【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO   作:MYON妖夢

56 / 71
第四十一話 敵意

 あの後キリトたちと合流した仁は、ちょうどいたレコンとも自己紹介をし、一日たった今、スイルベーンの宿屋に実体化した。

 

「……ん?」

 

「あら?」

 

 ちょうど同じ時間にログインしたらしいシノンと目があった。

 

「ああ。珍しいこともあるもんだな」

 

「そうね」

 

 すぐに会話が途切れる。仁は居づらそうに頭を軽く掻き、再び発生した光の場所に目を向けた。

 その影が実体化すると同時にもう一つの影がその場に現れる。

 

「よぉ。キリト、リーファ」

 

「随分とはやいんだな」

 

「そうでもねぇさ。今さっきはいったところだ」

 

「リーファも、はやいのね」

 

「ううん。あたしもさっき来たとこ。買い物をね」

 

「あ、そうか。俺もいろいろ準備しないとな」

 

「そーだな。おまえに関してはどうせ『重い剣!』とかいうんだろ?」

 

「キリト君。お金持ってるの? なければ貸しておくよ?」

 

 キリトはえーととつぶやきながら左手を振り下ろした。現れたウィンドウを見て、固まった。

 

「……このユルドって単位がそう?」

 

「そうだが?」

 

「……ない?」

 

「い、いや。ある。結構ある。というかジンが持ってるその剣ってそういうことか……」

 

 キリトは仁の左腰に下がっている赤く光る剣を見てそういった。右腰の剣を見て軽く目を見張ったように見えたが、それについてはあとで追及することにしたらしい。

 

「ああ。金あるなら行くぞ。一秒でも時間が惜しいんだからな」

 

「わかってる……おい、行くぞ、ユイ」

 

 キリトが胸ポケットを除きながら娘に呼び掛けると、ポケットから小さな妖精が顔をのぞかせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にお前ってやつは……っていうかなんでそんな重いのにしたんだよ。二刀流する気ねぇのか?」

 

「……あ」

 

 キリトは仁が言った言葉を聞いて、思い出したように言葉を漏らした。

 

「……忘れてた」

 

「本当にお前ってやつは……」

 

「返す言葉もない」

 

 そんな会話をしていると、一応アイテム類の確認を含め、道具屋に行っていた女性陣が戻ってきた。

 

「そんな剣。振れるのぉー?」

 

「問題ない」

 

 原作とはそのセリフを言うタイミングがずれているが、仁は自分が介入したことによる原作のずれを、いい方向に利用できればと、考えた。

 

「ま、そういうことなら準備完了だね! これからしばらく、ヨロシク!」

 

「こちらこそ」

 

「頼むぜ。みんな」

 

「お願いね」

 

 最後にポケットから顔を出したユイが締める。

 

「頑張りましょう! 目指せ世界樹!」

 

 

 

 

 

 

「出発する前にブレーキングの練習しとく?」

 

 原作でキリトが激突したであろう塔を見つめているキリトを見たリーファが笑いをこらえながら言った。

 

「……いいよ。今度は安全運転することにしたから」

 

「ところがどっこいそうは問屋がおろさねぇってか」

 

「……え?」

 

 上からキリト。仁。シノンだ。シノンはおそらくリーファほどのスピードが出せないのであろう。ケットシーとシルフは交友関係が強いためリーファの名前はシルフの中でもトップレベルのスピードを出せるということでケットシーまで行き届いているのであろう。

 

「ところでなんで塔に? 用事でもあるのか?」

 

「馬鹿。このゲームに対空制限があるのは知ってんな? んでもって高いところから滑空しながら行けばその制限を節約できるってわけだ」

 

「ああ、なるほどな」

 

「さ、いこ! 夜までに森は抜けておきたいね」

 

「このあたりの地理は近くだから一応把握しているつもりだけど。あいまいなところはリーファにお願いしようかな」

 

「任せなさい!」

 

 塔が近づいてきた。リーファはシルフの領主館を眺めている。キリト、仁、シノンはスイルベーンの景色を眺めている。そして塔に到達する。

 そのまま塔の内部へはいったところで――

 

