【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO 作:MYON妖夢
俺は背中につってある《ブラッディブレイダー》を握りしめ、一気に抜き放つ。そして
「みんな! 怯むな! ボスが違ったからなんだ! どっちにせよたおさないと進まないぞ! だったらここで倒して二十六層に進むのが筋ってもんだろぉおお!」
全力で叫ぶ。まだ戦意喪失していたみんなが反応をしてくれる。そして俺は無謀だと思っていても走る、あいつは俺たちの世界からの乱入者。なら俺がケリつけねぇとな!
「おおおぉおおおおおおお!」
気合とともに《バーチカル・スクエア》をたたきこむ。しかしやはりというべきかHPバーの幅はほとんど変わらない。そして同時に相手は巨大な炎の球を形成。更に発射。その間ほぼ1秒。硬直中のおれには躱すすべがない。一発くらいなら大丈夫だろう。俺の今のレベルは42。HPは24000ちょい。まだいける!
「ぐぁっ!」
炎の球が俺を飲み込む。一気にHPが7割近く削れていく。さらに『やけど』の状態以上。やけどはHPが一定時間ごとに毒よりも早い頻度で減っていく。しかもヒリヒリする……。そして解除法は時間経過のみ。
俺はすぐに回復結晶をつかみだし、回復する。そして情報をみんなに伝える。
「みんな! あいつの防御力はかなり高いぞ! それと炎はダメージがでかい! HPと防御力が少ないものは必ず躱せ!」
「大丈夫!? 仁!」
ほむらが駆け寄ってくる。
「ああ、大丈夫だ。やけどが消えたら戦いに参加するから少しの間頼んだ」
「ええ。わかったわ」
そしてほむらとエイミーはボスに向かって走っていく。どうやら前世よりもでかい炎。そして硬さを誇っているみたいだなぁ……。最低の場合は見つかってでも最初から持っている神さんからの特典の《二刀流》を抜くしかない・・・・・・か。
そしてやけどが回復。俺は再び走る。視界の先では奴がスカート部分から前世と同じ剣を複数飛ばしてきているのが見える。俺は右の剣で《スピニングシールド》を発動してこちらに向かってくる剣をはじく。前ではタンクがダメージディーラーへの剣をはじいている。
「タンク隊! スイッチだ! 俺が出る!」
そういうとタンク隊は《シールドバッシュ》で相手を少しノックバックする。
「喰らえ!」
俺は次は《スター・Q・プロミネンス》六連撃を発動する。ここまでの攻防戦でもワルプルギスの五段あるHPバーの一段目ですら半分も削れていない。もしこの闘い中に回復系の使い魔《劇団ソデ》でも召喚されたら切れるぜホント。
「ちぃっ! 盾持ちの剣士は攻撃だ! ダメージディーラーはいったん下がれ!」
そう叫び俺はいったんブレイクポイントを作り下がる。代わりにタンク兼攻撃部隊が前に出る。楯を前に突き出し、少しずつダメージを与えている。ようやくHPが一段目の半分か。きつい戦いになりそうだな。
通常攻撃だと何十発で一ミリだが、確実に安全に与えるしかない。なぜなら何か隠し玉がある可能性が……ッ!
「……んだよ……それは!」
奴が口の部分に力をためたと思ったらビームらしく物をぶっ放してきやがった。そしてそれは前に出ている盾持ち剣士の軍のやつらを焼きつくし、一撃でHPを0まで持っていきやがった……! いくつかの破砕音が重なる。レイドメンバーのHPバーを見ると三人のHPがグレーになっている。
「……くそっ! ディアベル! 一回ひかせろ! 俺がタゲを取る!」
「何を言ってるんだ! それだと君が危険だ!」
「大丈夫だ! 俺には隠し玉がある!」
「……わかった。任せたよ! 死ぬなよ!」
「当然だ!」
俺は速攻でウィンドウを開き、左手にもう一本の剣をだし、スキルスロットをいじる。
「いいぜ! ディアベル! シンカー退け!」
皆が引いたのを確認して俺は持てるすべての力を振るう。
ワルプルギス・ナイトから放たれるビームを躱し、零距離まで近づく。瞬時に炎の球が形成される。俺はまずその球に向かって《シャインサーキュラー》をぶちこむ。もうこれしかない。二刀流。
「砕け散れェェェぇえええええええ!!!」
相手の攻撃を食らえば一撃死は免れない可能性が高い。いくら心意でもディレイを消して動くことはできない。今のところは。だったら一気に削っていくしかないだろう。
「ディアベル! タンク隊の準備! 俺がディレイしたらすぐに入れてくれ!」
「解った!」
俺はその返事を聞き、《スターバースト・ストリーム》を発動する。倒しきれないのは分かってる。だけどせめて一気に減らす!
