【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO   作:MYON妖夢

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はい、今回第三者目線で書いてみました


第三十話 血に輝く目

「コーバッツ! 軍を率いて背中に回れ! キリト! クラインやアスナ達と一緒に左右に旋回! 俺たちは正面からタゲをとるぞ!」

 

 仁が皆に命令を出す。それに対してそれぞれが肯定の意を返してくる。

 

(こいつの攻撃パターンは両手剣での攻撃、そしてダメージ判定のあるブレス・・・・・・だったな。ブレスにさえ気を付ければ……)

 

 仁はそう考えながら前に走り出す。同時にグリームアイズが上体を一瞬大きく後ろにそらす。彼ら攻略組プレイヤーなら必ず一度は見たことのあるだろう、ブレスのプレモーション。

 

「ブレスよ! 避けて!」

 

 ほむらが叫ぶ。同時にキリトはアスナ、仁はほむら、ユウキはシノンを背中に回し、《スピニングシールド》を発動する。一方軍は背中に回っているためブレスの対象にはならない。ダメージを着々と重ねていった。

 

(どうする……いくら偵察戦とはいえ、この人数はどちらにしても厳しい。『ダ-クリパルサー』を抜くべきか……?)

 

 キリトは一人で葛藤する。しかしそれに気づく者はいない。一方。

 

(せめて団長がいてくれれば……あの程度の両手剣ははじき返せるのに……!)

 

 アスナはないものねだり、しかし腹をくくったのだろう。キリトと別れ、左に回り込む。

 

「はぁぁぁ!」

 

 アスナの代名詞といえる、初期のころからお世話になってきた《リニアー》。その威力とスピードはキリトがよく知っている。そしてそれを一番信じて放てるのは、本人であるアスナだけだ。

 そして前から危険を冒してまで、タゲを取り続ける仁たち。あの四人のおかげでアスナもキリトも、そして軍もソードスキルを心置きなく放てる。

 

「おおぉぉぉぉおおおお!」

 

 仁が《バーチカル・スクエア》を打ち込む。そこでスキルディレイが発生する。しかしその間を埋めるようにほむらとユウキがボスに切り込む。ほむらは仁と長年戦ってきた。だからタイミングがとれる。しかしユウキは、天才というほかないだろう。

 

「せえりゃあぁ!」

 

 クラインはキリトとのスイッチで連続での攻撃を繰り返す。

 すべては順調に見えた――しかし。

 

「ッ! まずい皆! 全範囲攻撃だ!」

 

 仁はここで想定していなかったことが起こったと悟る。原作ではキリトがすぐに倒してしまった。なのでグリームアイズの残りHPの減りによる、変化が何もわからないのを、失念していた。

 

(くそっ! また俺の読み違いが……!)

 

 まず最初に当たるのは仁。ならまずは自分が威力を相殺する。そう決め、仁が強く地面を踏みしめる。

 次の瞬間。体いっぱいにひねった状態からの全範囲薙ぎ払いが放たれる。

 

「だぁぁりゃぁあああ!」

 

 それを真正面から迎え撃つ。二刀流突進系ソードスキル《ダブルサーキュラー》。

 一瞬で放たれる二連続の刃が相手の大きすぎる剣を受け止める。その状態のまま思いきり力をこめ、全力を使い、ボスの剣を食い止める。

 そして仁が食い止めている間、ただ見ているだけの薄情なやつはこの場に一人もいない。それぞれがそれぞれの持てる最大の技を打ち込む。

 ボスが野太い悲鳴を上げる。同時に仁がボスの剣を押し返す。その時点で残りHPは2段目を切った。

 

(変化はなし……押し切れるか……?)

