【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO   作:MYON妖夢

32 / 71
第十七話 ゴールドホーンの恐怖

 新しく表れた《ザ・ゴールドホーン》こと金角。能力は未知数、HPバーは四段。武器は両手剣。俺はそれを確認すると少女を安全そうな場所に避難させてから向き直る。

 ゴールドホーンが出てもシルバーホーンが消えたわけではない。二匹のボスがこのボス部屋で暴れている。

 

「お前ら! シルバーホーンのブレスに注意しつつ、タゲを取ってできるだけゴールドホーンから遠ざけてから攻撃を集中してたおすんだ! 速攻でタンクを二分割しろ! ゴールドホーンのほうはディアベルに続け!」

 

 そういって俺はシルバーホーンに向かって走る。

 

「あ! ちょっと待ってくださいよぉ!」

 

 後ろで少女が何かをしゃべっているが今はそちらに注意を払っている時間がない。

 

「ブレス来るぞ! 皆! 下がれ! ブレス防御系スキルを持ってるやつはもってないやつの盾になれ!」

 

 そういった俺は武器でのブレスの回避法のない、ほむらの前に立ち、《スピニングシールド》を発動する。そしてボスのブレスが終わると同時に防御系スキルを使った奴らとボスが硬直。

 

「硬直のないやつは攻撃だ! ダメージを与え続けろ!」

 

 そういうとあたりから後ろに下がっていたダメージディーラーが飛び出てくる。みんな硬直の少ない単発スキルや、通常攻撃で少しずつながらもダメージを与える。俺はタンクをブレス防御に回し、相手の武器をパリィではじくために前に出る。

 と、同時にボスが薙刀を大上段に構え、《バーチカル》に似た軌道を描いて襲ってくる。俺はそれをした斜めから繰り出す《スラント》で迎え撃つ。そして俺は予想以上に威力の上がった薙刀のスキルを相殺しきれず、ダメージを負い後ろに飛ばされる。しかし当然奴も硬直を強いられる。

 

「もう一本攻撃いけーー!」

 

 俺もすぐに体制を持ち直し、ボスに向かって走る。そしてその勢いを使用した《ヴォ―パルストライク》を奴の腹部に打ち込む。

 

「はぁああああ!」

 

 続いてほむらが刀スキル《羅刹》を打ち込む。ボスのHPが一気に削れる。そしてボスの硬直が解けた時にはすでにHPは最後の段の3割ほどしか残っていない。

 

「くっ! ブレス来るぞ!」

 

 俺は先ほどのようにみんなに同じ指示を飛ばす。しかし俺は失念していた。さっきブレスを止めた時のボスのHPバーはまだ二段目だったということを。

 

「チィ! どういうことだよ!」

 

 俺の目の前に広がっているのは防御したのにもかかわらず凍っているプレイヤー達だった。

 

「くっそ! 無事なプレイヤーはすぐに凍った奴らの救出! 俺がタゲを引き付ける!」

 

「仁! 無茶よ! もうブレスは躱すしかないのよ!?」

 

「けどやるしかねぇんだよ! ほむらも救出組に入ってくれ」

 

 俺は有無を言わせずにシルバーホーンに向かって走る。ここから先はソードスキルの使用すら許されない。使った直後にブレスが来れば確実に待っているのは死。俺の仕事は奴を抑えておくことだ。

 

「さぁ。ヘルタイムのスタートだ!」

 

 俺は両手の剣を強く握りしめ、振り上げる。そして奴の腹部に狙いをつけて一直線に振り下ろす。大したダメージにはつながらない一撃。しかしそれでいい。

 奴がソードスキル特有の強いエフェクトをまとった薙刀を右斜めに振り下ろしてくる。俺はそれを左に飛んで躱す。さっきまでのスキルは全て単発だった。だから俺はこんども単発だと思ってあえてパリィをしなかった。しかしそれは失敗だったと悟る。なぜなら――

 

 ボスの手に握られている薙刀はいまだにエフェクトをまとっている。そしてそのまま手首を返し、《バーチカル・アーク》と同じ軌道を戻る刀スキル《斬抄》の間のような軌道を描き俺に襲い掛かってくる。俺は咄嗟に引き戻した左の剣でダメージを少し逃す。が、ダメージが2割ほど抜けた。次はこっち――ッ!

