【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO   作:MYON妖夢

42 / 71
はい、はじまります


第二十七話 奇跡と怒り

  ――ほむらside――

 

 仁が死んだ。

 その事実は私に重くのしかかる。心のどこかでは仁が死ぬなんてありえない。という思考が永遠とぐるぐるとまわり続けている。

 けど、仁が死んだ。それは紛れもない現実。仁はたった今自分の心臓を刺してHPを0にしてこの世界から、敷いては現実世界からも永遠退場した。攻略組トッププレイヤーであって、転生者である彼もシステムという壁は突き破れなかった。

 それを私は認識した。いや、してしまった。

 

「あああぁっぁぁああああぁああああ!!」

 

 その時私の中で何かが壊れた。各時間軸でまどかが死んだ時ですら感じなかったもの。心に穴がぽっかり空いてしまったかのような喪失感が私を襲う。

 こんなものに耐えられない。耐えられるわけがない。ならば――

 

 私も最愛の人の後を追おう。彼を殺した原因となるここのボスを殺し、そして私も死のう。

 そう決意した私は足元もおぼつかない状態で立ち上がる。そして走り――出そうとしたその瞬間。

 

「……行かせないぞ。ほむら」

 

 私たちのよく知る。このSAO内での最初の友人が前を塞いだ。

 

「……どきなさい。キリト」

 

「だめだ。ジンの後を追うつもりなんだろうけど……絶対に行かせない」

 

 私は最大限の殺意をはらんだ瞳でキリトを見据える。それにキリトは一瞬表情を変えるが退きはしない。

 

「……どきなさいって、言ってるでしょう。キリト、私の手がこれを抜く前に退いて。私もあなたを殺したくはない」

 

 私の手は自然と腰に下がっているかたなに伸びていく。

 

「退かない。俺は――」

 

 キリトが言葉をつなげようとした時だった。

 

「こいつを使いやがれぇ! キリトォ!」

 

 その声が響いた。

 

 

  ――ほむらsideout――

 

  ――キリトside――

 

 ジンが死んだ、それも俺の目の前で。

 ほむらは叫び、アスナは力なく膝から崩れ落ちる。ユウキとシノンはまるで何が起こっているのかわからないというかのように硬直している。クラインはなぜか腕をせわしなく動かしている。

 俺はこの場合にするべき行動を知らない。泣くなどということは自分で覚悟をもって逝ったジンも望んでいない。

 彼は俺にほむらの命を託し、ここのボスを倒せという意思を俺たちに伝え、逝った。ならば俺たちもそれにこたえるべきだ。

 その結論にたどり着いた俺は《エリュシデータ》を握りしめ、ボスをしっかりと見据える。しかしその視線はすぐに別のところに動く。

 なぜならほむらがフラリという効果音がよく似合いそうな感じで立ち上がり、ボスに向かって単独で走ろうとしていたからだ。

 俺はすぐにほむらのところへ走った。ほむらを死なせるわけにはいかない。

 

「……行かせないぞ。ほむら」

 

 ほむらは特に驚いたようにも見えないように俺を見据える。

 

「……どきなさい。キリト」

 

「だめだ。ジンの後を追うつもりなんだろうけど……絶対に行かせない」

 

 俺がそれを言った途端にほむらの普段は温厚な感じの瞳が一気に鋭くなる。今までにないほどの殺意を俺は感じ、一瞬後ずさってしまった。その気迫はまるで経験値の鬼と化していたころのアスナと同等……いや、圧倒的にほむらのほうが強い。

 しかし俺はジンにほむらを託されてるんだ。絶対に死なせるわけにはいかない。それこそジンの思いを踏みにじることになってしまう。

 

「……どきなさいって、言ってるでしょう。キリト、私の手がこれを抜く前に退いて。私もあなたを殺したくはない」

 

「退かない。俺は――」

 

 俺が言葉をつなげようとしたときに、その声は鳴り響いた。

 

「こいつを使いやがれぇ! キリトォ!」

 

