【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO 作:MYON妖夢
ユイが眠った後、彼らは教会に戻り、雑談をしていた。
「チッ、ディアベルがいないのを利用して徴税かよ……キバオウ派ねぇ……」
「ディアベルに連絡をとる?」
「……あぁ、そうだな」
そういい、仁はディアベルにメッセージを送る。その後数分待つと、メッセージが帰ってきた。
『それは本当かい!? くそ……前からキバオウさんたちの様子がおかしいと思ったら、そういうことか。すまない、すぐに行く! あと軍で今動けるのは……それと先にユリエールさんをそっちに送るよ』
と帰ってきた。どうやらすでに会談は終わっていたようだ。それから少し経ち、教会の扉が叩かれた。
「俺が出てくる」
仁がそう言い、扉に向かう。サーシャは念入りに腰につっている短剣に手を添えている。
ガチャ。という音が鳴り、その場の全員が息の飲む。(仁とほむら以外の全員だが)
「よぉ、ユリエールさん」
「ジンさん……ですね?」
「ああ」
そういった仁は教会にいる全員に彼女は大丈夫と告げる。 それから仁はウィンドウを開き何らかの操作を始めた。
ユリエールはプレイヤーたちのもとへとやってくると、言った。
「ディアベルさんから連絡を受けてきました……実は私も彼らの行動のおかしさにはうすうす気づいていたんですが……ついさきほど、連絡が来る少し前にキバオウが行動を起こしたんです」
その言葉が終わるとほぼ同時に仁がウィンドウから顔を上げた。
「……嫌な予感がしてフレンド追跡でシンカーさんを探してたんだが……位置情報は不明……そしてディアベルがいないときにシンカーさんがダンジョンに行くとは考えずらい。このことから推測するに……」
「……その通りです。ジンさん」
「お、おい。ジン……にユリエールさんでよかったよな? 二人ともどういう話を……」
「私たちにも説明してくれない? ジン君」
キリトとアスナが二人の会話の内容が分からないという様子で二人に聞いてくる。
「……ああ、面倒だから簡潔に述べると……キバオウの野郎がシンカーさんをダンジョンの奥深くに閉じ込めた」
「……は? どういう……」
「いやそのままだよ。どこかのダンジョンにコリドーの出口を設定し、放り込んだ。ってことだ」
「ええ……そうです。しかしシンカーはキバオウの丸腰で話し合おうという言葉を真に受けてしまって……」
「何も持って行ってねぇ……と」
「……はい。私……黒鉄宮のシンカーの名前に横線がいつ刻まれるのかと思うと……」
仁がその言葉を遮った
「まぁ、待ってろって。ディアベルもじきに来る。……いやもう来たか」
その言葉と同時に、扉が強くあけられる。
「おいおい。騒々しいぞ、ディアベル」
「ジン君! こんなことがあったのにのんびりとしてなんていられないよ! ユリエールさんからシンカーさんの行方も聞いてるんだ!」
「へぇ……んで、どこだ」
「君も、黒鉄宮の地下に新ダンジョンが解放されたのは、知っているかな?」
「ああ、あれか」
「そこの、ずっと奥の安全地帯だ……しかもその寸前の廊下にはボス級モンスターがいるという噂がある」
「確か難易度は……60層くれぇのモンスターが出るんだったな。なら、俺たちも行けば問題もねェはず」
「お、おいジン! それってまさか……」
キリトが仁に問いかける。そして仁はそこまでですべてわかっているというように、
「ああ? お前たちも行くんだよ」
「……ですよねー」
どうやらキリトたちは強制的につれて行かれるようだ。
「らぁ!」
「だりゃ!」
仁がサクッと切とばし、キリトがふっとばす。二刀流二人による敵の惨殺ショーがディアベルたちの前では行われていた。
「うわぁ……」
「あの、お二人に任せてよかったんでしょうか?」
「いいんですよ。あの二人のあれはもう病気みたいなものですから」
「全面的に同意するわ」
「パパがんばれー」