俺の十六連撃を次々に食らって傷を増やしていくワルプルギス・ナイト。しかしHPバーのけずれ方は少しだけさっきより激しいだけ。
「おぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!」
俺の十六連撃目の攻撃。その時点で奴のHPは二段目の半分に入ったところ。やばいな……引けない状態でHPバーを区切りのところまで減らしちまった……。そう認識したところで射撃系の使い魔と格闘系の使い魔が召喚され、こちらに向かってきていたディアベルたちを足止めする。さらに奴の口にビームの閃光がたまっていく。万事休すってやつか……。
俺はぶち当たるのを覚悟で、せめて少しでも減らそうと両手の剣をディレイが解けた瞬間に退き戻し、クロスしてガード体制に入る。
「……?」
しかし衝撃が来ない。HPバーも少し減っただけで変化なし。どういう……。
「無茶しないでって言ってるでしょう。何度も」
「仁は突っ走りすぎだよ!」
「ホントに……無謀ね」
「そう簡単に死んでもらっちゃ困るんだよ。ジン」
俺の前に来て閃光を切り裂いたのは仲間たち。ほむら、ユウキ、シノン、キリトだ。
「……お前らこそ……無茶しやがって」
「「「「あなたに(君に)(お前に)だけは言われたくない(わ)(ぞ)!!」」」」
完全に一致で突っ込まれましたはい。
「仁。私たちがこいつを止める。叩き込みなさい」
「任せたよ! 仁!」
「行きなさい。仁」
「やれ! ジン!」
そういって四人はそれぞれの武器を握り、ワルプルギス・ナイトに切りかかる。
「……サンキュ。みんなァ! さぁ。ここからが本当のヘルタイムだぜ? ワルプルギス!」
俺はすぐに最高剣術《ジ・イクリプス》の構えに入る。取り巻きを殲滅したと思われるディアベルたちがワルプルギスに接近する。ソードスキルでヘイトを稼ぐもの、威嚇を使うもの。通常攻撃で確実にダメージを与えるもの。それらのみんなの叫びを一つにするとこうだ。
「「「「「「「「「「「行け! ぶちかましてやれ! 小僧!」」」」」」」」」」
だな。小僧じゃねえ!
「みんないいぜ! はなれろォ! ぶちかましてやるよォ! ワルプルギス!」
しかしこの攻撃だけで削り切れる気はない。そこはみんなに任せて俺はシステムに身を任せ動き回る。
合計二十七連撃。その途中。俺が後ろに飛ぶところで奴が動き出してしまった。
「みんなっ! やばい! にげろぉぉぉ!」
しかし間に合わない。奴は全身から眩しいほどの光を放ち、それを開放する。砂割、ビームの全範囲攻撃だ。ガラスの破砕音が重なって響き渡る。そして《ジ・イクリプス》は途中で中断される。
「……くそっ!」
視界を左に動かし、レイドメンバーの名前を確認。ほむらたちの名前はまだある。不幸中の幸い・・・・・・か。
「仁! へこたれるんじゃないわよ!」
「ほ・・・・・・むら」
「あなたに任せて死んだ人たちの思いを無駄にするつもり!? その人たちのためにも戦いなさい! 立ちなさいよ! 欄間仁!」
ほむらの言葉が俺の心にひびく。そして空っぽになってしまったそれをみたしていく。
「そう……だよな。俺たちがここで勝たないとうかばれねぇ……よな。すまねぇほむら。みんな……。ディアベル!」
こちらを振り向いたディアベルに。
「ここは俺に任せろ! 戦意喪失したものを連れて退け!」
「だけど君が……」
「死にゃしねぇよ。・・・・・・だからここは俺に任せろォ! まだお前に死なれきゃこまるんだよォ!」
俺は無理やりディアベルたちを退かせる。なぁに、もちろん死ぬ気はねぇさ。
「ほむら! エイミーでHPの減った奴らの回復だ! そんで下がれ!」
「えっ!?」
「俺はまだしなねぇよ……だから……ディアベル! ほむらを連れてけ! ユウキもシノンもキリトもだ!」
「いや……いやよ! 仁!」
「任せろって……お前を残して逝くなんてこたぁしねぇよ。死んで・・・・・・たまるかよ」
「いやぁぁぁぁぁああああ! 仁ーーーー!」
さぁ……一対一の戦いをしようじゃねえか……ワルプルギスの夜!
俺は全員が撤退したのを確認してから抜きなおる。
「さぁ、正真正銘の……ヘルタイムだ!」
俺は両手の剣を握りしめ、突進する。同時に奴は使い魔を召喚するのをやめる。どうやら乗ったようだ。さらに奴から剣が大量射出される。それらを一本一本索敵スキルのサーチを利用して躱す。しかしかする攻撃でHPが削れていく。遠くからの叫び声などもどんどん耳から遮断されていく。今ここで戦っているのは俺と奴だけ。逃げるという選択肢はない。ここで死ぬか、殺すかの二択だ。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
カキンッ! ガギンッ! ギャリンッ!
