【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO 作:MYON妖夢
「チィ……おそらくあのガタイからして防御力は上がってやがるだろうな……。ディアベルどうする」
「……ここでひいても次きたときには同じことが起こる……なら戦うしかないと思う」
「同意見だ。行こうぜ!」
俺とディアベルは同じことを考えていたようだ。そして
「戦意のなくなったものは下がれ! 戦えるものは残ってあいつを倒すぞ!」
俺の呼びかけに答えるのはキリトたちを含め60人弱。多少心もとないが死者を多く出すよりはましだ。
そしてボスが動き出す。防御力が上がってもなお変わらないそのスピードを生かしてハンマーを振り下ろしてくる。
「俺がとめる! みんなはいけぇ!」
言葉通りに俺はハンマーを右手の剣で止める。しかし――
「ぐぁっ!」
重すぎた。俺の剣がはじかれ、後ろのほうに飛んでいく。幸いボスのタゲはまだ定まっていない。俺は剣を拾いに行こうとしたところで――止めた。
いまおれが剣を取りに行ってタゲをないがしろにしたら被害が出る。間違いなくかなりのダメージをおうか最低――
―-死。
それだけは防がないといけない。絶対に。
「うぉぉぉぉおおおおおおあああ!」
俺は体術スキル《閃打》を発動。それによりボスのタゲが完全にこちらに向く。
ボスのハンマーが次々を振り下ろされてくる。俺はそれをステップでかわすが、そのたびに地面に発生する衝撃波までは防ぎきれずに少しずつHPが減っていく。
少しずつ減っていくHP。それが余計に俺の恐怖を駆り立てる。俺は右の拳を握り体術スキル《豪打》を発動し、無理やりブレイクポイントを作り、すぐにウィンドウを開く。そして剣を取りに走る。そして剣をつかみ、そのままボスに振り返り走る。ボスはまだタゲをこちらに向けて走ってきていた。
「おぉおぉぉおおおお!」
ボスの振り下ろしたハンマーと俺の《バーチカル》がぶち当たり大反響を起こす。その間にもみんながボスのHPを削っているが先ほどまでと比べると明らかに延々としている。まだHPバーは四本目の三分の一にも届いていない。
俺もボスの攻撃をさばき損ねたらやばい。一発でも喰らったら、もしまだ麻痺の状態以上が武器についていたらと思うとどんどんと俺は焦りを感じてくる。そしてその焦りはミスを呼び起こす――
「がぁああっ!」
俺の発動したソードスキルが空を切る。すなわち俺に向かってハンマーが飛んでくるということだ。そのハンマーは俺をとらえ、HPバーを一気に9割以上持っていく。後一発取り巻きの攻撃ですら喰らったらやばいが、他の隊の残っている皆が取り巻きを食い止めていてくれる。
しかしボスの攻撃は飛んでくる。俺の命はここまでなのか……? この世界も救うを決めたんじゃないのか……?
そう考えた時俺の体には熱い何かが渦巻いた。
こんなところで死んでいる場合じゃないだろう。今死んだらほむらを残していくことになる。そしてほむらは間違いなく後を追って死んでしまう。そんなのは絶対に嫌だ。だからこんなところで死ぬわけにはいかない。
景色がすべてスローモーションに見える。俺に向かって手を伸ばしながら叫ぶほむらも、向こうで硬直しているユウキも、こっちに走ってきているシノンとキリトも、ボスの振っているハンマーですら――。
俺自身の動きものんびりだ。立ち上がるのすら時間がかかる。その間にボスのハンマーはのんびりとだが迫ってきている。しかし当たるわけにはいかない。生き残るんだ!
