【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO 作:MYON妖夢
あの事件が終わってから、随分と時間がたった。
あの事件とは言わずもがな、SAO事件だ。
俺やキリトやほむら。その他約10000人を巻き込んだSAO事件は死者約2500人で、俺達がゲームマスターである茅場を倒すことで終息した。
いや、したはずだった。
なぜしたはずだったか? 簡単だ。まだ約三百人の目が覚めていないためだ。
その中には、俺の最愛の人――ほむら。そして親友であるユウキも含まれていた。
「……チッ」
正面にある鏡を見る。その中には――
目を赤くした欄間仁。俺の姿があった。
「あーあ。なんだよ、一体」
抑えきれないつぶやきが口から勝手に流れていく。
「……俺って。ほむらがいないだけでこんなにもダメになれるんだな……」
そうつぶやくと、鏡の中の俺の目から再び抑えようもない感情が、熱い液体となって流れでた。
その日の午後はキリト……和人と病院へ行く予定が入っていた。
理由は簡単。いまだ目覚めていないほむらとアスナのお見舞いだ。それぞれ違う病室なため、病院についてからは別行動になるわけだが、結局最後また会うことになる。
そして俺はおそらくだが、この補遺は原作三巻の須郷信之と出会う日であると推測する。ならば次の翌日に、この物語を再び動かすあの出来事が発生するはずだ。
「おーい!」
「ん……おお、和人か」
「そっけないな」
「どーでもいいだろ、んなこと。行こうぜ」
「ああ」
待ち合わせ場所で待っていると和人の声が聞こえたので、返事をするが和人からはそっけなく聞こえたらしい。まぁ、言った通りどうでもいい。そういうことで俺たちは病院行きのバスに乗り込んだ。
「……よう。まだ寝てるのか、この眠り姫は」
俺は眠っているほむらの頬を指先でつんつんとつつく。ナーヴギアによって完全に隔離されているほむらの意識は当然ながら感覚を通さないため、反応は帰ってこない。分かっていたことだが、少し物足りなさを感じる。
「……はぁ。なーんか一人でこんなんやってるとむなしくなってくるな」
そうつぶやき、見舞いの品をとりあえず冷蔵庫に入れ、花瓶の水を入れ替える。
するとすることもなくなってきたので、とりあえずほむらを眺めていることにした。
向こうの世界よりはるかに細くなった腕。そして痩せて肉が削げ落ちている頬。今見えている部分ではそれしか違いは見つからない。
今は普通に眠っているだけに見えても、時間が立ち救出が遅れれば、ほむらの命も危険にさらされる。いや、すでにさらされているといった方が正しいか。
ほむらを眺めていると気づけば集合の時間まであまりなくなっていた。俺は立ち上がりつつ、ユウキの方も見に行くか。とつぶやき、ほむらにささやく。
「……ぜってぇ助け出す。待ってろよ」
そして扉を通り、隣のユウキの病室を見に行った。
「……あ? どうしたよ、和人」
俺が出てみるとすでに、外にいたらしい和人が下を向き、不の感情を吐き出しまくっている。
「…………なんでもない」
「なんでもねーわけねぇだろ。おまえのそんな表情めったに見ねーよ」
「なんでもない」
「話してみろ。アスナの病室で何があった」
「なんでもないっていってるだろ!」
和人が顔を上げ、どなってくる。それにより周りの人たちが驚いた顔でこちらを見てきたが無視する。
「はぁ……お前、俺に心配とか書けたくねェからそう言ってるってんなら大間違いだな。むしろアスナじゃなくおまえの方が心配になってくるっつーの」
「……」
「……」
お互いが沈黙。そのままの状態でしばらくいたが、結局は二人で帰り道を歩いた。しかし終始お互い沈黙を破れなかった。
翌日。俺はある一枚の写真を前に、自宅の床に座り込んでいた。
「ようやく来たか……おせぇよエギル」
そういいながらも俺は自分の口元が緩むのを止めることができない。ようやく来た、ようやくきたんだ。俺はすぐに着替えを用意し、家を出てバス停までダッシュした。
「よう。ギルバード。早速だが説明してもらおうか?」
「来たか。けどちょっと待て、もう一人が来るからよ」
「和人の奴か。昨日は意気消沈してたからいい薬になったんじゃねぇの?」
仁がいい終わると同時、はかったかのように和人が店の中に転がり込んできた。
「おいエギル! あの写真はなんだ! ……と、仁もいるのか……」
和人が仁に申し訳ないような視線を向けてくる。
「なんだよその目は。謝る必要なんざねーぞ。もし俺がお前の立場なら何があったか知らんがおまえがああなるほどだ。俺もああなってたんだろうし」
「……悪いな」
「ん? 何か言ったか?」
和人が顔を上げると、そこには獰猛な笑みを浮かべ、聞いてなかったふりをしているのであろう仁がいた。
