【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO   作:MYON妖夢

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いやぁ、結構書いてみると進む進む。ということで、書き上げました。


第三十二話 鉄壁の盾と貫く矛

グリームアイズ・ザ・ブラッドを彼らが倒した翌日。仁とほむらは自宅でのんびりと過ごしていた。

 

「へぇ……《一撃必殺スキルで軍を崩壊させた赤い悪魔。そしてそれを屠った新たなる二刀流保持者の五十連撃といまだに力を残していた旋風の無限乱舞》……ね。盛りすぎだろ……無限ってなんだよ」

 

「キリトの方も五十連撃はないわね……。というか軍も崩壊していないし」

 

 本来ならばキリトVSヒースクリフの試合が決定する日であるが、彼らはそんなことはどこ吹く風といった様子だった。

 

「あ、そういや昨日のボス戦で剣の耐久結構減ってたんだわ。ちょいリズのとこで直してもらってくっか」

 

「ええ、私のもやってもらいましょう」

 

 と、そういい、玄関から外に出ようとした……のだが。

 

「ジンさん! ぜひ昨日の戦いの感想を!」

 

「どわ!?」

 

 外にあふれるほどにたまっている新聞屋のプレイヤーたちに驚き、反射的にドアを壊れるほどの勢いで閉めた仁だった。

 

「……ああ、そうだった。この世界の新聞屋はこういうスクープとるのに全力尽くしてんだった……」

 

 そうつぶやく。家は音を遮断するようになっているから気が付かなかったらしい。

 

「と、なるとどうするかねェ。玄関は埋め尽くされてて犯罪防止コードで妨害されて通れねェし、どうせこの感じじゃ、裏口もアウトだろうなぁ」

 

 と、渋々といった様子で腰のポーチから転移結晶を取り出した。

 

「しょうがねえ……この状態じゃ家から出るにもでれねぇしな」

 

「確かに、それしかないわね……」

 

「「転移! リンダース!」」

 

 二人の姿は少しのラグのあとにその場から青い光を残して消えた。

 

 

 

 

 

――リンダース――

 

「ホント、ご苦労さんって一言よね。あんたたちって」

 

「……どういう意味だよそりゃぁ。とりあえず研磨頼む」

 

「私のもお願い」

 

「ハイハイ……。って、これどれだけ無茶な使い方してんのよ、特にジン。かなりギリギリよ、これ」

 

「わかってるよ、んなこと。さっさと頼むよホント。ここも嗅ぎ付けられちゃたまったもんじゃねェだろ?」

 

 仁がそういうと、リズはうげぇっという表情で作業室へ消えていった。

 

 

 

――数分後――

 

「はい、これで大丈夫なはずよ。ケドまたこんな感じで無茶したら持たないと思うけど」

 

「ボス戦は無茶の連続なんだよ。こんなん日常茶飯事だ」

 

「そうね。特に昨日のボス戦は厳しかったし……」

 

「はいはい、聞いてたら長くなりそうだからここで止めてねー。まいどー」

 

「適当なこって」

 

 仁とほむらは店長に見送られながら店を出た。のだが。

 

「まだ何か力を隠し持ってるんですか!?」

 

「またかぁああああ!」

 

 やはり嗅ぎ付けられていた。

 仁はほむらの手を取り、敏捷値全開でぎりぎり通れそうな穴を駆け抜け、転移門へと走った。

 

 

 

 

 

 

「それで、今ここにいる。と」

 

「ああ、すまねぇエギル。チョイかくまってくれ」

 

「いや、それはいいけどよ。おまえらの思考回路は同じなのかおい?」

 

「ん?」

 

「さっきまでキリトが居たんでね。そういうことだ」

 

「なーる」

 

 そんな軽口をかわしていたら、その場にもう一人プレイヤーが現れた。

 

「号外でーす。今回は無料で配布していまーす」

 

 店に入るとともに一つの紙の束をエギルの店のカウンターに置き、すぐに去って行った新聞屋のプレイヤー。そしてそれをエギルが手に取り、読み始めた。

 

「ん、おお!」

 

「あ? どうした? なんかすげェことでもあったのか?」

 

 エギルが仁の眼前にその新聞の一記事を指さしながら突き出した。

 

「えーと、《黒の剣士キリトと生ける伝説ヒースクリフ。そして黒の旋風がデュエル》?……って、なんだこりゃぁ!」

 

 どうやら巻き込まれてしまったらしい仁だった。

 

「あんのやろお……巻き込みやがったなぁ……! あとでブッコロス!」

 

