【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO   作:MYON妖夢

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 今回は原作で苦戦したといわれている六十七層です。


第二十六話 第六十七層と悲劇

「クリスタライト・インゴットのお届けもんだー。リズベット武具店さんよー」

 

 今俺はここの店長リズベットに依頼されたクラスタライト・インゴットを数個とってきてドアをたたいたところだ。

 

「お疲れさま。あんた仕事が早くて助かるわ」

 

「俺はお前専用の労働機械じゃねーんだぞ」

 

 リズと会ったのは五十五層を攻略し終わったあと数週間後。時間軸的には多分心の温度が終わった直あとくらいか。アスナに俺以上の鍛冶屋がいないかを聞いたところここの名前が出てきたというわけだ。

 

「硬いこと言わなーい。……どんだけ取ってきてるのよ」

 

「ざっと20個くらいか。取れる方法はキリトがばらまいた情報のおかげで大丈夫だったし、ドラゴン弱かったし」

 

 これは事実。俺が心の温度の後だと判断したのはこの情報が出回ったからってのもある。

 

「ああ、それとこれの研摩、あとは……これも頼む」

 

 俺は耐久値が減った剣を研磨にかけてもらう。自分でやったほうが早いが、リズのほうが成功率は確実だし。

 

「うん、少し時間かかるわよ?」

 

「かまわねぇ」

 

 俺はそうそっけなく返すと今回のこれからの()()()()()の攻略会議についての考え事を頭の中で展開した。

 第六十七層といえば原作で数名の死者が出たってとこだ。ゆえに今回のボス戦は相当な危険がある。正直言えばそういうところにほむらたちを連れてきたくねーんだけどなぁ……どうせ。

 

『あなたが行くところには私も行く』

 

 とか。

 

『また一人で抱え込むの?』

 

 とか言われるんだよなぁ……。

 

「はぁ……」

 

「……どうしたのよ。ため息なんかついて」

 

 戻ってきていたらしい。

 

「……いや。別に何でもない」

 

「今回のボス攻略のこと?」

 

「ッ!?」

 

 なぜに知ってんだ。こいつは。

 

「ボス攻略の情報なんかこの層でも手に入るわよ。お客さんからそういう話も入ってくるし」

 

「……なるほどな」

 

 ま、普通にしっかり考えれば普通にこの答えは出てくるはずなんだが。

 

「まぁ、頑張りなさいよ」

 

「ああ。キリトはしっかり守るぜ」

 

 俺は片方の口の端を釣り上げてニヤッと笑う。

 

「なっ!」

 

「じょーだんだ。ま、結局守るけど」

 

 リズいじりはこれまでにしていくか。時間もねぇし。

 

「アスナたちを死なせたら承知しないわよー!」

 

「へいへい」

 

 その“たち”の中にはキリトも入ってんだろーな。

 

 

 

 

 

  ――会議場――

 

「みんなよく集まってくれたな。まずは知ってるやつのほうが多いと思うが自己紹介だ。俺は今回リーダーを務めさせてもらう、ジンだ。よろしく」

 

「それで、俺が副リーダーを務める≪アインクラッド解放軍≫副団長ディアベルだ。みんな宜しく!」

 

 一通りの挨拶が済んだところで切りだす。

 

「今回のボスだが……名前は《ザ・エレクトリック・ワイバーン》。名前からもわかるように電気系の攻撃を行う。噛みつき、突進、ブレスに注意しろ。それらは食らうとスタン、最悪の場合は麻痺に陥る。絶対にかわすんだ。いいな」

 

 さらに俺は続ける。

 

「そこのボスフロアには岩がそこらじゅうに浮いているらしい。飛んでいるボスに攻撃するにはその岩を利用するしかない。けど……」

 

「その岩を使って攻撃するということはそれだけ攻撃の的になる確率も高い。そういうことだね?」

 

 ディアベルが補足してくれた。

 

「ああ。そうだ。さらにその岩はボスの意のままに操ることができるらしい。つまり岩に乗って攻撃するのも困難ということだ。気をつけろよ」

 

 今回は偵察隊が誰も死なずに済んだ。けどだからってこの層のボスが弱いわけじゃない。それに削れたHPは一本だけって聞いた、それを聞く限りはまだボスには何かがあるということだ。そこに気を付けねぇとな。

 

「それじゃ、各自解散だ。みんなしっかり休んどけよ」

 

 あらかたの作戦、パーティーを決めて解散にした。

 

 

 

 

 

 

 

  ――仁とほむらの家――

 

「すっかりリーダーが板についたわね」

 

「……言うな」

 

 最近俺はリーダーに抜擢されることが多くなっている。はぁ……。

 