 

「まだ……続くのかよ」

 

 そう。奴の薙刀はいまだにエフェクトをとどめている。縦に振りぬかれた薙刀は垂直切りの軌道を描き振り下ろされてくる。やられてばかりじゃいられない。

 

「オ・・・・・・ラァァァァァアア!」

 

 俺は右手の剣で《ホリゾンタル》。左の剣で《ホリゾンタル・アーク》を半ば強引に交互に出した。連続三連撃の水平切りにより軌道をずらされ、地面にたたきつけられる薙刀。そして相手よりも早く硬直が解ける俺。俺はそこからラッシュにつなぐ。時間稼ぎなどすでに頭になかった。

 

「喰らいやがれ! そんでもって塵になれ!」

 

 二刀流最高剣術《ジ・イクリプス》二十七連撃。奴の硬直時間中に俺の最大までブーストをかけたジ・イクリプスが奴の体をとらえ続ける。

 しかし。奴のHPが残り0,5割ほどになった時奴も動き出した。先ほどの薙刀による三連撃のモーションを取り、俺の残りの連撃と打ち合う。その結果――

 

「……チッ」

 

 削り切れなかった。ジ・イクリプスにもう一連撃があれば削り切れたんだけどな……。しかし相手も動けない。どっちの硬直が先に溶けるのかは明確に相手だ。だけど俺はあきらめない。

 相手の硬直が解ける。そして再びあの三連撃が発動する。俺の体を一撃目が捉え、後ろに吹っ飛ぶ。そうこれが――

 

 俺の狙いだ。

 相手のスキル、最初の右斜めきり下ろしは俺のスキル終了時の武器のある位置に当たった。そしてわずかながら軌道をずらし、俺の肩に当たるはずだった一撃を人体で言うアバラの位置にあて、体を後ろに飛ばした。そして空中で硬直が解けた俺は着地と同時に突進技の容量も込められている《ヴォ―パルストライク》で少しながら距離をかける。そして右腕を突き出す。エフェクトによって飛距離を増した俺の剣はボスの体を切っ先にとらえ、そのまま貫いた。次の瞬間。奴の体は大音響とともにガラスの破片となって爆散した。

 

「……ふぅ」

 

「ふぅ、じゃないわよ」

 

 聞きなれた声。

 

「馬鹿なの? いっつも一人で突っ走るじゃない」

 

「まぁまぁ、ここで言い合ってもしょうがないだろ。まだ金角のほうが……ッ!」

 

「解ってるわよ……どうしたの?」

 

 俺の驚愕に満ちた顔を見てほむらが聞いてくる。俺は右手の剣の切っ先をほむらの後方に向けて指した。

 そこにいたのは――

 

「――ッ!」

 

 先ほどまで持っていた超大ぶりな両手剣を“二刀流”にしている金角だった。

 

「……んだよ。それ。アンナンもてるのかよ」

 

「……そこ?」

 

「んあ。間違えた」

 

 俺は周りを見渡す。彫刻化していた奴らは全員復活。そして金角の行動に驚きながらもヒースクリフとディアベルの指揮によって戦っている。

 

「ンジャ……俺らも行きますか」

 

「待ちなさい」

 

「?」

 

「はぁ……HP見なさい」

 

 俺は言われたとおりに左端のHPバーを見る。そこには――。

 

「へぇ。あの三連撃の一撃目そんなに威力あったのか」

 

 残り2割と化しているHPバーがあった。

 

「悠長なこと言ってる場合じゃないでしょ……ヒール!」

 

 ほむらがポーチから掴み出した回復結晶で俺のHPを全快させた。

 

「サンキュー。ンジャ今度こそ行きますか」

 

「ええ」

 

 そういって俺たちは次は金角ことゴールドホーンに向かって走った。

 

 

 

 

 

「ディアベル! 状況は!」

 

「まずいよ……威力が極端に増してる。ヒースクリフさんが《神聖剣》というスキルでずっと持ちこたえてもらって体制を整えてる」

 

 ヒースクリフは原作では五十層でボスの攻撃を十分耐え続けたという話が話だけで載っていた。実際見てみると……圧倒的だな。

 

「ンジャおれも参加しますか」

 

「無茶だ! 君はシルバーホーンをほぼ一人で相手してたようなものなんだよ!? 精神が持たない」

 

「安心しとけって、騎士様。俺がそんな弱い精神の持ち主に見えるか……よっ!」

 

 俺はしゃべり終わる寸前にダッシュを始める。金角のHPは二段目の8割ほどが残っている。俺はダッシュの勢いをつけたまま体術スキル《豪打》をぶちこむ。そしてさらに右手の剣で《バーチカル・スクエア》。さらにチェインで《ヴォ―パルストライク》を打ち込む。ボスのHPの減り具合は銀角と変わりなし、何が変わってくるのやら。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁあ!」

 

 さらにほむらも攻撃に加わってくる。どうやらユウキとシノンはHPをずいぶん減らしたようで後方で待機している。そしてあの少女は俺が移動させた場所にとどまっているようだ。後ろからの加わる戦力はなし。どうやら奴の攻撃をパリィしている間に装備の耐久値がずいぶん持って行かれるようで武器や盾などを粉砕されて下がっている者もいる。