「…………悪いな」
和人はもう一度消え入りそうな声で仁に謝罪をした。今度は本当に聞こえなかったようでエギルに視線を戻す。
「……んで、ンジャ改めて説明してもらおうか」
「ああ、それじゃまずはこれを見てくれ」
そういってエギルがとりだしたのは二つのソフトのパッケージ。そのタイトルは――。
「ALfheim Online……アルフヘイム……いや、この場合はアルヴヘイムといった方がいいのか」
仁が言うと、「That's right」と素晴らしい発音でエギルが返答した。
「妖精の国って意味なんだそうだ。ハードはアミュスフィア。俺たちが向こうにいる間に発売された次世代機だな。アルヴヘイム・オンライン自体は一年前くらいに発売されたらしい。知ってるか?」
「……ああ。どっちも知ってる。読み方は今考えた」
「っていうことは、これもVRMMOなのか。妖精の国……まったり系なのか?」
和人がそういうと、エギルはニヤリと笑い言う。
「いや、そういうことでもないらしい。ある意味えらいハードだ」
「ハードって、どういう風に?」
次は仁が答える。
「レベルは存在しねぇ。いわゆるドスキル制だ。PK推奨のプレイヤースキル重視」
「スキルは反復使用で上昇するが、HPは大して上昇しないらしいな。戦闘もプレイヤーの運動能力依存で、ソードスキルなし、魔法ありのSAOみたいなもんだ」
エギルが言うと和人は唖然としつつも言葉を返した。
「へぇ……そりゃすごいな」
以下。ほぼ原作と同じ会話でアルヴヘイム・オンラインのことが説明された。ここでは箇条書きで表記させてもらおう。
・違う種族間ならキル有り。
・飛べる
・仁より、種族を最初に選べる。そして種族によって得意な魔法や武器が違う。
「――まあ、このゲームのことは大体分かった。本題に戻るがあの写真は何なんだ」
「ああ、俺も説明に集中しちまったが、なんだあの写真は。なぜ
そう。その写真にはアスナだけではなく、アスナと同じ格好をしたほむらまでもが写っていた。
エギルがカウンター下から一枚の紙を取り出す。その紙には一枚の写真が印刷されている。
「どうおもう?」
「やっぱり……二人だな。アスナとほむらだ」
「似ている……」
「やはりそう思うか。ゲーム内のスクリーンショットだから解像度が足りないんだけどな」
「早く教えてくれ、これはどこなんだ」
「その中だよ。アルヴヘイム・オンラインの」
続けてエギルが説明する。
「世界樹というんだとさ。プレイヤーの当面の目的はこの樹の上にある城にほかの種族に先駆けて到着することなんだそうだ」
「先に言うが和人。対空制限があるからとんではいけねぇぞ」
「ああ、そういうことだ。そこでどこにも馬鹿なことを考える奴もいたもんで、体格順に五人が肩車してロケット方式で樹の上を目指した」
「はは、なるほどね。馬鹿だけど頭いいな」
「いやどっちだよ」
仁がツッコミを入れるが、華麗にスルーされた。
「それで、目論見は成功。しかしぎりぎりで到着はできなかったらしいが、証拠に写真を撮りまくった。その中の一枚に奇妙なものが写りこんでいた。枝からぶら下がる、巨大な鳥かごがな」
「鳥かご……」
「それで、その写真をぎりぎりまで引き延ばしたのが……この写真ということだな?」
「ああ、そういうことだ」
「でも、このゲームは正規のゲームなんだろ? なんでアスナが……」
和人は原作より少し早めに思考の海に飛び込んでいった。
代わりに仁が行動を起こす。
「エギル。貰ってくぞ。有無はきかん」
「聞く必要もないだろ。もってけ。言っておくがナーヴギアで動くからな」
「ああ、知ってる。情報サンキューな。ごちそーさん」
「必ず二人を助け出せよ。そうじゃなきゃ俺たちのあの事件は終わらねえ」
「ああ。わーってる。いつかここで、オフ会をしよう。キリトのおごりでな」
「おいおい。何勝手に人の金を使おうとしてるんだ。……エギル、俺ももらっていくぞ」
「和人……いや、キリト。向こうで」
「ああ。向こうで」
そういって仁は出て行った。
「さて……行くか」
仁はナーブギアにアルヴヘイム・オンラインのソフトを入れ、かぶった。
「待ってろよ。ほむら、ユウキ。そして……須郷信之。首洗ってまってやがれ」
目をつぶり、現実世界で唯一の魔法を唱える。
「リンクスタート!」
その言葉で彼の意識は妖精郷へといざなわれていった。
はい。皆さん。非常に遅くなってしまい申し訳ありませんでした!
次こそは……
仁「いつもそれいってねぇか」
うるさいな! 頑張るったら頑張るんだ! できれば今日もう一回出せればいいかな?
仁「あっそー」
はやく次回作が書きたいな……。
感想指摘、☆評価よろしくお願いします!
仁「次回もよろしくな!」