【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO 作:MYON妖夢
ボス偵察を終わらせた俺たちは次の日。再び同じところに集まった。
「はーい。それじゃはじめさせてもらいます。今日は本格的なボス攻略についてだ」
そこからディアベルは昨日の偵察によってわかったことをみんなに説明した。
ボスの居合切り、バトルヒーリング。防御力についてすべてを話した。そして。
「昨日のボス偵察は危なかったからHPバーが三本目に入ったところで終了した。だからボスのHPバーが三本以下になった時に気を付けてほしい。何が起こるかわからないからね」
と締めくくった。
レイドメンバーは96人。2レイド分。そのうちタンク隊の割合を多くして危険を減らしていくような作戦になった。特攻隊は俺とほむら。ユウキにシノン。そしてキリトとアスナを含めた30人ほど。少ないようだが確実に安全にダメージを取るためということだ。
そして何の因果か俺はまた第十層攻略のリーダー的存在になってしまった。
「……ディアベル。どういうことだ」
「君のほうがいいだろう? βでは第十層でリーダーやってたじゃないか」
知ってたんかい!
「……はいはい。わかりましたよ。やりゃいいんだろやりゃ」
ということで強制的にされたというわけだ。
「あー。ンジャおれが急きょリーダーになったジンだ。……みんな、さっきのディアベルの説明で分かったと思うけどHPが三段目になってからは俺たちにも未知だ。ベータとは情報が違いすぎる。だから頼むから無茶せずにやばかったら退いて回復。そしてHPバーが三段以下になったら一回ごとに下がっていってくれ」
みんなが賛同してくれたことに軽い満足を抱きながらも話し続け。その後すぐにボス部屋に向かった。
―-ボス部屋前――
「さて、みんな……行くぜ!」
そう言い放ち扉を開ける。その奥にいるのは昨日対面したボス《ザ・ダークブレイド》がいる。そして同時にその取り巻きが湧いてくる。
「さぁ、ヘルタイムのスタートだ。取り巻き担当の隊! ボスのほうに取り巻きを近づけるな! ボス担当はディアベルとシンカーさんに続け!」
そういいながら俺も剣を抜き放ち、ダッシュ。ほぼ同時にディアベルの剣先がボスをとらえダメージを与える。その一撃が合図だったかのようにボスも動き出す。ボスの刀が大上段に構えられ、ライトエフェクトをまとい始める――刀スキル《賊扇》――。
「タンク隊! ボスのソードスキルを止めろ! 特攻隊はいったん下がれ!」
俺の指示通りにみんなが動きタンク隊が盾を構え腰を落とし、完全防御態勢に入る。
ガィィン! という音とともにここまで衝撃が届いてくる。視界左端のレイドのHPバーを見ると一割削れている。
「ちぃ! 攻撃力がたけぇな」
しかしすでにボスのHPは一段目の四分の三ほどまで削れている。うまくいけば押し切れる。
ボスはソードスキルを止められたことでディレイを起こしている。今のうちだ。
「ボスの近くにいるものはソードスキルを撃て! 他は無理に近づいて使おうとするな! 通常攻撃でいい!」
同時に一番近くにいる隊の六人がソードスキルを発動。曽於他のみんなは通常攻撃を加えていく。
ソードスキルによってボスのHPは一段目の三分の二くらいまで減少。それを確認した俺はほむらたちを呼んで走る。
ボスのディレイが解け、刀が下段に構えられる。あの構えは一直線に斬撃を飛ばす《刃昇》――。
あれが飛んでくれば被害はでかい。そしてタンクは後ろに下がっていてすぐには止められない。なら俺たちがとめる!
「っらぁああ!」
下からくるボスの刀に対して《バーチカル》の縦切りを放つ。相手のスキルは発動寸前だったためキャンセルと同時にディレイ。そこに攻略組最高レベル層のほむらたちがソードスキルをたたきこむ。
ほむらは先ほど相手も使った《賊扇》。ユウキは《バーチカル・アーク》。シノンは《ファッドエッジ》キリトは《ホリゾンタル・アーク》。アスナが《ぺネトネイト》。
それらのソードスキルは全てがボスに直撃。同時にほむらたちがディレイ。ディレイが解けた俺はボスから離れる。少ししてほむらたちも離れた。これによりボスのHPが早くも二段目に入った。
「居合切りが来るぞ! タンク隊前へ!」
偵察の時と同じようにタンクを前で固め、俺たちはディレイ中を狙う。ボスがタンクが前に出たことに反応し、居合の構えを取る。そしてボスのHPが少しずつ回復し始める。
次の瞬間。ボスの刀が抜かれ、空中に白い軌跡をのこし、視認不可能な速さで振るわれる。次にボスを確認したときには刀は鞘に戻っている。
「……あれが居合切りか」
「そうだ。キリト」
「タンク隊のHPが三割も持って行かれるなんてな……」
だから俺たちは受けるわけにはいかない。
「これから五秒は狙い時だ! いけぇ!」
特攻隊十人がまずはとびだす。そしてそれぞれの色のソードスキルを発動。それらは確実にボスのHPを持っていく。
「下がれ!」
三秒ほど経過したのを確認してからおれはディレイ中のやつを二人抱えて脱出。皆もディレイ中のやつを抱えている。
「タンク!」
再びタンクを前に出す。そしてボスが居合の構え。そして抜かれた。そしてディレイ中に俺たちの攻撃。それのサイクルがボスのHPが三段目に入るまで続く。
「下がれ! ボスのHPが三段目に入った!」
