【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO 作:MYON妖夢
以前、第一層での隠しダンジョンを攻略してから、数日後。
「……二週間、か。こんなに二週間が早く感じたのは、初めてだよ」
先ほど彼――仁にヒースクリフからのメッセージが来た。内容は第七十五層ボス戦の参加要請だった。
「チッ……今回ばかりは、きついだろうな」
「そうね……あなたの話だと、攻略組のプレイヤーを一撃で屠る両鎌。それに打たれ強さ……どれをとっても最高クラスのボスよ」
そして当然ながらもほむらにもその要請は届いている。
「ああ、けど……勝たなくちゃな。勝って、終わらせる」
「ええ。行きましょう」
二人は呼び出された五十五層主住区『グランザム』の血盟騎士団本部まで転移門経由で向かった。
「偵察隊が、全滅……!?」
キリトの驚く声。無理もないだろう。仁自身も原作知識がなければ同じように驚いていただろうから。
そしてヒースクリフから事のすべてが語られる。偵察隊二十人中十人が先にボス部屋に入り、そしてすぐに扉が閉まった。そして開いたときにはなかには何もいなかったこと。
「チッ、結晶無効化だけじゃなく退路もたたれるってか。冗談じゃねェぞ」
仁がそういうと、ヒースクリフは首を縦に振り、そして言い放った。
「出撃は三時間後。それまでに万全の準備をしておいてくれたまえ」
「え……!? ジン君……何を言っているの?」
アスナが目を見開き驚いた。原因はキリト、アスナ、ほむらの視線が集まっている仁。
「なぁ、どういうことだよ。ジン。なんでアスナに『お前は来るな』だなんて」
その言葉に仁はいつも以上に厳しい目でいいかえす。
「……わからねぇのか。おまえら。……キリト、アスナ。おまえらにはユイがいるだろう」
「あ……」
「本当のことを言うなら、アスナだけじゃなく、キリトにも、ほむらにも、ユウキにもシノンにも来てほしくはない……」
「当り前よ。あなた、一人で行かせたら絶対に無茶するんだから」
「……そういわれると思った。つづけるぞ、けど、お前らはきかねぇだろうからな。……もし、キリトとアスナがこの戦いで死んだとしたら、どうする? ユイは一人になっちまう」
「それは……」
「だからせめて、アスナだけでも残っていてほしいんだ。俺たちやキリトに、もしものことがあった時のために。《神聖術》がない分、厳しい戦いになるだろう。けれどその分、そのあとのことは任せられる」
仁の有無を言わせない言葉。それが単調に紡がれる。その分さらに周りの人物には反論を許さなかった。
「わかってくれ、アスナ。これはお前のためでもあるし、ユイのためでもあるし、キリトのためでもある。アスナが待っていると思えば、キリトも意地でも生き残るだろうよ」
そして仁はいつもの笑みを浮かべる。獰猛で、しかしやわらかい笑みを。
「ヒースクリフにはおれが説明しておく、適当に口実つけてな。ゆっくりとまってな、ぜってぇに勝ってくるからよ。俺は信じなくてもいい、だがキリトは信じてやれるだろう? アスナ」
仁はそう言って、再びヒースクリフがいるであろう団長室にきえていった。
――三時間後――
「おーい! じーん!」
その緊張した場に似合わない、元気な声がその場に響く。その声の主はユウキ。そしてその横にはシノンがいる。
「よう、二人とも」
「久しぶりね」
「うん、久しぶり!」
「今日はよろしく」
各々のあいさつを交わしていく。
「おう! ジンじゃねェか!」
「んあ? ああ、なんだ落ち武者か」
「おおい!? 演技のわりぃこというなよ、これからボス戦なんだぞ!?」
