【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO   作:MYON妖夢

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 お久しぶりです!
 受験合格したので、ちょくちょくあげていきますよ!


第四十四話 牙突強我の少女

「――っとに、さっさと行くぞ! 何としても間に合わせんぞ」

 

 リーファがリアルに戻り、レコンから会談をサラマンダーが襲う、という情報を聞いたことを聞いた仁が言った。

 

「アリシャとシルフの領主がやられたら、正直冗談じゃないことになるわ。急ごう」

 

 シノンが言う。どうやら彼女はアリシャとも話したことがあるらしい。

 

「ええと……領主が倒されるとどうなるんだ?」

 

 無知なキリト。とことんまで仕様を知らないらしい。

 

「お前ホントに無知っつーか……」

 

 仁が説明するとキリトが合点が行ったようにうなづいた。

 

「なるほど。それはまずいな」

 

「他人事か。俺たちも行くんだよ」

 

「わかってるさ」

 

 その会話を聞いていたリーファが三人に問う。

 

「……なんで? ケットシーであるシノンは分かるけど、あなた達二人が協力する必要はないよ? なんならここで斬ってもらっても構わない」

 

「なんでってもなぁ……」

 

 仁が頭をかきながら言う。

 

「当たり前じゃねぇの? 助け合うのはさ」

 

 そしてつづけて言う。

 

「だって――仲間だろ?」

 

 それにさらに続くようにキリトが言う。

 

「所詮ゲームなんだから何でもアリだ。殺したければ殺すし、奪いたければ奪う」

 

 少し間を開け、優しい笑みをふっと浮かべていった。

 

「――そんな風に言うやつには、嫌っていうほど出くわしたよ。一面ではそれも真実だ。俺もそう思っていた。でも――」

 

「そうじゃないの。現実じゃないからこそ、ここ(仮想世界)だからこそ、愚かに見えることでも、守らなければいけないの。私たちはそれを――仁やほむらにおそわった」

 

 言葉を奪われたことでキリトが苦笑しながら改めて続けて言う。

 

「プレイヤーとキャラクターは一体なんだ。こっちで欲望に身を任せれば、向こうでの人格に代償が還っていく。俺――リーファのこと好きだよ。友達になりたいと思う。自分の利益のためにそういう相手を切るようなことは、絶対にしない」

 

 仁がやんちゃそうな笑みを浮かべる。

 

「こいつはこういうやつなんだ。っても、俺も人のこと言えねぇか。俺は、仲間を切ることはしない。もしそんな状況になったなら、自分を斬ってでも斬らねぇ」

 

「自己犠牲の精神……。あの時もそうだったね」

 

 シノンのつぶやきに、仁があの時のことを持ってくんのはやめろよ。とツッコむ。

 

「みんな……」

 

 リーファが小さく言う。

 

「……ありがとう」

 

 その言葉を聞いた仁が獰猛に笑う。

 

「そうと決まったら……行くぜ?」

 

 キリトとアイコンタクトを取る。その行動の意味が分からない二人が首をかしげるが――。

 

「んじゃ、シノン。お手を拝借」

 

「へ? えっ?」

 

 シノンの手を有無を言わさずにスッとつかみ、次の瞬間。シノンは己が風になった間隔を感じた。

 

「きゃあああああああああああ!!?」

 

「ははははははは!」

 

「ユイ、ナビよろしく」

 

「わぁ―――――――――っ」

 

 黒×2の軌跡を残して疾走した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、出口か」

 

「おお」

 

「ちょっ、ちょっと待ってじ――――っ」

 

「キリト君!? とま――――っ」

 

 二人が問答無用で出口から飛び出した。

 

「わぁぁあああ!?」

 

「ひゃああぁあ!?」

 

 女性陣二人の可愛らしい悲鳴と共に一気に外の空気が全身をたたく。

 

「仁ーー?」

 

「ちょっ、落ち着けって。時間短縮にはなったじゃねぇか」

 

 シノンに空中で詰め寄られて、両手を顔の前で振りながら急いで弁解する仁。

 

「寿命が縮んだわよ!」

 

「わはは」

 

 もう片方のコンビも同じような討論になっている。

 

「ん?」

 

 そこで、仁がある一点を見つめた。

 

「あれが……世界樹か」

 

 奇しくも原作のキリトと一字一句同じ言葉が口から洩れた。

 

「こうしてられないわ。会談の場所は蝶の谷だったはず」

 

「方向は……あっちの方向にしばらく飛んだとこだと思う」

 

 リーファが北西の方向に指をさす。

 

「了解。残り時間は?」

 

「――二十分」

 