みんなが下がり、ボスの状態を確認する。
見た目上は何も変わりはない。それを確認したタンクが言う前に前に出て、ボスの攻撃を止めようとする。しかし俺たちのこのまま四段目までいけるという気持ちはきれいに打ち砕かれる。
グルルルルルルルウウゥゥゥゥウゥゥォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
ひときわでかく吠えた後に居合切りの構え。刀の柄に手をふれるとほぼ同時にと思えるほどに早く抜かれる刀。それをタンク隊が驚愕しながら受け止める。HPバーを確認すると四割持って行かれている。しかし驚くのはそこにではない。
「……麻痺……それに毒も追加だと!?」
そう。今のボスの居合には麻痺と毒の属性が追加されていた。しかもその毒は五秒に一度ほどにHPの5%を持っていくレベルの高い毒だ。
「チィ! タンク隊直に回復! 特攻隊はタンク隊の回復を手伝え!」
「まずいことになったね……」
ディアベルがこちらに走ってきた。
「ああ。麻痺だけじゃなく毒も追加なんてな……。どうする? ディアベル」
「タンク隊を使う方法もだめ。さらにボスの居合速度とヒーリング速度が相当早くなっている。危険を承知でタンク隊を前において、その後ろにほかのプレイヤーを配置。そのプレイヤーがすぐにタンクの状態以上を回復する方法なら……」
「それはきついぜ。ディアベル。タンク隊のHPが一発で4割持ってかれるなら、後ろにいるプレイヤーへの衝撃でHPが消し飛ぶ可能性があるうえに、盾を構えていないと体が吹き飛ばされる」
「……くそっ!」
そして俺は危険を承知で言う。
「だから……俺が行く」
「無茶だ! 死ぬぞ!」
「あいつの居合を受けないように、なおかつ防具で受けちゃいけねぇんだろ? だったら盾になれてないやつでいくしかないじゃねぇか。パリィすれば行けるかもしんねぇ」
「……」
ディアベルは何か俺を止める策を考えているのだろう。しかしこれしか方法がない。ディレイ時間は幸い変わっていない。なら……。
「任せてくれよディアベル。こんなとこで死ぬほど俺は弱いつもりはねーぜ。それとほむらたちが来たいと言っても……来させるな」
「……ああ。わかったよ、君に任せる。……死ぬなよ」
「ああ!」
叫び俺は走り出す。ボスの腕が刀の柄に持って行かれる。それを確認した俺は何度も見た居合の軌道上に自分の剣を持ってくる。同時にボスの刀が飛んでくる。
「ッ! グッ!」
重い……しかし麻痺はしていないし毒にもかかっていない! 行ける!
そう確信した俺はそのままボスへと肉薄する。後ろで聞きなれた声が聞こえる。しかし俺はそのまま突っ込む。
「セェラァアア!」
ついに一発が届いた――
仁sideout
ほむらside
「仁!? ディアベル! なんで行かせたの!」
瞬時に状況理解した私はディアベルに詰め寄る。
「……彼を止めるほどの理由を見つけられなかった。そして彼はどうあっても止まる気はなかった」
「ッ! だったら私も……!」
「だめだ! 君は行かせられない! ジン君と約束したんだ!」
仁が……? 自分だけでいくなんて……またあの時みたいに……。
その思考が頭を回った瞬間に私の頭には前世でのワルプルギスの夜との戦いのとき、仁が無茶をして死にかけた時の映像がフィードバックした。
「仁ーーーーーーーーーー!」
声の限り叫んだ。
ほむらsideout
仁side
「ラぁあああ!」
一発。そしてまた一発と俺の斬撃がボスをとらえる。それと同時にボスのHPが少しずつ減少する。どうやら奴の防御力も上昇しているようだ。しかもソードスキルを使うわけにはいかない。なぜなら使った後のディレイを狙われたら終わりだからだ。
ボスの刀が右上に構えられる刀基本スキル《斬抄》――。
その軌道を知っている俺は最初の斜め右きり下ろしを《ホリゾンタル・アーク》の一発目でそらし、次の同じ軌道を戻る攻撃をこちらの二撃目ではじいた。
俺にはディレイは発動するが、攻撃を相殺された相手のほうが長い。俺は一気に勝負に出る。
右手の剣を強く握りしめソードスキル《バーチカル・スクエア》を発動させる。その四発は全てがヒットし、先ほどまでとは比較にならないほどにボスのHPが減少する。そして俺はディレイが終わるともに少し離れようと思ったが――
相手のほうが一瞬はやかった――
相手の刀が俺の横っ腹をとらえる。それにより俺はレイドのもとへ吹き飛ばされる。HPを確認すると7割を持って行かれ、そして麻痺と毒が発動している。
「仁!」
ほむらが駆け寄ってきて、まず解毒ポーションを口に入れられる。
「よくやってくれたね。ジン君」
俺はその言葉に反応し、ボスのHPバーを確認する。それはすでに四段目に突入したところだった――。
そして俺はボスの変貌ぶりに目を向いた――。
さっきまでの比較的細い体は少し分厚く、たくましくなり、何よりその両手には刀ではなく――両手根。つまり俗にいうハンマーが握られていた。
終わりました。ボスの強さがクォーターポイント並みだ……ww
仁「死ぬとこだったじゃねえか!」
ごめそ
仁「お前は何度俺を殺しかけるんだ! ええ!?」
んーこれからも何回か死にかけると思うから覚悟してくれ。
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仁「……次もよろしく」