「……《縮地》!」
俺は叫び足に全部の力を集め全力で地面をけった。これは前世ではあまり使わなかった移動系の心意。いや、仙術か。
数メートルの距離を一瞬で駆け抜ける。しかしそれにもアバターに負担がかかりHPバーが少し削れる。数値にしたら300くらいか。残りのHPの数値は150程度。もう使えない。
しかしかなりの距離を稼いだ。衝撃波ですら届かない。俺は景色が元の速度に戻っていくのを感じながらポーションをあおる。視界の端ではエギルたちが《威嚇》などを使ってヘイトを稼いでくれている。
そして景色が完全に元に戻る。HPバーは少しずつ緑色に戻って行っている。
「……バカ!」
いつの間に来たのだろうか。ほむらが俺の隣にいる。
「悪い。心配かけたなほむら。けど新しい心意を生み出せたみたいだ」
「……本当に馬鹿よ……」
ほむらの頬に一筋の液体が流れる。
「……おいおい、泣くのはせめて……あいつをぶっ殺してからだぜ?」
「………そうね」
そういって俺は回復しきったHPを見て立ち上がる。
「エギル! サンキュー! もう大丈夫だ!」
そういって俺はほむらとともに走り出す。まだ右手に持ったままだった愛剣を握りしめて。
「くいぃぃぃぃいいいやがれええええ!」
右手の剣を全力で振りぬく。その一撃はボスにダメージを――ってあれ? さっきより圧倒的にダメージが入ってる。見た目は変わっていない。しかしこのボスの特徴であるスピードもなくなっている。明らかな弱体化。何かに力を吸われたみたいな――。
まぁいい、今はこいつを倒す!
「取り巻き担当の隊以外は集まれ! こいつは明らかに弱体化している! 何があったかしらんが今がチャンスだ! 押し切るぞおぉぉおお!」
全員の雄たけびじみた叫びが聞こえる。同時にボスのハンマーが振り下ろされる。しかし軽い。遅い。俺たちはこんなものじゃ止められねぇよ。
「でぇあ!」
俺は右手の剣を左から右に薙ぎ払う。ただそれだけだ。しかしそれだけでボスのハンマーははじかれ、ディレイができる。
「やれぇぇぇぇぇええええええ!」
俺も加わりソードスキルを乱射する。どんどんHPバーが削れる。最後に突っ込んでいった俺とほむら、ユウキにシノンがソードスキルをぶちこむ。
最後にほむらが刀を振り下ろす。同時のボスのHPが一ドットも余さずに消え去る。一瞬遅れて巨大な破砕音。ボスはその姿を消した。
そして俺を金色の光がつつむ。いや。全員の体が金色に光り輝いている。
俺は次のレベルアップにより出てくるレベルアップウィンドウを見て驚愕する。ふつうならばありえないことなのだ。“ボスを倒してもいったいだけでレベルがふたつも上がること”など。
「どういうことだ……。まさかバグってボスの力が増幅しすぎた代償か……?」
「……かもね」
とりあえず第十層の迷宮区タワーの向こう側にあいた扉を開けてレイドメンバー全員で歩いていく。正直何度も死にかけて俺は疲れ切っててさっさと帰ってほむらが作った飯食って寝たい……。
「もう少しの辛抱よ。我慢して」
「……わかってる」
とは言っても腹減ったし疲れたし眠いしなんかもうヤダ。
とかとグチグチとつぶやいている俺は目の前に第十一層の街につくまでブツブツと呟いていたようだ。なんかさけられてるし……。
「ディアベル……さっさとアクティベートして帰らせろ……。疲れた」
「おれもそうしたいさ。けど門が一向に見えてこないんだよ」
俺はその言葉に顔を上げて前を見てみる。うん確かに転移門らしき物がない。
「……広すぎねえか」
「ああ……」
そこから十分ほど歩いてようやく見つけた転移門。それがアクティベートされたと同時に俺はこの層の宿屋にダッシュした。――もちろんいつものほむら、シノン、ユウキという面子も忘れずにつれて行ったが――そしてほむらに作ってもらった料理を口にしながら話す。
「……最後。最後の辺りでボスの力が弱まった……あれはなんだったんだよ」
「……わからない。解らないけど何かが起こっているのは確かね」
俺たちの深刻オーラはいつも元気なユウキにぶち壊される。が、今回はユウキも考え込んでいる。
「……うーん。ボクにはわかんないや!」
「……私もよ。有力な情報は見つからない。このまま進んでいけばいつか分かるんじゃないかしら」
シノンの意見にまったく同感だ。そしてもう耐えられない。寝る。と一言残しておれはベッドイン。そしてアラームセットすらせずに意識が消えていった――。
はい終わりました。次はまたもや飛んで二十五層攻略の予定! なんか飛びまくりですんません。
ところで月曜日から水曜日まで修学旅行で書けないんですよね……かけないショックより皆さんの小説を読めないショックのほうがでかいですが。
ま、帰ってきてからまとめ読みさせていただきますけどね。それでは閉めましょう。
感想、指摘、☆評価よろしくお願いします。次回もよろしくです!