「落ち着きなさいよ、仁。とりあえずヒースクリフ戦への作戦を……」

 

「ほむらは冷静すぎるだろ……。はぁ、けど一理ある。か」

 

 そう言っていたとき。再びエギルの店の扉が開かれた。

 

「よう、ジン。大変なことになったみたいなんだけど……」

 

「ぜんぶてめぇのせいでなぁ! キリトぉぉぉおお!」

 

「だから落ち着きなさいって……」

 

 すでにほむらのことが耳に入っていない仁。というかキリトの横にいるアスナの姿はすでに眼中にも入っていない様子だった。

 現在の少々小柄な体でキリトを見上げるようにしながらキリトの胸ぐらをつかみあげて仁は続けた。

 

「ナァァンで俺を巻き込むンですかァァ!? キリトクゥゥンン!?」

 

「ちょっ、とり、あえず、おち、つけ! そしてこの揺すぶるのを、やめろ!」

 

 前後に全力を持ってキリトをゆする仁。キリトはそれが言葉では終わらないと知り、引きはがそうとするが、仁の腕はどういうことか離れない。

 いいかげん気持ち悪くなってきたキリトは、とんでもない目つきでにらまれるとともに解放された。

 

「うう……気持ちわりぃ……」

 

「自業自得だ! で? なんで俺を巻き込んだんだ?」

 

「しょ、しょうがないだろ……つい売り言葉に買い言葉で……」

 

「ブッタギル!」

 

「まて! まずその右手の剣はいつどうやって出したんだ!? 落ち、落ち着けって!」

 

「シネゴラァあああ!」

 

「ぎゃぁあああ! ちょっ、ほむら! アスナ! エギル! 誰か助けてくれえええええ!」

 

 その二つ名の通り、旋風のごとしスピードでキリトは金色に輝く剣によって永遠のノックバックを味わう羽目となった。そしてその場にいた第三者すべての意見は

 

(((((((まぁ、自業自得だし。しょうがないか)))))))

 

 だった。実に薄情である。

 

 

 

 

――翌日――

 

「ったく、キリトの奴。まさか俺までここで戦うことになるなんてよ……」

 

「いいように考えたらここであなたの実力を再認識させておくという感じで戦えばいいじゃない」

 

「まぁ、そうだけどよぉ。一応戦略練ってきたし」

 

「ならなおさら戦うしかないじゃない」

 

「だよな……」

 

 彼らは現在控室にて、外のはちきれんばかりの歓声を聞きながら準備を整えていた。

 

「さて、そろそろキリトの試合か? 結果は知ってるからとくに見ねェけど」

 

「見ないのね」

 

「ああ、とりあえずイメージトレーニングも大事ってな。ここで奴に、“俺にはオーバーアシストはきかない”という認識を持たせれば、最終決戦の時にも楽になるだろうしな」

 

 そう。今回仁は、茅場明彦にオーバーアシストをわざと使わせ、そしてその上を行くという、原作知識なしではできない。彼とほむら特有の戦い方を仕掛けてみようとしていた。

 その時。外からすさまじいほどの歓声と剣を打ち合う金属音が二人の耳に届いた。

 

「に、しても。俺が負けても血盟騎士団入りかよ。冗談じゃねぇ」

 

「そう言ってるわりには、ずいぶんと楽しそうな顔してるけど?」

 

 ほむらがクスリと笑いながら仁を指摘する。それに対して仁は

 

「いいだろ。PoH以来だよ、人間と本気の殺し合いをするのはさ。本気で剣を交える。それだけでも俺は楽しく感じれるんだからよ」

 

「バトルジャンキーね」

 

「否定はしねーよ」

 

 そんな軽口をたたきあっていたが、すぐに変化は訪れる。

 

「ジンさん! 準備に入ってください! 入場です!」

 

「なんだよ。キリトの奴もう負けたのかぁ?」

 

 そういう陣の顔は、すでに戦う時の真剣そのものの顔だった。

 

 

 

 

 

 

「君とも、初めて剣を交えることになるのかな。ジン君」

 

「ああ、そうだな。お手並み拝見と行こうか」

 

「それはこちらのセリフだよ。キリト君には悪いが、観客もみな君とのカードを見たがっているようだしね」

 

「そりゃどーも。どっちにしても、俺は全力でぶつかるだけだよ」

 

 そう言い合ってから、ヒースクリフがウィンドウを操作し始めた。すぐに陣の目の前には【ヒースクリフから一対一デュエルを挑まれました。承諾しますか?】という文字が浮かんだ。当然yes。それをタップした瞬間。二人の間にカウントダウンの数字を示す巨大なウィンドウが出現した。