 

 このボスの特徴はHPと防御力の低さ。そして攻撃力の高さだ。それを知っている仁は一気に押し切ることを選んだ。

 二刀流最高剣技《ジ・イクリプス》

 

「う……おおっ!」

 

 そしてほむらは仁がそう出るのをわかっていたかのように愛用の剣【霊刀・レイゲンノタチ】――ボスドロップの剣をさらに仁が全身全霊で鍛え上げたユニーク武器――を構え、仁へのボスの攻撃をはじき返す。そのまま返す刀でボスの左わき腹から右肩までにかけてその刀を振りぬく。そしてその斬られた部分は――

 ――凍りだす。

 これこそが【霊刀・レイゲンノタチ】エクストラ効果。《絶対零度》。

 その効果は切った部分を凍らせ、行動を遅延させるというものだ。今回もその例にもれず、右肩を凍らせたことで仁への攻撃がさらに遅延される。

 

「うおおぉああああ!」

 

 最後の二十七連撃目が突き刺さる。それによりただでさえ減っていたグリームアイズのHPは完全に0になった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「お疲れ様。仁」

 

「ああ……サンキュ」

 

 礼を言う仁。しかし何かが引っ掛かっている。

 

「おいキリト」

 

「なんだジン?」

 

「おかしいとは思わないか」

 

 仁はある一点を指さす。そこにあるのは――。

 

「……は?」

 

 ――爆散せずに、屍と武器が残ったままのボスの死骸だった。

 現在、このボスフロアにいるほとんどの人間が歓喜していた。無事に誰も殺さずにボス戦を切り抜けることができた。と。しかし――

 

「まさか……」

 

 仁とキリトが目にしたのは、鎌へと変化していく両手剣。そして赤く染まっていくグリームアイズの死骸だった。

 

「皆! にげろぉ! おわってねえ!」

 

 仁が叫ぶと同時に、グリームアイズの体が赤く染まり切り、その手には鎌が握られる。ワンテンポ遅れてコーバッツたちやクラインたちが反応する。しかしもう、遅い。

 

「グルラァアア!」

 

「うわああぁあああ!」

 

 

 鎌が血の色のエフェクトをまとい、軍の一人を切り裂く。その全開だったHPは一気に注意域まで減り、紅く染まり、そして――

 

 ―-0になった。

 

 ガラスの破砕音とボスの雄たけびが重なる。仁はそんな中考えていた。

 

(一発……だと!? ありえねぇ。ここはクォーターポイントでもねぇのに……)

 

 自問自答をしながら彼は《ドッペルゲンガー》を発動させ、ボスのスキルの解析を始めた。

 

 使用スキル名《鎌》 使用者《グリームアイズ・ザ・ブラッド》

 使用ソードスキル《ライフリーバー》。コピー不可。

 

 そこまではよかった。しかし、その先には絶望が待っていた。

 

 一撃必殺スキル

 

「……は?」

 

 その文字を目に入れた瞬間。仁は一瞬思考が停止した。

 一撃必殺スキル? あの攻撃一発で人が死ぬ? 馬鹿な。ありえない。

 そんな言葉が頭中を回り続ける。その間にも軍のメンバーが文字通り狩られていく。

 

「うぁああああ!」

 

「いやだ! 死にたくないぃぃい……!」

 

 その叫び声を聞いてようやく我に返る仁。

 

「ッ! みんなァ! ぜってぇ奴の攻撃に当たるな! 一撃必殺系スキルだ!」

 

 そう叫ぶと同時、また一人、軍のプレイヤーの命が尽きた。

 

「コーバッツ!」

 

「ッ・・・・・・なんだ!」

 

「今すぐに軍の連中連れて脱出しろ……時間は稼ぐ」

 

「しかし……」

 

「いいから早く! これ以上犠牲者を増やすな! 生きて帰ってディアベルにこのことを伝えろ! そんで援軍連れてこい! それまで耐えててやるからよ……!」

 

 いつの間にか後ろのボス部屋の扉が閉まろうとしている。今閉まればおそらく外からしか開けられないのだろう。

 コーバッツはそんな閉まりそうな扉と仁を交互に見やる。どうすればいいのか迷っているのがわかりやすい。

 

「早くしろ! あれが閉まったらここはおそらく結晶も使えなくなる。転移結晶で脱出するんだ!」

 

 コーバッツはついに踏ん切りをつけた。そして叫ぶ。

 

