなりの困難を伴うと思われます」

 

「まぁやってみないとわからねぇさ。大丈夫。死ぬわけじゃない」

 

「それは……そうですが」

 

キリトは手を伸ばし、ユイの頭をなでる。

 

「それに、あと一秒でもぐずぐずしてたら発狂しちまいそうだ。ユイだって早くママに会いたいだろう?」

 

「……はい」

 

「全く、そう言ったらユイちゃんが"いいえ"なんて言うわけないでしょう?」

 

シノンが呆れたように言う。それに苦笑してからキリトが先に階段を上り始める。

それに続き二人が階段を上る。やがて世界樹の幹が眼前で寄り集まって壁のようになっているのが分かる。そしてその壁の一部にプレイヤーの十倍はあると思われる妖精の騎士の彫像が二体並び、その間に石造りの扉がそびえている。

グランドクエストの開始地点である。

もはや突破不可能とすら認識されるその扉の前に立つと、右の石像が低音を出しながら動き出す。そちらを見ると、石像は兜の奥に青白い光を灯しながら三人を見下ろしている。そして口を開く。

 

『未だ天の高みを知らぬ者よ、王の城へ至らんと欲するか』

 

先にこの場に来たキリトの目の前にウィンドウが出現する。クエストへの挑戦のイエス・ノーボタンだろう。キリトは迷わずにイエスを押す。

すると今度は左の石像が声を発する。

 

『さればそなたが背の双翼の、天翔に足ることを示すがよい』

 

その声の余韻が消えないうちに石扉の真ん中がぴしりと割れ、地響きをあげながらゆっくりと左右へ開いていく。

 

「……まるでアインクラッドのボス戦だな。だが今度は……」

 

「死にはしないわ。幾分か気が楽ね」

 

「……いや、この戦闘はある意味では今までのどの戦闘よりも重いんだ」

 

そう言ってからキリトはユイにしっかり掴まってろといい、抜剣する。

ほぼ同時に仁は双剣、シノンは弓を構え、中へと踏み出した。




はい。お待たせしました。

仁「待たせすぎだ。一年半以上も放置しやがって」

言い訳は山ほどありますが、まず一つにPCが重くなりすぎて作業が進まなかったこと。次に最近PCが壊れてしまったことが大きいです。誠に申し訳ございません。

仁「失踪はしなかったんだな」

絶対しないといった手前SAOが終わるまではしないよ。

仁「しかしほとんど原作と同じじゃね?」

次からはまた違う感じになるから勘弁してね。

仁「こんな奴の作品だが書かれていない間も待っていてくれたみんなはありがとうな!」

不定期ではございますが、気長にお待ちいただければ幸いです!
ではでは、感想指摘よろしくお願いいたします

仁「また次も見てくれよな!」

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