 

「おらぁあああああ!」

 

 俺は《シャインサーキュラー》を発動する。しかしそこで驚くべきことが起こる。

 ボスも《シャインサーキュラー》を放ってきたのだ。考えてみれば当然。相手も二刀流なのだ。しかしジ・イクリプスまで打たれたらどうしようもない。

 そして鏡写しのような攻撃が軌道上ですべてぶつかり合う。このままではらちが明かない。俺はシャインサーキュラーが終了すると同時に叫ぶ。

 

「ディアベル! 俺のディレイが始まったらまだ戦える連中を投入してくれ!」

 

「解った! 無茶はするなよ!」

 

 わり、今からその無茶をするわ。

 俺が発動したのは《ジ・イクリプス》。そして相手が使用したのも《ジ・イクリプス》。何がしたいんだこいつは。そして全く同じ軌道の攻撃がとでもないスピードでぶつかり合う。そろそろ武器の耐久値が持たない気がする。が、そんなことを考えている時ではない。

 両者のソードスキルが終了する。同時にディアベル率いる軍とアスナ率いる血盟騎士団の連中が攻撃参加する。《ジ・イクリプス》という27連撃の穴である通常以上の長さのディレイを俺とボスは課せられている。そしてそれが解けるまでにHPをかなり削る。しかしボスのディレイが俺よりずいぶん早く解けると同時に銀角と同じようなブレスの準備に入る。

 

「みんな下がれ! ブレスだ!」

 

 しかしソードスキルを使ってしまったものもいるらしく(当然俺の《ジ・イクリプス》のディレイも続いている)、動けないものがいる。そこにボスのブレスが襲い掛かる。そのブレスは――

 

「麻痺か!」

 

 俺はバッドステータスの麻痺のアイコンを見て舌打ちとともに言葉を吐き出す。俺はジ・イクリプス終了のモーションのまま麻痺で動けなくなる。

 

「チィ……」

 

 そしてボスがたげったのは俺。まずいでしょーこれはー。

 ボスの両方の剣が俺に同時に襲い掛かる。俺は今度こそはずらせない軌道に半ばあきらめ、半ば反抗の意識を持っている。が、体はそれについていかない。正確に俺の首を狙って武器同士が交差する軌道で振り下ろされた。そして俺は目をつぶってHPバーが消滅するのを待つしかなくなった。

 わりぃな、ほむら、シノン、ユウキ。ここまでだ……。

 しかし衝撃も来なければHPは一ドットも削れない。どういうことかと思ってそっと目を開ける。そこにあったのはほむらの顔。そしてずいぶんと遠くにいるボス。

 

「どういうことだこりゃあ……」

 

「はぁ…はぁ…私のユニークスキルみたいね……」

 

 なるほど。時間を止めて俺を救いだした――と。ほむららしいユニークスキルだ。

 そして息を荒げているほむらは敏捷値の許す限り、止めて入れる時間の中で俺に向かって走ってきてくれたのだろう。ヒースクリフは驚いている表情だ。恐らくそれから推測してほむらのユニークスキルは神さん補正だな。茅場晶彦のプログラミングにないユニークスキル。いいねぇ。

 

「なんで薄く笑ってるのか知らないけど……倒さないと」

 

「ン……ああそうだな」

 

 そして俺は対して減っていないHPバーを確認した後。耐久値がギリギリで刃こぼれしている剣をストレージにしまい、銀閣からのLAを取り出す。《ザ・シルバーブレード》ね。そのままじゃねーか。っていうか薙刀じゃねーのかよ。

 そして俺は二刀流のもう片方の剣。ストレージに切り札としてしまい続けていた《ブラッディブレード+10(内約8D 2S)》を出す。ちなみに最初に作った今ボロボロのほうのサブとして壊れにくいものを作った結果。こうなった。

 その両方を背中の装備フィギュアにセットし、俺は抜き放つ。右手のシルバーブレードはきれいな銀色を強くはなっている。左のブラッディブレード+10は強化品特有の光と紫が少しかかっている黒い光を放っている。その二刀に俺はこの闘いを託し、思いきり地面をけった。




 はい。終わりました。今回ほむらと仁の漫才じみた部分少々ありましたねww

仁「何やらしとんじゃ」

まぁまぁ。っていうか君も僕に馬鹿とかいうけど君もぬけてるよね。

仁「……否定はしない」

でしょ? ま、人には人の……これ以上しゃべらないから頼むからそのシルバーブレードでのヴォ―パルストライクの構えをやめてくれないか?

仁「……チッ」

もういいや……。

簡素い、指摘、☆評価お待ちしています!

仁「次もよろしく!」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。