【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO 作:MYON妖夢
彼を最初に待っていたのはキャラ設定だった。新規IDとパスワードの決定。これは前と同じで【Zin】でいいだろうと思いそう入力する。パスワードもしかり。
続けて種族。これは利便性を考えて【インプ】。洞窟でも飛行できる等といったメリットがある。仁はこれじゃユウキとかぶっちまうな。と苦笑しながら決定のボタンを押した。
続けて初期設定を消化していく。最後に検討を祈りますというボイスとともに落下感覚が発生する。
そのままインプなホームタウンへと降り立つ……はずだった彼の体は一瞬空中で停止し、ノイズに飲み込まれた。
「……は?」
そして再び、今度はさらに強い落下感覚が彼を襲った。
「なんでだぁぁぁぁ!?」
彼の悲鳴が鳴り響く空間が彼を虚無へと解き放つとともに消滅した。
「あーなんだってんだ。おい」
そう呟く彼の前に広がる景色はインプ領とは全く違い、すごく明るい印象を与える建物の数々だ。
彼はそのまま回りを見渡す。しかし視界を動かす度に見えてくるのは、耳と尻尾を増やしたプレイヤー達。
「あ? 耳と尻尾……? つーことはここは……」
彼が弾き出した答えはここがケットシー領であるということ。ここは確かサラマンダーくらいしか入国拒否をしていないはずだ。これに応じて取り敢えず歩き回ってみることにした。のだが。
「仁?」
え? と仁が固まった。声は背後から聞こえた。恐る恐る後ろを振り替える。そこにいたのは、水色の髪をした、ショートカットで髪を二房横でまとめてあり、背中に弓、腰に短剣を携えた少女だった。
「仁……なの?」
もう一度聞き直す少女。それに弾かれたように意識を取り戻す仁。
「あ、ああ俺は確かに仁だ。つーか……その髪型と弓は……」
一瞬考えるしぐさを見せる仁だが、すぐに答えを導きだす。
「シノンか!!」
「ご名答。けどなんでこんなところに仁が……? インプ領はもっと遠くのはず……」
「いわゆるバグだな。いきなり画面がぶれてここに投げ出された。って、まて、いまの俺の容姿ってどうなってる?」
シノンは改めて仁の体を上から下までみて、再び顔に視線を戻していった。
「紙の色が紫なこと以外はまんまSAO時代のまま……いわゆるリアルの姿……え?」
「……え? まじかよ。変わってねぇのかよ。こりゃまいった」
仁はそう言うと改めて立ち上がった。
「ちょっと来てくれ。話してぇことがある」
そう言って有無を言わさずシノンの手を掴んだ。
「あっ……」
そしてそのままSAO時代のままのスピードで人の目につかなそうな所にダッシュした。
後ろのシノンが若干顔を赤くしているのにも気づかずに。
「ど、どうしたの、仁」
「いいかシノン。落ち着いて聞いてくれ。まず、ほむらやユウキ。そしてその他にも約三百人が帰還してねぇのは知ってるだろ?」
「う、うん。知ってるわ。けど、それが……?」
「こっからが問題なんだ。恐らくこの世界にその三百人が幽閉されている」
「……え? どういう……」
「この世界を管理してるのはレクト。そしてそのレクトの構成社員の一部が誰にも知られずに三百人を幽閉していると俺は推測した」
「ま、待って! そんな突拍子もなく、証拠もないんでしょ?」
「証拠ならある」
そう言って仁はひとつの画像データをシノンの前に表示した。
「え!? ほむらに……アスナ……?」
「ああ、いきなりこんな話されて混乱すんのもわかる。けど、頼む」
仁は頭を下げつつ言う。
「俺に力を貸してくれ。俺やキリトだけじゃ足りねぇんだ。シノンの力が必要なんだ。……頼む」
シノンは仁のそんな姿を始めてみたことと、この世界の闇に唖然としていたが、数秒でその瞳に力が宿った。
「……正直、今この世界で何が起こっているか、まだよくわからないけど」
シノンは仁をまっすぐに見据える。
「あなたは嘘なんか私達に付かない。ほむらやアスナを救うために私なんかの力が使えるなら……」
そういって、仁のぶら下げられた手をにぎる。
「喜んで奮わせてもらうね。あの世界で得た力を」
「……ありがとな」
そう言って仁は左手を降り下ろす。
「まずはキリトとの連絡。合流。そして武器だ。隠れ名店なんかねぇかな?」
そう仁がキリトにメッセージをうちながら言うと、シノンは迷ったのちに言った。
「名店か知らないけど……誰も近寄らないような場所に一件。プレイヤーメイドの店があったはず。前に道に迷ったときに見かけたんだけど」