 その声の主は、俺もよく知る友人。クラインのものだった。

 そのクラインの手からは何か結晶体のものがほうられた。俺はそれを反射的に左手でキャッチする。それは――。

 

「これはっ……!」

 

「早くしろぉ! 手遅れになんぞ!」

 

 俺はクラインの言葉にすぐに我に戻る。そして叫ぶ。

 

()()! ジン!」

 

 俺の手にあったもの。それは還魂の聖晶石だった。

 

 

  ――キリトsideout――

 

  ――仁side――

 

「ん……ここは……」

 

 俺が目を開けるとそこに広がっているのは真っ白い空間。過去二回ほど見たことのあるそのデザインの部屋は――。

 

「よう、久しぶりだな。神さんよ」

 

 俺を二度転生させた神さんの部屋だった。

 

「久しぶりじゃのう。仁よ」

 

「久しぶり! 仁君!」

 

「って……はぁ!?」

 

 前回はいなかったものが一人追加されてるんだが!?

 

「どうしたの?」

 

 その人物はきょとんとした表情で俺を見下ろす。その背中に生えた二翼の翼が勢いよく空気をたたき、空中にホバリングしている。

 

「……なぁーんでお前がいるんだ……“()()()”」

 

 そう、その人物は俺が前世で何度も顔を見ている。鹿目まどか本人だった。

 

「なんでって言われても……私は仁君の時間軸の鹿目まどかじゃないからね」

 

「ほぉう。つまりお前はほむらの思いを踏みにじってまで神さまに昇華した時間軸のまど神か」

 

「ひどいいいようだね!?」

 

「そりゃそうだろ……あのシーンは何度見ても納得しがたいんだが」

 

 ま、こんな話はここまでにしよう。

 

「……俺、死んだんだなぁ」

 

「確かに死んだ」

 

「うん、死んだね」

 

 万場一致で死にましたー。って馬鹿か!

 

「……ほむら、残してきちまったなぁ……」

 

「その点は心配するな」

 

「なぜに」

 

「お前の生はまだ終わってはいないということじゃ」

 

「まぁ、二回終わってるんだけどね」

 

 苦笑しながらまどかが言う。なんかひでぇ。ぜってぇ神様になってから性格曲がったろ。

 

「って待て。それはいったいどういう――」

 

「行って来い。仁よ。あの世界を救いに」

 

「次はほむらちゃんと一緒に来ないと怒るからねぇ~」

 

 俺はこの二人にツッコみを入れる前に意識が遠のいていった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

「ん……あー。戻ったか」

 

 俺は意識を取り戻し、目を開けるとそれは少し前までいたボス部屋だった。俺の視界の先ではキリトとほむらが向かい合う形で立っている。

 

「……え? 仁? 仁なのよね」

 

「ん、ああ。俺だ。間違いなく仁だ――ぐぉっ!」

 

 俺が言葉を言い終わった次の瞬間に一瞬俺は架空の空気を吸えなくなった。視界を下に下げるとほむらが俺の胸に飛び込んできた状態になっている。

 

「……キリト、こりゃ一体どうなってこうなったんだ」

 

「……生き返ったんだよ」

 

 簡素な答えありがとうございましたー。

 

「そっか。サンキュ」

 

「礼ならクラインに行ってくれ。あいつのおかげだ」

 

 そういってキリトは親指でクラインをしめす。クラインはガッツポーズで俺を迎えてくれた。

 つまり、還魂の聖晶石か。

 

「サンキューな! クライン!」

 

「おうよ! 礼なんかいらねぇって! 俺とお前の仲だろ!」

 

 俺はクラインに歩み寄り。

 

「ンジャ……こうしよう」

 

 俺は拳を前方に突き出しながら続ける。

 

「……この恩はいつか必ず――」

 

「「精神的に!」」

 

 そしてクラインの拳のおれの拳がぶつかり合う。俺とクラインはお互い苦笑する。

 俺はすぐに表情を引き締めて、崩れ落ちた体制のほむらを見据える。

 