「とりあえず明日の攻略戦。俺の記憶が正しければ犠牲者が出る。犠牲者の数をへらす。もしくは完全に0にできるように立ち回らねぇとな」

 

「ええ、そうね」

 

 俺たちは雑談等をした後眠りについた。

 

 

 

 

 

 

  --ボス戦当日――

 

 俺たちはすでにボス部屋前にいる。そして俺は扉に手をかけながら。

 

「皆。ぜってぇ全員で生き残って帰るぞ!」

 

 そう叫び、腕に力を入れる。一瞬押しただけでその扉は開かれ、ボスの姿があらわになる。

 

「行くぜ!」

 

 俺はそう叫び《ザ・エレクトリック・ワイバーン》に向かって走った。

 まず、浮いている岩を足場に、思いきり跳躍。そのままの勢いで右のトマホークをたたきつける。ダメージは普通のボスと同じ程度。防御力は普通か。

 さらに俺は左の剣を振り切る。そのあたりで俺の体が直角落下に入った。そして落下中のおれをたげったボスが上空に舞い上がり、そのまま180度向きを変え、俺に直角に突進してきた。ボスの攻撃方法の一つである急降下の突進。

 

「らぁあああ!」

 

 俺はそれを両手の剣で右側に受け流す。受け流してもなおHPが一センチほど持って行かれた。

 

「どういう威力だよ……どわっ!」

 

 ボスが受け流された体をこちらに向けて次は噛みつきに来た。俺は空中使用可能の《ソニックリーブ》で真下に加速し、それをかわす。ちょうどよく真下に来た岩を思いきり踏みつけ横っ飛びをする。そして再び岩をたたきつけ地上に戻る。

 

「厄介な連続攻撃だぜ……」

 

 俺はそうつぶやく。実際奴の攻撃は流してもまた来るというめんどくさいものだ。

 そう考えているとボスが一瞬体を後ろにそらした。今まで色々な敵で見てきたブレスのプレモーション!

 

「ブレスだ! かわせ!」

 

 俺はいまだに俺をタゲっているボスのブレスからは逃れられないと判断し、すぐに《スピニングシールド》を発動する。同時に奴の口からブレスが発射される。そのブレスは俺の高速回転している剣に当たり、その威力を左右にばらけさせていく。

 ブレスが終わると同時に俺は再び岩を使って跳躍。そのまま空中で《バーチカル》を発動。盾にボスの体を切り裂く。さらに左手で《バーチカル・スクエア》。右手で《ヴォ―パルストライク》というようにつなげる。通常攻撃をはるかに超えるHPのヘリ、ボスのHPは一気に一段目の三分の一まで減った。しかしボスも黙ってやられるわけもない。両翼をはためかせ強風をおこし、俺を吹っ飛ばそうとする。

 

「チッ、なんツー古典的な……って!?」

 

 風に耐える俺をあざ笑うように噛みつきを開始するボス。俺は仕方なく風に逆らわずに、吹き飛ばされる。そして落下ダメージを負わないように岩に剣を突き立て、スピードを抑えて降りる。

 しかし俺が下りたのとほぼ同時に奴が岩を操り始めた。俺めがけて岩が数十という数で飛んでくる。俺はそれらを躱さない。なぜなら後ろからのシノンの弓がすべてを打ち落としたからである。まったく。なんていう正確さだ……。

 

「サンキュー! シノン!」

 

 俺はシノンに礼を言いつつ走る。俺の周りの岩はシノンに粉砕されたためしばらくは復活しない。俺はそれを確認し、《奪命撃》を使う。奪命撃の紫の閃光はいとも簡単にボスの体を貫き、HPを削る。それに反応し、ボスが急降下に入る。

 

「それを待ってたぜ!」

 

 俺に向かってほぼ直角に飛行してくるボス。俺はそこに狙いを定め、攻撃威力拡張の心意を発動する。俺のHPが目まぐるしく削れていく。しかし俺はそれを意識に入れずに、次の一撃の力をためる。

 その時はやってきた。

 ボスが体当たりに入るため頭を体方向に曲げ、頭突きの構えのまま突っ込んでくる。俺は右手の剣を空高く放り投げ、右手を握りしめる。そして思い切りボスに向かって突き出した。

 俺の拳はボスのHPをごっそり削り、逆側の壁まで吹っ飛ばした。そして奴も攻撃を中断させられ、ディレイが科せられる。対しておれはボスの攻撃をキャンセルしたとはいえ、その体当たりを真正面から受けてしまったためHPが心意も含めて一気に四ケタほどまで減った。しかしチャンスだ。奴のHPはすでに今の一撃で一段目が消えた。

 

「みんな! チャンスだ!」

 