お互いがぶつかり合う音がそこに響く。HPバーは残り二段。ジ・イクリプスを撃てれば削り切れるかもしれない。しかしまだ危ない。けどここで賭けに出なければ下手すれば死ぬ……。賭けに出ればわからないが、このままの均衡を保っていられる気はしない。いまだに相手のビームが飛んでこない。ビームが来ればその瞬間に均衡は破れ、すきを見せた俺が殺られる。だったらかける意味はある。
「ここで……死ぬわけにはいけねぇんだよ。勝負をつけようぜ……」
俺は無理やり両手を振り、ブレイクポイントを作り、即座に《ジ・イクリプス》を発動。一瞬で肉薄。そして俺の連続攻撃が始まる。全部の方向から飛んでくる剣筋をあいつにぶち込む。そのたびにHPバーは一気に減っていく。代わりに相手の剣が技途中のおれをかすめ、HPを奪っていく。
(間に合うか……? 決めきれるのか……?)
二十連撃目。相手のHPは残り一段の7割。決めきれない……。終わりか?
二十七発目。相手のHPは残り4割。そして俺には致命的なディレイが与えられる。さらに奴の体からひときわ大きい光が放たれる。明らかにさっきまでとは違う技だ。そして奴の歯車部分にその光が凝縮する。歯車がこちらに向く。そして歯車の鉄という属性による反射で威力を増したレーザー砲……いや荷電粒子砲といったほうがいいか? それが放たれる。
くそ……まだ。ほむらを残して逝くわけには……。動け!動け動け動け動け動け!
動けえええええええええええええええええええええ!
俺の体が自由を取り戻す。同時に《縮地》が自動発動。その間に敵の荷電粒子砲が俺を飲み込み、HPバーをごっそり持っていく。残り1割。
「《奪命撃》!」
俺はいったん離れたことを疑問に思いながら《奪命撃》を歯車に叩き込み、ディレイを作る。そして《ジ・イクリプス》を再発動。次こそHPを削り切る。目の前にcongratulationの文字。同時に扉が開かれほむらがこっちに走ってくる。
「よかった! 仁……生きてて……ほんとによかった……」
「……おいおい。死なねぇっつったろ……? 俺が今まで死なないって言って死んだことあったかよ?」
俺は少し落ち着けという意味を込めて言ったが通じないようだ。
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿」
「うぉぉぃ! 怖ええって! マジでそれは怖い! 文面にしたらもっと怖い!」
「本当に馬鹿よ! あなたって人は! 何回死にかければ気が済むの!」
「俺の意思でそんなんなってるんじゃねえええ!」
漫才かよ!? 俺の前にLAの表示が出た。叩いてみる。《ワルプルギスの鉱石》……は?
歯車部分の鉱石か? なんにせよ多すぎだ! ストレージ容量ぎりぎりまであるじゃねーか!
「……仁。無茶し過ぎって言ったじゃん」
「本当よ。そのうち死ぬわよ」
お前らもひでぇな!
「……で。さっきのはなんだよ? ジン」
次はキリトか。いずれお前も手にするんだけどな。
「エクストラスキル《二刀流》出現条件は不明。なんか最初からあった」
少しはぐらかしていう。
「……強すぎだろ」
俺は苦笑しながら。
「まぁ……な。けどこれを使わないと俺も死んでたんだが」
事実これ出さなきゃ死ぬぜ。さて……ほむらのユニークスキルもいつ発現するやら。
「キリト……アクティベート任せた。転移コラル」
ほむらたちと一緒に転移。二十二層のおれたちの家までは少し歩きになるけどな。転移の光に包まれている間にキリトの文句が聞こえてくるが完全にスルーだ。そんなに元気じゃねえんだよ。
「で。死ななかったのはよかったけどよかったの?」
「なにが?」
「二刀流」
「ですよねー」
いいわけなかろうが。しょうがなかったのは事実だけどあまり見せたくなかったのも事実。はぁ……明日からはまた野次馬たちが来るんだろうな……。
――次の日――
「まさかのだぜ……『突然の乱入ボス。超絶な強さのそれを撃墜した70連撃の二刀流の悪魔ジン』『軍のメンバーを焼き尽くしたレーザー砲とそれを食らい尚も生き残り。それを倒した二刀流』
どんだけ盛ってんだ。おいしかも外では。
「ジンさん! 二刀流について―――」
「発現情報は――――」
「出てきてください―――」
「うがああああ! うるせぇめんどくせぇ! 逃げるぞ! 転移はじまりの街!」
ほむらも転移した。
――始まりの街――
「あ! ジンさんだ! 二刀流について――」
「くそぉぉおおお! 転移!――」
――二十六層――
「二刀流――」
「転移!――」
――十層――
「情報――」
「もういやだぁぁぁぁぁああああ! 転移!」
――エギルのところ――
「というわけでかくまってくれ頼むから」
「いやいいが……確かに盛りすぎだな。そりゃ」
「だろ!? しかしマスコミはうるせぇし、家にも戻れねぇし、ほむらもほむらでふてくされてるし」
「なんでだよ」
「……二人の時間が削れた」
……なんだかなー。新婚じゃねーんだから……。
そうしておれたちの第二十五層攻略は終わった。
終わりました。分けて書いたんですが、分けたら少し文字数少なくなったんでくっつけました。倒すの早すぎとか、チートや! とかは重々承知なのです。駄文ということも重々承知しております。
仁「ネタが浮かばなかっただけだろうが」
あったり!
仁「開き直んな!」
もうしめる!
感想指摘、☆評価お願いします!
仁「次もよろしくな!」