「ちょっと危ないじゃない!」

 

 複数人のプレイヤーが前に立ちはだかる形で現れた。

 リーファはすぐに顔を上げ、顔を確認したのちにいう。

 

「こんにちは、シグルド」

 

「パーティーから抜ける気なのか。リーファ」

 

 リーファは若干悩んだしぐさを見せたが、うなづいた。

 

「うん……まあね。貯金もだいぶできたし、しばらくのんびりしようかと思って」

 

「勝手だな。他のメンバーが迷惑するとは思わないのか」

 

「ちょ……勝手!?」

 

「お前は俺のパーティーの一員としてすでに名が通っている。そのおまえが理由もなくパーティーを抜けて他のパーティーに入ったりすれば、こちらの顔に泥を塗られることになる」

 

 このセリフを聞き、シノンが顔をしかめる。SAO時代でこのような自分勝手なパーティーのリーダーは時々見てきた。それを思い出しているのだろう。

 

「……はぁ」

 

「なんだ貴様は」

 

「なんだはこっちのセリフだクズ」

 

「な……!?」

 

 仁の言葉には普段とは似つきもしないほどの闇が潜んでいることが、付き合いの長いキリトやシノンには感じ取れた。

 

「『俺のパーティーの一員として』……だぁ? なわきゃねーだろ。むしろリーファの足を引っ張っているシグルドとしておまえの名前が通ってんじゃねーの?」

 

 仁が笑いながら言う。しかし目は一切笑っていない。

 

「き……貴様……ッ」

 

 今にも腰のブロードソードを抜きそうな様子のシグルドにキリトが仁の言葉を引き継ぐ。

 

「仲間をアイテムみたいにストレージにロックしておくことはできないぞ」

 

「ちょっ……二人ともそろそろ……」

 

 リーファが止めに入ろうとするが、二人は一切聞いていない。そしてシノンも止めようとはしていない。

 

「こ……のクズあさりのスプリガンとインプ風情がつけあがるな! どうせ領地を追放されたレネゲイドだろうが!!」

 

「残念。俺はもともと領地になんか行ったこともねぇよ。それにリーファはココを出たがってんだろうが。それを止める権利はてめぇにはねェわな」

 

 ついにシグルドが歯を食いしばり、青筋を浮かべブロードソードを抜き放った。そのまま切りかかろうとするシグルドだが、目の前に小さいウィンドウが出てきたことで勢いをそがれた。

 

「面倒くせぇな。デュエルするか? 俺が勝てばリーファは連れて行く。おまえが勝てばどうとでもすりゃいいさ」

 

「ぬ……」

 

「ほら、受けろよ。それとも領地出て直接殺し合うか」

 

「な……めるなよ小僧が!」

 

 シグルドがデュエルの承諾ボタンを押した。それが完全決着モードであることをしっかりと確認もせずに。

 

「てめぇごとき、ほむらのレイゲンノタチを抜く必要すらねぇわな。レーヴァテインのエクストラ効果を発動させることもねぇ」

 

 そういって仁は右手で腰の【炎剣・レーヴァテイン】を抜き放つ。その瞬間に周りがざわめく。真っ赤に煌めくレーヴァテインはそれだけの魅力と迫力を放っていた。

 

「オォォォォォオオオラアアァァァァァアアアア!!」

 

「うるせぇな」

 

 大袈裟に叫びながらブロードソードを振りかざし、超大振りで振り下ろしてくるシグルド。

 

「んな大振り、当たったら恥だな」

 

 そういって一歩横へ踏み出す。それだけでブロードソードは空を切り、地面に刺さる。

 

「死ね」

 

 冷たい声と目でそう言い放つ仁。その眼光と声音にシグルドののどから小さな悲鳴がなった。

 瞬間。仁の右手が閃き、レーヴァテインが左中段から右上段へと振り切られた。

 シグルドの首に一本の線が走り、一瞬おくれて真上へ首が跳ね上げられた。

 

「ふん。やっぱり雑魚か」

 