そのような会話をしていたら殲滅を終えた二人が、肩を回したり、首を鳴らしたりしながら戻ってきた。
「病気とはなんだ、病気とは」
「ま、否定はしねェけどな」
そういって仁は笑う。もはや完全にバトルジャンキーである。
「うーん。特にいいアイテムはでねェな」
「そうか? 俺は一応出てるけど」
「ほう? どんなのだ?」
「こういうの」
そういってキリトがストレージから取り出したのは、スカベンジトードの肉というアイテム。原作で言うカエルの肉だ。そして案の定。
「あ! ァぁぁぁぁぁあああ……」
すべて嫁に捨てられた。
「あえて言おう。あれはぜってぇうまくはねェと」
「食ってみなきゃわからないだろ!」
「なら問うぞ。おまえはリアルでカエルを食ったことがあるのか?」
「……うぷ」
食うのを想像した結果。吐きそうになっている。この世界には嘔吐などというバットステータスはないわけだが。
「俺が言ってるいいアイテムってのはインゴットとか、装備品とかだっつの」
「……それはおれも出てないな」
「なんつーしょっぺぇダンジョンだ」
自分たちよりずいぶん年下だろう少年二人のそのような会話を聞いているユリエールとディアベルは、おそらく同じことを考えていただろう。
(自分たちは年下の彼らにこんな重荷を背負わせていていいのか)
と。
「……反応あり、カーソルはグリーン。……ってこたぁ、あそこってことか」
仁がそう言い、視線をまっすぐ一か所に向ける。そこは――
「シンカー!」
「ッ! 待つんだユリエールさん!」
「ユリエーール!」
一人の男が安全地帯とみられる場所に立っていた。
それを見たユリエールはディアベルの制止を振り切って走りだす。
「チッ……ツッ! やべぇ!」
仁も少し遅れて追いかける。それについていく形でキリトが走る。
仁は追いつくと同時にユリエールの前に出て動きを止めつつ、即座にぬいた剣を前の地面に突き刺しスピードを無理矢理止める。そしてキリトがユリエールを連れてすぐに後ろに下がる。仁も全力で地面をけり、離脱する。
瞬間。三人の目の前を鎌が振り切られた。
「キリトぉ!」
仁が後ろに叫ぶ。
「こいつの強さ、識別系スキルで見てんだろ! こいつの強さは尋常じゃねぇ! ユイやみんなを連れて安全地帯に走れ!」
「ジンは!?」
「俺は……こいつを食い止める!」
「無茶だ! だったら俺も……」
「馬鹿いってんな! レベル的にもこいつの相手はお前じゃきつい。それに誰かがここでこいつを止めてなきゃ全滅だ。安心しとけって、死ぬ気はねェよ」
仁が鬼気迫る表情でキリトに叫ぶ。キリトはしぶしぶ了承したようで、後ろに走った。
「さて、俺が相手してやるよ。さぁ、ヘルタイムのスタートだ!」
相手が降ってきた鎌を両手の剣の強振ではじき返す。グリームアイズ・ザ・ブラッド戦で鎌のことについてはずいぶんと多くのことが分かった。その知識をフル動員させて時間を稼ぐ仁。
「防いでばっかじゃらちが明かねェな……」
しかし威力は以前のそれとは比べ物にならない。防御にすべてを回している仁のHPはわずかながらも削れていっている。
「仕方ねぇ……《クロックダウン》!」
ほむらからコピーしていたクロックダウンで敏捷値を犠牲に、筋力値に敏捷値の半分を上乗せする。
「う……らぁ!」
飛んできた鎌を右のフルスイングで弾き飛ばす。そして左の剣でボス自体を切り裂く。ダメージはさして入っていない。しかしこれの目的は倒すことではなく、足止め。ほんの一瞬のディレイでさえ足止めになる。
「ジン! もういいぞ!」
「やっと、避難したか……ンジャ俺も……ぐあぁ!」
仁にしては珍しい失態。安心が一瞬のすきを生んだ。そのたった一瞬のすきをついて死神の鎌が仁の体をすくい上げる。その体は天井にぶつかり、そして地面にぶつかりバウンドする。
「……ぐ……ぅ……ま、ず……こ、のぉ!」
鎌が再び直撃する寸前で地面を転がり、かわす。そしてすぐに残りHPを横目で確認する。
「……チッ。まずいな……」