「ハハッ、わりぃわりぃ」
次にやってきたのは全体的に赤い人物、クライン。そして
「よう、ジン」
「ん、エギルか」
続いてエギルがやってきた。二人ともすでにキリトとは会ってきたようでその隣にはキリトがいる。
「ジンさん」
「リリカか。久しぶり」
「お久しぶり、です」
この小説の主要登場人物がほぼそろった。仁はなぜかまた今回も副隊長になっていたため、渋々ヒースクリフに呼ばれて前に出る。
「……みんな、よく集まってくれた」
仁がそう切り出すと、その場が一瞬にして静まり返る。
「今回の戦いは、三つ目のクォーターポイント。つまり相当の強敵が待っているはずだ。みんな怖いだろう。その恐怖に打ち勝ち、ここのボスを負かし、いつかここを出よう! これ以上俺に言えることは何もねぇ……あるとすれば一言。みんな……ぜってぇ生き延びろよ!!」
仁がそう叫ぶと、集まった全プレイヤーが同意の意味で叫ぶ。中には腕を振り上げるものなどもいる。そしてその表情は、恐怖以外の何かが現れている。それは少なくとも、マイナスの表情ではない。
「さて、ヒースクリフ」
「では、行こう」
ヒースクリフがコリドークリスタルを掲げ、発動させる。クリスタルが砕け散ると同時に、その場に渦が発生する。仁は迷わずその中に飛び込む。そしてあとから各プレイヤーたちが飛び込んでいく。
「……流石に、威圧感あるな」
仁が目の前の扉を見上げ、そうつぶやく。そして――
「行くぜ、皆!」
そう叫び、扉を押し開けた。同時に全プレイヤーが中に流れ込む。
しかし――
いない。仁は分かっていたことだったが、周りのモノは戸惑い、焦りを生む。
仁はすぐに索敵スキルでのスキャニングを行う。反応は原作通り上。確認すると同時に周りに叫ぶ。
「上だ! 全員すぐに退避!」
その言葉を聞いたプレイヤーたちが一斉に上を見上げる。そして瞬時にその場から離れ、部屋の隅まで下がる。今回は原作と違い、発見が早かったため、逃げ遅れるものがいなかった。
そしてすぐに何かが落下してくる。それは地面にすべての足をつき、両の鎌を構え、叫ぶ。同時に五段のHPバーと共に名前があらわになる。
《ザ・スカルリーバー》骸骨の狩り手。
ひとしきり叫んだスカルリーバーは部屋の中で一番近いものに狙いを定め、突進した。そのプレイヤーは、仁が名も知らぬ一プレイヤー。
そしてそのプレイヤーはタンクプレイヤー。HP総量と防御力は通常プレイヤーを大きく上回っている。そしてその左手のタワーシールドを前に出し、腰を落とし、ガード体制に入る。同時にスカルリーバーが左の鎌を振り下ろす。だれもが受け切れると思ったその刹那――そのプレイヤーは鎌の勢いを相殺しきれずに吹き飛んだ。
「ッ!」
それを確認した仁は、即時に三本の剣を抜き、フルバーストモードを発動させる。すぐに両の剣から青いエネルギーブレードが噴出し、剣の形をかたどる。
タンクプレイヤーのHPは一気に残り五分の二ほどまで持っていかれた。次はガードしても殺される。だからこそ仁は縮地を使い、最短の距離を自分が出せる最速のスピードで駆け抜ける。
「らぁぁぁあああああ!」
スカルリーバーの追撃がタンクプレイヤーを襲う前に、仁の両手の剣が鎌を受け止める。そして一瞬のためのあとに押し返す。
「さっさと下がって回復しろ!」
「あ、ああ! ありがとう!」
「礼はいいから!」
そのプレイヤーが下がったのを確認した仁は両手の剣を構え直す。
「ヒースクリフ! キリト! それにユウキ! 鎌を頼めるか!」
「任されよう!」
「わかった!」
「やってみるよ!」
仁の言葉に三人がそれぞれ答える。そしてすぐにやってきたヒースクリフが左の鎌を、キリトとユウキが右の鎌を封じる。