 そう叫び俺は腰のポーチから回復結晶をつかみだ――そうとしてやめた。なぜなら向こうからほむらのもとを離れてこちらにエイミーが飛んできていたからである。皆はボスにそれぞれの武器で攻撃を加え、HPを少しずつながらも削っていっている。

 エイミーは俺にヒールとリジュネをかけ、俺の頭の上にのっかる形で止まった。

 

「サンキュー、エイミー」

 

 俺の言葉を理解してくれたのだろう。エイミーは小さな声でキューとないた。俺はエイミーを頭に乗せたまま走る。周りから見れば結構間抜けなことになっているだろうが。

 俺は上から落ちてきたトマホークをキャッチしてからボスに向かって全力で走る。ボスのディレイもじきに終わるだろう。その前に一気に削っておきたい。

 俺はボスのところまで着くと同時に《ジ・イクリプス》を放つ。奴のHPは俺の斬撃が当たるたびに削れていく。そして二段目が削り切れたと同時に俺の攻撃も止まった。俺にはディレイが科せられる。しかしほむらが《ツイン・ワールド》を自分と俺を対象にして発動したため、その効果時間内にディレイが解け、俺はボスから離れた。

「いいタイミングで止めるよなぁ。ほむらも」

 

「使いなれているもの、当然よ」

 

 そしてほむらがポニーテールをはらった――と同時に時間が動き出す。ボスの体が浮き上がり、思いきり吠える。それよりその場にいる全員がスタンに陥る。そしてそのスタン中にボスがブレスを吐き出した。当然その直線状にいる奴ら――俺も含め――は麻痺になる。しかし俺にかかっている麻痺は通常の麻痺とは違うような感じがする。なんといえばいいだろうか、体中を何かが蝕んでいるような……。

 その思考を最後に俺は意識を失った。

 

 

  ――仁sideout――

 

  ――キリトside――

 

 どういうことだ? ジンの目から生気がなくなった。それと同時にジンの体がいつもとは違う動きをし始める。いつもならすぐにボスのほうに走り出すジンがこっちを向いて走ってきた。

 

「ッ!」

 

 そして両手の金色に輝く剣を()()()のプレイヤーに向けて振った。

 

「仁!?」

 

 ほむらの叫ぶ声が聞こえた。しかし俺の頭の中には何か違う思考が渦巻いている。ジンがあんなことをするはずがない。あのありえない行動から考え出されることは――。

 

「「操られている……」」

 

 誰かと声が重なった。その声がしたほうを向くと――。

 

「ディアベル……」

 

「まずいね……攻略組最高戦力である彼が操られるなんて……最悪のシナリオだ」

 

 こう会話しているうちにもジンは暴れている。幸いまだ死者はいない、さらにボスも攻撃を一切してこないことはまだましだ。

 そしてジンがほむらのほうに走っていった。

 

「ッ! 待て!」

 

「グゥゥゥゥゥ……ガァァッァァァアアアア!」

 

 ジンにほむらを殺させちゃいけない! ジンが意識を取り戻した時が最悪に……!

 

「させるか! 止まれジン!」

 

 俺はギリギリのところでほむらとジンの間に割って入る。そして右に握っている《エリュシデータ》を構える。どうする……《ダークリパルサー》を抜くべきか……? ジンと戦うならこっちも《二刀流》を使わないと足止めすらできる気がしない。しかし今のジンがアイテムストレージを開く時間すら与えてくれるとは思えない。

 

「グゥゥゥゥゥガァァァア……ガッ!」

 

 ジンが突然頭を抱える。そして顔を上げたジンの目には生気がともっている。

 

「……ぐっ、わりぃな……キリト。俺は……ここでゲームオーバーだ……グゥゥ……」

 

「はっ!? 何言ってるんだ! 何をする気なんだ! ジン!」

 

 俺はそう叫ぶがジンは二刀を俺ではなく自分に向けて構えた。

 

「グゥガァァ……キリト……俺はこのままじゃ……ボスに操られて……お前やほむらたちを殺しちまう……俺はそんなのは嫌なんだよ……だから……ほむらをたの……んだぜ」

 

「おい! おいジン! やめろ!」

 

 ジンが両手の剣をそろえて自分の心臓に突きさした。同時にジンのHPが余さず食らいつくされ、ガラスの破片となって四散した。




仁「今度こそ俺死んだな」

 うん、死んだ。

仁「この後の展開は?」

 大丈夫。すでに一週間以上前からこの展開は考えていたから。

仁「伏線は?」

 貼ってあるよ。おそらく。そしてほとんど絶対的に、原作をしっかり読んでいる人にはこの後の展開を読まれると思ういます。ね? みなさん。これ察しやすいですよね? ごめんなさい、駄作で

仁「おそらくって……」

 ま、次回をこうご期待!

 感想、指摘、☆評価お願いします!

仁「次もよろしく!」

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