仁の残りHPは約五分の二。もう一発食らったら確実に死ぬ。それを理解しながらも立ち上がる。
(エイミーは来たらまずい。ポーションを飲んでも回復が間に合わねぇ。結晶は無効化空間の可能性があるし、出してる暇もねェ。どうする……)
しかし敵は待ってはくれない。すぐに鎌を構え、仁に向かって振り下ろしてくる。
「お……おぉぉぉお!」
全力で《ホリゾンタル・スクエア》を鎌にたたきこむ。それにより鎌が大きく横に振られる。しかし仁は大きく体勢を崩した。そこを見逃す敵ではない。
「チッ……これじゃまどかに怒られちまうじゃねェか……」
仁は覚悟を決めた。しかし次の一撃が仁に降り注ぐことはなかった。代わりにトテトテという軽い足音がその場に響いた。
「ユ……イ?」
よく耳を澄ませば安全地帯のみんなが叫んでいる。しかしそれを意識している暇はなかった。
「逃げ……ろ」
「大丈夫だよ。にぃ」
仁はその言葉を聞き、思い出した。原作でのこの先を。
ユイの体が浮き、ボスの目の前に止まる。次の瞬間、ボスの鎌がユイに向かって振り下ろされる。キリトとアスナが目をつぶった瞬間――。
すさまじい音と共にユイの目の前に紫色の障壁が発生した。
「んな……」
「嘘でしょ……」
目を開けた二人が驚きの声を上げる。そしてすぐに新しい出来事が発生する。
ゴウッ! という音が鳴った。それを確認したときにはユイの両手に炎が集まっていた。それはすぐに剣の形をとり、ボスに振り下ろされる。
強い光に思わず目をつぶり、あけたときにはすでにボスの姿はなかった。
「ユイ……」
「全部、思い出したよ……にぃ」
ユイからすべてが話された。
「MHCP試作一号……ねぇ」
「ええ……だから、この涙も偽物なんです……ごめんなさい。キリトさん、アスナさん、仁さん、ほむらさん」
「いや……だから?」
「え?」
「だからなんだよ。プログラムだから救えない? プログラムだから偽物? プログラムなら愛しちゃいけない? しらねぇよ、んなこと」
「ああ。そうだな。なぁ、ユイ。ユイはどうしたい?」
仁とキリトが言う。すると。
「私は……一緒に、いたいです。パパ、ママ、にぃ、ねぇ」
「よし、よく言った」
仁はそう言い、ユイが起動させたままのシステムコンソールへと歩く。
「にぃ、何を……」
「簡単なことさ。Yuiというデータをカーディナル全体から切り離し、すぐにキリトのナーヴギアに移す。簡単な作業だ」
そう、仁はこの時のためにこの世界ではよりコンピュータ関連について学んだ。(今まで語られてはいないが)
その場にコンソールのホロキーボードを打つ音が妙によく響き渡る。そして。
「良し……一回再起動するぞ。目をつぶれ、ユイ」
「ええ、わかりました」
ユイが目をつぶると同時に、体が薄れていく。そして完全に消滅した後に、逆再生を見ているようにその場に再生成されていく。
「……よし。保存完了。このゲームがクリアするまでは一緒にいられるし、現実でもその気になれば展開できるはずだ……」
「……ありがとうございます。にぃ!」
「礼を言われるようなこたぁしてねェさ」
そういって仁がユイの頭を撫でた。
「サンキュー、ジン。俺じゃどうすることもできなかった……」
「ありがとう、ジン君……」
「だから礼を言われるようなことはしてねェっつの……今何もできなかったんならこれからユイとの思い出をたくさん作っていけ。家族として、な」
「ああ!」
次にほむらがよってきた。
「なんというか……本当にむちゃくちゃというか……」
「はは、そういわれちゃなんもいえね」
「また無茶して……」
ほむらが仁の胸をポカポカと殴る。
「ちょっ、おい……まぁ、いいか」
この世界の消滅は……近い。
終わりました。
仁「ほんとむちゃくちゃだなおい」
いいだろー。ずっと前から考えてたネタだったんだよー。
感想、指摘、☆評価お願いします。
仁「次回もよろしくな!」
P,S GGO編はやらないことにいたしました。 期待していた方々、誠に申し訳ありませんでした。