 仁は背中と右腰の金色に輝く剣を抜きだした。大してヒースクリフも盾の後ろから剣を引き抜く。

 その瞬間は会場のものすべてが思っていたよりも遅く感じた。一秒一秒が途方もない長さに会場のものすべて――いや、仁とヒースクリフ以外は感じていた。

 対してその二人は、逆にその秒刻みが早く感じた。それは恐怖の影響ではなく、より強いものと戦えるというゲーマーとして、そして一人の剣士としての喜びから来るものだった。

 その場に【DUEL!】という文字がはじける。同時に走り出した仁の剣から青色のエネルギーブレードが噴出される。

 

(まずは小手調べだ。小さめの攻撃から重ねていく!)

 

 仁はいつものような豪快なソードスキルを使ったラッシュではなく、通常攻撃をコツコツとつなげるという、彼らしくない攻撃方法に打って出た。

 その両の剣は、青い残像を残しながらヒースクリフの盾を削り、火花を散らす。ソードスキルを使っていないというのに、キリト以上の速度を持つ今の彼の集中力は、あのワルプルギスの夜との戦いの時のように鋭く、とがっていく。

 

「ぐっ……ぬぅ」

 

「らぁあああああ!」

 

 はたから見るとヒースクリフの方が劣勢に見えるが、ヒースクリフは陣の二つ名通りの旋風のごとき連続攻撃を、すべて盾ではじいているのだ。彼も並のプレイヤーではない。さすがは伝説と呼ばれているだけはある。

 ふいにヒースクリフの剣が光り始めた。今まで仁もあまり見たことのないヒースクリフのソードスキル。神聖剣二連撃《ディバイン・クロス》その名の通り、十字に前方を切り裂く技だ。仁はそれを冷静にバックステップすることで回避した。

 

「……流石というべきなんだろうな。速すぎる。キリト君よりも圧倒的に」

 

「へっ! てめぇも硬すぎんだよ。その盾防御力と耐久値どうなってやがんだ……か!」

 

 語尾を強めるとともに前方に再び仁がダッシュした。しかしそのダッシュは先ほどまでの通常のダッシュではなく、《縮地》。

 会場のずいぶん離れてみている観客でもその仁の姿はとらえられない。それほどまでに仁の心意は鍛えられている。

 

「行くぜ……《奪命撃》!」

 

 仁の左の剣から伸びる紫の閃光がヒースクリフへと一直線に向かっていく。ヒースクリフはそれをあわてることなく盾でガードする。が、その盾の膨大な防御力をかすかに上回った奪命撃は、ヒースクリフへとわずかにダメージを通した。

 

「ぬっ!」

 

「らぁ!」

 

 仁はその隙に一気に距離を詰めた。両の剣が同時に光り輝いた。その光は二刀流最高剣術《ジ・イクリプス》の輝き――。

 ヒースクリフはそれに対し、ついに防御に剣をも回した。全方向から飛んでくる刃の暴風を盾と剣両方使い、捌く。しかしヒースクリフは自覚していた。このままではらちが明かない。そう思い、禁断のオーバーアシストをもう一度使ってしまう。

 仁から見れば、ヒースクリフの盾が大きく上に跳ね上げられ、チャンスに見えた。しかし彼は知っている。そのあとシステムの枠を超えたものが来ることを、だからその一瞬の刹那、スキルを無理矢理キャンセルした。

 瞬間、時間が盗まれた。ヒースクリフの腕がありえないスピードで仁の次の攻撃が来るはず(・・・・)だった場所へと動く。ヒースクリフはココで仁がスキルを止めたことに驚愕し、顔が驚きに染まる。

 本来、ここでピンチなのは仁の方だ。普通ならばスキルディレイで動けないのだから。しかし彼は例外だ。

 

「これで……終わりだ!」

 

 ディレイブレイク。それによってディレイを破壊し、左の剣でヒースクリフの脇腹を切り裂いた。

 同時に仁の勝利を移すウィンドウが上空に表示され、その場から一瞬おくれて歓声が響き渡った。




はい、終わりました。かれには勝たせました。負けて血盟騎士団に入るというのは、書くのが少々厄介なことになりそうだと、頭の中の構想で行きたったので。

仁「適当だなおい」

つべこべ言わないでよ。かったんだからいいいだろー

仁「……めんどい」

はい、感想指摘、☆評価待ってます!

仁「次回もよろしくな!」

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