「あんまねぇな……たぶん、あっちからサラマンダーが来るはずだ。ユイ。サーチ頼んだぞ」

 

 南東に指をさして仁が言った。

 

「はい!」

 

 ユイが答え、四人と小さな一人は飛び出した。

 

 

 

 

 

 しばらく飛ぶと、すぐに領主の会議場が見えた。

 

「あそこか」

 

 仁が呟くが、既にサラマンダー部隊は領主たちのすぐそこにまで近づいている。

 

「間に合わ――」

 

「まだ、いけるな」

 

「――えっ?」

 

 リーファが言い切る前に仁が遮る形でつぶやいた。

 それを聞いたキリトもうなずき、翅をたたみ一気に急降下していく。

 キリトが地面に着地……というより激突するような音と共にサラマンダー部隊と領主たちの動きが止まる。同時にキリトが叫ぶ。

 

「双方――剣を引け!」

 

「あの……馬鹿はまったく」

 

 仁たちの居る位置まで響き渡った声を聴き、仁は頭を押さえため息をつきながら降下していく。それでも口角は若干吊り上り、楽しんでいるようにも見える

 

「ま……行くか。楽しませてくれよ、アルヴヘイム最強よ」

 

 そうつぶやいた仁の足が地面を踏む。

 サラマンダー部隊の一番前に立っていた、赤い鎧を着こんだ男が解いてくる。

 

「……貴様らは?」

 

「俺たちはインプ‐スプリガン同盟の使者である! この場にはシルフ‐ケットシー同盟へ世界樹攻略のための同盟の話を持ち掛けに来たのだ!」

 

 原作と同じ話に仁も獰猛に笑い、便乗する。

 

「ここで彼女らに剣を向け、殺すということならば、俺たちも黙っちゃいねぇ。シルフ‐ケットシー‐スプリガン‐インプの最高戦力を以てサラマンダーをお相手することになろう」

 

 ぽかんとした表情で唖然としている領主たちに一切の説明なく始まったこの無理矢理な特攻。

 それでも目の前に出てきたアルブヘイム最強こと、ユージーン将軍は乗ってきた。

 

「貴様らが使者であるという証明はないのだろう。たった二人ではな」

 

「なら、どうすれば信じてくれる?」

 

「ふむ……」

 

 仁の問いかけに、ユージーンは少し考え込み、言う。

 

「このユージーンに傷をつけてみよ。それができたならば、十分な実力を持つ領主の送り込んだ使者と認めてやろう」

 

「こっちには、二人いるぞ」

 

「ならば……来い、カガナ」

 

「は……はい!」

 

 ユージーンが一人の少女を呼んだ。

 その少女はかなり小柄だった。SAO時のリリカくらいか。自身でアバターを決められないALOでは彼女が大人な女性であることも想像はできるが、その言葉や行動の感じから言って、アバターの姿と同様にリアルでもそこまでの歳はいっていないだろう。

 

「こいつはカガナ。剣舞だけならば俺に及ぶかも、知れんな」

 

「そ、そんなわけないじゃないですか。過大評価しすぎですよ……」

 

「……まあ、いい。どちらが俺と戦うんだ。ユージーンにカガナ。どちらでもいいぞ」

 

「……カガナ。おまえは手前を頼む」

 

 そういってユージーンは答えを聞く前にキリトへ向かって言った。

 

「あ、あのっ。よろしくお願いします」

 

「無駄に礼儀正しいなおい。気楽にやろうぜ」

 

 そういった仁が、レーヴァテインを抜いて構えると、少女の目つきもおどおどしたものからSAOでも見た、戦闘をするものの眼へと変わった。

 

(へぇ。面白くなりそうだ

 心でそうつぶやいた。あの眼は、なまっちょろい戦闘をするものの眼ではない。

 

「行くぞ」

 

 仁の構え方である脱力し、剣をだらりとたらした状態から、一気に足のばねを利用した加速を始める。

 同時にカガナも左手に携えた刃渡りのかなり長めの短剣を構え、小柄な体によって生かされる小回りの良さが生む瞬発力で突っ込む。

 そして――激突。

 仁のレーヴァテインとカガナの短剣が顔のすぐそばでぶつかり合う。火花が目の前で散り、はじかれる。

 

「――っ!?」

 

 重い。レーヴァテインをもった仁の腕が大きく後ろにはじかれた。しかし思考する暇すらなく短剣ならではの連撃の速さが仁に襲いかかる。

 

「ふっ!」

 

 力みと共に逆手に持った短剣の刃先を仁の心臓に合わせ、思いきり折り曲げた肘を一気に伸ばすばねを使った攻撃が飛ぶ。

 

「くっ!」

 