「さて、俺は奴を殺しに行ってくるけど……待っててくれな」

 

「……ええ。頑張って」

 

「ああ!」

 

 俺はそう返し、背中のトマホークと腰の剣を同時に抜き放つ。

 

「さぁ! ヘルタイムのスタートだ!」

 

 叫んだ俺はそのまま前方にダッシュする。そして岩を思いきり踏みつけ、ボスへ跳躍。ボスの目の前まで飛んだ俺はすぐにソードスキルを発動させる。

 《ハウリング・オクターブ》八連撃。

 

「らぁああああああ!」

 

 さらに左の剣で《サベージ・フルクラム》三連撃。右手の剣で《バーチカル・スクエア》とつなげる。

 

「まだまだぁ!」

 

 そして左の剣で《ヴォ―パルストライク》を打ち込む。ボスのHPの減少はそうしても微々たるもの。

 

「やっぱ、一人じゃ厳しいか……なら……!」

 

 俺は連続で殺到するボスの噛みつき攻撃を両手の剣でパリングしながら準備を整える。

 そして地面に降りると同時にボスの攻撃もやんだ。

 

「ここからが本番だぜ……。さて、心意の攻撃威力拡張、攻撃距離拡張、移動速度拡張、防御走行拡張。それぞれ効果を数倍まで引き上げる……」

 

 そう呟いてからおれは叫ぶ。

 

心意(インカーネイト)システム。解放!」

 

 心意解放。俺が最近見つけた中でも最大の諸刃の剣に当たる技だ

 これを使っている間。すべての心意の効果が数倍まで拡張される。しかしその代り――。

 

『心意解放を確認。これより一秒ごとにHPが500減少します』

 

 というシステムメッセージの通り、結構なリスクが伴う。

 今の俺のHPは38950。この効果はHPが1になるまで持続するから約78秒。だと思う。つまるところ約一分ちょい。この一分にかける。

 

「奪命撃!」

 

 俺の左の剣から延びる紫の閃光は、いつもとははるかに違う射程距離、攻撃威力でボスの体をいとも簡単にぶち抜き、さらには破壊不能オブジェクトであるボス部屋の壁をも貫いた。(それはすぐに治るが)それによるボスへのダメージはHPバー一段の1割。

 

「縮地! 一気に決めてやらぁ!」

 

 俺は一気にボスの目の前まで移動する。そして

 

「攻撃威力拡張……喰らいやがれぇ!」

 

 俺は剣を使わずに全力で左拳をボスに向かって振り下ろした。俺によりボスの体が一気に地面にたたきつけられる。俺は落下のスピードを乗せ《ヴォ―パルストライク》を放つ。そのままボスの上で――。

 二刀流最高剣術。《ジ・イクリプス》

 

「おぉぉぉらぁぁああああああ!」

 

 俺の両の剣がボスにとめどなく襲いかかる。一発一発の威力が馬鹿げている。

 

「らぁああ!」

 

 《ジ・イクリプス》最後の一撃。それによるボスのHPは残り一段の5割ほどが残っている。本来、俺は長いディレイを課せられ、ボスに攻撃されるだろう。だが俺には――。

 

「ディレイブレイク! 終わりだぁあああああ!」

 

 二刀流上位剣術《スターバースト・ストリーム》十六連撃。

 それらの剣劇がボスに襲い掛かり、ボスのHPを余さず飲み込んだ。同時にボスの体がガラスの破片となって四散した。俺の残りHP―3450。後7秒だった。




終わりました――。?(´Д`;;´Д`)?みなさん。わかりやすかったでしょう?

仁「まったくだ。まったく」

大事なことだから二回いいました的な?

仁「だまれ」

あぶなっ! 無表情でトマホーク突き出してくるな!

仁「次はどうしてやろうか……」

悪魔がいるよ……。

感想、指摘、☆評価お願いします!

仁「次もよろしくな!」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。