 そういった直後。シグルドの体がエンドフレイムに包まれ、すぐにリメインライトと化した。

 

「そいつに言っておけ。『二度と俺たちに近寄るな。来たら今度は仮想の肉体だけでなく現実の精神を崩してやる』ってな」

 

「え、ちょ」

 

 仁はそれだけ言ってリーファ、シノンの手を取り、塔を上る。もちろん後からキリトもついてきている。

 

 

 

 

 

 

 

「……すまねぇな」

 

「え?」

 

「つい頭に血が昇っちまった。こんな形で領地を出る風にさせちまって、すまねぇ」

 

 リーファはしばらく唖然とした表情で停止していたが、ハッと我に返ったように仁に言う。

 

「いや……いいきっかけだったよ。そろそろ、ここを出る決心を固めるときかなって」

 

「……すまない」

 

「ジンだけが謝る必要はないな。俺も悪ノリしちゃったし」

 

「謝らないでって。……けど、なんでああやって縛ったり縛られたりしたがるのかな……折角、翅があるのにね……」

 

 そのシリアスな雰囲気に入っていったのはユイだ。

 

「フクザツですね。人間は」

 

「ええ。私もそう思うよ」

 

「ヒトを求める心を、あんなふうにややこしく表現する心理は理解できません」

 

「求める……?」

 

「他者のこころを求める衝動が人間の基本的な行動原理だと私は理解しています。ゆえにそれは私のベースメントでもあるのですが、わたしなら……」

 

 キリトの頬に手を添えたユイは、かがみこんだ後に音高くキスをした。

 

「こうします。とてもシンプルで明確です」

 

「人間界はもっとややこしい場所なんだよ。気安くそんな真似をしたらハラスメントでバンされちゃうよ」

 

「手順と様式ってやつですね」

 

「……頼むから変なことは覚えないでくれよ」

 

「す、すごいAIね。プライベートピクシーってみんなそんな感じなの?」

 

「しらん。俺はユイ以外のプレイベートピクシーを見たことがねェからな」

 

「こいつは特に変なんだよ」

 

「仁。単刀直入すぎるわね……」

 

「そ、そうなんだ……人を求める心、かぁ……」

 

 リーファは少し考え込み始めたが、すぐに笑顔になるといった。

 

「さ、そろそろ出発しよっか」

 

「そうだな。行くか」

 

 と、四人が背中の翅をふるわせ、飛び立とうとしたところで気の抜けるような声が響いてきた。

 

「リーファちゃん!」

 

「あ……レコン」

 

「ひ、ひどいよ。一言かけてから出発してもいいじゃない」

 

「ごめーん。忘れてた」

 

「ひでぇなおい」

 

 そういってくくく……と笑い始める仁を横目にレコンが顔を上げる。

 

「リーファちゃん、パーティー抜けたんだって?」

 

 そう切り込んだレコンは、原作通りの言葉の応酬をリーファと始めた。そして最後に――。

 

「キリトさん。ジンさん」

 

「ん?」

 

「なんだ?」

 

「彼女。トラブルに飛び込んでいく癖があるんで、気を付けてくださいね」

 

「あ、ああ。わかった」

 

「そりゃ俺もキリトもだ。心配すんなって」

 

「――それからいっておきますけど彼女は僕のンギャ!」

 

「余計なこと言わなくていいのよ! しばらく中立行にいると思うから、何かあったらメールでね!」

 

 そのあとに二三言葉を交わし、その場に四つの色の軌跡を残し、飛び立った。




あるぇー。前回と終り方ほぼ同じだ―。

仁「というか俺残酷すぎだろ。一瞬で首飛ばすとか」

いや、PoHをヒャッハーした君ならあれくらいしそうだなーって思って。

仁「ヒャッハーってなんだヒャッハーって」

レーヴァテインのエクストラ効果はもうちょっと引き延ばすぜ。

仁「大体予想できるけどなー」

今日は僕の誕生日だぜ! 祈って祈って―ww

仁「祈らんでいい」


 感想指摘、☆評価よろしくお願いします!

仁「次回もよろしくな!」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。