 剣を引き戻すのはもちろん間に合わない。心臓にあわせられている上にこの近距離で腕を前回まで伸ばして繰り出される突きを前に、バックステップは無意味。ならば――。

 全力で横に飛ぶ。それでも間に合わなかった。仁の右の二の腕付近が大きく切り裂かれ、血の色のポリゴンが傷口から舞う。

 

「ちっ……お前、その攻撃力は……」

 

「この短剣の名は『ブリューナク』。リアルでも同じ名前の剣がありましたね。この剣の特殊能力は『牙突強我(がとつきょうが)』。後は……ご自分でお考えください」

 

 そういって再び空いた距離がすさまじい突進によって詰められる。

 

(『牙突強我』か……【突】ってからには突進系か)

 

「や!」

 

 突進のスピードをのせた逆手の短剣が刃渡りを横に、水平にスライスされる。

 

(考えてる・・・・・・ひまがねぇ!)

 仁は再びレーヴァテインで受ける。今度は両手で握りしめて受ける。

 

「ぐっ!」

 

 ギィン! という重い音が鳴り響き、わずかに仁が後ろに押される。しかしそれでも弾かれはしなかった。

 すぐに追撃が来る。左から来た水平切りの勢いのまま、右から水平切りが飛んでくる。

 次はレーヴァテインを片手で振りぬいてうける。

 キィン! という軽めな音と共にお互いの距離があく。

 

(なんだ。今のは? 二撃目が異常に弱まった? ここで手を抜く必要はねぇはずだ。ならなぜ?)

 

 再びカガナが突進してきた。あえてレーヴァテインで受けて後ろに大きく飛ばされる。

 

「……なるほどな」

 

 今ので確信を得た。というように笑う。

 

「『牙突強我』……恐らく、ある程度の距離を一定時間で詰めた後に繰り出す攻撃の威力が数倍になるってところか」

 

 カガナの表情が年相応の表情になった。しかし一瞬で戦闘の顔になり、言う。

 

「……ご名答です。しかし、それがわかってもあなたに防ぐ方法はありません」

 

「いーや。あるんだぜ? ……レーヴァテイン!」

 

 仁が叫ぶと、一瞬の余白のあとレーヴァテインから炎が噴き出す。カガナも少し目を見張った。

 

「それが、あなたの剣の特殊能力ですか」

 

「ああ」

 

 さらに、仁は左腕の右の腰に持っていく。

 そこにあるのは、ほむらのレイゲンノタチ。

 

「二刀流……?」

 

 カガナがつぶやくと同時に二本目を抜いた。

 

「抜くことはねぇと踏んでたんだが、お前は強い」

 

 二刀をだらりと構える。

 

「本気で行くぞ」

 

「っ!」

 

 カガナが一気に突進する。その勢いをのせた小振りの一撃が仁の首に狙いを定める。

 しかし仁はすべて見えているかのように左の剣で短剣の腹をたたき、そらす。

 カガナはすぐに短剣を引き戻し、心臓への突きへ移行する。

 それも仁は二本の剣を下からクロスさせるように切り上げることで短剣をはじく。

 

「ッ……やぁ!」

 

 短剣の多段攻撃が始まる。仁はそれを超える速度で二刀を最小限の動きで振り、短剣をそらし、弾く。

 約三十ほどの攻撃がカガナから繰り出された。そのとき――

 

「あっ……」

 

 カガナの左手から短剣が離れる。仁が短剣を上から右の剣で叩き、揺らしたのちに間髪入れず左の剣で上方へ弾き飛ばしたのだ。

 カガナの顔が悔しさにゆがむ。が。

 

「そんな顔すんなよ。俺もこの戦いは楽しかったぜ。お前は強かった」

 

 実際。突進するための距離稼ぎや、大振りではないのに突進のスピードを殺さない攻撃。そして攻撃の正確さ。どれをとっても、強かった。

 そして、仁の攻撃が構えられる。カガナは反射的に目をつぶった。

 が。

 

「……あ、れ?」

 

 攻撃が来ない。そのことに気付いたカガナは恐る恐る目を開けると、すでに剣を腰に収めている仁が見えた。

 

「……殺さないんですか?」

 

「むしろ聞くぞ。なんで、殺す必要がある?」

 

 そういって仁はカガナに背を向け、どこからともなくおこった拍手に包まれて仲間たちのところへ戻っていった。




はい。終わりました。

仁「おせぇよ。何か月あけてんだボケ」

ごめんよー。でも受験で大変だったんだ。ゆるせ

仁「次は早くな」

うん。できればね。

さて。感想指摘、☆評価よろしくお願いします!

仁「次も見てくれよな!」

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