「皆! 三人が鎌を抑えてる間に側面から攻撃を重ねろ!」
そう叫んだ仁は全員が反応する前に自分からスカルリーバーに突っ切る。そのままの勢いで突進系二刀流スキル《ダブルサーキュラー》を発動する。その二連撃はスカルリーバーの高い防御力に阻まれろくにダメージが入らない。
「チッ! メイス系装備またはメイス系スキル持ちの奴はいるか! いるならそいつらが主に攻撃、周りの奴らはその援護していけ!」
骨系のモンスターに一番ききやすいのは打撃属性。つまりメイス系装備だ。なので仁はそのメイス系武器持ちが主の攻撃にし、がむしゃらに攻撃するよりもダメージを重ねるようにする。そしてそれ以外の近くにいるプレイヤーが援護に回ることでダメージ効率は少し下がるが、安全は考慮した陣形になる。
仁自身はメイス系のスキルを持っていないし、今回知り合いがそれを持っているわけでもない。だから仁は自分で攻撃をかさねる。
「シノン、リリカ、ほむら。援護を頼む! 行くぞ!」
無言の肯定。ほむらとリリカは仁の少し後ろ、シノンははるか後ろに陣取る。そしてシノンの《エクスプロードアロー》が放たれると同時に仁は思いきり地面をけった。
それを正面から迎え撃つ形でスカルリーバーのとがった足が飛んでくる。しかし仁はそれを見ない。その代りに敵の体の関節に《ヴォ―パルストライク》をたたきこむ。そして後ろにひかれた左の剣が青く光り輝く。片手直剣よん連撃《バーチカル・スクエア》それが《ヴォ―パルストライク》の当たった部分に追撃をかける。
一瞬おくれて飛んできたスカルリーバーの足は仁をつらぬ――かなかった。仁にあたる直前でほむらがその手に握った霊刀・レイゲンノタチで垂直切り上げ刀スキル《浮舟》を発動して弾き飛ばす。
そこにリリカが片手直剣六連撃《ファントム・レイブ》をたたきこむ。
そしてディレイがとけたほむらがその場で一回転。全方位重単発攻撃《大旋風》。そして右に振り切られた刀がライトエフェクトの強さはそのままに光が赤から黄に変わる。同じ軌道を行き来する刀スキル二連撃《斬招》へのスキルチェイン。
そしてさらに後ろからの援護射撃。弓スキル十連撃《ブラッドレイン》その血の色に輝く矢は毒という名の置き土産をボスに残していく。
それを見た攻略組プレイヤーは自分たちよりずっと年下だろう四人のあれほどまでに命を燃やして戦っている姿を見て、触発されない年上はその場にはいなかった。
攻略組プレイヤーが次々と己の攻撃を打ち込む。仁はその様子に片頬をつり上げると、叫んだ。
「さぁ! ヘルタイムのスタートだ!」
(≧∇≦)ノ ハーイ♪、終わりました。明日からおそらく13日くらいまでかけないので、今日投下しました。
仁「なんで?」
ちょっと埼玉に一人旅してくるわ
仁「へー、いってら」
あ、そして、皆さんに感謝の言葉を贈らせていただきます。ほら、仁君も。
仁「へいへい。皆、このSS。お気に入り数300突破だ!」
皆さん。本当にありがとうございます! 皆さんの期待を裏切るわけにはいかない。裏切るつもりにありません!
仁「訳が分からねェ。日本語勉強し直してきたらどうだ?」
感激してるんだよ! 僕みたいな駄作者の文章をこれほどまで多くの人に読んでいただけているんだから!
仁「だろうな。ってことで、こいつはこんな風にダメなやつだが、皆、これからも『転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO』をよろしくな!」
それではみなさん。感想指摘、☆評価よろしくお願いします!
仁「次回からもよろしくな!」