「軍のものよ! すぐに転移結晶で脱出するのだ! そしてディアベルさんたちを連れて戻ってくるぞ!」

 

 そういって始まりの街に転移していく。

 

「さて……こっから数時間……お前の相手をしてやるよ」

 

 ボス――グリームアイズ・ザ・ブラッドにそういい、仁がいったんトマホークを背中におさめる。

 

「けど……さすがに出し惜しみをしてる場合じゃねぇやな」

 

 両腰の二刀を引き抜き、かさねあわせる。すると二本の剣は一つの剣となり、二つの刃がついた剣になる。続いてそれを左手に持ち替え、トマホークをもう一度引き抜く。

 

「行くぜ……フルバーストモード!」

 

 トマホークの中心から出ている一本の刃が剣に収納され、横の小さな刃が逆に上に出ていく。そして入手した当時の形――ふたつの刃がついた剣に戻る。

 さらに、変化は続いた。その二本の剣の二つの刃の間から、エネルギーの塊が噴出される。それはすぐにするどい刃の形へと変わっていく。

 

「さぁ、ヘルタイムのスタートだ!」

 

 そのクリアブルーに輝くエネルギーブレードをボスが振った鎌にたたきつける。

 

「ほむら! キリト! クライン! ユウキ!」

 

 四人が同時に飛び出し、硬直状態のボスの体を切り刻み、離れる。さらにシノンが弓による射撃で正確に四人が当てた部分に一矢一矢を当てていく。

 

「グラァ!」

 

 ボスは鎌を横なぎに振るう。それは範囲攻撃《デスサイス》。自身を一回転させ、全方位を刈り取るスキルだ。

 

「システムコール! ジェネレート・クライオゼニック・エレメント! フォームエレメント・ラージアロー・シェイプ・フライ・ストレート・ディスチャージ!」

 

 アスナがそれを氷の弓の神聖術によって受け止める。それを仁が両のエネルギーブレードを大きく振りかぶり、思いきりあてる。それによって鎌が吹き飛び、一時的な硬直時間が生まれる。

 

「いけぇ!」

 

「システムコール・ジェネレート・サーマル・エレメント・フォームエレメント・バード・シェイプ・ディスチャージ!」

 

 アスナの炎の鳥がボスに向かって飛び立つと同時、ほむらがボスを背後から切りつけ、さらにディレイさせる。そこにキリトが踏込み、ついに抜いた『ダークリパルサー』をボスに向かって振りぬく。キリトの一撃が入った次の瞬間、ボスの体に炎の鳥が合計十羽辺り、その表皮を焦がす。

 

「キリト!」

 

「ああ!」

 

 仁がキリトに呼びかける。それだけで意思疎通をするこの世界で初めてであった二人。そこから太陽コロナのような連撃がふたつ生まれる。

 《ジ・イクリプス》。その二十七連撃、二刀流最高剣技が同時に二つ発動され、ボスの体を切り刻む。その一撃が入るたびに五段あるボスのHPが微弱なりとも減っていく。

 

「うらぁ!」

 

「せああぁ!」

 

 二人の連撃が同時に終わる。そこに。

 

「せぇりゃぁあああ!」

 

「やあぁああああ!」

 

 クラインの一撃。そしてユウキの《マザーズロザリオ》十一連撃が叩き込まれる。さらにはディレイが解けた仁もユウキのマザーズロザリオをコピーし、放つ。

 

「チッ!」

 

 しかしここまでしてもボスのHPの一段目が削り切れるかどうかまで、やはり人数が足りないようだ。

 そんな仁の思考を世界が読み取ったかのようなタイミングだった。

 

「すまない! 遅くなった!」

 

 援軍が到着した。




はい、終わりました。
 仁君の剣の変化。そしてキリトがついに抜いた二刀流。ああ、疲れた。
 っていうか三人称難しいんですねぇ。皆さん。三人称と仁目線。どちらがいいか聞かせてください、次回からどちらがいいかを感想につけて教えていただけると幸いです。
 では、感想、指摘、☆評価よろしくお願いします!

仁「次もよろしく!」

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