「……いってみっか。案内頼む」
キリトへのメッセージを送りおえた仁がシノンに続いてあるきだした。
「ここよ」
「へぇ。いかにもそれっぽい雰囲気あるじゃんか」
仁はその店ののれんをくぐって中に入っていく。なんのためらいもなく入っていった仁を焦って追いかけるシノンの目に飛び込んできたのは、ボロクサイ店の壁に備えられているきらびやかな武器達。恐らくは毎日手入れされているので有ろう剣を仁は眺めている。
「……まさか今さらになって客が来るとはな。もう畳もうと思っていたんたが」
一人の男の声が店の中に響いた。
「おっちゃんか。この店の武器達を鍛え上げたのは
「ああ、そうだ。実際はこんな店だれもこんがな」
そう答える男はレプラコーンの家事職人らしい。
「いいな。よく鍛えられてる。それに手入れも完璧だ」
そう呟いた仁は棚にある人振りの真っ赤な剣が視界に納められている。
「ああ、それは俺が鍛えたんじゃない。手入れはしているがな。ある日、そいつが厄介者だとうちに押し付けられたんだ。それて識別スキルで確認してみたわけだが……」
一泊おいていい放った。
「そいつはレジェンダリーウェポンだよ。ただ、その効果が厄介なんだ」
レジェンダリーウェポンという言葉に二人が目を見開く。さらに主人は続ける。
「装備している間、防御力とHPが三分のニになるんだ。その代わりに強力なエクストラ効果と攻撃力があるけどな」
しばらく唖然としていた仁が口のはしを吊り上げる。
「いいね。気に入った。買おう、いくらだ? おっちゃん」
その言葉に驚いていた主人だが、苦笑しつつ言う。
「金などいらんよ。もう店をたたむのだから」
「俺が払いたいんだ。勝手に払われてろって」
仁は左手をふり、メインメニューを出す。ついでなら文字ばけしたアイテムを処理してしまおうとアイテムストレージを開く。
もともとアイテムが使えなくなることが分かっていた仁はほむらと共にほとんどを売り払っていたため、そんなにアイテムは残っていないが、取り敢えずスクロールしてみる。すると、中に文字化けしていないアイテムがひとつあった。
「……は? なんで……?」
そのアイテムの名は【霊刀・レイゲンノタチ】。彼が鍛えたなかで最高級の一振りでほむらの刀。
実はユイを救ったあのとき、ほむらはユイとともに一回あの場所に残り、ユイに頼んでこの刀を仁にも言わずに干渉を受けないようにロックをかけていたのだ。あのときのほむらはこのような現状になるのをなんとなく感じていたのかもしれない。
しかしその事を知らない仁の頭は盛大に混乱している。シノンに肩を叩かれるまで完全に放心していたほどに。
仁は取り敢えずと右の腰にそれをオブジェクト化し、他をすべてデリートした。その刀をみたシノンが今度はフリーズするのを尻目にSAOクリア時に残っていた金のうち四分の一を支払う。それでも相当な量になるユルドを見た主人が視線をむけてくるが、力強く頷くことで肯定を表す。
「まいど。お前さんの旅に幸あらんことを」
「ああ、おっちゃんも元気でな」
そう言葉を残してフリーズしているシノンの手を引き、その店をたった。
「【炎剣・レーヴァテイン】……これからよろしくな」
レーヴァテインを左腰に吊るし、両腰から伝わる強い重みを感じながら復活したシノンに言う。
「キリトはスイルベーンにいるらしい。こっちから出向いてやろうぜ」
「ええ、けど世界樹にいくならここからのほうが近いよ?
「安全第一、だ。途中で死んだら余計時間ロストだしな」
そう言って仁はシノンに教えてもらったばかりの随意飛行を試す。
「ふっ!」
一瞬の気合いのあと、背中の羽が振動し、宙に体が浮かび上がった。
「さって……いきますか」
「ええ、行きましょう」
そう言って視線を会わせた二人は空に二色の軌跡を描きながらスイルベーンへ飛びたった。
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はい。第四十話終了です。なぜこんなとこに出てきたかと言うと、我がうざったい妹が仁くんの挿し絵を書いてくれたんだよね。そこで張らせてもらおうかなと。
こちらです。
いかが? 感想かいてやると妹うれしがるかもです。
では。
はい。終りました。若干短いですが携帯からなのでご勘弁。
そしてフェアリィダンスのヒロインはぁぁ! シノンだあああああ!!!
仁「テンションたけぇよ」
だね。では。
感想指摘、星評価お願いします!
仁「次回もよろしくな!」